キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【魔王の足音】幻想のポイズン55【天才の意地】

1 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/10(木) 00:02:11 ID:???
全幻想郷JrユースのFW、反町一樹が幻想郷・外の世界のサッカー界に旋風を巻き起こすというスレです。
この話はキャプテン森崎のパラレル作品で、
東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
もしかしたら他のアニメや漫画、小説などからもキャラが出たりするかもしれませんがご了承下さい。

本編のように、選択肢を選んだりカードを引いたりして物語が進んでいきます。

【前スレ】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1319379643/l50

[前スレのわかりやすいあらすじ。]
博麗霊夢・霧雨魔理沙・東風谷早苗・十六夜咲夜・魂魄妖夢という主力選手たちが離脱し戦力に不安の残っていた幻想郷Jrユース。
幻想郷に帰った魔理沙は、かつての師匠の教えを思い出し復活。
外の世界へ帰りチームに合流をする前に、着々と新たな力を霊夢らとつけてゆく。
一方外の世界では幻想郷がアルゼンチンJrユースと対戦。
天才ファン=ディアスを前に幻想郷は一歩も引かず、前半30分で2−0とリードをするのだが……。

反町「練習しても成果が出ない……どうせ俺なんか……」
咲夜「うぅっ……お嬢様ぁ……」JOKER×2
阿部瑠(ゲスト出演)「兄弟……お前も地獄に落ちろぉ……」
魔理沙「なんか咲夜のインパクトデカすぎて私の復活劇がえらく霞んでなくないか?」
霊夢「あざとすぎたのよ、言わせんな恥ずかしい」
さとり「一対一で負けるか〜!」
リグル「ハッハァー! 私がいれば天才だろうが敵じゃない!」
翼「リグルがいる限り幻想郷に負けはない」
ディアス「……もうわけがわからないよ」

なんかそれ程強くないぞ、アルゼンチン! 大丈夫かディアスと永琳! もっと頑張らないと命蓮寺の悲劇が待っているぞ!
そんな幻想のポイズン55スレ目、これからもよろしくお願いします。

563 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 00:19:29 ID:???
三杉「君は何を言っているんだ」

564 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 00:22:34 ID:???
三杉が二人…だと

565 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 00:22:57 ID:???
5点は言いすぎだけど
点は入ってそう

566 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 01:53:14 ID:???
―フランスJrユース ロッカールーム―

ハーフタイムに突入し、前半戦での疲労を回復する為、ある者は腰掛け、ある者はドリンクを口にし休息を取るフランスJrユースメンバー。
彼らの表情は比較的明るめであり、控室の雰囲気は決して悪くは無い。
前半は0−0のロースコアで終わったが、実際にはほぼフランスが優勢だったのだからそれも当然である。
よもやナポレオンがいないこの状況で、自分たちがここまで善戦できるとはと一同は笑みすらも浮かべるのだが……。

ピエール「みんな、気を引き締めろ! まだ試合は終わっちゃいないんだ!
     何より、俺達はまだウルグアイから1点も取れていない……試合を優勢に進めていながら、1点も取れていないんだ!
     攻めきれていない以上、浮かれるなんて出来ない筈だぞ!」
フェレーリ「うっ……」
ドゴール「がー……」

しかし、キャプテンのピエールだけは冷静にこの状況を楽観視できないものだと判断していた。
彼の言うように、フランスはここまで優勢に攻めておきながらただの1点も取れていない。
それは逆を言えばフランスがチャンスをものに出来ていないという事でもある。
後半からはGKが萃香となり、より強力な守備を敷いてくるウルグアイ。
楽に戦えるどころか、苦しい戦いとなるのは明白だった。

ボッシ「………………」

そして、そのピエールの声を聴いて暗い表情を見せていたのはボッシだった。
ピエールは決して彼を名指しして、前半で1点を取れなかったのはいけない事だったと言った訳ではない。
だが、ボッシにはどうしてもそれが自分の責任だと言われているような気がしてならなかった。
萃香がピエールのオーバーヘッドをクリアーに行き、ねじ込みにいった最初のシュートチャンス。
あそこで自分が決められなかったのが、前半戦最大の問題点だと言われているような気がしてならなかった。
半ば被害妄想染みた考えではあるが……それでも、彼にはそう思えて仕方がない。

ボッシ「(俺なんかじゃ駄目なんだ……やっぱり、ナポレオンがいないと……)」

567 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 01:54:15 ID:???
頭を抱えて項垂れるボッシ。
そんな彼の肩を、不意にぽんと叩く少女の姿があった。

さとり「………………」
ボッシ「サ、サトリ……?」

振り返ったボッシは、思いがけぬ人物が目の前にいた事により目を丸くして驚く。
別にフランスJrユースメンバーがさとりと仲が悪いという訳ではないのだが、
さとりは本来こういう時、率先して誰かに話しかけるような積極性はあまりなく。
どちらかというとこいしの方が誰かと話すなりコミュニケーションを取る事は得意だったのだ。

ボッシ「え、えっと……俺に、何か……」
さとり「ボッシ君。 このチームのGKとして、1つだけ言える事があります」
ボッシ「え?」
さとり「……あなたの決定力は、ナポレオン君には劣ります。 ですが、ピエール君を超えている」

狼狽するボッシに、さとりは単刀直入に事実だけを述べた。
彼女はあまりコミュニケーションを取るのは得意ではない。故に、言いたい事だけを言った。

さとり「このチームで、今、一番の決定力を持つのは貴方です。 貴方が一番、伊吹萃香を破れる可能性が高いのです」
ボッシ「………………」
さとり「ナポレオン君がいたなら、ナポレオン君を頼っていたでしょう。 ですが、今は彼はいない。
    ……故に、私は貴方を頼ります。 どうか……1点を取ってください」
ボッシ「………………」
さとり「……貴方は気が弱い。 ですが、そんな心の奥底にも、ストライカーとしての矜持がある。 ……私には見えてますよ」

それはさとりなりの叱咤激励であった。
他のフランスメンバーが活躍をしている中で未だに何も出来ていないボッシに対して出来る応援だった。
これを聞いたボッシは、しばらくは黙りこけ……遠くを眺めていたのだが……。
やがて小さく、しかし、力強く無言でうなずいた。

568 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 01:55:16 ID:???
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

ジョン「さぁ〜、両チームがハーフタイムを終え、再びピッチに戻ってまいりました!
    前半戦はフランスが優勢にも見えましたが……どうでしょう、南沢さん」
南沢「はい、仰る通りですよね。 ですが、ここまで0−0。 両チーム点を取れていない。
   前半抑え込まれていたウルグアイはともかく、攻めて点を取れなかったフランスの精神的プレッシャーはあると思いますよ」
ジョン「なぁるほど! 加えて言えば、ウルグアイは後半からGKを伊吹萃香選手に代えてきています!
    当然ながら彼女の守るゴールは今大会屈指の堅固さを誇る! 果たしてこれを突き崩せるか、フランス!」
南沢「何度も攻撃に失敗をしては、フランスの士気にも影響が出るでしょうからね。
   そうなってはウルグアイの攻撃力を考えるとあっさりひっくり返されかねません」
ジョン「果たして結末や如何に!? 実に楽しみな後半戦です!」

観客「それでもフランスなら……フランスならきっと勝ってくれる筈!」「萃香ちゃん来てもうた……もう駄目だ、おしまいだぁ……」

ビクトリーノ「……おいユウギ。 まだ本気は出さないつもりかよ」
勇儀「同点のままで本気を出すのは鬼の矜持にかかわるからねぇ」
ビクトリーノ「引き分けじゃ俺達は2位突破出来ねぇんだぞ!? このまま0−0で終わったらどうするつもりだ!?」
勇儀「そりゃ悲しいが、誇りを投げ捨ててまで本気を出すのは大人げないってもんだろう?
   何、心配するな。 1点取られりゃ私も本気を出していくさ」
萃香「……ま、その1点をあちらが取れるかどうかだがね」

ピエール「(やはり後半からはゴールキーパーを入れ替えてきた、か……。 このままでは……)」
ボッシ「ピエール……」
ピエール「? どうした、ボッシ」
ボッシ「……俺にやらせてくれ。 俺が……なんとか、やってみる」
ピエール「……わかった。 幸い、後半はこちらからのキックオフだ。 ……任せたぞ」

569 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 01:56:17 ID:???
ピピィーッ!!

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

バムッ バシィッ!

泣いても笑っても残り45分――審判の笛を合図として後半はフランスボールで開始される。
キックオフからボールはピエールへと渡り、ある程度溜めを作ってからピエールは左のジョルジュへとパス。
大陸一のパス精度を持つ彼は、フランスの攻撃の起点であった。

ピエール「ジョルジュ!」
ジョルジュ「(ふむ、ボッシにパス……か)いいだろう、いきたまえボッシ!」

パシュンッ!

文「あ、あやややや〜……こんなもん取れませんよ……」

ジョルジュの正確無比なパスは、カットに向かった文が触る事すら出来ず。
ウルグアイ中盤まで上がってきていたボッシが綺麗にいトラップをする。

ビルト「! よし、チャンスだ! 右のドリブラーに渡される前に……」
ミャウザー「ここで潰す!」

そして、それと同時にウルグアイのダブルボランチはボッシへとプレスをかけた。
フランスは何かしらに特化をした選手ばかりのチーム――ボッシはその中で、シュートに特化をした選手。
それならば恐らくはドリブルは不得手の筈だと判断をしての行動であった。
その考えはあながち見当違いでもなかったが……彼らは忘れていた。
守備において、ルストという万能型のDFがいたという事を。

570 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 01:57:17 ID:???
ボッシ「(……俺が、やるんだ)」

人は弱い生き物である。プレッシャーに負けて弱音を吐く人間なんて、決して少なくは無い。
そんな中でもボッシという人間は、ことさら心が弱かった。気弱だった。
だが、そんな彼にも……ちっぽけではあるが誇りは存在した。
フランスJrユースという代表に選ばれた、いちFW――いちストライカーとしての矜持があった。
彼はなけなしのそれを目一杯使い――プレッシャーを強引に跳ね除け、奮い立った。
今にも折れそうになる心をひきしめながら、思い切り突き進んだ。

ボッシ「ぬ、抜くッ!!」

サササササッ!

