キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【皇帝は】キャプテン森崎45【王国に挑む】

1 :代理:2013/06/13(木) 23:55:33.63 ID:iMHL0ZcB
キャプテン森崎は、高橋陽一氏作のサッカー漫画「キャプテン翼」の二次創作です。
大空翼に代わって主人公になった森崎有三を読者の投票によって操作していき、
他のキャラクター達と交流を深めながらサッカー選手として大成するのが目的の
読者参加型企画です。いわゆるゲームブックを想像して頂ければ分かり易いかも。

基本は毎回出る選択肢の中から読者が投票によってどれかひとつを選ぶ事によって
森崎の各数値が上下したり結果が分岐し、その結果によって森崎が活躍したり
しなかったりして物語が進んでいく…といった展開です。例えば敵にシュートを撃たれたら、
森崎の能力値+ある程度のランダム要素によってゴールを守れたり守れなかったりします。

投票や判定では2ch式(注:似ているだけで2chとは別サーバー)の掲示板で
ID付の投票書き込みを行ったりスクリプトでカードやダイスを引いてもらったりします。

過去スレのログはこちらのまとめページで見られます↓
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/11.html

ミス指摘、質問以外の雑談は下のURLの雑談スレでお願いします。
本スレでも更新毎に30レス程度までの反応レスなら問題無しとしています。
尚、30レスを超え雑談スレへの誘導が始まったら速やかに誘導に従って下さい。それがルールです。
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1368769203/
2ちゃんねるとは別の場所の板なので、ブラウザによっては外部板登録が必要です。
なんらかの理由で雑談スレが落ちている時は、本スレでも遠慮なく雑談をどうぞ。

【前スレまでの簡単なあらすじ】
第一回フランス国際Jrユース大会でMVPとなった若き日本サッカー界の星、森崎有三!
サッカー王国ブラジルに留学した彼はリオカップ、ジャパンカップ、ワールドユースアジア予選と言った
数多の激戦を経てワールドユースの出場権を勝ち取り、全日本ユースのキャプテンと正GKとして
ワールドユース本大会に殴りこんだ!予選グループを勝ち点7の1位で突破した彼らは
準々決勝でオランダユース相手に3−0で快勝。しかし準決勝の相手、イタリアユースは
主力2人が退場しても尚1−1で食らいついてくる程の難敵だった!後半40分で
イタリアボールと言う状況で、攻め疲れした日本は失点の危機に追い込まれている…
…こんな感じで話は進んでいます。

207 :代理です。:2013/08/16(金) 07:24:34.72 ID:SSFoO4rY
〜ブラジルユース宿舎〜

ゲルティス「(アルシオン…ストラット…残念だったな)」

サンタマリア「よし。第一次データ収集はこれ位でいいか」

トニーニョ「今はドイツ解析の方が先決だな」

ネイ「昨日も散々やってたのにまだやるのか。俺には到底マネできないなァ」

ドトール「チームにはそういう役目の者が必要だ。俺も手伝おう」

アマラウ「ご苦労さん。頼むぜ」

ディウセウ「オラ、腹減っちまった!なんか食いに行こっぜー!」

ザガロ「ウナギだ。それ以外は認めん」

マウリシオ「またそれッスか!栄養偏りますよ!」

ジェトーリオ「僕は別の店に行くよ〜ん」

コインブラ「(…解せない」」

カルロス「(やはり、コインブラは孤立しているな。本人がそれを気にしていないのが一番の問題だ。
だが、今日の試合にコインブラは明らかに何かを感じていた…それがこいつの魂に火をつけてくれれば…)」

コインブラ「(何故イタリアはあれ程粘る事が出来た?何故そうした?理不尽な退場を重ねられたのにも
関わらず、何故抗い続けられた?そこまでして勝ちたかったのか。何の為にそんな事を…)」

208 :代理:2013/08/17(土) 00:44:14.14 ID:7XyIeOqZ
〜全日本ユース宿舎〜

その日の晩、イタリアを打ち破った疲弊を元にホテルに戻った全日本ユースの選手達を
出迎えたのは彼らにとっては極めて予想外な人物だった。

オワイラン「やあ、全日本ユースの皆!お疲れ様!」

森崎「へっ?…お、お前、サウジアラビアの?」

中山「マーク・オワイラン…」

オワイラン「覚えていてくれて嬉しいよ。疲れている所に押しかけて済まないが、
まずは決勝進出おめでとうと言わせて欲しい。君たちの躍進はサッカーは
欧州と南米だけの物じゃないと証明してくれたんだ。この調子でそのまま優勝して欲しい」

森崎「あ〜、激励に来たのか…それは分かるんだが、お前の後ろに居る白衣の群れは一体…」

オワイラン「我がサウジアラビアサッカー協会が誇る、サッカー代表専属スポーツドクターチームさ!」

アジア予選で戦ったサウジアラビアユースのキャプテン、マーク・オワイランが
10人以上の医者を引き連れて現れたのだ。片桐と陽子も非常に疲れた表情で横に立っている。

中山「えっ、まさか…」

オワイラン「そう、今日の試合で負傷者が多かっただろう?折角のワールドユース決勝戦、
全力を出せずに負けてしまったら悔やんでも悔やみきれないじゃないか。
僕もそんな尻すぼみな結末は見たくない。だから君たちの力にならせてくれ!」

