キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【行く者】キャプテンEDIT36【残る者】

1 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/05/27(日) 23:16:57 ID:0BVRL3PU
このスレはキャプテン森崎のスピンアウト作品に当たる、キャプテンEDITのスレです
森崎くんと同世代に生まれたサッカー少年・大前くん(オリキャラ)を操作し、彼を名選手に育てたり育てなかったりします
現在の目標は全国大会での南葛へのリベンジ&優勝!
読者の皆さんに引いて頂いたカードや、投票していただいた選択肢に従い、物語が展開します

前スレ
【復活の】キャプテンEDIT35【号砲】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1337176161/

〜前回までのあらすじ〜

終わってみれば、県大会準決勝を7−1の大差で圧勝した鳴紋中サッカー部。
しかし、完成にこぎつけた新戦術も神懸った突破で強引に破られかけるなど、不安を残す内容だった。
あと一戦。これを越えれば念願の全国大会。それに向けてチームの更なる強化を期する大前たち。
しかし、決勝の清栄戦では最悪の事態が発生! 昨年の因縁から鳴紋を疎む日向と、金成が結託。妨害工作を仕掛けて来たのだ!
チームの大半が体調不良に苦しみ、妨害を避けた輝林も負傷に追い込まれる中、
大前の奇跡のゴールと比良山の復讐の一撃が清栄を突き放す!
鳴紋中は、このまま全国出場を決めることが出来るのだろうか?

〜前スレの出来事(?)〜

早苗「まず私たちが脱却すべき常識とは、鳴紋中が主役であるという認識だと思うのですよ!」
神奈子「いや、その理屈はおかしい」
菱野「どぉせ私なんか……」
やす子「駄目ー! そんなところまで大前くんに引き摺られちゃ駄目ーっ!」
金成「ラフプレイで怪我させると思ったか? 下剤だよ!(まさに金成)」
ポスト神「 ま た 会 っ た ね ☆」
大前「ちくしょー!」
ダイヤK「不甲斐ない本体に代わり、神☆降臨っ!」
比良山「ゴール決めたけど、そんなことよりお腹痛い」

729 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:02:28 ID:???
なんでドイツが有力なんでしたっけ?
若林で簡単に無失点記録つくれる雑魚チームしかないなら正直歯ごたえがなさそうだけど

730 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:06:05 ID:???
>>727
プレミアは90年代からだから時期的に無理。80年代のイングランドサッカーはもっとイヤ

731 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:06:58 ID:???
>>730
そうだったな
この時期はイタリア全盛期だったっけ

732 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:11:41 ID:???
>>729
単純にシュナイダーの後釜で入れそうなことと、ジャパンカップ出場ほぼ確定してるから。
もっと突き詰めるなら若林というリーグ内実績だけは最高峰の相手がいるから
カウンターウイングで支援する際に相手側に日本人でも素直に交渉させやすいからとかか?

733 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:14:32 ID:???
世界編になったらどの国に行くことになっても目先の目標はトップ(1部)チームに上ってプロになることになるかな。
もちろんジャパンカップ前に。

734 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:20:10 ID:???
トップに早期昇格目指すならイタリアがいいね、丁度全盛だし
超人気のはずなのに全然対戦してるスレがないからこそ、ここでミランと戦ってみたい
何度かは負けるかもしれないけど、だからこそ勝負したい

何処の国行ったとしても、自由度の高いこのスレだけでしか目指せないような
でっかい夢・目標を追いたいぜ

735 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:26:22 ID:???
とりあえずは最後の鳴門でのサッカーを最高の結末で終えたいな。
去年は点差はともかく中身は完敗に近いし、今年は完全勝利で終わりたいな。

736 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:27:19 ID:???
80年代ならブンデスが一番全盛だろ

737 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:29:46 ID:???
トップに上がって一番戦ってみたいチームは自分の中ではぶっちぎりでミランだけど
実際どの位強いんだろうなー

738 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:34:49 ID:???
プロになる理由?

プロにならないと最終巻で菱野さんと結婚できないじゃねえか!
もちろん森崎は呼ばな(ry

739 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:36:35 ID:???
なんという正直者w

740 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:48:19 ID:???
今回は難航してるようだな

741 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 00:52:00 ID:???
どうも、遅れ気味で申し訳ありません
5日、6日と連続で急に仕事が入ったものでして、投下分の執筆がなかなか進んでおりません(汗)
明日には何とか間に合わせる予定ですので、もう少々お待ち下さいませ
度々投下の予定が伸びてしまい、本当にすみませんでした

742 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 00:52:43 ID:???
リアル大事に乙です

743 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:35:33 ID:???
お待たせしました。とりあえず出来あがった部分だけ選択肢をこさえて投下です

>>飯地の車で大前(と菱野)だけ連れて偵察とか行けないの?
無理です。大前は飯地監督の運転する車には乗りません
金輪際乗りません。一年目の合宿の時点で懲りていますのでw

>>WY編で所属するチームは?
先に言っておきますと、HSVはないです
他の選手が強過ぎて、ヌルゲー化が今と大差ないかそれ以上の状態になりそうですので
……人間関係では滅茶苦茶苦労しそうですが(笑)


それと南葛対大友戦なのに次藤たちが偵察していない不備がありますが、
彼らは全国に備えて特訓中だとでもお考えください
……決して書いた後に出番がないことに気付いて、なのに修正できなかったわけではないですよ?
ホントウデスヨ?

744 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:36:36 ID:???
〜数日後・鳴紋中サッカー部部室〜

県予選を突破し、無事に全国大会出場を決めた鳴紋中サッカー部。
試合前の妨害による体調悪化からも回復し、全国に備えての厳しい練習に励む毎日が続いていた。
だが、この日に限っては――

TV「(ブゥゥンッ……)――ん国のサッカーファンの皆さん、お待たせいたしました!
来月に迫る中学サッカー全国大会、本戦に先駆けて注目の強豪校の予選の模様をお届けしております!」

落田「おーいっ! みんな、早く早くっ! もう番組始まっているぞーっ!」

いち早く部室に駆けこんだ落田が、リモコンでテレビの電源を付けつつ他の部員を呼ぶ。
呆れ顔を見せつつも、やがてぞろぞろと部室に集まってくる選手たち。

国岡「……ったく、練習切り上げる口実になるからって、張り切り過ぎだぜこの馬鹿は」

渡会「いーんじゃねえの? お陰でうっかり見逃した、なんてことにならなくて」

本多「まあ、その場合はあらかじめ録画しておけば問題無いだろう。監督ならビデオデッキも持っているらしいしな」

745 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:37:55 ID:???
雪村「でもこの前、監督に『ダイヤグラム・サッカー』の録画頼んだら、間違って他局の深夜番組撮ってきてたよね」

大前「ああ、あの時には部室が凍りついたよな……」

菱野「……ええ。凄かったですわ」

やす子「こらこら! 関係の無いこと言わないの! それより、折角貴重な練習時間を割いてるんだから、ちゃんと視る!
全国での最大の敵、その真価の一端が見れる大事な試合なんだからね!」

末松「は〜い……」

飯地に注意を促されて、改めて画面に目を向ける。
そこでは全国47都道府県、最大の注目を集めるチームの試合が始まろうとしていた。

TV「本日お届けするのは、静岡県代表を決める県大会の決勝……南葛中と大友中の一戦です!」


  … … …


実況「さァ、両校選手の入場で、場内は俄然盛り上がります!!
果たしてサッカー王国、静岡を制するのは常勝・南葛か? それとも新鋭・大友か?」

南葛応援団「頑張れ南葛! 今年も全国大会に行くぞーっ!」

大友応援団「今年の静岡一は大友中だ─っ!!!」

746 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:38:55 ID:???
実況「この試合の話題のひとつに両校の決勝進出の原動力となった両チームの選手、
南葛の守備の要・森崎くん、大友中の攻撃の要・新田くんが共に同じサッカー少年団・南葛SC出身という事が挙げられています。
御存知の通り、森崎くんは第6回全日本少年サッカー大会優勝時の正GK。また、新田くんも第7回優勝時のキャプテンでもあるのです」

水守(TV観戦中)「あれ? 珍しく大空さんの名前を挙げてませんね」

浅村(TV観戦中)「そこはほら、アレっスよ。去年の全国MVPは森崎さんっスし、今年はキャプテンにもなったそうっスから」

実況「その上、第6回の優勝時のチームメイト、レギュラーのほとんどが南葛中・大友中の三年生に所属し、
ここに敵同士戦う事になったのです! いわば因縁の対決でもある、この試合!」

大前(TV観戦中)「中山たちのこと、か。俺たちとの練習試合で、対南葛用の戦法を何度か試していたようだけど」

達也(TV観戦中)「試合じゃ俺らが圧倒したけどな」

宇津木(TV観戦中)「おいィ? そういうお前は浦辺に遊ばれていた時間が大半だったのではないか?」

菱野(TV観戦中)「さて、どうでしょうか。中山選手や新田選手も潜在能力は高いと思いますし、あの試合から更に上積みを得た、
ということも考えられます。もしも南葛が王者の座に驕って注意を疎かにすれば――」

やす子(TV観戦中)「――案外、大友中も食い下がっていく事態になるかもしれないわね」

と評する飯地。

大前(TV観戦中)(中山のことを買っている監督も、番狂わせがあるとは言えないのか……)

一昨年、そして鳴紋を破った昨年と、南葛は勝つごとにその強さを確実に増している。
片桐の入れ知恵によって、翼と森崎を中心に実力を向上させた三年生世代。それが中核となった今年は、
スタメンに限れば全国一の層の厚さを誇る。
中学に入ってから全国区の戦いをほとんど経験していない大友中は、この点が苦しい。
それをどう補ってくるかが、この試合の分かれ目であろう。

747 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:40:02 ID:???
大前(TV観戦中)「何にせよ、一瞬たりとも見逃せないカードだな……」

丁度そこで、カメラはゴールマウスに着く森崎の姿を映す。

森崎(へへ……楽しみだぜ、中山。あえて俺たちと袂を分かったお前が、どうやって俺を倒す気か?
どんな手でも使って、掛かって来やがれ! 今の俺の力、存分に見せつけてやるよ!)

中山(練習試合での大敗で俺たちは全国トップクラスとの差を知り、また一から鍛え直してきた……。
軽々にお前たちを挑発したりせず、大会でも手札は見せずに勝ち進んできたんだ! その全てをぶつけて、森崎……お前に勝つ!)

翼(くっ、この試合ディフェンシブハーフとして中山のマーク、だって? 森崎め、俺に出番を回さないように姑息な手を!)

新田(あの野郎にやられた傷も癒え、未完成だったノートラップでのボレーも間に合わせた!
今日は完璧に森崎のヤツをぶち抜いて、俺こそが日本一のストライカーだって証明してやる!)