ビルト「うっ……!?」
ミャウザー「な、なにィ!?」

不器用ながらに上体でフェイントを入れ、ビルトたちを翻弄し突破をするボッシ。
その意外にもやや華麗なドリブルを見てウルグアイJrユースメンバーはどよめき……驚きに目を丸くする。

反町「……少し華麗なドリブル。 あいつにも出来るのか」
うどんげ「うわぁ……(私よりも全然ドリブル上手そう……へ、へたっぴって聞いてたのに……)」

571 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 01:58:19 ID:???
リラダン「これ以上進ませるか!」
ボッシ「(まだ……まだゴールが遠い! もう少し……!)」

ビュンッ ブブブ……

リラダン「なっ、き、消え……?」

パッ

リラダン「あ、み、見えた……!」
ボッシ「お、遅いッ!!」

やがてやってきたDFのリラダンを、ボッシは再び抜き去った。

レミリア「ほう……!」
マーガス「な、何をやったんだあいつ? DF、棒立ちになってたみたいだけど……」
シェスター「傍から見てるとわかりにくいけど、フィールドで相対すればボールだけが消えたようになるフェイントをかけてたね。
      初見だと思わず体が止まってしまっても仕方ない……」

それはボランチの古明地こいしが得意とするドリブル――「消えるフェイント」……を、模倣したもの。
「無意識を操る程度の能力」など持っていないボッシにそのまま消えるフェイントを使う事など出来る筈もなく。
彼はボールだけが消えて見えるようになるフェイントを開発した。
……もっとも、そのボールが消えて見えるのはたった2秒間だけ。
だが、2秒もあれば相手の意表を突き抜き去るのには十分すぎるのだった。

572 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 01:59:19 ID:???
クローデル「や、やらせるか!」
バージェス「好きにはさせん!」
ボッシ「(ここを抜いて……シュートだ!)」

シュバババッ シュバッ

クローデル「え……?」
バージェス「な、なにを……?」

スタタタタタッ!

ボッシ「……よし!」

最後に、ボッシはDF2人を鮮やかなドリブルで抜き去った。

三杉「……素晴らしいドリブルだ。 まさか、フランスでピエール以外にあのレベルのドリブルが出来る者がいたとは」
来生「え? 何? なんかすごかったのか、あのドリブル?」
橙「スピードも無い、ふつうのドリブルに見えましたけど……」
藍「……芸術的と言って過言ではないドリブルだったよ。 派手さはないが、素晴らしい」

それはフランスのキャプテン、エル=シド=ピエールの見せるドリブル――「芸術的なドリブル」……を目指したテクニカルドリブル。
到底ピエールには敵わないまでも、ボッシは懸命に練習を重ね、そのドリブルを完成させた。
ピエールのそれのように派手さは無い……しかし、ある意味鮮麗されたシンプルな機能美というものがそこにはあった。
高速でのフェイント、またぎを織り交ぜ緩急をつけたそのドリブルは、
見る者によっては解釈がわかれるだろうが芸術的なドリブルと言って間違いのない代物だった。

573 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:00:21 ID:???
ボッシ「(よし……シュートレンジだ! ここしかない……時間が経つ程固くなるキーパーから点を奪うには、ここしかない!!)」

グワアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

ジョン「ああああああああああああああっとぉ!? これは凄い、ボッシ選手、DF達をするすると抜き去り……。
    PA内に入ったァ! そして、右足を大きく振りかぶるゥ!! これは入るか、ネオサーブルノワール!!」

観客「ボッシ! ボッシ! ボッシ!!」「いけー、ネオサーブルノワールだ!!」

萃香「ういぃ〜、酔いも適度に回ってきたよぅ〜……っと」
ボッシ「これが俺の……ネオサーブルノワールだァァァァアアアアアアアアアアアアッ!!!」

バコッ……ドカァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

観客たちの声援を背に、さとりの――仲間たちの期待を胸に、ボッシは大きく振りかぶった右足を強く打ち下ろした。
瞬間、ボールは鈍い音を立てながら射出され小さく弧を描きながらゴールへと突き進んでゆく。

ボッシ「(か、会心の当たりだ! これなら……!!)」

ここまで見事に突破をしてきたボッシは波に乗っていたのか、この時のネオサーブルノワールは会心のインパクトで撃てた。
スピードも破壊力も、ナポレオンのハイメガキャノンシュートにはまるで敵わない。
だが、それでも自分に持てる最大限の力で撃てたこのシュート。
これならばきっと入る、これが入らなければきっとこの試合何をやっても自分はゴール出来ない。
そう思う程に、ボッシはこの一撃に自信を持っていた。

ピエール「(決まった……!)」
こいし「(やった! これで1点リード! 後は守り切れば私たちの勝ちだ!!)」

それは周囲の者たちも同じだった。
しかし、結果は違った。

574 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 02:00:41 ID:???
ハットトリックなら間違いなくいける

575 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:01:54 ID:???
萃香「鬼を……舐めるんじゃァないッ!!」

ブォンッ! ドガバチィイイイイイイイイイイイインッ!!

ボッシ「な……」

その小さな腕を振りかざしながら、ボールに向けて飛びかかった萃香。
渾身の力を持って振るうその右腕は適格にボールを射抜き。
鬼の一撃を受けたボールは轟音を立てながら、大きく弾き飛ばされたのだった。

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

ジョン「あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?
    だ、駄目です! やはり駄目だぁ、フランス、点を決める事が出来ないィィイイイッ!!
    ボッシ選手のネオサーブルノワールは決まらずッ! 萃香選手、その右腕一本で強引に弾き返したァ!!
    流石は幻想郷が誇る鋼鉄の小さな巨人、伊吹萃香! 凄まじいセービングですッ!!」

観客「畜生、なんであれが入らないんだ!」「もう……ゴールしてもいいよね……」

この結果を見て、観客席からは一斉にため息が漏れる。
ここしかないという決定機で、ボッシは持てる力の全てを出しきり、シュートを放った。
しかし、そのシュートは阻まれた――伊吹萃香というGKは、それでも超える事は出来ない程巨大な存在だった。
これを見てため息を出すなという方が無理な話であり……フランス贔屓の観客たちが項垂れる一方。
フィールドではウルグアイJrユースメンバーが一気に士気を盛り返しカウンターを仕掛ける。

ビクトリーノ「よし、いくぞ皆! スイカの堅守に応える為にも1点取ろうぜ!」
ピエール「くっ……ま、まずい! 皆、戻れ!」

ボッシ「(だ……だ、駄目なのか……? 俺じゃ……やっぱり駄目なのか……?
     どう足掻いても、ナポレオンみたいに点は取れないのか……?)」
萃香「(ふん、反町やレミリア、魔理沙や霊夢みたいな強い奴にならともかく。
    へなちょこFWなんかに点を決められてたまるかってんだ)」

576 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:03:17 ID:???
強い者に憧れ、並び立ちたいと願ったFWと、強い者以外には興味の無いGK。
両者の勝負は後者に軍配が上がり……それと同時に試合は一気に勝者側の方へと傾く。

タタタタタタタタタッ

ドゴール「ムガーッ!」
ビクトリーノ「やらせるかよ、っと。 それっ!」

ポーンッ

文「はーい、ナイスパスですキャプテンさん!」
こいし「あんたは私が……!」
文「(こいつをかわすのは骨ですからねぇ……危ない勝負はしないが吉)はいどうぞ」
こいし「あーっ、逃げた!」
ビルト「いい判断だ、アヤさん!」

フランスの攻撃失敗からカウンターを仕掛けたウルグアイは、ビクトリーノ・文のスピードを生かして速攻で攻め上がる。
タックルの上手いドゴールをパスでかわし、優秀なボランチのこいしは相手にせず。
そのまま横にフォローに来ていた味方へとパスを繋げ、一気に攻め立てる。

ジョン「ああ〜っとぉ! これはフランス、一転してピンチ! 攻めていた穴を突かれ、逆にカウンターを食らったァ!
    ウルグアイ、素早いカウンターで一気に攻め上がり……これはシュートまで持って行けるか!?」

反町「さっきの萃香さんのセーブで一気に流れが傾いたな……」
にとり「フランスFWのシュートも良かったけど……それ以上に萃香様が凄かった。 ありゃ抜けなくても仕方ないよ……」
魔理沙「だけどフランスの希望はアレしかなかったからな。 見てみろ、あのFW……まだゴール前で立ち止まってやがる。
    完全にオフサイドの位置だってのに」
美鈴「それだけショックだったんでしょうねぇ……」

577 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:04:23 ID:???
ビルト「(よし、なんとかセンタリングを上げられる位置までこれたが……)」
文「ビルトさん、ハイボールを!」
ビルト「(ん? アヤが自分でボールを要求するのは珍しいな……やらせてみるか)それっ!」

その後、ウルグアイ右ボランチ――ビルトはボールを持ったまま右サイドを駆け上がり、ボールを要求する文へとセンタリングを出す。
自らがゴールを奪う事には興味があまり無く、人を立てるアシストを好む文にしては珍しいこの事に。
何か策があるのかとビルトが見守る中、文はセンタリングに合わせて高く飛翔。
天狗の力を使ったその驚異のジャンプ力でボールにあわせ……フランスもここは守って見せると気合を見せてクリアーに向かう。