森崎「マジか!?…良いんですか、片桐さん」

片桐「…彼から要請を受けて、私が許可を出した。手続きは私に任せて、素直に治療を受けてくれ」

209 :代理:2013/08/17(土) 00:44:56.96 ID:7XyIeOqZ
全日本メンバー「へえ、こりゃ有り難いな」「片桐さんが許可しているんなら問題ないんだろ」
「有難う、オワイラン。恩に着るよ」「何でもいいからさっさと休もうぜー」

片桐「(問題ない訳あるか…やり過ぎだこの馬鹿王子!加減と言う物を知らないのか!
お前が言い出した形でも、日本サッカー協会はサウジアラビアサッカー協会に借りを作るんだぞ!
私の独断で決めても穏便に済ませられる形にしたかったのに…どうすればいいんだこれ)」

陽子「(メディア対策どうしよう…早速目ざとい記者がホテルの周りをウロウロしているし…
賀茂さんは何とかしてくるって言ってたけど、一体何をしてくるつもりなのかしら)」

森崎「(…どう見ても問題ない訳なさそうだな…特に片桐さんの顔が青い…)」



*オワイランの暴走で、全日本ユースの選手達の怪我の治療速度が上がりました。
決勝戦開始時点で翼以外は万全の状態、翼は「なおりかけ」状態とします。

負傷からの回復はあまりルールとしてハッキリしておらず、また準決勝でここまで
負傷者が相次ぐのは完全に想定外でしたので決勝戦でリセットの乱発を避ける為に
こういった処置を施しました。ご了承お願いします。

210 :代理:2013/08/17(土) 00:45:37.32 ID:7XyIeOqZ
森崎「ふい〜、腹減った腹減った。メシメシ…ん?」

約1時間後、負傷者ではない森崎は疲労回復のマッサージを受けただけで医師団から
解放され、すきっ腹を抱えてホテルのロビーに向かっていた。
そこで彼が見た物はどうやら国際電話をかけているらしい陽子だった。

陽子「うん、それじゃお願い骨皮くん。頼んだわよ」

ガチャッ。

陽子「よし、これで…え、森崎くん!?そこに居たの?」

森崎「いや、今通りがかったばかりだが…」

A 「何か骨皮に頼んでいたみたいだけど、何だったんだ?」
B 「お疲れ様。いつも面倒な事ばかりやってもらってるな」
C 「よ、陽子さんまさか、ほ、骨皮の奴と…!?」
D 「ひょっとして、オワイランのやらかしと関係ある電話だったか?」
E 「これから晩飯なんだ。どうだ、一緒に?」

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2013/8/17 00:30:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

211 :代理:2013/08/19(月) 22:30:46.46 ID:EJRb7pvr
>B 「お疲れ様。いつも面倒な事ばかりやってもらってるな」

陽子「へっ?」

森崎「だってよ、俺達選手は試合と練習の時以外は基本的に自由時間だし、自分以外からも
体調を配慮して貰える立場だからな。陽子さんがやっている仕事は昼も夜も無さそうだし、
体調も自力で維持しないといけないし、なにより面倒臭い仕事ばっかりなんだろ?」

陽子「まあ、そうだけど…裏方ってそう言う物だしね」

森崎「だからお疲れ様、だよ。俺が自分でそういう事やらないといけないと思ったらゾッとするしな」

陽子「…うん。有難う」

森崎から出た言葉は陽子を驚かせる物だったらしく、彼女は盛んに瞬きを繰り返した。
それでも森崎が言葉を連ねると次第にはにかみ、嬉しそうな声色に変わる。

陽子「でも私は大丈夫よ。確かに忙しい時期もあるし、今はその真っ最中だけど逆に暇な時期もあるしね。
なにより実際にサッカーをやる森崎くん達に比べればただ面倒なだけで身も心も負担は軽いものよ。
森崎くんの事だから、俺がそんなもので参る訳ないだろ?とか言っちゃうんだろうけど」

森崎「良く分かってるじゃないか」

陽子「それはそうよ。何年あなたのサポートをしていると思っているの?」

212 :代理:2013/08/19(月) 22:33:02.51 ID:EJRb7pvr
森崎「(機嫌は良さそうだな…)」

A 「じゃあいっその事人生のパートナーになってくれないか?」
B 「そうだなあ、今後も何かと世話になりそうだなあ」
C 「そのサポートの集大成を決勝戦で見せるぜ」
D 「有難う。何と言うか、本当に有難う。感謝しているんだ」
E 「ところでこれから晩飯に行くつもりなんだが、一緒に来るか?」

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
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    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