両チーム選手、そして試合を見守る無数に人間の、様々な思惑がからむ中、

実況「さァ、先攻の大友中! 浦辺くんから、中山くんへ軽くパスを出し試合開始です!!」

試合が、始まった。

748 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:41:06 ID:???
実況「まずはMF出場の中山くんが、足元にボールを収めます。この大会、彼がチームの司令塔として試合を動かしてきました!
だが、中山くんの好きにはさせじと南葛も早速動いたーっ!」

翼「行くぞ、中山っ!(まずは作戦に従っておく! 見せ場を得るのは、その後だ!)」

実況「南葛の司令塔である翼くん、自らが中山くんのマークに行った! 最大の戦力で完全に大友の攻守の紐帯を断ちに行く!
第二のゲームメイカーである井沢くんを擁するなど、選手層の厚い南葛ならではの贅沢な戦術だーっ!」

井沢「誰が第二だ、誰が!」

中山「翼、か(試合をしていればいずれぶつかる。だが、今はその時ではない!)」

向かってくる翼が自身を射程に捉える前、中山は冷静にサイドにパスを出す。

翼「……っ!?」

実況「おっと、ここは中山くん、無理をせずにサイドにボールをはたいた! ここを上がって来たのは新田……いや、浦辺くん!」

浦辺「エースの新田とゲームメイカー中山に注意を払っていたのだろうが……油断めさるな南葛さん! 大友のキャプテンは、この浦辺よ!」

大前(TV観戦中)「流石は中山、地味だが堅実で隙の無いゲームメイクだ」

翼は中山、井沢と岩見は新田を警戒し、浦辺はほとんどフリーの状態でパスを受けた。
行けるのは、DFたちだけである。

古尾谷監督「うっ……浦辺は、ここまでの試合、一度も積極的に攻め込んだりはしなかったのに……?
やはり大友は決勝に備えて、戦力を温存していたのかっ!?」

749 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:42:12 ID:???
井沢「しまった! 新田へのコースを警戒していたのが、裏目った!」

岩見「落ち付け、井沢! DFのみんななら、止められる!」

浦辺「頼むぜ、デコー。この前の試合みたいに、途中で睡眠状態に入るとかは勘弁だぜ?」

デコー「だからそれは君のエネルギーの問題だと……まあ、その前に勝負を決めれる様に心がけたまえ」

何やらブツブツと呟きつつも、ボールはしっかりとキープして南葛陣内を攻め上がる浦辺。
それに対し、森崎の対応は迅速だった。

森崎「うろたえるな、こんな事は想定範囲の事態だ! 中里は新田をマーク! それ以外は全員、浦辺を潰しにかかれ!!」

石崎・高杉・小田「「お……おうっ!」」

実況「キャプテン森崎くんの号令一下、南葛のディフェンス陣が浦辺くんに襲い掛かるぅ!
流石は全国に名を馳せたDFたち、攻める様に守っていくぞ!」

雪村(TV観戦中)「でも、南葛のディフェンス陣って――」

比良山(TV観戦中)「――ああ、対人よりもゴール前の守備の方が得手だったはず」

達也(TV観戦中)「となると、浦辺のアレが出るか……?」

カメラは、押し寄せる南葛守備陣を前に、浦辺がニヤリと笑った瞬間を捉えた。
スピードをそのままに姿勢を落とし、まるで四足獣の体当たりの様に浦辺が走る。

浦辺「甘いなァ! コイツを喰らえ! アルマジロドリブルだーっ!」

750 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:43:46 ID:???
石崎「なにィ!? ……ぎゃあ!?」

高杉「ぐへぇ!?」

小田「うわぁああああああぁぁぁっっ!!」

ボーリングのピンの様に弾かれ、宙を舞う南葛守備陣。

実況「石崎くんたちが吹っ飛んだァ!? 浦辺くん、凄まじい突破力だ! この決勝まで見せなかったド派手なプレイ!
これは強烈な奇襲攻撃です! 大友中、ストライカーに全てを託した堅守のチームかと思いきや、意外な攻めを見せます!」

やす子(TV観戦中)「突破力が更に上がってる!? 大前くんに怪我させられたあとなのに、よくもまあ鍛えたものねー(ウズウズ)」

森崎「なにィ!? 中山だけでなく、浦辺までここまでの実力を身につけていただとォ!?」

浦辺「驚いて頂けたようで、嬉しいね! ついでに先取点も貰って行くぜェ!」

そしてシュートレンジに入るや否や、浦辺のミドルシュートが火を噴った。
強烈なスピンが掛かったボールは低空を進みながらゴールへと向かう。
誰かがこの模様を観戦していたら「俺の技だ!」と叫びそうであるが、生憎彼は試合中の模様。

渡会(TV観戦中)「お? あのシュートをいきなり使うか!」

輝林(TV観戦中)「……これにどう対応するかで、森崎の真価が垣間見えますね」

中里「いかん! フリーで撃たせてしまったでゴザルよ! 森崎ィ!」

森崎「へっ! 案ずるなよ中里! この程度のシュート、パンチングで軽〜く――なにィ?!」

余裕の構えの森崎の眼前、ボールは僅かにホップし跳ね上がる。
強いバックスピンが掛かっていた影響である。並のキーパーなら、これに惑わされてあらぬところに手を伸ばす場面だが、

751 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:44:52 ID:???
森崎「――って、一応驚いて見せたが、これで満足かァ!?」

浦辺「なにィ!?」

森崎は、すぐさま動揺を収めると鋭いパンチングを見舞、ボールを完全に弾き返した。

実況「防いだァ! 森崎くん、独特のホップ軌道で目を眩ます浦辺くんのシュートを、パンチングで呆気なくセービングぅ!
やはり彼の守るゴールは堅いぞ! 流石は全国V2チームのキャプテンにして正GKだァ!」

南葛応援団「うおおおおおおおっ!」「流石は森崎だ! なんともないぜ!」「もっりさきっ! もっりさきっ!」

森崎「必殺技っぽかったから一応パンチしたが、キャッチでも良かったかもなァ?」

中山(……やはり簡単にはいかんな)

浦辺「グギギ、俺のブラックカイトをいとも簡単にだと!? だがっ! これで終わりじゃないぜ! ――中尾!」

中尾「おうっ!」

森崎が弾いたボールは、南葛陣内を転がっていたところを大友のFWがフォローする。
先んじて浦辺が南葛守備陣を引き付け、ドリブルで吹き飛ばしていた為、拾いに行けなかったのだ。

実況「しかし! ここは大友中が攻撃を続行! エース新田くんと要の中山くんを押さえた南葛ですが、その為か他は手薄!
フリーになった他の選手が波状攻撃を続けます!」

中里(とはいえ、中山と新田の二枚看板を封じられた状態で、どう森崎を攻略するつもりでゴザルか?
拙者がこうしてマークしている以上、新田にボールは渡さんでゴザルよ)

新田「コイツ、足が速い!? 俺がマークを振り切れないなんて!(早過ぎるが、使うしかないか……)」

なかなか中里を振り切れないことに業を煮やした新田が、中尾にサインを送る。

752 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:46:13 ID:???
中尾「(『いつもより前に出せ』、か。少し早いが、そうだな……この分だと岸田さんのヘッドじゃ頼りないし)……オーケーっ!」

実況「大友中、ゴール前のスペースに入れて来たっ! これは新田くんにノートラップでダイレクトに決めさせる気か!?
しかし、そのプレイは二年生にとって難易度が高過ぎるぞーっ!」

新田「パスを受けていたら、間に合わないんだ! でりゃ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

中里「おおうっ!?(重りがあるとはいえ、拙者を振り切りに来た!? しかし――)」

切り返しで僅かに中里を突き放し、ボールを捉えに行く新田。だが、中里も然したるもの。すかさず追走してクリアーに行く。

森崎「おいおい、続けざまに攻め込まれ過ぎだろうが。しょうがねえ、ここは一旦キャッチしてこっちボールにするか!」

新田「(その余裕の面、すぐに凍りつかせてやるぜ!)ノートラップ・ランニングボレェエエエエ――ッ」

中里「く、クリアーっ!」

新田「――隼シュートだァ!!」

比良山(TV観戦中)「ほうっ! あの必殺シュートをボレーでか!」

猛烈な勢いで走り込み、それを殺さないまま全身のバネを活かしてボレーシュート。
追いすがった中里が僅かに触れたものの、ボールは猛スピードで南葛ゴールに飛来する。
だが、

大前(TV観戦中)「……けど、駄目だ」

森崎「(うおっ!? キャッチはキツイか!?)へっ! ちょっとはやるなァ!」

鋭く反応した森崎が、真正面でボールを掴みに行く。全力のセービングではない為、流石に球威を殺しきることは出来なかったが、
掌と手首を柔らかく使って軌道をそらし、ゴールポストに逃れる。

753 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:47:16 ID:???
実況「――が、駄目っ! 森崎くん、キャッチこそ敵いませんでしたが巧みに捌いてゴールを守る!
大友中、立て続けに大技を放ちますが先取点はならずっ!」

新田「くっ、惜しい! ポストだったか……」

初めて実戦でお披露目した新技が決まらなかったことに、苛立たしげに芝を叩く新田。
その様子を、憐憫の色を込めて中里がちらりと見る。

中里(ポスト『だった』のではなく『された』のでゴザルよ……認めるには、まだ若過ぎるか)

中山(本気を出すまでも無く、浦辺と新田の必殺技を立て続けに、か! 腕を上げたな! ……不謹慎だが、嬉しいぞ!)

翼(中山、早く動いて! お前からボール取ったら、ゴールまでそのまま行くから!)