ルスト「こーいつでとどめだー! スクランダークリアー!!」
ベルジェル「ここでクリアーしてキャラを立ててやる!」
文「(どいつもこいつもおバカさんですねぇ。 覚り妖怪相手に私がPA内からシュートする筈無いでしょう)」
さとり「(!? これは……)いけません、皆さん、下がって……!!」
文「遅い遅い、指示が一歩スローリィです!」

スカッ

ベルジェル「なにィ!?」
ルスト「やーりゃがったなコンチクショー!!」

しかし、文はこのボールをスルーした。
さとりセービングを掻い潜って自らがゴール出来る筈は無いと文は自覚をしていたのだ。
さとりは心を読む事でこの事に素早く気づき、転倒をするような事はなく少しバランスを崩すだけで済む。
だが、フランスDFのルストとベルジェルは一杯かわされた形となり、ボールはそのまま左サイドへと流れ……。

578 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:05:57 ID:???
ビクトリーノ「でかした、アヤ! 決めてやるぜェッ!!」

グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

ジョン「あ、ああああああああああああああっ!? これはまずい、フランス!
    なんとFWのビクトリーノ選手が、左サイドまで流れています! 完全にフリーだァ!!
    そしてビクトリーノ選手、ボールを持った瞬間、素早くミドルシュートの体勢を取る!」

この一連の流れは、ハーフタイム中にビクトリーノと文の間で交わされた作戦である。
同点のうちは本気を出さぬ勇儀に、鉄壁の守備力を持つ萃香。
このままでは負ける事はなくても勝つ事もなく――それでは決勝へと上がる事も出来ないのが現状のウルグアイ。
どうにかして勇儀抜きで1点を取る事は出来ぬか、と考えに考えた末の作戦がこれなのだ。

ビクトリーノ「(俺のダッシュ力を生かしたボレーはPA内からのシュート――あのキーパーにゃ悔しいが通用しない。
        なら俺のパンサーファングを使うしかねぇが、こいつも普通に撃ったんじゃ弾かれるのがオチだ!
        ……でも、フリーのこの状態からなら……バランス崩してる今なら、入るだろ!?)」
さとり「くっ……」
ビクトリーノ「いっ……けェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」

パシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!

願いを込めた渾身のシュートは、鋭い音を立てながらゴールを襲った。
フリーの状態から全力で打ち抜いたパンサーファングの威力は、決して油断のならないものである。
さとりは体勢の整わぬままに拳を握りしめながらパンチングへと向かい、横っ飛びにダイビングをする……。

サッ

ブラボー「おお、ブラボー……」
さとり「!!」
ビクトリーノ「げっ!?」

しかし、そのシュートコースに割って入る者がいた――フランスDF、CBのブラボーである。

579 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:07:20 ID:???
ビクトリーノ「(構うもんか! いくらなんだってあんな無茶な姿勢で止められる訳ねぇ!!)」

その光景を見て、ビクトリーノはそう判断をした。
実際、慌ててブロックに飛んできたように見えるブラボーの体勢はバラバラ。
辛うじて足を突きだすような形でボールに触ろうとしており、最悪オウンゴールになりそうなブロックだったのだ。
故に、彼はこの後、自らの身に降りかかる災難をこの時はまるで予期できていなかった。

ブンッ!!

勇儀「? なんのつもりだい?」
こいし「キャプテン!」

迫りくるシュートを前に、ブラボーは何故かその右足を大きく振りかぶりボレーシュートの姿勢を取った。
そのフォームを見て勇儀は首を傾げ、こいしはブラボーを鼓舞するように名を呼んだ。

魔理沙「……あいつも使いやがるのか」
霊夢「こりゃまた……厄介」

映姫「ふむ……中々の美しいフォームです」

観客席のその"技"を知る者は、そのフォームを見た瞬間にブラボーの狙いを理解した。
そして、次の瞬間――――。

フィールドに立つ選手、観客席の観客、実況席の実況は――唖然とした。

580 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:08:42 ID:???
ブラボー「シルバースキンッ!」

ガチィッ……

ブラボー「……リバースッ!!!!!!」

ブォッ……グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

勇儀「な……!?」
文「にィ!?」

ブラボーはビクトリーノのパンサーファングを、そのまま綺麗に"打ち返した"。
ブロックにかけて非凡な才を持つブラボーの奥の手――「シルバースキン・リバース」。
それは俗に言うカウンターシュートと呼ばれるもので――。
しかし、まさか彼がそのような大技を使えると思っていないウルグアイの面々は呆気に取られながらそのボールを視線で追う。

ビクトリーノ「う……う、うそだろぉ!?」
リラダン「あ、ああ……」
バージェス「な、なんで……」

破壊力は無い、が……驚異的なスピードでウルグアイゴールへと戻されるボール。
これを止める事はウルグアイJrユースDF陣には出来ず、見送ってしまい……。

萃香「ば、馬鹿にすんじゃないよォッ!! そんなザコの撃ったシュートが……決まるかァァァアアアアアアアアアッ!!」

ゴバチィッ!!

それでも萃香が意地を見せて辛うじてパンチングに成功をした。
彼女にとって幸いだったのは、ブラボーがゴール前からカウンターシュートをした事。
そして、シュートの元となったビクトリーノのパンサーファングが、然程強力なシュートと言えなかった事であろう。

581 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:09:58 ID:???
だが、まだウルグアイのピンチは続いていた。
萃香が辛うじてゴールを守ったものの、それは本当に辛うじて――ボールは遠くに弾く事も出来ず、零れ球となったのだ。
それでも、本来ならばピンチではない。
低く守っていたフランスがこのボールをフォロー出来る筈もなかったのだから、DFがフォローしてクリアーすればいいだけの話だった。
……本来ならば。

テンテンテン…… コロッ

ボッシ「………………え?」
萃香「!?!?!???」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

ジョン「あ、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああっ!?
    なっ、なんという事でしょう!? ウ、ウルグアイ! 得点チャンスかと思われましたが……。
    しかし、しかし! DFのブラボー選手がカウンターシュートでビクトリーノ選手のパンサーファングを跳ね返したァッ!!
    萃香選手、懸命に弾きますが……尚もボールは1人ゴール前に残ったボッシ選手がフォロー!!
    まずい、まずいぞウルグアイ! ボッシ選手と萃香選手、一対一だァァァアアアッ!!!!」

そう、このボールをフォローしたのはフランスFWのボッシ。
点を決められなかった事で茫然とし、立ち尽くしていた男である。
そして、この試合、ここしかないという決定機を逃し続けた男でもある。
そんな彼に――この試合、最大のチャンスが舞い降りたのだ。

ドクンッ ドクンッ

ボッシ「あ……あ……(お、俺にボールが……!? ど、どうしたら……!?)」
ピエール「ボッシ、打てェ!! 相手は体勢を崩している!! 今なら入る!!」
さとり「(いけない……まるでこちらの声が聞こえていない……)」

先ほどのシュートの失敗で、ボッシは既に平常心を失っていた。
もう自分にはゴールを決める事など出来ないと、マイナス方向で確信を抱いてしまっていた。

582 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:11:19 ID:???
萃香「くっ……ボールを……返してもらうぞ!」

ダッ!!

これを見て、萃香は素早く飛び出した。
体勢を崩しながらもボッシに襲い掛かり、両手を伸ばしてボールを奪いに向かったのである。

ドクンッ ドクンッ ドクンッ

ボッシ「(ま、マズイ! ボールを奪われる! やばい、やばい、やばい……!!)」

心拍数が上がり、呼吸が荒くなり、ボッシは思わず視線を萃香から外した。
それ程までに迫りくる萃香の迫力は恐ろしく……そして、己にかかるプレッシャーに耐えられなくなったのだ。
このままでは萃香にボールを奪われる。抜くなり、シュートを撃つなり、何かをしなければ駄目なのは明白。
それでもボッシは動けなかった。

ボッシ「(……あ?)」

その時、ボッシは不意に観客席に見覚えのある人物を見つけた。
特徴的な髪形に、怒りの形相――こちらに向けて大声で何かを言っている、その人物。
それが誰だか悟った瞬間、ボッシは目を丸くした。

ボッシ「(ナポレオン!?)」

よもやナポレオンが試合を観戦に来ていたとは知らなかったボッシはそれを見て思わず驚く。
だが、その驚きは次の瞬間に消え失せた。ナポレオンが何を言っているか、大歓声の中でもしっかりと聞き取れたからだ。

ナポレオン「撃てェ、ボッシ!! テメェはストライカーだろうが!!!」
ボッシ「……!!」

583 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:12:59 ID:???
それは驚きでもなく、純粋な喜びだった。
ナポレオンにストライカーだと認めてもらえた――ボッシにとって、それは何よりもうれしい事実だった。

ボッシ「(ナポレオンが俺をストライカーだって言ってくれた……! そうだ……俺は……!!)」

シュッ!

萃香「!?」
ボッシ「へぼでもへっぽこでも……フランスJrユースのストライカーなんだァァァアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

シュパァァァアアアアアアアアアアアアアアンッ!!

萃香「なっ……ばっ……!?」

ボッシの行動は速かった。自信を取戻し、己を取り戻したボッシは素早く右足を振りかぶった。
彼はここでドリブルで萃香を抜く事を考えず、シュートを撃つ事を選択したのだ。
……それは萃香の裏を掻いた。ここまでボッシをシュートに関しては二流の選手と決めつけていた為、ドリブルで来ると踏んだからである。
だが、裏をかかれても、萃香が一対一で負ける事などそうざらにある事ではない。
しかし、この時は条件があまりにも悪かった。セービングに行った直後の萃香は、体勢もロクに整っていなかったのだ。
それに加えて、ボッシの放ったシュートはただのシュートではなかった。

萃香「(ふざけんじゃないよ……! なんで、私が……こんな奴に……!?)」

パサァッ……ピピィーッ!!