213 :創る名無しに見る名無し:2013/08/19(月) 22:43:55.00 ID:Tt8c5It2
森崎が悪意の無い会話をするというだけでなんか怖いw

214 :代理です。:2013/08/21(水) 22:06:29.94 ID:G04uPeZw
>C 「そのサポートの集大成を決勝戦で見せるぜ」

陽子「あ………」

森崎「どうしたんだ?」

陽子「そっか…そうだったわね…」

ふと陽子は遠くを見る目になり、わずかに頬を染めた。
何とも乙女らしい反応に森崎も注目せざるを得ない。

陽子「私、以前言ったよね。お嬢様としての生涯を送らないといけないんだって
子供の頃は諦めていたのが、ある人の影響で変わったって」

森崎「ああ、アジア予選の頃言ってたな」

陽子「あれってね…森崎くんの事だったんだよ」

森崎「えっ!?」

ややあっておもむろに森崎の方を向いた陽子は瞳を潤ませていた。
あふれ出る何かを堪え切れないと言わんばかりの表情は
“女”をふんだんに感じさせる物で、森崎の鼓動も激しくなる。

陽子「最初はね、日本が弱い筈のサッカーで世界一になれちゃうなんて凄いな〜、って思っただけだった。
それで暇つぶしのつもりで森崎くんの事を調べると、どんどんのめり込んで行ったんだ。
昔は弱くて誰にもアテにされていなかったのに、ガムシャラに色んな事をやって次第に強くなって…
私もこの人みたいになりたい。弱いなら強くなればいいって思える様になりたい。
そう思って兄さんの所に転がり込んだんだ…自分の行動で何か自分だけの物を得たかったから」

森崎「そうだったのか…」

215 :代理です。:2013/08/21(水) 22:07:03.47 ID:G04uPeZw
陽子「勿論私はサッカーなんて出来ない。そもそも運動が苦手だしね。
だけど私は裏方仕事なら出来るかも、って思って日本サッカー協会に入って、活動して…
そしてここまで来れたんだ。森崎くんみたいに、ガムシャラに頑張った結果が出たんだ。
それを今、すごく実感できたんだ…」

ここで陽子はじっと森崎を見つめた。その瞳に普段は感じない、
森崎にとっては異物に等しい感情が次々と湧き上がってくる。

陽子「有難う、森崎くん。あなたのお蔭よ」

森崎「陽子さん…」

A 「まだだぜ。そのお礼は、優勝してからの方がいいだろ?」
B 「それじゃ、そのお代は陽子さんって事で」
C 「その調子で、俺をもっとも近い位置でサポートし続けてくれないか?」
D 「いや…そろそろ陽子って呼んでいいか?」
E 「そんなに大事な事なら、親御さんの事情で止めさせる訳にはいかないな」

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2013/8/21 23:00:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

216 :代理です。:2013/08/26(月) 21:58:49.03 ID:B9Bfm73W
>A 「まだだぜ。そのお礼は、優勝してからの方がいいだろ?」

陽子「………森崎くんらしいね…この大会で優勝した後は、
オリンピックもワールドカップも優勝してからの方がいいって言っていそう」

森崎「おいおい、いくら俺でもたまには休むぞ?この大会の後は流石に休養を入れるさ」

陽子「そっか…そうだよね…森崎くんを見ていると一体何処まで行くのか、
急ぎ過ぎて墜落したりしないか不安になるけど、ちゃんと休みも取るつもりなら安心かな」

森崎「(なんか…変な気分だな…)」

二人の会話に甘い雰囲気が漂い始め、森崎は自分の感情を持て余し始めた。
思えばこれほど肩に力を入れずに話し合い、純粋に労りの気持ちを向けられたのは何時以来か。
ライバルや敵とは常に嘲り合い、仲間からは支持を集める為強さを見せ続け、
それらの疲れを勝利の愉悦以外の何かで癒す事はあっただろうか。

森崎「(もう少し、何か話す事ないかな…)」

もう少しこの時間を楽しみたい。森崎は素直にそう思った。
だが陽子の思惑は違った。

陽子「…それじゃ、森崎くんが頑張り過ぎで倒れたりしなさそうだって安心できたし…私は仕事に戻るね」

森崎「えっ?もうかよ。メシぐらい一緒に食わないか?」

陽子「ごめん、これから日本に飛ばないといけないから。もうそろそろ空港に行かないと。それじゃあ、またね!」

スタタタ…

森崎「…ちぇっ。いい雰囲気かと思ったのになあ」

217 :代理です。:2013/08/26(月) 21:59:34.24 ID:B9Bfm73W
陽子は仕事に戻るといい、足早に立ち去って行った。
仕事と言われてしまってはそれを邪魔する訳にはいかない森崎は見送るしかない。

森崎「まあいいか。ある程度口説けたし、いい反応だったし」

やがて森崎は今日の所はこれで十分だと納得し、気を取り直してホテルの外に向かった。



彼は知らない。婦人用化粧室に駆け込んだ陽子が胸を押さえながらため息をついていた事を。

陽子「あぶない、あぶない…何をやっているのかしら、私」

仕事の話は嘘ではなかった。だが空港に行く前に夕食を共にする時間くらいは十分あった。
ただ単に彼女が踏み出せなかっただけだった。

陽子「…これでいいのよ。決勝戦なんて大一番の前に、私の事で気を散らさせる訳にはいかないんだから。
だからあの対応でいい筈。深入りしちゃ、ダメ………だったら最初からそんな雰囲気にするべきじゃなかったわよね。
本当に何やってるんだろ。臆病だなあ、私。あの頃から全然変わっていないじゃないの。ああもう…」