センター付近でその様子を眺めていた中山が、ゴクリと生唾を飲む。
テレビ画面の前の鳴紋中選手たちも、今の好セーブ劇には度肝を抜かれた。

輝林(TV観戦中)「新田くんの新技に、辛うじてとはいえ通常のキャッチのみで対応、ですか……」

渡会(TV観戦中)「憎々しいくらいに堅ェ……(俺だったら、早々にアサルトキャッチを出す羽目になってたぞ)」

末松(TV観戦中)「折角、ブロックに強いCBをひっぺがえしたチャンスだったのにな〜」

菱野(TV観戦中)「今の反応から必殺のセーブを出した際のセーブ力を算出しますと――(これは、イケますか?)」

比良山(TV観戦中)「これは大友中も、運良く取れても1点ということか。だが――」

大前(TV観戦中)「――ああ(森崎も強くなっているが、去年ほどの絶対的な差は感じない。お前もそう感じたか、比良山?)」

一方、試合の模様は――、

754 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:48:23 ID:???
小田「ナイッセーっ! 森崎! ……それっ!」

実況「こぼれ球は先程の接触から立ち直った小田くんがクリアーします。さあ、ここから南葛中の反撃です!」

小田が大きく前線に蹴り出したボールを、井沢がフォローする。

井沢「ナイスパス、小田!(翼は中山のマーク、翼は中山のマーク、翼は中山のマーク! つまり! この試合のゲームメイクは俺だァ!)」

実況「ボールを持ったのはもう一人の司令塔、井沢くん! 翼くんを守備に割いた今、彼が南葛の攻撃を組み立てます!」

井沢「試合が終わるころには……『もう一人の』なんて余計な肩書、降ろしてやるよ!」

岸田「させるか、井沢ァ! お前のやり口は小学校時代に、敵味方両方の視点でしっかりと――」

すかさず井沢から奪いにチェックに行った岸田。だが、井沢はそれを一顧だにせず、

井沢「……ん? 何か言ったか?」

ターン一つで、呆気なく置き去りにした。

岸田「――なにィ!?(しっかりと、把握したはずなのに!)」

実況「井沢くん、軽やかなステップで岸田くんを突き放したァ! 流石は小学生時代からの全国区プレイヤー!
『風のジャンパー』の異名を持つに相応しい、スピーディな突破です!」

755 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:49:26 ID:???
雪村(TV観戦中)「やるねえ、彼も。去年は長池さんに完全に押さえられていたけど……」

宇津木(TV観戦中)「だが、その経験が試合賢者の第一ぴを踏み出すリアルの苦しみの味。それを理解している雪村さんは格が違った」

達也(TV観戦中)「確かにかなり凄い突破力だけど……『風のジャンパー』?」

女性観客「きゃー♪ 井沢くん、かっこいー♪」「がんばってーっ♪」「いっざわくんっ♪ いっざわくんっ♪」

ボールを持って軽快に突き進む井沢の姿に、観客席からも黄色い声が飛ぶ。
だが、当の本人はそれを雑音と切って捨て、厳しい眼差しで相手ゴールを見据える。

井沢「……静かにしてくれっ、集中が乱れる! 俺は、この(翼がいない)隙に決めなきゃならないんだァ!」

……女の色香には惑わされなくても、それ以上の雑念には支配はされていたが。

実況「井沢くん、エリアギリギリのところでシュートの構え! 今度は南葛が先程のお返しにゴールを狙うっ!」

西尾「井沢のミドルシュート!? なら、多分――」

一条「――分かってます! バナナシュートですね!」

井沢「読まれてる!? ……だがっ!」

相手の備えを承知で、ミドルレンジからのバナナシュートに行く。
翼への対抗心が、井沢にミドルシュートでの得点という拘りを植えつけていたのだ。
並のゴールキーパーならば、それでも問題無くゴールを上げられただろうが、

一条「……甘く見るなァ!」

井沢「なにィ!?」

大友中キーパー・一条は、鋭く反応してこれをパンチングする。

756 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:50:33 ID:???
実況「一条くん、防いだ! 彼もまた新田くんと共に南葛SC二連覇に貢献した守護神、やはりそこいらのキーパーとはモノが違う!」

一条「へへへ……この前の誰かさんと比べたら、同じ曲がるシュートでも雲泥の差だぜ!」

西尾「ナイスセーブ、一条!」

園村(TV観戦中)「うわ、今のバナナシュートに良く反応出来たなァ(俺だったら無理……ていうか、同い年なのに差がデカくね?)」

水守(TV観戦中)「彼もこの前の試合から腕を上げたみたいですね(とはいえ、比良山さんもあれから異常にシュート力が……)」

ボールは大友のDF平岡がフォローし、前線へクリアー。
前半数分で、試合は早くもカウンターの応酬の様相を呈していた。

大前(TV観戦中)「南葛の大空、大友の中山と、両チームともに司令塔を封じ合いながら試合が進んでいるな。
普通だったら、お互いに抱えている第二のキーマンとも言うべき井沢や浦辺たちの出来で、展開が変わるところ何だけど――」

菱野(TV観戦中)「――南葛には、ちょっと普通とは言いかねる方がお一人いますしね」

そう言った矢先だった。

中尾「よし、俺がフォローしたぞ! 新田、先に上がって今度こそ――」

新田「な、中尾さん! そっちに行ったぞーっ!」

中尾「――えっ?」

ボールを持った中尾が前を向いた瞬間、

757 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:51:48 ID:???
森崎「いつまでもチンタラとやっているんじゃねェ!」

中尾「うわああっ!?」

ゴール前を飛び出した森崎が、タックルでボールを奪う。

実況「なんと! 森崎くん、早くも自らが動いた! ゴールを離れてタックルでボールを奪います!
そして十八番のオーバーラップ開始ィ!」

翼「なにィ!? も、森崎め、いきなり過ぎるだろっ!」

森崎(ふっ、中山ほどの相手ならば翼は密着してマークに専念せざるを得ない。つまり、俺が活躍する好機だ!
向こうの一条も悪いキーパーじゃないが、この俺ほどの硬さじゃねえ。ウチの攻撃力をそう何度も跳ね返せはしない!
つまり――オーバーラップから俺が点を取ってもよし、アシストしてチームメイトに恩を売るもよしだァ!)

中山(想定よりも早く動いてきたな、森崎……だが、好都合だ!)

やす子(TV観戦中)「噂をすればなんとやらね、菱野ちゃん」

達也(TV観戦中)「話にゃ聞いてたけど、やっぱ信じられねえ……序盤も序盤から、どうしてこんな博打を打つ気になるんだ!?」

渡会(TV観戦中)「目立ちたいから、じゃね?」

テレビを通して見ている鳴紋の面々も驚いたが、実際に試合会場にいるものたちは更に驚いた。
観客席では南葛応援団の面々が、泡を喰って叫び始める。

南葛応援団「も、森崎!? 早いよ! 早過ぎるよ!」「まだそんなに焦って出る時間帯じゃないだろー!?」

758 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:52:56 ID:???
高杉「ま、また危険なスタンドプレイしやがって、この野郎ーっ!」

滝「翼が中山と押さえ合っている今がチャンス、とか思ってるのかなー」

岩見「だとしても、もう少し俺たちにやらせてくれてからでも良かっただろうに」

石崎「きったねーぞ、森崎ィ!」

井沢「な、なんだっていい! もう一度俺に持ってこい、森崎!(翼が動けないのがチャンスなのは、俺も同じだ!)」

岸田(お、南葛の連中も予想より早いオーバーラップに驚いてるな?)

西尾(ということは――)

浦辺(ここで森崎から奪えればデカい。……イケるか?)

中山(無論だ。そろそろ試合から消えているのにも飽きていた頃さ)

味方にも動揺を強いる森崎のオーバーラップ。それに場内が混乱する中で、大友カルテットは冷静にアイコンタクトを交わす。
次の瞬間、

中山「……隙ありっ!」

翼「えっ!?」

動揺を突いて、中山が翼を引き離して森崎へと向かう。

実況「おっと、ここで動くのは中山くん! これまで翼くんに着かれて沈黙していた彼が、マークを振り切って森崎くんへと向かうぞ!」

759 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:53:58 ID:???
森崎「へぇ? お前自らが来てくれるかよ? ……面白ェ!」

かつては最も頼りとしたチームメイトだった男とのマッチアップ。
そのシチュエーションに、森崎の中で常の功名心とは別の何かに火が着いた。
この時ばかりは、打算に満ち溢れていた彼の内心も、原始的な闘争本能に支配される。……それが中山の付け目だった。

中山(俺との対決に燃えてくれるか、森崎? 嬉しいことだ。だが――)

一方の中山はそれに流されず、猛然と森崎に向かうふりをして密かに速度を調整。忍びよる仲間たちと呼吸を合わせる。

中山「――真っ向勝負は、またの機会だ! 今は確実にお前から奪う!」

森崎「っ!? なにィ!」

正面から中山がタックルを仕掛けてくる。同時に、側面から浦辺と岸田が迫り、西尾がバックパスを遮断する位置へ。

浦辺「お前と翼対策の大友カルテット四人がかりだ!」

岸田「ちょいとリスキーだが、ここでお前から奪って先制するぜ!」

西尾(スナイパーへ合図は……まだ早いか)

実況「い、いつの間に!? 大友中、四人がかりで森崎くんを囲む! CBの西尾くんまで上げての包囲網だ!
大友中、一か八かの賭けに来たか!?」

森崎「(中山に挑まれたら応じるだろうって、最初から読んでいたのか!?)ちっ、あこぎな真似をしやがって!」

浦辺「へっ、王者を気取るんだったら、あこぎな手の一つや二つ、跳ね返してみやがれっ!」

中山「そういうわけだ、悪いが頂くぞォ!」

760 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:55:05 ID:???
雪村(TV観戦中)「出た! 大友中の連携ディフェンス!」

比良山(TV観戦中)「一度は大前が破ったが、森崎に通じるか……?」

大前(TV観戦中)「中山も、あの練習試合以来ブランクを埋めようと必死だったはずだ。もしかしたら――」

固唾を飲んでこの攻防を見る者たちの前で、森崎は奮闘していた。
四人がかりで包囲された狭いスペースの中、あらん限りのフェイントを尽くして打開を試みる。

森崎(まずはタイミングをずらして、包囲に隙を作る!)

浦辺「し、シザースフェイント!?」

岸田「しまっ、ぎゃ、逆か!?」

森崎(次に、後ろでちょこまかする野郎を料理して、本命を相手取れる余地を作って――)

西尾「な、なんで後ろ向きに突っ込んでくるー!?(やばっ、バックチャージにならないようにしないと!)」

森崎「でもって、最後ォ! お前を抜いて終わりだ、中山ァーっ!」

中山「……させんっ!」

神がかったフェイントの応酬で大友カルテットのほとんどを攻略する森崎だったが、最後に立ちはだかった相手はそうもいかなかった。
横をすり抜けんとする森崎の足元を、中山の左足が微かに捉える。

761 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:56:06 ID:???
――バチィ!