短い振り足から放たれたのは、彼の必殺シュート――サーブルノワールの動作を早くしたもの、クイックノワール。
威力やスピードはもともと無いそれは、改良をすれば短い振り足でも蹴る事が出来るシュートだったのだ。
小さく弧を描いたボールは、萃香の手を掻い潜ってゴールネットに突き刺さり、審判の笛が鳴り響く。
こうしてフランスFW、ボッシは今大会初ゴールを決めたのだった。

フランスJrユース 1−0 ウルグアイJrユース

584 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:14:27 ID:???
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

ジョン「きっ、きっ……決まったァァァァァァアアアアアアアアアアアッ!!
    ゴール! ゴール! ゴォォォオオオオオオルッ!! 後半15分、ようやく……フランス、ようやく先取点を挙げたァァッ!!
    決めたのはこの人! フランスのエースストライカー、ルイ=ナポレオン選手に追いつけ追い越せと頑張ってきたボッシ選手!
    その短い振り足からシュートを見事に決め、フランス、ウルグアイに勝ち越したァァァアアッ!!」

観客「ボッシ! ボッシ! ボッシ!!」「ボッシが活躍できるならアモロも……さとりんと交代させてみね?」
  「あかん! それ負けフラグや!」「とにかくこれで1−0だ! このままいけばフランスの勝ちだぜ!!」

フランス待望の先取点が決まったとあって、観客席のフランスサポーターは大いに湧き上がる。
それはフィールドにいるフランス選手達も同様で、誰もがゴールを決めたボッシを囲み、祝福をしていた。

ジョルジュ「よくぞ決めた、ボッシ! 大陸一の一対一の上手さだ!!」
フェレーリ「素晴らしく速い振り足からのシュートだったな。 あの速さは見習わなければならん」
ボッシ「あ、ありがとうジョルジュ、フェレーリ……」
ピエール「ナイスシュートだ、ボッシ。 よくやってくれた! ブラボーも、見事なカウンターシュートだったぞ」
ボッシ「お……おう」
ブラボー「おお……ブラボー……」

585 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:15:45 ID:???
ピエール「……だが、あえて苦言を言うなら、シュートに失敗をしたからといってあんなに茫然と立ち尽くすな。
     今回はそれがいい方向に転がったが……あんな事が今後続くようでは話にならないぞ」
ボッシ「……ごめん、気を付けるよ」
こいし「まあまあ、堅い事はなしなし。 ボーちゃん、ナイスシュート! これで後は守り切れば私たちの勝ちだよ!
    それとも、またボーちゃんが1点決めて2点差にしちゃう?」
ルスト「そいつぁいいや! 2点差になれば明日の幻想郷戦の結果如何で1位突破も見えてくるぜ!」

0−0の時はまだ勝ちは見えてこなかった……だが、1−0になってようやくフランスにも勝ちが見えてきた。
試合の残り時間はあと30分程度……その間逃げ切る、或いは点差を突き離せば、勝利。
フランスJrユースメンバーの胸に、希望が灯りはじめていた。

ナポレオン「へっ……ま、あれくらい決めてくれなきゃ困るわな」

観客席では、ナポレオンがこの光景を見て鼻で笑いながら軽口をたたいていた。
……先ほどまで懸命に声を張り上げてフィールドの仲間たちを応援していた姿がまるで嘘のような光景に。
周囲の観客たちはひそひそと二重人格者じゃないかと噂をしていた。

586 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:16:52 ID:???
さとり「(……素晴らしい。 これで1−0……このまま私が守り切れば、私たちの勝ち。
     ですが……当然、星熊勇儀たちはこのまま終わらないでしょう)」

それらを離れた場所で見ていたさとりは、不意に視線をウルグアイメンバーへと向けた。
残り30分、楽に過ごさせてくれないだろうという事を彼女は既に察知していた。

勇儀「なんてぇザマだい、萃香。 あんなのに点決められるなんて」
萃香「……言い訳はしないさ。 悪いが2点取ってきてくれ、もう二度と点はやらん」

ウルグアイゴール前では、鬼の2人が話し合いをしていた。
口調は朗らかではあるが、両者ともに表情は険しい。
鬼としてのプライドが、あんな弱者にゴールを許したという事を許していないのである。

ビクトリーノ「……残り30分で2ゴール、か」
勇儀「……とりあえずキックオフと一緒に一気にいく。 構わんね、大将?」
ビクトリーノ「実力的にも、時間的にも……ついでにお前のシュートの特性的にも、文句はねぇよ。 撃っちまえ」
勇儀「おう、まずは1分経たずに同点にしてやる」

暗い表情のビクトリーノは頭をかきながらスコアボードと時計を見やり……勇儀にキックオフ早々のシュートの許可を出す。
それと同時に勇儀は右手に持った杯をぶん、と横に思い切り放り投げ……。
この杯は、ベンチの誰も座っていない一角にぴたりとすいつくように着地をする。

勇儀「フランスJrユースってトコはキャプテンとストライカー以外見るトコが無いチーム。
   おまけにそこに派遣されたのは私らとは比べもんにならんくらいよわっちい地底の令嬢姉妹だ。
   ……そんな連中に本気を出すのは大人げないかと思ったが……どうやら遠慮はいらんらしいね」

勇儀は遠く離れたフランスゴールからこちらを見つめるさとりを強く睨み返し、吼えた。

勇儀「本気になった鬼に……覚り妖怪程度が敵うか!」

587 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:17:56 ID:???
マーガス「……フランスが先取点、か」

フィールド上でドラマが繰り広げられる中、観客席にいた西ドイツのメンバーはこの結果に驚きを見せていた。
確かにフランスは強い……あのアルゼンチンから5−0という点差で勝った以上、それは間違いない。
だが、それはあくまでも相性の問題だと考える者も少なくなかったのだ。
一対一を得意とするディアスと永琳に、その上を行く一対一特化の古明地さとり。
……アルゼンチンが勝てなくても、不思議でもなんでもない。
しかし、ウルグアイとの戦いではここまでエースストライカーが欠場していながらほぼ拮抗状態……。
零れ球をねじ込む形とはいえ、あの伊吹萃香からセカンドストライカーはゴールを奪い、1−0で勝ち越したのだ。

シェスター「確かにね……幻想郷時代は、コメイジ姉妹もあまり強くは無い選手達だったんだけどなぁ……」
レミリア「覚り妖怪はあの蛍妖怪に点を決められていたくらいだ。 とてもじゃないがトップクラスの選手とは呼べん」
マーガス「地力はウルグアイの方が圧倒してると思ったんだが……」

皆の口から飛び出すのは、やはり予想外という言葉ばかりだが……。
ここまで沈黙を守っていた西ドイツキャプテン、シュナイダーはフィールドを睨み付けたまま力強く呟いた。

シュナイダー「過去、どのような境遇にいたか。 どのような選手だったか。 どんな戦績だったか。 
       ましてや……妖怪としての実力がどうかなんてものも……関係がない」
マーガス「え……?」
レミリア「?」
シュナイダー「……サッカーは強い者が勝つんじゃない」
カルツ「………………」
幽々子「………………」

シュナイダー「サッカーは……勝った方が強いんだ!」

588 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:19:12 ID:???
遅くなって申し訳ありません。という事で本日も判定はありませんがここまで。
続きは明日以降書かせていただきます。
それでは、お疲れ様でした。

589 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 02:21:33 ID:???
翼「リグルは強いから勝つんじゃない。 勝つから強いんだ!」乙でした

590 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 02:22:14 ID:???
お疲れ様でしたー
フランスチーム生き生きしてるなぁ
戦うのが楽しみだわ

591 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 02:23:49 ID:???
三杉「君は何を言っているんだ」

592 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 02:24:21 ID:???
皇帝の名言がここできたかw

593 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 02:31:43 ID:???
FW 美鈴、妖夢
MF 反町、早苗、う詐欺、メディ
DF 穣子、妖精1、キスメ、チルノ
GK 大妖精

……これ控え主体だと普通に3点差以上で負けそうだな
反町にこいしちゃんマークされたら普通に詰む

594 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 02:34:35 ID:???
いくら控え使うといってもでもそのメンバーはないわ弱すぎ
精々帰ってきた主力だけを封印するくらいにしておかんとボッコされる

595 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 02:44:44 ID:???
そういえば、う詐欺って審判始末するのに忙しいから出せないんじゃないの?
元から使う気ないけど

596 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 09:12:07 ID:???
フランスのドラマチックな活躍は嬉しい!

でもこれオフサイドとられるケースww

597 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 09:53:10 ID:???
だって審判がアレだしw

598 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 10:01:48 ID:???
ですよねーww

599 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 10:13:30 ID:???
特殊効果「ホームタウンディシジョン」によりフランスは絶対反則を取られないw

600 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 10:55:05 ID:???
審判腐乱す「サッカーは強い者が勝つんじゃない……サッカーは……勝った方が強いんだ!」

601 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 10:59:57 ID:???
ここはDFラインがセンターライブを越えていたことで一つ…
流石に駄目かな? ww

602 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 11:02:51 ID:???
審判が言い訳するなら、そう言ってくるだろうね…
実際はどうなのか別にして

603 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 11:33:07 ID:???
主審「俺がルールブックだ!」
線審「ノン、ミーは何も見てマセーン。パリの空の美しさを愛でていましたヨー」

604 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 21:31:28 ID:???
>>596-603
……オフサイドってパスしなけりゃ取られないんじゃないですか?
零れ球ねじ込んでオフサイドなんですか?
……と思ってよーく調べてみたら確かにありました。

http://www9.plala.or.jp/naoshi/rulebook/offside.htm

今回の場合、このページの最下部……場面Fにあたる訳ですね。。。
……完全に勘違いして書いてました。


今回のケースの場合、ウルグアイDFが全員センターライン超えてたらオフサイドにはならないんでしょうか?
場面Eを見る限りだとセンターラインがオフサイドラインとなるので、こちらでも完全にアウトみたいですが。

605 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 21:34:39 ID:???
どう見てもオフサイドや……もうだめだ…ボッシはおしまいだぁ…!