218 :代理です。:2013/08/27(火) 01:30:40.13 ID:SBElElVm
一時の安らぎを得た全日本ユースとは裏腹に、決戦を控えた2チームがある。
ドイツユースとブラジルユースである。

当然彼らは明日の準備に忙しい夜を送っていた。



〜ドイツユース宿舎、会議室〜

ルディ「以上がブラジルユースの選手達のデータと予想スタメンだ。しっかり頭に叩き込んでおけ。
流石はブラジルと言わざるを得ないタレントの宝庫だが、つけいるスキはいくつもある」

シュナイダー「(やはり相当に強いな…日本以上かも知れん。だが、戦い様はある)」

ルディ「マーガス、まずはお前の働きが重要となるぞ。相手の跳ね返し屋、アマラウも中々の物だが
断言する、お前の方が有利だ。お前のチャンスメイクが攻撃の鍵になるぞ」

マーガス「はい!」

シュナイダー「(マーガスはポストプレイヤーとしては世界一になれる男だ)」

ルディ「シュナイダー、お前は当然厳しいマークに晒されるだろう。だがそんなのは何時もの事だ。
相手はボール狩り役のドトールとジェトーリオ、ブロッカーのディウセウ、そしてセービングに長けた
ゲルティスと一通り揃った守備体制だ。お前も相手と状況に応じて適切な攻め方をしろ」

シュナイダー「はい(俺は世界一のストライカーとして勝利をもぎ取ればいい。それだけだ)」

ルディ「無論相手もこちらの得意な攻撃パターンをむざむざ使わせてはくれないだろう。
どちらが主導権を握れるかは中盤での攻防にかかっている。各々の役割をしっかりと把握するんだ」

カルツ「(向こうは恐らく4−4−2。こっちは3−5−2だ。5対4で負ける訳にゃいかんぜよ)」

219 :代理です。:2013/08/27(火) 01:31:14.70 ID:SBElElVm
ルディ「ポブルセン、お前はパスワークに振り回されるな。誰が決定的な場面で切り込もうとしているか
カンを働かせてアタックするんだ。そしてボールを持ったら時折パスを織り交ぜつつ何時も通り敵陣に向かって突撃しろ」

ポブルセン「はい…」

シュナイダー「(ポブルセンは愚かな狂犬だが、敵に噛みつかせれば十二分に役に立つ)」

ルディ「メッツァ、お前のロングパスは何時も以上に重要になる。ブラジルの中盤はどちらかと言えば
パスカットが苦手だ。お前がどれだけスムーズに前線につなげられるかで攻撃回数が左右される」

メッツァ「はーい」

シュナイダー「(メッツァはパサーに徹する計算しやすい戦力だ。常に敵を困らせる事が出来る)」

ルディ「カペロマン、お前はメッツァの逆サイドに配置されている分攻め易くなる筈だ。
マークを集められたらしめた物だと味方を上手く使え。守備参加も忘れるなよ」

カペロマン「はい」

シュナイダー「(カペロマンのサイドアタックとコーナーキックは分かり易く強力な武器だ)」

ルディ「カルツ、お前は守備参加は勿論だがそれ以上にボールキープ役として働かなくてはいけない。
ブラジルは前線の守備力も高い。チームメイトが奪ったボールを奪い返されないのがお前の仕事だ」

カルツ「はいっと」

シュナイダー「(カルツは大きな武器はないが、決定的な仕事に必ず絡む頼れる男だ)」

220 :代理です。:2013/08/27(火) 01:32:07.38 ID:SBElElVm
ルディ「シェスター、お前が中盤の守備の要だ。ブラジルはチーム全体としてドリブルのレベルが高いが
パサーも数人居る。奴らが何をしてきても良い様に備え、向こうのシュート数を減らすんだ」

シェスター「はい!」

シュナイダー「(シェスターはウチの中盤に足りない守備力を提供してくれる貴重な存在だ)」

ルディ「中盤の対策は以上だ。だがこれでも攻め込まれる時、シュートを撃たれそうになる時はあるだろう。
いざそうなった時、DF達とGKはどうすればいいのか。次はそこに共通認識を図る」

フライハイト「(現実的な勝利を目指すのなら失点は1点が限界だ)」

ルディ「クランケ、恐らくブラジルはサイドアタックをしてこないだろう。ミドルシューターが多いチームだからだ、
わざわざセンタリングを上げる必要がない。中央に寄せて前に出て、ラストパスのカットを狙え」

クランケ「はい」

シュナイダー「(クランケはラストパスに割り込む専門家)」

ルディ「ヨハンセン、お前はカルロスの相手に集中しろ。奴は世界トップクラスのドリブラーだが
お前なら対抗できる。無論味方と協力してな。カルロスが近寄り過ぎるのを阻止できれば失点率はグッと下がる」