森崎「ぬお……っ!?」

中山「ぐゥ……っ!?」

そしてボールはこぼされた。

実況「な、なんという攻防! 森崎くん、あわや四人抜きというところでボールをこぼされた!
GK離れした凄まじいドリブルテクニックです! しかし、この勝負は大友中の勝ちだ!
彼らは森崎くんを止めさえすれば、それでいい! 南葛ゴールはがら空きという無防備状態を晒しているぞォ!」

墨田(TV観戦中)「と、止めたァ!? あの、森崎の常識離れしたドリブルを!?」

若尾(TV観戦中)「お、大友中の大チャンスだぜ!?」

南葛応援団「ぎゃーっ!?」「や、やっちまいやがったァ!?」「だから! オーバーラップするなら状況読めよーっ!?」

大友応援団「チャンス! 千載一遇のチャンスだ!」「誰でもいいから、拾ってシュートしろォ!」「先取点、貰ったーっ!」

悲喜交々の声が上がる会場。喧騒に包まれた中、運命のボールを拾ったのは、

只見「な、ナイスディフェンス!」

大友中の只見だった。

実況「こぼれ球を押さえたのは大友中! 空っぽのゴールにボールを叩きこめば、それで彼らの先取点です! しかァし――!」

762 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:57:06 ID:???
翼「……中山が離れたってことは! 俺が動けるということでもあるんだぞ!」

実況「――今度はこの人が動いた! 翼くんが只見くんに猛然と突っ込む!」

浦辺・森崎「「げぇーっ!?(折角のチャンスがっ!?)(俺のミスをコイツにカバーされたら、良い恥さらしじゃねーか!)」」

只見からボールを奪い返そうと、水を得た魚の様に生き生きと突っ走る翼。
その姿に奮闘を無にされかかっている浦辺と、彼の活躍を望まない森崎が悲鳴を上げる。
しかし、この男はあくまで冷静だった。

中山「……多少雑でも構わん! 放り込めっ!」

只見「わ、分かった!」

中山の喝が飛ぶや否や、翼に着かれる前にボールを蹴り込む。
只見の蹴ったボールは万全とは言い難い体勢だった為か、山なりのハイボール。
前で待つ新田にとっては、不得意な形である。

新田「……このっ! 決まれっ!」

それでも新田は、強引にヘディングで決めに行く。

高杉「舐めるなよチビ助! にわか仕込みの空中戦で、俺に勝てるかっ!」

新田「ぐあ……っ!?(や、やっぱりヘディングじゃ無理か!?)」

実況「高杉くん、頭突きする様な強烈なクリアー! しかし、まだ少し短い! 大友中にまた拾われるぞーっ!?」

中山「……十分だ、新田っ! 貰ったぞっ!」

高杉のクリアーを受けてエリア外ギリギリにこぼれたところを、体勢を立て直した中山がねじこみにいく。

763 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:58:44 ID:???
森崎「ちくしょー! 誰か防ぎやがれェ! 俺ももう少しで戻るっ!」

石崎「うるせー! てめェに言われなくたって――げぺぇ!?」

そして石崎の顔面ブロック。中山渾身のシュートは、儚くも防がれて大きく弾かれる。

実況「南葛、これも防いだ! 好機に攻め込んだ大友中の波状攻撃を、幾重もの盾が立て続けにシャットアウト!
森崎くん以外の守りも堅いぞォ!」

輝林(TV観戦中)「……流石は高杉さん、去年はしてやられたものですが」

国岡(TV観戦中)「ハッ! そういやあの細目には苦戦してたっけなァ? 今年は大丈夫なのかねェ?」

大前(TV観戦中)「……言われるまでも無いさ」

末松(TV観戦中)「石崎も堅いな〜。ブロックだけなら輝林並かも〜。さ〜て、これで大友の攻撃は終わりかな〜」

菱野(TV観戦中)「いえ、まだですわ」

石崎のブロックで弾かれたボールは中盤に転がり岩見がフォロー。

岩見「ウチともあろうチームが、撃たれっぱなしじゃないか。そろそろ反撃――」

浦辺「させるかよ馬鹿がァ!」

岩見「――うわァ!?」

しかし、浦辺の強烈なタックルがすぐさま奪い返す。

実況「大友中、食い下がる! 南葛陣内で奪い返し、またボールを持った!
なんとしても先取点は譲れないとでも言う様な、気迫のプレイです! ギアをフルに上げて、まだまだ攻撃を続ける気だァ!」

764 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 19:59:54 ID:???
翼「だが、そうはさせないぞ! 石崎くんたちが気迫で守ったんだ! 俺が奪い返す!(それにこのままだと試合から消えてしまう!)」

浦辺「……中山が前に出たとなると、お前が動きまわるよなあ翼。だがよォ!」

只見の時に続いて、素早くプレスを掛ける翼に対し、浦辺は、

浦辺「わざわざ、お前を相手に真っ向勝負なんてしないぜ!」

すぐさまボールを横に流す。

西尾「よしきた!」

実況「翼くん、徹底して相手に避けられています! 彼も中学サッカー界でも最高峰とも呼ばれる名手、それも当然でしょう!
しかし、だからこそここは味方の援護が欲しいところです!」

井沢「ちっ……何してる翼ーっ!? 守備に専念するならするで、前にボールを渡せるよう仕事しろォ!?」

本多(TV観戦中)「(仕事だと!?)本来なら井沢が大空の援護に回って仕事をするべき場面なんだがなァ」

雪村(TV観戦中)「彼も修哲小時代は攻撃的MFだったからね。大空がディフェンシブハーフ起用の今回は、攻めに専念したがっている」

宇津木(TV観戦中)「メインMFを助けようともしない浅はかさは愚かしい。
そももも攻めに回ってミドルシュート失敗している時点で攻撃に専念とかいう言い訳は説得力が決壊している。
その点、ひ必要とあらばA+といったところのタックルやパスカットで守備もできる雪村さんは格が違った」

大前(TV観戦中)「それはそうだが……それよりも『あの』西尾が南葛陣内でボールを持ったぞ」

菱野(TV観戦中)「そして中山、新田両選手がゴール近くですわ! これは、出ますわよ!」

大友カルテットによる連携タックルには、副次的効果がある。
それは、本来大友ゴール前に陣取っているべき西尾が、前線に進出すること。
ただそれだけならば守備が薄くなるデメリットであるが、大友中にはこれをメリットに昇華させる秘策があった。

765 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 20:01:28 ID:???
西尾「(こんなに早く使うことになるとは、誤算だったぜ!)うおりゃあああああっ!」

気合一声、西尾が大きく足を振り上げる。

実況「大友中西尾くん、早くもシュート体勢! ゴールまでは35メートルといったところか!
センターバックである彼に、この距離から南葛ゴールを奪う手立てがあるというのでしょうか!?」

森崎「へっ! もう俺がゴールマウスに戻っているっていうのに、無謀なロングシュートかァ?」

高杉「(グフフ、森崎まで出番は回さん!)そんなもの、この俺が止めてやるっ!」

石崎「来やがれっ! また跳ね返してやるぜっ!」

中里「(あの目、仔細は分からぬが何かを狙っているでゴザるな)小田! 拙……俺たちも飛ぶぞ! 嫌な予感がするでゴザる!」

小田「分かっ……ゴザる!?」

南葛守備陣の反応は大きく分けて二つ。西尾のロングシュートを見縊ってかかるか、何かあると見て警戒するか。
だが、どちらに転んでも大友中の思う壺だった。
西尾を甘く見て備えが甘くなれば、それはそれでよし。そして西尾に気を取られれば取られるほど、このシュートは防ぎにくくなる。

西尾「(しめたっ!)行けェ!!」

実況「そして、西尾くんがシュートォ!!
しかし、確かに西尾くんはノーマークでしたが、やはり少し距離があり過ぎるのでは……!?」

766 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 20:02:34 ID:???
森崎「浦辺も新技を覚えていたからお前にも何かあるんだろうが……大したことなく見えるぜ! 軽くキャッチしてやらァ!」

高杉・石崎「「(誰がお前に回すかよ!)俺たちが止めるぞーっ!」」

中里「ふ、普通のシュート!? いや、きっと何かがある!」

小田(本当かなあ……)

中山「(甘く見過ぎたな、森崎! 中里とやらも良い勘だったが、惜しかったな!)ここだ! 新田ァ!」

新田「ええ! 分かってますって!」

合図を出すと同時に、中山が新田と共に宙へ身を躍らせた。

森崎「なにィ!? こ、この態勢は――」

新田「喰らえ、森崎ィ!」

西尾「これが俺たちの編み出した――」

中山「――3Nシュートだァ!!」

そして、西尾のシュートを更にツインシュートを見舞って加速させる。
ボールは元からの勢いに加えツインシュート特有の無数のブレが生じ、高速で分身したまま南葛ゴールへ飛来。

中里「こ、これは!?」

石崎「な、なんだこりゃあ!?」

高杉「何が起こっているんだ!?」

小田「へっ? えっ、えっ?」

767 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 20:03:49 ID:???
加速したシュートの勢いに、南葛のディフェンダーたちは完璧に置き去りにされた。
彼らの目には、中山と新田がジャンプした瞬間にボールが分身して速度を増したように見えただろう。
一方、森崎には猛烈なブレで捉え難くなったボールの内、本物の当たりを何とか付けることが出来たが、

森崎「(ゆ、油断した! 間に合わねェ!?)……うぉおおおおおおおおおおおおぉぉぉッッ!」

ツインシュート特有のブレ球から本物のボールを見出す為に生じる、大幅なロス。
その反応の遅れをカバーするには彼の全力でのセービング……がんばりセービング改の力が必要だった。
しかし所詮西尾のシュートと直前まで通常のキャッチに備えていた森崎に、必殺のセーブを繰り出す体勢を整える暇は無い。
なんとか本物のボールに飛びつくものの、

森崎「……くっそォ!!」

比良山(TV観戦中)「反応が遅れた!?」

大前(TV観戦中)「これは……決まったな」

寸でのところで手が届かず、ボールがゴールネットに突き刺さるのを見送る羽目となった。

――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィ!!


南葛中 0−1 大友中


768 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 20:04:58 ID:???
実況「え、あ、え? ……ご、ゴールっ! な、何ということでしょう! まさか県大会の時点で、南葛の鉄壁の牙城が崩れるとは!
大友中が先制! 大友中が先制! 大友中が先制ですっ! 西尾くんのシュートをツインシュートで更に加速!
超高速で南葛守備陣を切り裂き、無数のブレ球が森崎くんの手をすりぬけ、大友中に先制点をもたらしましたァ!!」

南葛応援団「嘘だろォ!?」「も、森崎が失点!? ちゃんとゴール前にいたのに!?」「や、やはり中山は見くびるべきじゃないんだ!」

長野「なにィ!?」

滝「も、森崎が止められなかったァ!?」

来生「ZZZ……あれ? 何の騒ぎだ?」

井沢「お前、寝てたのかよ来生ィ!? ボールが回って来ないからって緩み過ぎだろォ!?」

翼「……油断するからだよ、馬鹿」

昨年は全国大会でさえ、決勝でのアクシデントを除き全く失点しなかったはずの森崎。
それが前半の段階で相手にゴールを許したことに、南葛の選手たちの大半は驚き、翼は胸中の忌々しさを隠さずに冷たく吐き捨てた。
だが、最も驚き忌々しさを感じていたのは、他ならぬ森崎に違いなかった。

森崎「ぬぐぐぐ……こ、この俺の守護神伝説にこんな段階で傷を付けてくれやがって! やってくれるじゃないか、中山ァ!」

中山「ふっ……まずは一本、取らせて貰ったぞ森崎」

769 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 20:06:35 ID:???
実況「なお、VTRをスロー再生したところ、インパクトの瞬間、新田くんが僅かに遅れて蹴っていました!
この得点は新田くんのゴールと記録されます!」

新田「よっしゃあ! 俺が、この俺がっ! 森崎からゴールを奪ったぞォ!」

アナウンスの内容に、新田が拳を突き上げる。小躍りせんばかりの喜びようだった。

新田(見たか! 俺が元SCの正GKから、中学最強のGKから、ゴールを奪ったんだ!
結局森崎に通用していなかった大前のヤツや、翼さんの陰に隠れている様な南葛中の連中とは違う!
俺が、日本一のストライカーなんだよっ!)