606 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 21:35:42 ID:???
オフサイド見逃されてのゴールだと
いまいち自信に繋がらないなw

607 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 21:39:54 ID:???
もしオフサイドトラップにかかったりしたらねじこみでもアウトになるのね

608 :601:2011/11/26(土) 21:50:51 ID:???
DFラインがセンターラインを越えても場所によってはオフサイドになるのね…
知ったかしてサーセン

609 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 21:51:25 ID:???
オフサイドって複雑なんだなー

610 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 21:51:56 ID:???
これ、時代は1988だっけ?1986だっけ?

1990に現行オフサイドルールに改正されることにしちまえばいいのさー!

611 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 22:06:16 ID:???
>>605 >>607-609
よくリアルサッカーなどでもねじ込みとかがあって、それでオフサイド取られる事って見た事ないので。
ねじ込みならオフサイドも関係ないんだな、と思ってました。

>>606
ぶっちゃけこれがオフサイドだと、描き直すか何らかの正当な理由でオフサイドではない事にしなければならないですね。
腐乱審判が見逃した結果なら、フランスの喜びも見逃してもらった上でのものだとしょーもないですし。
ウルグアイが抗議しないのも変ですし(まあ腐乱審判なので抗議したらカードですが)、
シュナイダーの台詞も何の意味もなくなり、文章として破綻してしまうので。

>>610
本編を確認してきた所、現行のワールドユース編での合宿は1991年。森崎は20歳のようですね。
逆算をすると、Jrユースの15歳の時は86年になるのでこのスレの時間も86年とさせてもらいます。
現行ルールにするとオフサイドにならないんですか?

612 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 22:13:18 ID:???
>>610さんの文章を読むと
現行ルールになる前だとオフサイドにならないのかと

613 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 22:14:15 ID:???
>>612
ああ、なるほど!ごめんなさい、読解力ありませんでした。

614 :610:2011/11/26(土) 22:16:25 ID:???
いえ、そういう訳じゃないです。
今後全ての敵が同等の戦術を使えるというルールにすればフェアになる。
という発想の転換でした

615 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 22:19:41 ID:???
つまりこの世界のルールでは今回のことはオフサイドにならない
そういうルールだった、ということにするんですね

616 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 22:25:54 ID:???
>>614-615
YO1神のようにポスト蹴ろうがゴールバーの上に載ろうがスカイラブしようが反則にはならない。
独自のルールを作っちゃうという事ですか。納得です。
……それではそのようにして、今回の件は「オフサイドじゃないよ」という事にしようと思います。
ぶっちゃけ今までのスレの中でも似たようなねじ込みとかあったと思いますしね。
ただ、他のオフサイドルール(ポストの跳ね返りなどをねじ込むなど)はそのまま現行のルールと一緒という事でひとつ。
今回は中の人の知識不足によりなんか萎える結果になってしまって申し訳ありませんでした。反省します。

617 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 22:33:52 ID:???
ドライブスコーピオンどうなるんですか?
あれもポストの跳ね返りをリグルキックでねじ込む形になってると思いますが……

618 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 22:37:38 ID:???
>>617
オフサイドライン手前から飛び出してねじ込む、という形になりますね。
なので自陣ゴールに押し込まれていて相手DFラインが上がっている状況でリグルだけ前線に置き。
ドライブスコーピオンを狙う場合はオフサイドを取られるようになります。

619 :610:2011/11/26(土) 22:41:23 ID:???
あっ、採用されたんですね。
私も自分のスレでオフサイドネタやった時に調べましたので、今回はどうなるかと思いましたが…。
フランスの頑張りが無駄にならなくて良かったです。

620 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 22:46:32 ID:???
>なので自陣ゴールに押し込まれていて相手DFラインが上がっている状況でリグルだけ前線に置き。
>ドライブスコーピオンを狙う場合はオフサイドを取られるようになります。

翼「そんな初歩的なミスをリグルがするわけないから大丈夫だな」

621 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 22:47:02 ID:???
三杉「君は何を言っているんだ」

622 :森崎名無しさん:2011/11/26(土) 22:51:38 ID:???
いつもどおりすぎる翼と三杉がいると何故かほっとするぜ

623 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 00:22:31 ID:???
つまりGKが弾いた場合のみオフサイドじゃなくなったという事で?

624 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 00:38:25 ID:???
>>619
どうも助言ありがとうございました。
書き直しも嫌だったので、大変助かりました。

>>620-622
三杉君は反町のライバルだった筈なのにすっかりツッコミ役が定着してお笑いポジションですね……。
こうなったら佐なんとかさんに期待するしかない。

>>623
そうですね。その解釈でおkです。

625 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:36:53 ID:???
フランスのDF、ブラボーの予想外に過ぎる秘密兵器――カウンターシュートを起点にし。
伏兵、ボッシの一撃で伊吹萃香が守るゴールから貴重な1点を手に入れたフランスJrユース。
このままこの1点を守り切れば、晴れて決勝トーナメントへの進出が決定をするのだが……。
当然ながらウルグアイもここからの同点、そして逆転を狙っている。
試合時間がまだ30分も残っている以上、それは当然の事でもある。
そして、ウルグアイJrユースの切り札は――。

ピピィーッ!

バムッ バシッ

勇儀「………………」

いつになく真剣な眼差しをし、キックオフからのボールを受け取った山の四天王――力の勇儀である。

勇儀「(正直ね……この試合、楽に勝てると思っていたよ、地底のご令嬢……。 だが……よくぞ萃香から1点を取った。
    それは褒めてやる……! しかし、問題はここからお前が私を止められるかだ!)」

ドンッ! ズザァァッ……!

勇儀「(萃香がやられて同じ鬼である私が黙っている訳にはいかん……! ここからは……全力で行ってやる!!)」

ドォンッッ!! ズザァァァッ……!!!

勇儀「(後悔するなら……)鬼を本気にさせた事を後悔しなァッ!!」

ドォォンッッッ!!! ズザァァァァッ……!!!!

626 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:37:55 ID:???
一度、二度、三度……ゆっくりと地面を踏みしめながら、大きく右足を振りかぶる勇儀。
地面を踏みしめるたびにフィールドは振動し、巨大な爆音が周囲に響く。
ビリビリビリと得も知れぬ緊張感に包まれながら、フランス守備陣は慌ててシュートコースを防ぎに向かった。

ピエール「(くっ……完全にフリーになれるようにと下がった位置でボールを受けたか!
      それだけ自信があるのだろうが……)皆、中央に寄れ! ブロックだ!!」
ボッシ「お、おう!」
こいし「(くそっ、キックオフ直後じゃないとマークされると思っていきなり撃ってきたな〜!)」

ジョン「あ、ああああああああああああああああああああああああああああああ〜っ!?
    これは勇儀選手、キックオフ直後のロングシュートの構えだァ!!
    杯を捨て、本気を出した勇儀選手! 果たしてこのシュートは決まるかァッ!?」

627 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:39:10 ID:???
三杉「……! 久しぶりに見たが……相変わらず馬鹿げたシュートだ……!」
次籐「まさか……ただ助走をつけて思いっきりボールを蹴り抜くだけタイ!?」
藍「その通りだ……星熊勇儀のその真の恐ろしさは、ただそれだけのシンプルなシュートが強力なものとなるという点。
  ……鬼らしい、なんとも豪快で力任せなシュートだよ」
若島津「(ここにいてもわかる……! あのシュートは……俺には取れん!!
     あれは……あれの前じゃ、日向さんのネオタイガーショットなんてかわいく見える程だ!!)」
日向「…………!」

レミリア「相変わらずふざけたシュートだ……! やはり東洋の鬼は野蛮だな」
シュナイダー「だが……どれだけふざけたものだろうと、ゴールに入れば同じ事だ。
       記録にはふざけたシュートとも汚いゴールとも残らない」
神奈子「ミューラー君、アレ……止められると思うかい?」
ミューラー「……当然だ。 俺に防げぬシュートなど、無い」
幽々子「(……"あれだけの距離があれば"、でしょうけどね。
     流石に至近距離で撃たれては、ミューラー君でも弾くのが精いっぱいの筈だわ……)」

観客たちの中にいる優れたストライカー、或いはゴールキーパー達は、そのシュートフォームを見ただけで確信をした。
この勇儀のシュートは、間違いなく今大会でも屈指の威力なのだと。
完全にフリーの状態でなければ撃てないという制約があるものの、その代償を補って余りある威力を持つシュートなのだという事を。
そして、その確信を持った次の瞬間に――勇儀はその右足をただただ強く打ち下ろし、蹴り抜いた。

628 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:40:12 ID:???















勇儀「                 四    天    王    奥    義               




                     三     歩     必     殺                      」















629 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:41:29 ID:???
ドバゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

バギャガガガガンッ!!

ピエール「!?!?!? ぐあああああああああああああああああっ!?」
ボッシ「いぎゃあああああああああああっ!?」

咆哮と共に蹴り放たれるは、鬼の力をボールに篭めた文字通り必殺の一撃。
ボールはひしゃげながらも超高速でフランスゴールへと襲い掛かり……。
間に入っていたピエール、ボッシは威力を弱める事など到底出来ず跳ね飛ばされる。

ズギャギャギャゴガンッ!!