ヨハンセン「はい」

シュナイダー「(ヨハンセンはエース殺し)」

ルディ「フライハイト、お前にはもっとも難しい役割を頼む事になる。ゴール前にひっついていれば
良い訳でもなく、無暗に飛び出しても藪蛇だ。臨機応変にとしか言えん。だがやってみせろ」

フライハイト「…はい」

シュナイダー「(フライハイトはハイレベルな万能選手だ。こいつになら最終ラインを任せられる)」

221 :代理:2013/08/27(火) 04:15:25.42 ID:+9X2F9F7
ルディ「ミューラー、お前には特に言う事はない。強いて言えば飛び出しの機会はあまり無いだろうから
無理に飛び出しを狙おうとせずどっしりと構える位だ。パンチングでしっかりと防いでいけば大丈夫だ」

ミューラー「はい

シュナイダー「(ミューラーはサイクロンもライトニングタイガーも防げる。何の心配もない)」

ルディ「作戦は以上だ。最後に一言だけ言っておく。準決勝でブラジルに当たった事を不運に思うな。
むしろ幸運に思え。最強を証明する為には倒さなくてはならない相手なのだ、ならば早い内に済ませてしまうんだ」

ドイツメンバー『はい!』

ルディ「ドイツサッカーの、お前たちの強さを見せつけてこい!!」

ドイツメンバー『はい!!』

シュナイダー「(そう…最強のサッカー王国の称号をブラジルから奪い、それを手土産に決勝戦で
日本と決着をつける!サッカー選手としてこれ以上ない程のシチュエーションだ。嬉しくない筈がない。
勝つ。勝てるのではない、勝つ!俺達は勝って頂点を手に入れて見せる!)」

222 :代理です。:2013/08/28(水) 00:08:56.79 ID:rdSavevM
〜ブラジルユース宿舎、会議室〜

ロベルト「さて、ドイツユースのデータおさらいは以上だ。もうするまでもないとは思うがな」

ブラジルメンバー『………』

ロベルト「改めて言うまでもなく、ドイツは強い。ここまではずっと楽勝続きだったが、
ドイツ相手にはそうはいかん。よって…今回から本気を出せ。許可する!」

マウリシオ「よっしゃあ!」

ザガロ「やっとか…鬱憤が溜まっていたぜ」

ネイ「派手に遊ぶかあ!」

ロベルト「騒ぎすぎるな。次は具体的な作戦内容だが、既にサンタマリアと
話し合い決めた作戦があるので、サンタマリアにそれを解説してもらう」

サンタマリア「はい。みんなきけ、ドイツ相手にやる事は3つのシンプルな作戦だ」

ジェトーリオ「3つ?今回は少な目だね」

サンタマリア「それ程目立った穴がなく、しかも武器が多いハイレベルなチームが相手だからだ。
アレコレ細かい指示を出して朝令暮改的な事態に陥るよりも、やるべき事を分かり易くまとめ
後は各々の状況判断に任せる方が上手くいく。特に俺達の場合はな」

トニーニョ「始めてくれ。2トップ対策、攻撃権の独占、そしてシュートラッシュだったな」

サンタマリア「そうだ。まずは相手の得点源をどうするかの作戦、2トップ対策だ。
マーガスに自由にポストプレイをさせているとその分シュナイダーがシュートを撃ち放題だ。
無論オフサイドトラップによって回数を減らさせるが、それだけでは対策にならん。
よってまずはアマラウに任せるだけじゃなく、ディウセウにもサポートしてもらう」

223 :代理です。:2013/08/28(水) 00:09:41.28 ID:rdSavevM
ディウセウ「オラなのか?ドトールじゃなくて?」

ドトール「俺はこぼれ球になった時に備える役割だ。シュナイダーに極力撃たせん為にな」

カルロス「2トップ対策としては極めて妥当だな。だがそこまでやっても
毎回止められるとは思えない。そこで必要になってくる次の手段はなんだ?サンタマリア」

サンタマリア「ああ、そこで次の作戦、攻撃権の独占が重要になってくる。まずはジェトーリオ、
お前がカペロマンをマークし奴のサイドアタックを封じろ。それだけでドイツは相当困るだろう」

ジェトーリオ「はーい。得意分野だよ」

サンタマリア「残りはポブルセン、メッツァ、カルツ、シェスター、フライハイトなどだが…
こいつらは残りの前線のメンバーで流動的に守って対処する。俺が下がり目の位置からサインを送るから
それに従ってくれ。ドイツにどんな攻め方をしても駄目、と焦らせるのが重要だ」

トニーニョ「了解した」
ネイ「オッケー」
マウリシオ「はいッス!」
ザガロ「仕方ねえな」

カルロス「守備は分かった。攻撃は?」

サンタマリア「攻撃はFWとMFが頻繁にポジションチェンジを繰り返し、相手によって
ドリブルとパスを使い分ける。特に短いバックパスを活用してミドルシュートチャンスを増やすんだ」