中山(はしゃぎすぎだぞ新田。やれやれ。若さというのも善し悪し――)

新田の有頂天な様子に苦笑を閃かせかけた中山。
だが、次の瞬間には肌を粟立たせて硬直してしまう。

森崎「……ったくよぉ。どう取り返したもんだかなあ、この凡ミスは」

中山(――森、崎? なんというプレッシャーだ! 失点が、逆にこの男に火を着けてしまったか!?)

凄惨な笑みを湛えながら、ゴールに収まっていたボールを拾い上げる森崎の姿に、中山は慄然とした。
その姿から感じる気迫は、先程までの中山との勝負を楽しんでいた時より、余裕の風情でセービングを披露していた時より、
なお選手としての危機感を刺激させられる。

中山(俺としたことが、失念していたな。この森崎相手に、一点を取っただけで何を勝った気になっていたんだ?)

思えば、小学生時代の森崎に失点は付き物だった。特に明和FCとの一度目の対戦などは、惨憺たるものである。
だが、点を取られる度にそれ以上にやりかえし、雪辱を果たし続けてきたからこその南葛SCの日本一だったのではないか。
それを一番近くで見ていながら、不覚にも忘れていたという事実。その過去を思い出した中山は、改めて気を引き締める。

中山「……戻るぞ、新田」

770 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 20:07:45 ID:???
新田「へ? な、中山さん?」

中山「これからが本番だ。試合はまだ終わってはいないぞ」

緊張感も露わにそう言う中山に新田は、

新田「そうですね! 一点くらいじゃまだまだでした! これから、二点、三点ともっともっと取ってやりますよ!」

高らかにそう豪語するのであった。

森崎「――へぇ? 言ってくれるじゃねェか、ひよっ子が」

新田「な、なにィ!?」

森崎「良かったなァ、先輩に散々お膳立てされて、やっと点取れて。今の内に囀れるだけ囀っとけ。
お前が良い気分でいられる時間は、この試合中にはもう来ねえよ」

不敵に笑いながらそう言う森崎。彼の表情は、一回戦からここまで続けてきた無失点記録を破られた痛手は感じられない。
あるのは、これより先は決して得点を許さないという、巨大な自負。
流石に不遜な新田も、この態度には得体の知れない凄みを感じてしまう。

新田「つ、強がりも大概にしろよ!? 何と言おうとな、アンタは俺にやられたんだ! そんなに偉そうにしていられる余裕、
あるはずがないんだ!」

森崎「はっ! どっちが強がってるんだか! ……おらァ!」

鼻で笑って、ボールを大きく蹴り出す。

森崎「てめェら、見苦しくうろたえてるんじゃねえ! んな不安そうな顔しなくたって、こっから先は一点もやらんっ!
安心してさっさと逆転して来い! 俺が自ら攻め上がって世話焼かんでも、そんくらいは出来るだろうが!」

そしてこの大喝である。

771 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 20:08:56 ID:???
ボールを渡されたチームメイトも、最初はポカンとしていたが、

滝「そ、そうだな! 森崎に限って、そんなことが続く訳は無いんだし!」

井沢「ちっ! 失点しといて偉そうなのは気に入らないが、俺たちもそろそろ成果を上げないとな」

来生「ハッハァ! 心配ご無用! この俺がハットトリックでも決めて、あっさり逆転してやるぜ!」

翼「……そうだ! 俺たち南葛の全国V3への道は、たかが一失点で途切れやしない! みんな、自信を失うな!
たとえ森崎が何点取られようとも、俺たちがそれ以上に点を取れば問題無いんだ!」

森崎「おい翼この野郎、どさくさに紛れてなに失礼なこと言ってやがる!」

中里「失点の直後にこの気迫……この覇気こそが森崎の将器か」

小田「なんで中里って時々時代がかったセリフ言うの?」

石崎(けっ、失点しといて偉そうに……それはともかく、流石翼だぜ!)

高杉(どうせならオーバーラップ失敗の時の方が良かったんだがな。これじゃあ、森崎だけでなく俺の責任でもあるし……。
ともかく、翼には頑張って逆転して貰わなきゃな)

森崎の怒声と翼の気合に、南葛はたちまち息を吹き返す。
V3を目標に掲げる中学王者たちは、全国大会を前に早くも眠りから覚めようとしていた。

772 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/07(木) 20:10:28 ID:GUEVh98U
やす子(TV観戦中)「……大友中は伏せていた切り札を上手く使って先制に成功したわね」

菱野(TV観戦中)「とはいえ、南葛が油断しているという要素も大でしたが。
あの3Nシュート……でしたか。私達が対戦した時は未知の相手への警戒から万全の状態で迎え撃てました。
が、南葛の方はなまじ西尾選手がシュート力が無いと知っていたため、まんまと罠に嵌ってしまった様ですわ」

雪村(TV観戦中)「このゴールはそこに付け込んだところが大きいって訳だね。試合はここからが本番かな。
ねえ、大前くんはどう思う? ここからどういう展開になるかなあ。まあ、順当に言って南葛が逆転するだろうけど」

大前(TV観戦中)「……ん? 俺? そうだなあ――」


先に3票入った選択肢で進みます。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

A.「中山や浦辺だって並の選手じゃないし、新田も潜在能力は高い。結構食い下がるんじゃないか?」
B.「南葛は森崎や大空以外の選手も強いからな……逆転には飽き足らず、二、三点は差を付けて勝つと思うぞ」
C.「……決まっている。ここから始まるのは、南葛の一方的な虐殺試合だ」
D.「案外このまま大友中が勝っちゃたりして……っていうのは駄目?」
E.その他(自由選択です。大前に取らせたい行動を併記してください)


一旦、ここまでです
夕食等あるので、続きは深夜になりそうですね
それでは、また数時間後に再びお付き合いくださいませ

773 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:11:47 ID:vOMleBTk
C 熱い展開乙デース

774 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:15:13 ID:AMkNqB5Q
B
久々の投下乙〜

775 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:17:04 ID:MB08e+L6
C さよなら大友

776 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:17:55 ID:3quNuw4U


777 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:19:56 ID:???
そういえば山森はまだ隠してるのか

778 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:29:32 ID:5WHqEHSc


779 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:35:15 ID:???
菱野さんが森崎のセーブ力がある程度、分かっているみたいだし、聞けるタイミングがあれば聞いときたいな。

780 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:38:22 ID:???
それは去年みたいに指名しておけばある程度データ収集してもらえるんじゃないかな
去年は空手と長野のデータをもらえたはず。
まぁ長野みたいな微妙な選手のデータなんて別にいらんかったけどw

781 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:48:23 ID:???
>達也(TV観戦中)「話にゃ聞いてたけど、やっぱ信じられねえ……序盤も序盤から、どうしてこんな博打を打つ気になるんだ!?」

県大会で即オーバーラップしたGKをお忘れですか?

782 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 20:56:01 ID:???
エース対決は数字上だけでは中山と翼が互角位のはずなんだけど
チームの総合力の差が凄まじい上に浦辺が途中でペースダウンしてしまうのが痛いよな

783 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 21:09:50 ID:???
それに大友中は手の内をほとんど見せただろうしな。

784 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:08:08 ID:???
それにしても新田は安定して中二だなぁ
実際中学2年だけど

785 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:08:57 ID:???
新田も消耗早すぎる。
前半四分の一程度で必殺シュート2回打ってるし、キーパーまで辛うじて届きそうな隼ボレーもパンチ以下。
3Nシュートは連発できるような打ちやすいシュートじゃないから自然新田にボール集まるだろうが最後まで持たないなこりゃ。

786 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:12:10 ID:???
森崎はむしろ態と打たせるだろうな。下手したらフリーとかまで付けさせて。

787 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:13:27 ID:???
さすがにフリーにはDFがさせないと思うけどね

788 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:19:30 ID:???
去年の全国決勝みたいにゴール前にDF引き込ませれば自然にフリーになるんじゃないの
下手にボールカットするよりブロック、クリアーの方が強力なんだから。
大前たち相手に流石にそれはやらないだろうけど。

789 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:27:40 ID:???
まだYTS(やっぱり翼は凄いや)もまだだからなw

790 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:30:28 ID:???
このスレでのYTSは(やっぱり滝は凄いや)です
去年の試合の翼の雑魚っぷりと滝の凄さを見るとねえ

791 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:41:51 ID:???
滝が凄いのはこのスレに限った話じゃないけどね
やっぱカード引く枚数が段違いな分ドリブラーは強くなる

792 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:43:20 ID:???
今年はマジでサイドアタックが止まる気しないからなぁw

793 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:45:04 ID:???
サイドアタックが止まらなくても、その後を止めればよかろうなのだ

794 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 22:48:04 ID:???
南葛とやる時は去年の長池と瀬川みたいに大前と比良山の位置変えた方がいいな。
時期的にはフォトシンも手に入ってるだろうし達也、浅村が人数かけても滝は無理だ。

795 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 23:00:08 ID:???
翼もドライブオーバーやフライングドライブは無理だろうけど
スカイドライブ、ショートドライブぐらいは普通に習得してるだろうね。
サイドアタックは対策しとかないとマジゲロやば。

796 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 23:13:44 ID:???
つまり滝の弱点を突けば良いわけだな。
赤口の皆さんに決勝応援に来てくれるよう頼もうぜ。滝の気を反らせるはずや。

797 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 23:14:07 ID:???
滝のサイドアタックは厄介そうだな。スキルもあわせれば60はいきそうだし。

798 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 23:44:02 ID:???
やはり今年のラスボスも滝か、翼?そんなやつはしらん

799 :森崎名無しさん:2012/06/08(金) 00:23:43 ID:???
滝対策としてつるぺったんな可愛い子を用意せにゃあかんなw

800 :森崎名無しさん:2012/06/08(金) 00:24:59 ID:???
つるぺったんな監督ならいるんだけどなあw

801 :森崎名無しさん:2012/06/08(金) 00:30:35 ID:???
監督を滝好みに仕立て上げるのか……………うーんできるのかなァ?