こいし「わ、私だってブロック技を……うわああああああああああああっ!?」
ドゴール「むがあああああああああああああああああああああっ!?」
ベルジェル「ひげげげげげえええええええええええええっ!?」
ルスト「くそぉーっ! まずいぜこいつはーっ!! ぐわああああああああっ!?」
ブラボー「シルバースキ……い、いかん! ぬわあああああっ!?」

そして、後方でシュートに備えていたボランチ・DFの者たちも衝突事故を起こしたかのように吹き飛ばされた。
ブロック技を新たに取得をしたが、そもそもブロック自体をあまり得意とはしていないこいし。
タックルとクリアー以外ではまるで役に立てないドゴールとベルジェル。
……守備に関してはあらゆる面で万能であるルスト、
ブロックに関してだけは世界レベルのブラボーでも、そのシュートは止められなかった。
どれだけ距離が離れていようと、勇儀の放った三歩必殺は誰にも止められなかったのだ。

さとり「…………!」

フランスのゴールキーパー、古明地さとりを除いては。

630 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:42:50 ID:???
ギリギリギリギリギリギリ…………!!

勇儀「(そうだ、覚り妖怪程度が鬼に敵う筈が無い! 身の程を知らないから……!)」
さとり「(遠くて心が読めなくても、貴方が何を考えているかわかりますよ、星熊勇儀!
     その表情は恐らく……次の瞬間に、凍りつくのでしょうね!)ぐっ……うううううううううううううううううう!!」

小さく口元に笑みを浮かべる勇儀に、歯を食い縛りながら左腕を強く強く振り上げるさとり。

ブォンッ!!

さとり「        と      め      ま      す      !      !      」

グバッヂィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

振り下ろされたさとりの左腕はボールの上部を叩き、横から強烈な衝撃を加えられたボールは轟音を立ててから高くバウンドをした。
……そのままゴールに入ってしまうというアクシデントが起こる筈もなく。
しっかりとフランスゴールから離れるような軌道で。

631 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:43:53 ID:???
キュッ ダンッ!!

さとり「(ある程度は予想をしていましたよ……星熊勇儀! あなたなら、キックオフ直後にシュートをしてくるかもしれない……と!
     確かに、あなたの知る私ならこのシュートは止められなかった……!
     幻想郷にいた頃の私は、PA内以外のシュートにはまるで無力……! 距離があるシュートも、まるで止められなかった!
     しかし……!)」
勇儀「(ほう、前に出たか!)」

迫りくるボールに対し、さとりは果敢にも真っ向から挑みかかるようにして前に進み出た。
強く地面を蹴り、跳ねるようにしてボールに向かいながらそのか細い右腕を突きだす。
それは星熊勇儀の知る古明地さとりがしたならば、自殺行為としか思えない行動。
貧弱で、虚弱で、体力も筋肉もまるでついていない貧相な少女が、鬼の必殺の一撃に抗える筈が無いのだから。

ガチィィイイイイイイイイッ!!

さとり「ぐぅっ……!!」
勇儀「(逃げなかったのは褒めてやる……! だが……その腕では弾き返せん!)」

さとりの右腕は、綺麗にボールの中心部を射抜いた。しかし、そこまでだと勇儀は思った。
さとりの細い腕は悲鳴を上げるようにして小刻みに震え、ボールのパワーを殺し切れていないのが遠目にも見えたからである。

632 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:45:00 ID:???
ギリギリギリギリギリギリ…………!!

勇儀「(そうだ、覚り妖怪程度が鬼に敵う筈が無い! 身の程を知らないから……!)」
さとり「(遠くて心が読めなくても、貴方が何を考えているかわかりますよ、星熊勇儀!
     その表情は恐らく……次の瞬間に、凍りつくのでしょうね!)ぐっ……うううううううううううううううううう!!」

小さく口元に笑みを浮かべる勇儀に、歯を食い縛りながら左腕を強く強く振り上げるさとり。

ブォンッ!!

さとり「        と      め      ま      す      !      !      」

グバッヂィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

振り下ろされたさとりの左腕はボールの上部を叩き、横から強烈な衝撃を加えられたボールは轟音を立ててから高くバウンドをした。
……そのままゴールに入ってしまうというアクシデントが起こる筈もなく。
しっかりとフランスゴールから離れるような軌道で。

633 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:46:21 ID:???
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?

ジョン「とっ……と、止めたァァァアアアアアアッ!! さとり選手、辛うじて勇儀選手の三歩必殺をパンチングゥゥウウウッ!!
    一瞬ヒヤッとしましたが……しかし、ゴールを守りましたァッ!!」

勇儀「な……にィ……!?」
ビクトリーノ「(くっそー!! 確かに距離はあったけど、アレを弾くかよォッ!?)」

ピエール「ナ……ナイスセーブだ、さとり!!」
こいし「さっすが、お姉ちゃん!」
さとり「(……紙一重。 一歩間違えば、何も出来ず吹き飛んでいた……やはり恐ろしいですね、星熊勇儀)」

さとりのファインセーブに、観客たちは熱狂し大歓声を上げ。
それを聞きながら、フィールドに立つ両チームの選手達は対照的な表情を浮かべる。
ウルグアイは、いくら距離があるとはいえ勇儀の奥の手のシュートでも決まらないのかと絶望に満ちた表情を浮かべ。
逆にフランスはさとりの鉄壁ぶりに明るい笑みを浮かべ、更に勢いづく。

そして、シュートを放った星熊勇儀は唖然とさとりを見つめていた。
彼女の中での古明地さとりは、本当に貧弱で矮小な存在――少なくとも、距離があるとはいえ己のシュートを受けて止められる選手ではない。

さとりもさとりで、勇儀の事を内心冷や汗を流しながら見つめ返した。
辛うじて弾く事は出来たが……もしも一歩遅ければ、逆に吹き飛ばされていたのは誰よりも彼女自身がわかっていた。
もしも距離の無い、ミドルレンジから撃ってきていたならば……防げたかどうかはわからない。

さとり「(……とはいえ、防ぐ事は出来た。 まだ油断はなりませんが……私はあの星熊勇儀のシュートを防いだ。
     ……誰でもない、この私が)」

634 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:47:42 ID:???
お空「やったあ! さっすがさとり様! さとり様はやっぱり凄いんだ〜!!」
輝夜「ありゃー……同じ一勢力を代表するGKとしては、やっぱ、すこーし落ち込むわね。
   あんなシュートを防げるなんて」
ヤマメ「(……一対一だけじゃない。 普通にセービングだって一流だ……。
     くそっ! なんだって私の周りにゃこんな化け物どもが多いんだい!)」
リグル「(鬼も大したことないな〜。 私なら決めてたのに……)」
魔理沙「(……ミドルには相当強くなってやがるな。 それでも早苗よりは落ちるだろうが……)」

若林「(……ふん、あれくらいは止めてもらわないと練習に付き合った意味もないからな)」
森崎「危なっかしいセービングだな、おい。 あんな位置からのシュートくらい、もっと余裕を持って防げっての」
三杉「距離はあったが十分強力なシュートだったよ。 君の尺度では大した事が無いのかもしれないけれど……ね」
森崎「へっ(……ま、楽々キャッチとはいかんがなんとかなるレベルだな)」
日向「(気に入らねェ……! どいつもこいつも気に入らん……!!
    どうしてこうも俺の上を行く奴ばかりが出てくる……!!)」

レミリア「……あれを止めた、か」
マーガス「(確かに距離はあったが……あの距離でもシュナイダーのファイヤーショット……。
      レミリアさんのマスターオブレッドサンにも匹敵する威力くらいはあった筈なのに……)」
シュナイダー「……いいGKだな。 モリサキには劣るだろうが」
カルツ「(……内心、あのユウギさんのシュートを見て焦ってるじゃろうに。 クールな奴じゃ。
     ま、その奥底では対抗心でカッカ燃えておるんじゃろうがの)」

635 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:48:47 ID:???
ピエール「よし……ボールを回せ! 落ち着いて攻めていくぞ!」
ビクトリーノ「こんにゃろう……! 勝負しやがれ!」

文「あやややや〜っと(サイドの突破自体は比較的容易なんですよねぇ……問題点はやはり……)」
勇儀「ええい……!」
こいし「あんたをノーマークにする訳ないでしょ〜」
ドゴール「ふんが〜っ!!」

ジョルジュ「行け! ボッシ!!」
ボッシ「よし……もう一度ゴールを……!」
萃香「舐めるなァッ! そうそう何度もゴールを許すか!!」

その後、試合は再び膠着状態に陥った。
2点を取らなければ勝てないウルグアイは、懸命に攻め立て……。
フランスもそれを阻みながら、逆に追加点を取れないかと攻勢にも出る。
だが、両者ともに決め手に欠けるというのがここしばらくのゲーム内容である。

ピエールはビクトリーノとの危険な直接対決をせず、チームの勝利を優先し仲間たちを使い。
ウルグアイ右サイドハーフの文がサイドを駆け上がっても、ストライカーの勇儀には2人のマークがつきパスを通すのは容易ではない。
フランスが追加点を狙っても、そうそう何度も抜かれる程萃香はザルでもなかった。

こうして時間は過ぎ、後半は残り15分という所まで来る。
既に終わりは見えてきていた。フランスJrユースの勝利という形の終わりが。

しかし、そういった時にこそ油断は生まれ、ピンチが生まれるものである。

636 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/27(日) 01:50:06 ID:???
>>630は無視して下さい……間違えて先に投下してしまいました。
オフサイドの件といい、ミスが多くて本当に申し訳ありません。

今日はここまで。明日の更新で、出来ればフランスvsウルグアイを終えたいなぁと思ってます。
それでは、お疲れ様でした。

637 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 02:39:58 ID:???
乙でしたー

そろそろブラックファルコンの秘密兵器ブラックファルコンクロウが炸裂して
ウルグアイの逆転サヨナラ勝利と予想w

638 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 07:28:16 ID:???
本当に恐ろしいシュートなんだろうな、合計補正値+15も伊達じゃないか

同じ条件ならオータムと同値だけど

639 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 11:23:05 ID:???
オータムでも止められる可能性がある、って事か