カルロス「なるほど。それが最後の作戦、シュートラッシュに繋がるんだな」

サンタマリア「その通り。シュートラッシュははっきり言って作戦などとは呼びたくないのだが…
今回は重要だ。ミューラーを攻略する為に、そしてドイツの弱点をつく為にミドルシュートを
積極的に撃っていくのが大事になるんだ。積極的に、どころか乱発でもいい位だ」

224 :代理です。:2013/08/28(水) 00:10:27.15 ID:rdSavevM
ザガロ「ククク…いいじゃねえか。俺好みの作戦だ」

サンタマリア「以上の3点をくれぐれも忘れないでくれ。これ等に反さないのなら何をしてもいい。何か質問は?」

ゲルティス「…質問ではないが、頼みがある」

サンタマリア「ん?お前からか?珍しいな」

ゲルティス「単純な頼みだ…2点取ってくれ」

カルロス「うん?…俺達攻撃陣が2点以上取れば、負けないと言っているのか?」

ゲルティス「そうだ。俺はこの試合の失点数は1になる確率がもっとも高いと考えている。よって2点取ってほしい」

カルロス「…分かった。元より取れるだけ取るつもりだ、2点以上取ってみせよう」

サンタマリア「他には何かないか?………よし。以上で説明終了です、監督」

ロベルト「うむ。それでは最後に監督らしい事を言っておく。この作戦は俺から見ても文句の付けどころがない。
だがそれでもサッカーは何が起きるか分からない。だから…もし劣勢に追い込まれたら今までのサッカー人生の中で
一番辛くて屈辱的だった事を思い出せ。そしてそれをどうやって乗り越えてここまで来たかを思い出せ。以上だ」

ブラジルメンバー「(今までで一番辛くて…)」「(屈辱的だった事…)」「(それは勿論、コイツだな!)」



コインブラ「……………」



カルロス「(未だコインブラは孤立したまま…やはり監督はこいつを試合に出す気はないのだろうか?
そしてコインブラは全く本心を見せようとしない…もう限界だ。リスクを覚悟でぶつかりあってみなければ!)」

225 :代理です。:2013/09/05(木) 13:44:22.22 ID:jHcZIjFr
強敵との決戦に備えるブラジルユースとドイツユース。この2チームの間には一つ決定的な差があった。

それはチームが一枚岩であるか否かである。

事情を知らない者ならドイツユースの方が内紛の危険性が高いと考えるだろう。
西ドイツと東ドイツと言う二つに分かれていた国が数十年の時を経て融合を試みている今、
西側と東側には経済格差を始めとする様々な問題が発生していた。
2つのサッカーチームを融合させる事もまた問題が発生して当然であり、実際に発生しかけていた。

しかしドイツユースはこの問題をいち早くクリアしていた。
個人個人の思惑はどうあれど全員が新生ドイツの栄光を望んでいるのに違いはなく、
それを西ドイツ側の若手のカリスマであるシュナイダーがスパルタ式に統率し、
更に東ドイツ側の若手で最大の実力者であるフライハイトがそのシュナイダーの
参謀役を買って出た事で西側と東側の融合はほぼ理想的に進んでいたのである。
ポブルセンとミューラーと言う問題児たちも居たが、彼らの問題行動は西東の件とは
関係がない本人の資質のせいだった為むしろ西東の件を意識させない効果すらあったかも知れない。

本当に問題があったのはブラジルユースの方であり、それはコインブラの存在だった。

南米には半ば都市伝説扱いされている、知る人ぞ知るアマチュア選手が存在する。
“勝負請負人A(エース)”と言う冗談の様な名称で知られ、
生半可なプロ選手をはるかに凌ぐ実力を持ってアマチュアサッカーの賭け試合に介入して
金を稼ぐ謎の達人と言う名称以上に冗談にしか聞こえない選手。
その正体こそアルツール・アンチネス・コインブラその人である。

彼はロベルト本郷の誘いによりブラジルユースに加入し、他者を圧倒する実力をみせつけ10番を着る資格を得た。
しかし試合には一切出場せず、内外から様々な憶測を呼びながらベンチに座り続けている。
その存在は本来一つにまとまっている筈のブラジルユース内の巨大な異物であり続けた。

決勝戦への最後の椅子争いを明日に控えた前夜、ブラジルユースキャプテンのカルロス・サンターナはついに動いた。
コインブラの真意を確かめ、彼がチームにとって何なのかを見極める為に。

226 :代理です。:2013/09/05(木) 13:44:59.75 ID:jHcZIjFr
コインブラ「こんな所に呼び出して何の用だ…?」

カルロス「お前には聞きたい事が山ほどある。俺が納得いくまで付き合ってもらうぞ」

カルロスはコインブラと一対一で対峙していた。
ミーティングの数十分後、会議室に彼だけを呼び出したのだ。

コインブラ「そう長く付き合うつもりはない。何を聞きたいのか最初にハッキリさせろ」

カルロス「では要点を3つに絞ろう。俺が知りたいのは過去、現在、そして未来に関わる事だ。
まずは…お前が俺の記憶の中にあるアーサーと同一人物なのかどうか。
次に…お前がブラジルユースに入るまで何処で何をしていたか。
最後に…お前がこのブラジルユースで何を何の為にしようとしているかだ」