802 :森崎名無しさん:2012/06/08(金) 00:40:18 ID:???
山森の出番がないと思ったらこの時はまだ超森水飲んでないのね

803 :森崎名無しさん:2012/06/08(金) 00:41:33 ID:???
ということは、まだ悪質なストーカーもいないのか

804 :森崎名無しさん:2012/06/08(金) 00:45:28 ID:???
おねいさんを水守に惚れさせることとかできるかなw
残念度ではウチの監督と同レベルだけどwww

805 :森崎名無しさん:2012/06/08(金) 00:46:24 ID:???
水守をどうするつもりだやめろーwww

806 :森崎名無しさん:2012/06/08(金) 02:05:03 ID:???
さすがにないか寝よう

807 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:10:09 ID:???
もの凄くお待たせしたようで、申し訳ありません(汗)
深夜とは言いましたが、まさか2時を回ってしまうとは……orz
今後はもう少し早く完成できる様に心がけたいです

>>C.「……決まっている。ここから始まるのは、南葛の一方的な虐殺試合だ」
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雪村(TV観戦中)「えっ?」

大前がいやに深刻な声で発した言葉に、雪村は目を瞬いた。

大前(TV観戦中)「考えても見ろ。確かに大友中は先取点こそ手にしたが、余りにも手札を晒し過ぎた。
浦辺の突破力とミドルシュート、大友カルテットによる四人同時タックル、新田の新技に3Nシュート……。
そしてそのどれもがタダで切れるカードじゃない」

菱野(TV観戦中)「確かに。一点の対価にしては多くを支払い過ぎていますわね。
中山選手の替わりにスタミナに難のある浦辺選手をフル稼働し、新田選手はオーバーペースで必殺技を使っておりますわ。
使用してきた奥の手たちも、二度目以降は通じにくくなるでしょうし」

やす子(TV観戦中)「更に言うなら、3Nシュートをこの段階で晒したのは致命的だわ。
これで森崎くんは、絶対に油断しなくなった。……あのオーバーラップ失敗の直後にがら空きの所をまず一点。
奇襲的に3Nシュートで二点目、と出来ればもっと試合がもつれたでしょうけど」

渡会(TV観戦中)「森崎もあと一回くらいはオーバーラップしそうだが、今度は大友カルテットに何らかの対策をするだろうな。
去年俺らと戦ったときみたいに、滝か誰かに援護させてワンツー突破を図ったりとか」

雪村(TV観戦中)「……確かに。考えれば考える程に、この一点が奇跡的に思えてくるよ。
逆に大友中は南葛が本腰を入れて攻めてくるのを、防がなきゃいけなくなる」

808 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:12:09 ID:???
比良山(TV観戦中)「そして向こうのゴール前はキーパー以外はそこそこ止まりの守備力しかないな。
それにしたって、渡会や森崎、若島津あたりとはまだ差があるレベルだ。一度は井沢のシュートを防いでいるが、同じことが何度出来るか」

輝林(TV観戦中)「この一点が、大友中のピーク……そういうことにもなりかねませんね」

ブラウン管の向こうには、予想外の展開に驚く観客たちと、ここぞとばかりに意気を上げる大友中応援団の姿があった。
しかし、それとは逆に鳴紋中では、既に南葛の勝利――それも圧勝を念頭に入れ始めていた。
……その予想すら生ぬるい光景が、この直後に繰り広げられるのであるが。

  … … …

実況「現在、前半11分といったところ! 大方の予想を覆し大友中が一点先制!
南葛中の全国V3に、県大会の時点で黄信号が灯るという事態となっております!
しかし、南葛中選手たちに動揺の色は見えません! これは果たして王者の余裕か、それとも慢心か!?」

翼「そんなの、前者に決まっているだろう? ……滝、キックオフで俺に渡してくれ」

滝「え? ま、まあ良いけど(これくらいなら、別に良いよな)」

センターサークルに入った翼に対して、滝は素直に軽くボールを蹴り渡す。
派閥としては森崎派の彼であるが、別段翼に悪い印象を抱いているわけではない。
記録に数字が残りインパクトも大きいフィニッシュの段階と言う訳でもないので、軽い気持ちで素直に渡すのだった。
だが翼は、滝からボールを受け取るや否や、

翼「ありがとう、滝。それと――」

滝「へっ? えっ?」

翼「――まずは1アシスト、おめでとうっ!」

全力で、大友ゴールへと撃ち放った。

809 :森崎名無しさん:2012/06/08(金) 02:13:26 ID:???
キックオフだと……!

810 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:13:27 ID:???
実況「南葛中のキックオフで試合再――えええええっ!? つ、翼くん、キックオフでボールを受けるやいきなりシュートォ!?」

大前(TV観戦中)「な、なにィ!?」

雪村(TV観戦中)「き、キックオフシュートだってェ!?」

森崎「ば、馬鹿野郎ーっ!? いきなり何をしてやがるーっ!」

井沢「決まるわけないだろう!? 俺がシュートレンジに入ってから撃っても防がれたんだぞーっ!?」

TVの前の大前たちは目を剥いて驚いた。同じフィールドに立つ森崎たちは、目を吊り上げて叫んだ。
それでも彼らの受けた衝撃は、実際に撃たれた大友中の面々よりは小さかっただろう。

浦辺「な、なにしてやがんだ翼のヤツ!? 試合から消え気味な上に先制されてキレちまったのか!?」

新田「馬鹿なっ! こんな馬鹿げた真似をして、決まる訳が無い!」

中山「い、いやっ! ヤツのキック力とドライブシュートの威力ならば、まさかとは思うが! ……全力で止めろ、一条ぉーっ!」

一条「わ、分かってますよ中山さん! こんなものを決められたら、GKの名折れだァ!!」

指示に堪えると、一条は飛来するシュートに向けて拳を握って構えた。

一条(この高さ、上空から急降下するドライブシュートじゃない! だとしたら、止められる!)

大前(TV観戦中)「な、なんだこの嫌な予感は……? 大空が放ったこのシュートから感じる、胸騒ぎの様なものは一体……?」

811 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:14:33 ID:???
翼が放ったのは、ドライブシュート特有の高空に舞い上がる様な軌道ではなく、弾丸性の直進シュート。
その軌道に一条は安堵を覚えるが、同じドライブシュートの使い手である大前は、掌が汗ばむのを感じていた。
間違いなく、翼のフォームはドライブシュートと同じものであったはずだった。
そこから生じる違和感が、不安を生む。
そしてそれは、あっさりと現実のものとなる。

一条「大丈夫だ! このシュートは枠を外――」

安堵の息を吐いた一条の眼前、ゴールマウスを外した角度でボールが急激に斜めに落ちボールが地面を叩いたかと思うと、

一条「――……えっ?」

鋭く跳ね返ってサイドネットに突き刺さった。
この間、キーパー一条並びに大友中一同、一歩も動けず。

――テン、テン、テン……っ。

ゴールの中でボールがバウンドする音が響く。
無論、そんな小さな音をテレビが拾うはずは無いのだが、大前ら鳴紋中の選手たちは、それをまるで直に耳にしたように聞いていた。

――ピョロ、ピ、ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイィ!

審判が一度吹きそこなった笛を高らかに響かせるとともに、止まっていた時間が動き出す。
これは夢でも幻でも何でもない。現実で、たった今、起こっていることなのだと思い知らせる様に。



南葛中 1−1 大友中


812 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:16:06 ID:???
実況「ご、ゴォォォォォルっ! 南葛中・翼くん、センターサークル内からの無謀とも言えるロングシュートを、見事に成功させました!
おそらくこれはドライブシュートの応用系! 回転を縦ではなく斜めに掛け、急激なイレギュラーバウンドを起こしたのでしょう!
奇跡の様なミラクルシュート……正しく『ミラクルドライブ』!」

菱野(TV観戦中)「み、ミラクル……」

大前(TV観戦中)「ドライブ……だと?」

南葛応援団「ミラクル……」「お、おおおお……!」「ミラクルドライブ!」「正に、奇跡のV3を成し遂げる翼の技だぜ!」

――オォオオオオオオオオオオオオオォォォォォ!!

南葛応援団「……つーばーさっ! つーばーさっ!」「つーばーさっ! つーばーさァっ!」

観客「つーばーさっ! つーばーさっ!」「凄いぜ翼ーっ!!」

翼「奇跡、ね。四回に一度は出来ることなんだけど……そう考えるとちょっと大袈裟すぎないかな(ニコッ」

テレビに映った翼の表情は、何でも無いことをして必要以上に褒められた子どもの様な、照れの混じった笑顔。
それがまるで『これくらいは出来て当然だろう?』と語りかけている気がした。

森崎「な、何がミラクルだ。俺なら二回に一回は止められるぜ!」

石崎「やったーっ! 流石翼だ! 信じていたぜ俺は!」

高杉「これで同点だな(プクク、森崎の悔しそうな顔って言ったら、ないぜ! ざまぁ!)」

滝「ほ、本当に決まっちゃったよ、オイ……」

井沢「ふ、普通に撃って決まらなかった俺に当てつける様にしやがって! やっぱり気に入らねーっ!」

813 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:17:10 ID:???
早苗(アネゴ)「翼くん……(キュン)」

古尾谷監督「な、何が何だかわからんが良しっ!」

ゆかり「それでいいんですか、監督……」

山森(ベンチ)「や、やっぱりあの人は凄いな……同じMFとして憧れちゃうよ」

先制された直後に、この同点劇。南葛陣営はそれぞれ翼に向ける好悪の感情の差はあったが、概ねこの得点で意気を上げていた。
反面、決められた大友中は悲惨の一語である。

一条「あんな……あんな距離から、決められた? 一歩も動けないで、決められた?(ブツブツ」

吉川「い、一条? あまり気に病むなよ、な? 俺たちも動けなかったんだから」

川田「だ、大丈夫だって一条! あんなシュート、そう何度も何度も飛んで来やしないって!」

西尾(だ、駄目だァ! やっぱり翼は別格なんだァ!!)

新田「有り得ない……あんなロングシュートが、どうして決まるんだ!?
い、いや! それより翼さんは、どうしてこんなことをした後にあんな穏やかなままでいられるんだ!?
ま、まるでこれが大したことじゃないみたいに……そ、そんなことこそあって堪るかっ!」

失点を喫した一条を筆頭とした守備陣と、ストライカーとしての自信をより強烈な得点劇で粉砕された新田。
彼らは前半の半分にも満たない時間帯、そして同点というスコアにも関わらず、折れかけていた。

814 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:18:20 ID:???
中山(どう声を掛ければいい? ……こんなプレイを決められて、士気が崩壊したみんなに……何て言えばいいんだ!?)

中山も、言葉を失っていた。超人的な克己心で選手生命の危機からカムバックした彼も、中学三年生の少年である。
打ちひしがれた仲間たちを前に、掛ける言葉が見当たらなかった。

浦辺(……やられたっ!)

デコー(持てる力の限りを尽くして奪った一点が、瞬く間に取り返される。これはキツイぞ浦辺。
この衝撃に打ちひしがれるチームメイトを、どう立ち直らせる?)