640 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 12:43:43 ID:???
バヤシさんと同じタイプのGKだしPA内なら補正減だろうな
リグルなら体力切れるが2点は固いだろ
反町にはこいしとドゴールがつくだろうから必然他のマークは甘くなるだろうし

641 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 12:50:51 ID:???
翼「2点は固い? 20点は固いの間違いだな」

642 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 13:00:36 ID:???
三杉「君は何を言っているんだ」

643 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 15:33:35 ID:???
アルゼンチン戦でも描写あったがキックオフシュートなら伝々ってどうなんだw
ヘルナンデスは同じ値であるフリーオータムにカードの最大差+センスでも普通に勝負したんだぞ!
普通に吹っ飛ばされたけど

644 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 16:18:20 ID:???
反町が規格外過ぎるだけ

645 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 16:23:53 ID:???
反町が魔王なだけで他の面子は決して悪くない

646 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 16:51:23 ID:???
翼「皆、頭は大丈夫か?リグルが居れば勝つんだから、GKが誰でも一緒だろう?」

647 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 16:52:26 ID:???
三杉「君は何を言っているんだ」

648 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 16:55:25 ID:???
翼はそろそろ自重した方がいいんじゃないか?
無駄にレスが嵩んでる気がする

649 :森崎名無しさん:2011/11/27(日) 17:07:05 ID:???
いやいや、もう既にお約束になっているこのやり取りがないと正直寂しいですわ

650 :森崎名無しさん:2011/11/28(月) 01:51:46 ID:???
昔偉い名人が「翼は1日1時間改め2回まで」とかいってた気がする

651 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:28:56 ID:???
>>648-650
なんかよくわかりませんが、流行っちゃいましたからね。
正直中の人としても困惑をしてるのですが、まあ、楽しんでもらえてるんならそれでいいかな、と。
それくらいしか騒ぐネタを用意出来ない中の人の落ち度でもありますしね。

652 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:30:30 ID:???
ジョン「さぁ〜、現在後半30分を過ぎた所! 残り時間は15分となりましたが……ウルグアイ、まだ諦めない!
    右サイドハーフの文選手、またも右サイドを走りチャンスを作りに動きます!!」

シュタタタタタタッ!

ジョルジュ「……やはり私の守備だけは大陸一でないので止められない」
文「(ここで負けたら優勝記事も書けませんし、何より鬼にどやされますからねぇ……。
   しかし、こうやってサイドを駆け上がっても……)」

プレスをかけてきたジョルジュを軽くいなしながら、サイドを駆け上がりつつ中央に視線を向ける文。
先ほどから何度も何度もチャンスを作りかけているが……しかし、彼女のサイドアタックは得点には繋がっていなかった。
原因は勿論、このウルグアイの絶対的なエースストライカーである勇儀が2人の手によりマークをされている事。
シュート力は絶大ではあるものの、突破力・キープ力は一流とは呼べない勇儀。
彼女にタックルに秀でたドゴール、そして反則紛いの守備を見せるこいしをつけられ、
パスを何度通してもボールを持った瞬間に奪われ、即座にクリアーされ続けていたのである。

文「(このまま無策ではとてもじゃありませんが、同点どころか逆転も無理です。
   地底の覚り妖怪には……私のドリブルゴールも通じない。 キャプテンさんのミドルシュートだって弾き返されてしまう。
   どうすれば……?)」
ビクトリーノ「(アヤの奴、迷ってやがるな……くそっ、確かにここまで運べはするんだがその後が続かねェ!
        どうにかユウギにシュートを撃たせる事が出来ればいいんだが……! ん? ちょっと待てよ?)」

悩む文を見て、逆サイドを走るビクトリーノもまた顔を顰めながらどうやってフランスの壁をこじ開けたものかと思案をする。
悔しい事だが自分のパンサーファングは、何度撃ってもさとり相手にはゴールを決められないだろう。
それどころか、DFのブラボー、ルストに阻まれる可能性もある。
故に勇儀にボールを渡し、彼女に三歩必殺を撃たせるしかここからの逆転への道は無いと感じていた。
問題はそれをどうするか……二重のマークにあう星熊勇儀に、どうやってシュートを撃たせるか。
走りながらふと勇儀の方を向いたビクトリーノは……一つの作戦を思いついた。

653 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:31:32 ID:???
ビクトリーノ「(……試してみる価値はあるか! どうせこのまま手を拱いていたら時間切れなんだ!)アヤ!!」
文「(あのサイン……もう一度勇儀様へのパス、ですか。 ……仕方ありませんねぇ!)勇儀様、お願いします!」

パシュッ!!

策を思いついてからのビクトリーノの行動は早かった。
まず彼はボールを持つ文に、再度勇儀にボールを渡すようにサインを送る。
これを受けた文は、またボールが取られるだけだろうと思いながらも指示には逆らわず勇儀へとパス。
このボールは勇儀に通り、その豊満な胸でワントラップをした勇儀はボールをキープしようとするが……。

ドゴール「ふんがあああああああああああああああっ!!!」
勇儀「ぐあああっ!?」
こいし「ドゴちゃんのタックルは無敵だよ〜! 鬼なんかが抜けるもんかぁ!」

しかし、これは当然のようにドゴールの力任せの豪快なスライディングタックルで奪われた。
その驚異的なパワーは勇儀すらも吹き飛ばし、ボールを持ったドゴールは素早くクリアーをしようとするのだが……。

シュンッ

ビクトリーノ「やらせねぇよ!?」
ドゴール「むがっ……!?」
ビクトリーノ「おらっ、貰ったァ!!」

バシィッ!!

なんと逆側のFWである筈のビクトリーノが、このドゴールのクリアーボールを素早くカットする。
元々特化型で集まったフランスJrユースは、得意な分野とそうでない分野ではっきりと分かれている。
ドゴールもまたその例に違わず、タックル以外の能力は水準以下。
そのドゴールのクリアーを、FWであるビクトリーノがカット出来たのは何ら不思議な事ではなかった。

654 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:33:01 ID:???
ビクトリーノ「(よし、ここまでは上手くいった! 後は俺次第……!!)」
こいし「こ、このッ!! 最初っから鬼が突破出来ないのわかってわざと……!!」
ルスト「やーりゃがったなこんちくしょー!!」

しかし、このビクトリーノにもすぐプレスがかかる。
ドゴールと共にマークについていたこいし、守備全般で優れた能力を持つルスト。
彼らを抜かなければ、ビクトリーノの作戦は成功をした事にはならない。

ビクトリーノ「(……抜く! 俺のドリブルは……)」
こいし「!!」ガツッ
ビクトリーノ「(こんな反則紛いのディフェンスなんかで……止まるもんじゃねェッ!!)」

ドガァッ!!

こいし「うきゃあっ!?」
ルスト「や、やるじゃねぇか!」

審判に見えないように肘打ちをし体勢を崩そうとするこいしを、逆に弾き飛ばし。
更に前方から強烈なスライディングタックルを敢行するルストを真正面から吹き飛ばす。
フィジカル面で劣るこいしとルストを、ビクトリーノは強引なドリブルで抜き去ったのだ。

ビクトリーノ「(よし、後は……!)」
ピエール「そこまでだ!」
ビクトリーノ「!?」

655 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:34:16 ID:???
ジョン「あ、あああっ!? これはビクトリーノ選手、素早く勇儀選手のフォローに走り。
    こいし選手とルスト選手を吹き飛ばし、そのままゴールまで突き進もうとしますが……。
    なんとフランスキャプテン、ピエール選手がここまで戻っていました!!」

ビクトリーノ「(嫌な時に……だがよ、簡単にはやらせねぇぜ!!)」
ピエール「(やはり追加点を取るのは厳しい……この1点は必ず死守してみせる!!)」

正面に回り込んだピエールを見るなり顔を顰めるビクトリーノ。
そして、ビクトリーノから視線を外さないようにしながら集中してディフェンスをするピエール。
フランスとウルグアイ、両チームのキャプテン同士の争い――。
この大一番で、この試合を運命づけるワンプレーがキャプテン同士の勝負となる。

ススッ

ピエール「(右か? 左か? ……どちらにしても抜かせはせん!)」
ビクトリーノ「(ちっ、油断したらすぐに奪われる……! 隙も見せられねェ……! まだか……? まだ……)」

タタタッ

ビクトリーノ「!!」
ピエール「(……動か、ない? このままではドゴールもこいしも起き上がる! 一体何を考えて……)」
さとり「ピエール君、違います! 彼は突破を狙っていない!! 彼が狙っているのは……」
ピエール「何!?」
ビクトリーノ「遅い! そりゃあっ――!!」

パシュッ!!

さとり「パスです!!」

656 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:35:26 ID:???
ここでピエールはこの試合で最大の誤解をしてしまった。
ビクトリーノが狙っていたのは、突破をし、ゴールに近づいてからのミドルシュートではなく。
自分が囮となり、ボールをキープしてからストライカーにボールを渡しゴールを奪ってもらうというもの。
これにいち早く気づけたのは最後方から敵の攻めを見ていたさとりだが、その察知も遅く。
ビクトリーノのパスは自分の本来いる場所――左側のストライカーがいるべき場所へと通る……が。

ピエール「通……さんッ!!」

チィッ!!