二人の会話は決して友好的な物ではなかった。カルロスはブラジルユースの選手達の中では
かなり温厚な人物だが、それでも度重なるコインブラの身勝手で理解し難い振る舞いを
これ以上放っておけないと言う決意を込めた声を出していた。

コインブラ「……………」

カルロス「まずはこれに答えろ。お前はフラメンゴのデンチ・デレイチ(少年)チームに居たのか?
あの時、サッカーボールに慣れていなかった俺が入団テストに落ちそうで焦っていた時に
一緒に練習して助けてくれた…その後再会を約束したアーサーなのか?」

コインブラ「………ああ。俺は確かにフラメンゴに所属していた。そして退団した日に
お前にサッカーボールを譲ったのも覚えている。こんなに長く持ち続けているとは思わなかったがな」

カルロス「やはり…!」

それに対するコインブラの反応は何とも読み難い物で、渋々ながら淡々と答えるその表情は
不快感を主とした感情を隠しきれていなかった。

227 :代理です。:2013/09/05(木) 13:45:32.59 ID:jHcZIjFr
カルロス「だが、お前は結局戻ってこなかった。チームの誰に聞いてもアーサーなどと言う者は
知らないと言われた。あれはコインブラと言う名で登録していたからなのか?」

コインブラ「…いや。クラブの誰もが俺の事を居なかった事にしたかったからだろう」

カルロス「何!?なんでそんな事が…いや…上手すぎたからか」

コインブラ「そうだ…俺はチームの為に全力を尽くしてプレイしたが、その結果得られた物は
俺を持て余してまとまる事が出来なくなり、崩壊したチームだった。実にくだらない結末だったさ」

カルロス「(サラッと言っているが…恐らくは、とんでもない境遇だったのだろう。
あれだけずば抜けていれば相手チームから反則やラフプレイを繰り返されていたに違いない。
それなのにチームメイトも指導層も味方ではなく敵と化していたとしたら…恐ろしい物だな)」

コインブラ「お前にも覚えがあるだろう?自分の無力を強い相手を妬む事で誤魔化そうとする者達の視線を」

カルロス「…確かに俺もそういう思いをした事はある。だがそれだけでサッカーを止めようとは思わないし、
そんな下らないトラブルは上のレベルに上がっていけば自然と消え去る。その先に得られる物がある筈だ」

コインブラ「…得られる物、だと?くだらんな」

カルロス「くだらないだと…?クラブサッカーを止めたのになぜそんな事が言えるんだ?
他のどこかでサッカーをしていたのだろうが、そこで何を見たと言うんだ?」

コインブラ「………やけに詳しそうだな。ある程度事前に調査してきたのか?」

カルロス「俺が知っているのは8年前お前が俺と入れ替わる様にフラメンゴを退団した事。
あちこちのアマチュアサッカーに介入して金を稼いでいた事。
そしてそれは病気の養父…ジャイロを養う為に行っていた事くらいだ」

二人の価値観は噛み合わず、次第に会話は剣呑さを増していく。
少年時代の旧友同士が思い出話をしている筈なのに、とてもそんな穏やかな空気ではなかった。

228 :代理です。:2013/09/05(木) 13:46:15.99 ID:jHcZIjFr
コインブラ「…そこまで分かっているのにそれ以上何を聞きたいと言うんだ?」

カルロス「この程度では全然足りはしないさ。何故フラメンゴに戻ってこなかったんだ?
それ以降何故クラブに入らず、そんな生活をしていたんだ?そしてその年月に何を見てお前はこうなったんだ!」

コインブラ「…フラメンゴに戻る訳などない。あの日、お前と別れて家に戻ったら親父は倒れていたんだからな」

カルロス「!」

コインブラ「デンチ・デレイチのチームでプレイしていても金は貰えん。逆に払わされる側だ。
かと言って何のツテもない子供が働いたとしても大の大人の入院費には到底足りない。
当時俺がまとまった金を稼ぐには、子供だと侮る大人を挑発して金を巻き上げる位しか無かった」

カルロス「…よくそんな事が出来たな?いくら上手いとは言え、12歳じゃ限界があっただろうに…」

コインブラ「当然最初から上手く行った訳じゃなかった。だから親父の残したノートに従い
練習を積み重ね、多勢に無勢を引っくり返し…そんな事を繰り返している内に力がついていった」

カルロス「なるほど…ジャイロは指導者としても優れていたと言う訳か。だが、彼はもうこの世には…」

コインブラ「…俺が15の時、目の前で息を引き取ったぞ。最後までブラジルサッカーの行方を気にしてな」

カルロス「流石と言うべきか…骨の髄までセレソンだったんだな。見習わなければ」

コインブラ「…一体何を見習うと言うんだ?」

カルロス「うん?それは勿論、そのブラジルサッカーにかける情熱と信念を…」

コインブラ「親父がそれで何を得られたと言うんだ!」

カルロス「!!?」

229 :代理です。:2013/09/05(木) 13:47:06.42 ID:jHcZIjFr
先に声を荒げたのはコインブラの方だった。彼は初めて感情を剥き出しにし、カルロスを糾弾する側に回った。