浦辺「そんなこと……俺が知りたいぜ……」


  … … …


そこからの試合展開は、正に一方的だった。

新田「と、とにかく勝ち越しの点を取るんだ……も、森崎からはゴールは奪え――」

森崎「おい、フリーで撃たせてやんな。
中山、西尾とのコンビ技以外なら、まず決まらないからよ(そっちできたとしても、今度は止めるがな)」

新田「な、なにィ!? 舐めやがっ――なにィ!?」

森崎からゴールを奪ったことをよすがに、辛うじて闘志を維持する新田。
しかし、完全フリーで売ったはずのシュートが、苦も無くセーブされたことによりカウンターの起点となる。
そして、

815 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:19:31 ID:???
来生「逃げていれば、奪われはしない!」

岸田「(ど、ドリブル上手ェ! 上達していたとは知っていたが!)き、来生の癖にィ!」

来生「抵抗するんじゃないよ! 行っちゃえよ!」

西尾「と、止められない!? い、一条ーっ!」

来生「まだ、抵抗するのならーっ!」

一条「う、うわーっ!?」

――前半17分、来生の単独突破からの1対1で2−1に。南葛、早くも逆転。

来生「ハッハァ! 今日ハットトリックを予定している俺のーっ! ダイビングボレーだァ!」

一条「そう何度もやらせて堪るかーっ!」

来生「なにィ!?」

渾身のパンチングが、来生のダイビングボレーを撃ち返す。だが、それは完全には弾き切れず、

井沢「さっきバナナシュートを防いでくれたお返しだ! 喰らえ、低空5メートルダイビングヘッドをーっ!」

一条「ひ、ひいいいいっ!?」

――前半21分、井沢が来生からのこぼれ球に鋭く反応してねじこみ3−1。

816 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:20:39 ID:???
滝「それじゃあ、もう1アシストくらい稼いでこようかね!」

浦辺「ぜぇ……ぜぇ……くそ、止められねェ! さ、最終ラインでなんとかしてくれー!」

一条「わ、分かりました……みんな! 井沢の動きに注意しろ! 去年、全国のVTRで観た! ヤツらにはコンビ技が――」

長野「――リフレクトボルトのことを言っているなら! 本来は俺と編み出した技だぞ!」

一条「し、しまっ――(え、エリア内で長身FWから目を離すなんて!)」

――前半27分、長野のリフレクトボルトが追加点を奪い、4−1。

中山「……くそっ!(想定より、翼の動きが速い! そう何度もマークを振り切れないぞ!?)」

翼「悪いね、中山。監督からの指示は、君のマークなんだ(森崎の余計な入れ知恵の所為で、ね)」

――この間、中山ほとんど動けず。前半序盤、翼を試合から消していたことへの強烈な意趣返しを受ける。

新田「こ、今度こそ! 隼ボレーだァ!! ――なにィ!?」

森崎「おうおう面喰っちゃって! そろそろ『なにィ!?』しかセリフが無くなってくるんじゃないか、お前!」

新田「はぁ……はぁ……そ、そんな……なんで……」

森崎「(中山さえいなけりゃ、所詮こんなもんか)……ほらよっ! 満足してねェで、もっと点を取って来い!」

浦辺「さ、させるかっ! ぜひっ……ぜひっ……げほげほっ!?(ど、どういうことだデコー!? いつもより、消耗が早いぞ!?)」

デコー(……気付いていないのか、浦辺。君の体力そのものが既に限界だ。これ以上は力を貸せんよ)

――前半ロスタイム2分、フルスロットルで稼動を続けていた新田と浦辺が、早くもスタミナ切れに追い込まれる。

817 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:21:43 ID:???
滝「前半最後に、もういっちょアシスト稼ぎたいな……お? あそこにいるのは――」

岩見「ふぅ……この試合、翼が守備に回っている所為か、俺がイマイチ輝けんな。だが、そう言う時にはこう動くっ!」

一条「い、岩見!? どうして岩見さんが、こんなところに!?」

岩見「もらったァ!」

――前半ロスタイム3分、伏兵・岩見のゴールで5−1に。滝一、前半中に3アシストの記録達成。
……翼のミラクルドライブによる同点から、僅か20分。試合は完全に南葛が制していた。それも大前が予想した以上の虐殺ペースで。

――ピッ、ピッ、ピィイイイイイイイイイイイイっ!

実況「ぜ、前半終了! スコアは驚きの5−1! これは決して試合終了時点の物ではありません!
僅か30分とロスタイム3分! たったそれだけの時間で築いたスコアです! その差、気が付けば四点差ァ!
王者南葛、先制を奪われて逆鱗に触れたか!? この県大会全体を通しても異常なペースでゴール、ゴール、ゴールを積み重ねます!」

大前(TV観戦中)「こうなるとは思っていたが、やはり酷いな……」

比良山(TV観戦中)「ああ、見るに堪えん……」

国岡(TV観戦中)「お前らが言うな」

渡会(TV観戦中)「珍しく国岡と意見が合ったな……今までの試合のこと思い出せよお前ら」

若尾(TV観戦中)「こ、このまま行ったら、10点くらい取っちゃうんじゃないですか?」

やす子(TV観戦中)「いえ、まともな指導者なら無理はしない様にペースダウンを命じるはずよ。
やり過ぎて、本番の全国前に燃え尽きたりしないようにね。……それでも、七、八点くらいは奪いそうだけれど」

818 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:23:09 ID:???
達也(TV観戦中)「こ、これが絶対王者・南葛中の本気……去年の先輩方、こんなの相手によく3−2に押さえられましたね?」

本多(TV観戦中)「……いや、これも大空が中山を押さえているからこその結果だ。
もし中山がいなければ、ヤツを自重させる枷が無くなり、もっと酷いことになるだろうな」

雪村(TV観戦中)「実質、大空が守備に徹している状態でこの攻撃力だよ。嫌になっちゃうよね」

水守(TV観戦中)「その上にまだ森崎さんがオーバーラップを一度しかして無かったり、中里さんの攻撃参加といった
武器も見せてませんよ」

宇津木(TV観戦中)「南葛強すぐる……機会があったらGMに提案して貰う。南 葛 の 大 弱 体 を な 」

菱野(TV観戦中)「お、大友中と比較して、チーム総合力とANSの効果がありますから、私たち鳴紋中なら、
南葛とも互角以上に渡り合えると思いますが……」

輝林(TV観戦中)「……こういう映像を見ると、その自信も揺らぎますね」

末松(TV観戦中)「て、輝林〜!? お前が深刻そうにモノ言うと、ホントっぽく聞こえるからやめて〜!!」

落田(TV観戦中)「ふっ。まさに俺たち鳴紋中と、この俺の伝説を築くための最大の敵だな。腕が鳴るぜ!」

かつて自分たちが大友中と戦った時以上に、ハイペースでスコアを積み上げる南葛中の姿に、部室内が騒然となる。
昨年の王者、南葛中――やはり強し。その印象に、誰もが浮足立っていた。

大前(TV観戦中)「どうする、みんな? ……まだ観るか?」

あえてこんな虐殺試合を観せ続けても、士気に響くばかりではないか。その思いが、大前にそんなことを言わせた。

819 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:24:29 ID:???
雪村(TV観戦中)「……やめとく。僕ちょっとボール蹴ってくるね。なんだかそうしないと、落ち着けそうにないや」

宇津木(TV観戦中)「hai! 付き合うます!」

達也(TV観戦中)「俺も、練習再開したいかな……」

水守(TV観戦中)「僕はもうちょっと観ますよ。大友中、特に中山さんは、負けるにしても何か南葛に仕掛けると思うんです。
その時に、南葛攻略な新しいヒントが見つかるかも――」

本多(TV観戦中)「その望みは薄いが、な。だが、最後まで気を抜かないで情報を得るのも仕事の内か」

渡会(TV観戦中)「じゃあ俺は抜けるわけにはいかないか。もしかしたら大空の野郎、またなんちゃらドライブを撃つかもしれんし」

……結局、部員の半分近くは練習を理由に席を立った。かつての敵手とはいえ、惨たらしい展開に観ていられない者も多かったのだろう。
残る数人は、砂漠で一粒の砂金を探す様な心地で南葛攻略の糸口を見つけようと、大前と共に部室に残った。
これから何を目にすることになるのか、知らないままに。


  … … …


実況「――現在、後半22分。点差は……7−1で南葛がリードしております。
後半開始から翼くんがドライブシュートで2ゴール目、得意のオーバーヘッドでハットトリックとなる3ゴール目を決めましたが、
それ以降は両チームペースを落として低調な展開が続いています」

大前(TV観戦中)「結局、真新しい発見は無しか……まあ、南葛が嫌になるほど強いってのは改めて分かったけど」

菱野(TV観戦中)「昨年の主力が成熟しただけですのに、ここまでパワーアップしているとは……やはり南葛は恐ろしいですわね」

820 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:26:10 ID:???
比良山(TV観戦中)「大友中の連中、全員フラフラだな……肉体的にも精神的にも限界だ」

水守(TV観戦中)「サッカーにコールドゲームが無いって、案外残酷なルールですよね……」

輝林(TV観戦中)「…………」

渡会(TV観戦中)「おーい、輝林。さっきから黙ってるけど、起きてるかー?」

輝林(TV観戦中)「……起きています。話題が、無いだけです」

本多(TV観戦中)「あの中山が、何度もマークを振り切られるとはな。大空翼、改めて恐ろしい男だ」

一方的な試合展開の続く中、大前はじっと一人の男の出番を待っていた。
中山政男。六月の試合の後に、南葛との戦いへの意気込みを語って見せた選手を。

大前(TV観戦中)(中山……さっき水守が言った通り、お前はこのままただ負ける様な男じゃないはずだ。
見せてくれ、お前がかつての仲間との戦いに掛ける意地を!)

祈る様な思いでTVに注視する大前。
その時、再び試合が動こうとしていた。

実況「大友中FW中尾くん、ボールキープを図りますが岩見くんにこぼされた! そしてボールは翼くんがフォロー!」

翼「まだまだ体力はあるし……4ゴール目、狙ってみようか!」

森崎「おい、翼ァ!! 監督からはペース落とせって言われてるだろうがァ!」

ボールを持った翼に背後から掛かる声は森崎の罵声だった。
この試合、得意のオーバーラップは実を結ばず、密かに燃えていた中山との対戦も不完全燃焼のまま相手チームを圧倒している。
その上に目障りに思っている翼がハットトリックの活躍である。苛立たないはずが無かった。

821 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:28:12 ID:???
翼(悔しいか、森崎? だろうね、あのあと好セーブを連発して新田をスタミナ切れに追いやったが、先制された汚点は消えない。
この上、また俺に活躍されれば腹も立つだろうさ。だが、俺だって苛立っているんだ。
ロベルトに捧げる全国V3の門出を汚されて、俺だってムカっ腹が立っている!)