ピエール「くそっ!」

これにピエールは強引に頭から飛びつき、ダイビングヘッドの形でクリアーをしようとした。
しかし、それはボールを掠らせ、僅かに軌道を逸らせるだけ……。
結果的にボールはビクトリーノがパス相手として選んだ選手が、予定していた場所僅か5cm前で受け取るという形となる。

とにもかくにも、こうしてビクトリーノの作戦は少々の誤算はあったが、見事に実った。
彼の意地と誇りが、フランスの堅固な防壁の第一陣を打ち破った。
残る問題は、パスを受け取った者が――この最高のチャンスをものに出来るか、否か。

パスッ

勇儀「………………」
さとり「………………!!」

ドゴールに吹き飛ばされると同時、ビクトリーノの意図を読み左側へと流れボールを待った星熊勇儀。
指示が遅れたが為にこの苦境を招いてしまった、古明地さとり。

両チームに派遣をされた選手同士が、今再び、睨みあった。

先ほどよりもより近い位置で。

657 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:36:26 ID:???
勇儀「(正直、気に入らん……! こんな私を見くびるような策を練った大将が……!!)」

一歩足を出し、踏みしめ、勇儀は前に進む。
彼女は憤慨していた。
自分を見くびるような策を考え、小細工とも言えるその策を弄したビクトリーノに対して。

勇儀「(だが、結局私は抜けなかった……! あのこいしも抜けず……あまつさえ、吹き飛ばされた! 力の勇儀ともあろうものが!!)」

二歩目を出し、更に勇儀は前に。
彼女は憤怒していた。
ビクトリーノにそのような策を考えさせてしまった、己の弱さに。

勇儀「(だから文句は言わん……! 与えられた機会をものにする事で……せめてもの贖罪とする!!)」

三歩目を出し、勇儀は前を向いた。
彼女はいつでも前だけを向いていた。
鬼としての誇り、矜持、プライドにかけても――このチャンスを、必ずやものにすると心に強く誓った。

前半戦、本気を出さなかった時にゴールを奪えず。後半、点を失った直後のシュートでも、ゴールを奪えず。
ここまでマークをつけられ抑え込まれた事に対して、彼女は強く自省をした。
自分本位である鬼がチームに対して申し訳ないという思いを抱くのは、実に珍しい事でもある。
それはそれだけこの勇儀がビクトリーノの事をそれなりに評価をしているという事の裏返し。
己もストライカーであるというのに、ここで勇儀に任せてくれたビクトリーノの信頼へ応えてみせるという意地。

勇儀「今度もこいつを……防げるかァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?!?!?」

グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

658 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:37:27 ID:???


















勇儀「                 四    天    王    奥    義               




                     三     歩     必     殺                      」

















659 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:38:28 ID:???
ヒュンッ!!

ブラボー「シルバースキンッ!!」
ベルジェル「く、くそーっ!! キャラは立ってないけど、こんな所で失点してたまるかーっ!!」

勇儀が吼えると同時、遅れてブラボーとベルジェルはシュートコースを防ぎに向かった。
こいしとドゴールに勇儀を任せきりにしていた為にフォローが遅くなった彼らは、勇儀をフリーにさせてしまった。
その落とし前をつけるべく、なんとかブロックをしようとした。

バギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

ブラボー「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
ベルジェル「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!?」

その思いは届かず、2人はまるで為すすべなく吹き飛ばされた。
ブロックに定評のあるブラボーですら何も出来ないまま、弾き飛ばされた。
そして、恐ろしい事に、どれだけ気合を入れてブロックに飛んでも……そのシュートの威力は少しも損なわれていなかった。

間違いなく今大会最高峰のストライカーである反町一樹の、オータムドライブ。
そのオータムドライブと、そのシュート自体の威力は然程差は無い。

だが、鬼の本気の力。
その鬼の力を最大限まで引き出せる、フリー状態から撃ったという事実。

2つの条件が重なり合い、距離という枷もなくなったそれは――。

もはやシュートという名の暴力だった。

660 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:39:43 ID:???
(BGM:守護神-The guardian      http://www.youtube.com/watch?v=Zt4ZdWBHcBo

この一瞬の出来事を見て、観客席にいる選手達は誰もが思った。

ヘルナンデス「(あれは取れない! あれは……取れないんだ!!)」

イタリアが誇るヨーロッパNo.1キーパー、ジノ=ヘルナンデス。
彼は実際にウルグアイと戦い、その勇儀のシュートにより2失点を喫していた。
ある意味ではこの中で一番勇儀の恐ろしさを知っている彼は、これは止められないと断定をした。

ミューラー「(こんなシュートが……あるというのか……!?)」

西ドイツの怪物キーパー、デューター=ミューラー。
彼は勇儀のこのシュートを見、思わず心が震えるのを自覚した。
野生の動物というのは本能的に強者という者を見極め、怯え、逃げる。それは自己防衛の為に備わった、動物の本能。
野性児と言って差し支えの無い経歴を持つ彼は、本能的にこのシュートを恐れた。

シュナイダー「(これが決まらない筈が無い……!)」

同じく西ドイツのストライカー、カール=ハインツ=シュナイダー。
彼はこのシュートを見た瞬間、確実にゴールを貫くと確信を持った。優れたストライカーは優れたストライカーを知る。
一目見ただけで、ドリブルやパスといった一連の動作――フリー状態でなければ撃てないというマイナス要素はあるものの。
このシュートだけは間違いなく大会屈指のものだと――星熊勇儀の実力は本物だと、シュナイダーは理解をした。

日向「(畜生……!)」

全日本のストライカー、日向小次郎。
彼はただただ歯噛みをし、悔しさを表に出さないように必死に耐えた。
猛虎と呼ばれる己が可愛く見える程に、星熊勇儀のシュートは破壊力も威力も上。
この大会が始まる前から――そして、始まってからも幾度となく己の地位を脅かし。
己の上を行くストライカーを見てきた彼は、もどかしい思いで吼えそうになるのを耐えていた。

661 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:40:48 ID:???
森崎「(超化すりゃあ……弾ける、か? ちっ、でたらめなシュートだ!)」

全日本の正ゴールキーパー、森崎有三。
彼は冷静にこのシュートを自分なら止められるかどうか判断しようとしていた。
そこに怖れは無かったが、出来るなら戦いたくない相手だという本音はあった。

早苗「(みらくるセービングでも弾ければいい方……超化出来れば……いや、それでも弾くのが……!!)」

幻想郷の正ゴールキーパー、東風谷早苗。
彼女は本当にこの勇儀がいるウルグアイを相手に、1失点で済んだのかと唖然としながら。
それでも冷静になろうと努めつつ、自分なら止められるかどうか判断しようとしていた。
……しかし、何度シミュレートをしても、ガッチリキャッチをする構図はハッキリ浮かばなかった。

魔理沙「(……生まれ持った強靭なパワー、か)」

幻想郷のストライカー、霧雨魔理沙。
彼女は勇儀の右足を恨めしそうに眺めながら、懸命に頭を振った。
才能を微塵も持たない彼女は、テクニックではなく純粋なパワー勝負に逃げるしかなかった。
だが、それも鬼の力には到底敵うものではない事を改めて認識させられた。
……新たな力を得たものの、それでも超人的な力というものに彼女は嫉妬をしていた。

反町「(これは入る……! 同点だ!!)」

幻想郷キャプテン、反町一樹。
彼もまた、このシュートをさとりは止められないと断定した。
フォームには癖がある、狙いは十分に定まっていない、ある意味、反町のシュートとは対極の存在の勇儀のシュート。
……だが、勇儀のシュートにはそれを補ってあまりあるほどの破壊力があった。
これをさとりが弾けるビジョンを、反町はどうしてもイメージ出来なかった。

こうして観客席にいる者たちの十中八九は、ウルグアイの同点を予想した。
一部の例外を除いて。

662 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:41:54 ID:???
若林「(……確かに、どうやっても入ったようにしか見えん。
    あの位置から、全力のシュートを、フリーで撃たれれば……誰でもそう思うだろう)」

1人は失意の中から立ち上がり、古明地さとりと共に特訓を繰り返した男――若林源三。
腕組みをしながら、彼はこのシュートは入らない、と考えた。

お空「(さとり様なら止めてくれる……! さとり様なら……!!)」

1人は古明地さとりを主とする地獄鴉、霊烏路空。
彼女はさとりの力を信じていた……さとりなら負けないと強く信じていた。

彼の、彼女の視線は、フィールドのただ1点――勇儀の足元に注がれていた。

若林「(しかしそこは――!)」

お空「(だってそこは――!)」





若林・お空「(  ペ  ナ  ル  テ  ィ  エ  リ  ア  の  "中"  だ  !  !  )」

663 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/28(月) 02:43:35 ID:???
勇儀「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

             奴が叫ぶ。 大地が鳴る。 巨大魔人激突!
             ここまで来たらもうどこにも、逃げ場所は無い。

さとり「(ピエール君……よくぞ触れてくれました……! その5cmが……僅かな5cmの軌道の変化のお陰で……!!)」

シュピンッ!!

さとり「(星熊勇儀のトラップした位置が……ペナルティエリア内になった!!)」

             振りかざしたその手で、お前は何を掴むのか。
                熱く高ぶる勇気は、誰の為。

さとり「(ピエール君だけじゃない……点を取ってくれたボッシ君、チャンスを何度も作ったジョルジュ君とフェレーリ君。
     守備で何度もピンチを未然に防いでくれたブラボー君、ドゴール君、ルスト君、ベルジェル君!
     ここにはいないナポレオン君も……昨日の試合で、勝利に貢献! 大量の得点差を、稼いでくれた!!
     何よりこいし……! 誰よりも、あなたがいてくれたから……! 私はもう一度立ち上がれた!!
     必ず勝ちましょう、皆さん! 私たちは……勝って! 勝って、決勝トーナメントに上がるのです!!)」

             共に目指した場所に、答えはきっとあるのだろう。
               走り続ける先に未来を見つめている。

さとり「甘いですよ、星熊勇儀!! いつまでも弱点を放置すると思っていましたか!?
    今の私は、ペナルティエリア内のシュートを、必ず………」
勇儀「なにィ!?」

ギュバッ!! バゴッ……ギュギュギュギュギュギュギュギュギュギュ……ギュン……ピタ

さとり「      と      め      ま      す      !      !      」

                    今 希望になれ!

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0ch BBS 2007-01-24