その苛立ちは、更なるゴールで癒す。翼はそんなことを思っていた。
……相手という者がいる試合の中で、不遜な考えを抱いたことがいけなかったのか。

中山「ようやく、隙を見せたな!」

翼「!? な、中山……?」

猛然と、翼に襲い掛かる中山。そして繰り出されるのは、摩擦で芝が燃える様な激しいスライディングタックル。

中山「――侵掠すること、火の如しっ!」

翼「……ぐああああっ!?」

実況「つ、翼くんが吹っ飛んだー!? 中山くん、これまで試合から消え気味だった鬱憤を晴らすように、翼くんへタックル!
吹き飛ばしてボールを奪ったァ! 点差は絶望的ですが、せめてもの意地か!? この期に及んでも全力でのプレイです!」

大前(TV観戦中)「おお……! やりやがったよ、アイツ! あの大空を相手に、1対1で!」

石崎「つ、翼ーっ!? ……はっ!」

中山「よそ見をしている……場合か!?」

高杉「なにィ!?」

勝ちが決まった試合に緩んでいたところを、絶対的エースである翼が吹き飛ばされた。
その衝撃に呆然とする石崎らを中山は瞬く間に置き去りにする。

実況「そして石崎くんと高杉くんを速攻で突破します! や、やはり凄いぞこの選手は!」

822 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:29:16 ID:???
岸田「す、凄ェ!! な、中山が本気のプレイを見せ始めたぜ!」

浦辺「はぁ……はぁ……きゃ、キャプテンとして、情けないぜ……これ程の男を、あたら飼い殺しにしていたとはな……」

新田「ぜぇ……ぜぇ……い、行けーっ! 行って下さい、中山さん! 南葛に……俺たち大友中の意地を見せてやって下さいっ!」

中山「(みんな……すまない! こんな状況になるまで、思うように動けずにいて!)おうっ!!」

背後に掛かる声援に、目の端を光らせながら、中山は進む。

中里「ここから先には行かせ――」

中山「(そして、悪かったな森崎……)見くびるなよ、重りを付けたままでなど!」

中里「――なにィ!? 何故それを……し、しまっ!?」

そして隠していた秘密を暴かれた動揺を突き、中里をもいなした。
残るは――

中山「(お前を……こんなにも燃えていたお前を、待たせてしまって!)……行くぞ、森崎ィ!!」

森崎「な、中山……お前ってヤツは……!」

実況「そして森崎くんと1対1にまで持ち込んだ! ま、まさか……このままゴールか!? 翼くんから奪ったボールで、
そのままゴールにまで突っ込んで行くのかァ!?」

――最後の関門、森崎有三ただ一人。

823 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:30:29 ID:???
大前(TV観戦中)「……い、行けーっ!」

菱野(TV観戦中)「きゃっ!?」

大前(TV観戦中)「行っちまえ、中山! 決めちまえ! その瞬間の為に、お前はピッチに戻って来たんだろーっ!?」

その雄姿に、大前は我を忘れた。
勝敗は問う所ではない。試合の行方は既に決した。
だが、それが何なのだ。男が、戦いたい相手と思う存分戦う為に、人生を賭ける。
その崇高な行いを阻むものなど、何一つありはしない。
どんな状況であろうと、それをすることに何一つ変わりは無い。

やす子(TV観戦中)「男の子ねェ、大前くんも……(とはいえ、私も結構胸にキてるわァ……)」

比良山(TV観戦中)「俺だって、男ですよ! ……よし行け!」

本多(TV観戦中)「人生を賭するに値する大仕事だ! やってみせろーっ!」

渡会(TV観戦中)「悪いな森崎、俺もGKだけど、ここは断然中山を応援しちゃうぜ!」

大前に感化されてか、テレビに向かって吠える仲間たち。
聞こえるはずは無い。届くはずは無い。だが、声を上げずにはいられなかった。
中山と森崎の対決には、そうさせてしまう何かがあった。
画面の中で、森崎が吼えた。

森崎「……待ちかねたぜ、中山ァ! だが、俺に挑んでタダで済むと思うなよ!?
ここを防いだら……そのボールは大友ゴールへ叩き返してやるぜ!」

中山「応っ! やってみろォ!!」

そして全ては対決の瞬間に収斂した。
……無粋な横やりが入ったのは、その時だった。

824 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:31:48 ID:???

  … … …


西尾(あ、ああ……なんていうことだ……このまま試合が終わったら、あの日向に何をされるか――)

かつては翼の信奉者だったが、家庭の貧しさという事情で大友中へと進学することを余儀なくされた西尾。
彼の家庭事情に目を付けた日向は、静岡における工作員として西尾を金で雇い、意のままに動く傀儡として来た。
莫大な報酬と引き換えに、日向の汚い工作の数々をこれまでこなしてきた西尾。
この県大会決勝は、その総仕上げとなる……はずだった。
与えられた役割は、南葛のキャプテンにして守りの主柱・森崎をフィールド上で仕留めること。
外部から雇ったスナイパーに指示を送り、あくまで試合中のアクシデントに見せかけて、屈辱のままに敗退させる。
その役目を、西尾は果たせずにした。
前半、森崎がオーバーラップした時、西尾は『これでボールを奪えば勝てる』と思ってしまった。
スナイパーと共同せずとも、大友中の力のみで勝てると欲が出てしまった。
その結果、合図を出すタイミングを見誤り……ずるずると、この敗勢である。

西尾(い、今更なにかしても、無駄なんだじゃあ――で、でも)

このままでは、日向に用無しと見切りをつけられてしまう。
今からでも――せめて森崎を潰してしまえば、いくらか日向の心象は回復するのではないか?
西尾の悪癖である欲目が、この局面に至って再び顔を出す。

西尾(そ、そうだよ……今からでもやろう! 中山には悪いけど……いやアイツだって森崎に勝ちたいんだ……。
それをそっと手助けしてやるんだ。むしろ、良いことなんだよ。そ、そうなんだよ)

自分に言い訳しつつ、西尾はスナイパーの待機しているビルの方向へと向いた。
そして、

825 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:33:01 ID:???
西尾(も、もうやるしかない! 合図だスナイパー! ……『Do It!(やれっ!)』)

その合図を送ってしまった。


  … … …


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    三三三}   -‐= -、   i    , -、 Y
   三三三〉   .. -=、__     l  ー'  _,、  iニ!     /
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    ソ|三|        /  ヽ  ト    |ニ!   \      ,  ̄
    - |三|       /     l  l`ヽ   lニ!    \   (
   ソ_|三|     /    ,,   l  |  ヽ  lニl      )   ` ─ 、
  ヽー'}三!             _ ,  |     lニ!    _ ノ ___ ノ
   ト人/∧               ト '′   jレ'   ( rー'
   イl  ヘ         ____ ,-、,--z__ /     ソ
  ∧!  ヘ\       ̄ ̄ ̄ "''=≡ニニニニニヨ
    ∧\ ヘ \      /  l ヽ 仆 、    ________
    ∧::::\ヘ  \         i   /:::::|/∧  /            /
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謎のスナイパー「合図……来たか」

静岡県大会決勝が行われているグラウンドから、500m程離れた建設途中のビル。その上層階に、男はいた。
スコープで確認した西尾の合図。それを受けてからの動きは迅速である。
瞬く間に愛銃を構え直して南葛ゴール前に照準を合わせ、標的の森崎を捉える。
後は中山との交錯の瞬間に、トリガーを絞ればそれでいい。

826 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:34:12 ID:???
謎のスナイパー「…………」

ライフルに装填されている弾頭は、毒入りの特殊弾。
人体に掠めれば傷口から侵入し、運動神経を瞬く間に麻痺させるという代物である。
スポーツの競技中に人知れず標的を妨害し、事故に見せかけて選手生命を断つには、打ってつけの弾だった。
500m離れた運動中の人間を、殺すことなく射抜く狙撃の腕があれば、の話だが。

謎のスナイパー「……問題は、無い」

男は自分の腕前に全幅の信頼を寄せていた。
己であれば、レース中のサラブレッドの馬具を狙撃し、事故に見せかけて葬る、といった所業も可能であると信じていた。
絶対的な自信。
だが、それが男の瑕疵となる。
男と容姿が瓜二つの同業者曰く。この家業に必要なのは、臆病さと運。腕前と言う者は二の次に過ぎない。
……それを知らないまま、男は運命の引き金を引いた。

827 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:35:20 ID:???

  … … …


森崎「……もらったァ!!」

中山「なにィっ!?」

中山がボディフェイントで森崎を惑わし、抜き去ろうとした瞬間、間一髪で森崎の両手がボールを押さえていた。
十人中九人が、中山が右を行くと判断する所で左に行く。
見事なフェイントであったが、不幸にもそれに掛からない十人目が、彼の敵手だったのである。

森崎「じゃあ宣言通りこのボールは……大友のゴールへお返しだぜ!」

中山「しまっ……だが――」

まだ試合は終わっていない。自分と森崎の勝負は、この一度だけではない。
その一念で森崎を追う中山。
だが、その瞬間、

――ドキューン……っ。

何かが、中山の首筋を掠めた。

828 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:41:22 ID:???

  … … …


撃った瞬間、男は自らの失敗を悟った。
スコープの中には、グラウンドに倒れ伏す中山の姿。
標的の森崎では、ない。
中山がフェイントを掛けた瞬間、男は見事にそれに釣られ、森崎が反応するだろう方角へと狙撃
していた。
だが、実際には中山と森崎の動いた方角は逆。
不幸にも中山は、森崎という敵ではなく狙撃手という仲間(?)を欺いてしまっていたのだった。

謎のスナイパー「……あの弾丸、1発しかないんだよな……」

そう呟くと、男はそそくさと帰り支度を始めた。
その姿に、彼とよく似た同業者が持つ職業意識や責任感は、欠片も見られなかった。

829 :キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:42:28 ID:???

  … … …


実況「防いだーっ! 森崎くん、中山くんとの1対1を制しました! そして、奪ったボールでオーバーラップ開始ィ!
お返しだと言わんばかりに、大友中を攻め立てる気です! 点差は既に圧倒的! 失敗のリスクを理由に躊躇することも無い!」

南葛応援団「うおーっ! 今のは危なかったぜー!」「防いだ褒美だ! オーバーラップ、許す!」「こうなったらとことんやれー!」
「もっりさきっ! もっりさきっ!」「ゴールtoゴールだ! やれーっ!」「もっりさきっ! もっりさきっ!」

実況「そしてこの攻撃を失敗した中山くん! ん? どうしたことでしょう、倒れています。この交錯でどこか痛めたのでしょうか?」

大前(TV観戦中)「……やられたか、中山。大丈夫だろうか。深い怪我じゃないといいんだが」

菱野(TV観戦中)「え、ええ。捻った様な倒れ方でもありませんでしたし、大丈夫だとは思いますが」

中山「くっ……岸田、西尾! おまえらが最後の砦だ、何としても森崎を止めろ!!!」

実況「あ、中山くん、起き上って後方へと指示を飛ばします! どうやら大事は無い模様です!」

比良山(TV観戦中)「そうか……ひとまずは良かった」

水守(TV観戦中)「でも、妙にふらついているような……」

水守のとおりだった。オーバーラップを開始した森崎を追う様に立ち上がった中山は、先程までと比較して異様に足取りが重い。
まるで熱病に魘される様な覚束ない足取りで、森崎との勝負に欠ける執念のみで走っている。
そんなことを思わせる姿だった。

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