コインブラ「伝説の選手?要は忘れ去られたどうでもいい存在だ。親父の見舞いには俺以外誰も来なかったぞ」

カルロス「誰もか?引退後は世捨て人の様な生活をしていたと聞いたが…誰も来なかったのか?」

コインブラ「そうだ。金を持っている元選手なりサッカー協会関係者なりが居ただろうに、
誰も親父を助けようとしなかった。世間は親父以降の世代と、今の世代のセレソンについて騒ぐばかりだった!」

カルロス「それは…仕方がないだろう。偉大なセレソンでありながら、引退後生活を乱し
悲惨な最期を遂げた選手も居る。身内としてはそんな理屈では納得し難いだろうが…」

コインブラ「そんな事は分かっている。結局親父は何も得られず、何も残らなかっただけだ。
第二次世界大戦で全盛期を逃しながら、それでもワールドカップに出てボロボロになり…
その後の選手達の活躍の陰に忘れ去られた。頂点を目指して得た結果は…むなしい最期だった」

カルロス「(伝説の名選手に最期は何も残らなかっただって…?そんな事が本当に有り得るのか…?)」

コインブラ「頂点に達すれば妬みと恨みを買い、達せなければそれすら得られず存在を消される。
お前はその一体何を見習うと言うんだ。見習って何が得られると言うんだ!」

カルロス「(違う…何も残らないなんて、そんな筈はない!そんな筈は…!)」

栄光を求めた結果と最期。生々しい体験を聞かされたカルロスはそれを否定したかった。
だが否定する事は出来なかった。初めて見るコインブラの激情を押し返せなかった。

カルロス「…なら、お前は…お前は何故ここにいるんだ?ここで何をしているんだ…?」

コインブラ「っ………」

代わりに絞り出した質問はコインブラの怒りを鎮める効果があった。

230 :代理です。:2013/09/05(木) 13:47:57.16 ID:jHcZIjFr
コインブラ「……………」

カルロス「何故ブラジルユースに入った?何故…サッカーを続けているんだ?」

コインブラ「…親父が何を見ていたか、知りたかったからだ」

カルロス「ジャイロが…」

コインブラ「親父は最後の最後まで後悔らしきものを見せなかった。
ブラジルが勝つと我が事の様に喜び、ブラジルが負けると何日も嘆いていた。
俺にはそれが理解できない。だから…監督に誘われてここに来た。
実際にセレソンになってみれば、親父が何故あそこまで拘り続けたか分かるかも知れないとな」

カルロス「そうだったのか…それなら、何か分かった事があるんだな?」

コインブラ「…いや。全く分からない」

カルロス「!!」

冷静になったコインブラは問われるまま己の目的と意図を語り出し、カルロスに背を向けて
窓から夜空を見上げた。故に気付かなかった。カルロスの肩が怒りで震え始めた事に。

コインブラ「この大会を見てきても、何も分からなかった。やはり俺には
何の縁もなく、何の価値もないのだろう。セレソンとして頂点を目指す事は」

カルロス「………それで、お前はどうするつもりだ。結局見物するだけでワールドユースを終えるつもりか?」

コインブラ「そうだな…それでもいいが、ブラジルが負けそうになったら出るつもりだ。
監督には少しばかり恩があるし、どうせなら無価値でも頂点と言う奴を得ておきたい。
明日の試合は俺抜きならドイツが勝つ確率が高い。だから…」

231 :代理です。:2013/09/05(木) 13:49:03.02 ID:jHcZIjFr
.


カルロス「ふざけるな!」



コインブラ「!?」

故にカルロスが怒声を上げた時、彼の怒りを宥める手段はもう無かった。

カルロス「何がブラジルが負けそうになったら出るつもり、だ!そんな事は例え監督が許しても
この俺が、ブラジルユースキャプテンのカルロス・サンターナが許さん!」

コインブラ「…自分で言っていて矛盾に気付かないのか?監督に刃向う上に
勝利の為に最善を尽くさないのがお前のキャプテンとしての務めだと…」

カルロス「キャプテンだから言っているんだ!今ハッキリと確信した!
そんな腑抜けた状態のお前はチームの癌でしかない!お前を試合に出させる訳にはいかない!」

コインブラ「なんだと!?」

続いてコインブラも激昂した。それは初めて彼がチームメイトに見せた剥き出しの感情だった。
二人の生の激情がぶつかり合い、殺し合いに発展しそうな程緊迫した空気が場に満ちる。

カルロス「何が何も分からなかっただ!何が何の縁も価値もないだ!
今のお前の話と今までのお前の振る舞いを見てそんな戯言を信じる奴が居るか!
それにも拘わらず己の魂や信念を賭けて戦う覚悟の無い奴などただの足手まといだ!」

コインブラ「足手まといと来たか!俺に出せる手も足も無い奴が良く言えた物だな!」

232 :代理です。:2013/09/05(木) 13:49:43.20 ID:jHcZIjFr
カルロス「確かに純粋に実力だけで比べれば俺は未だお前に追いついていない。
だがその差はお前が願っている程大きな物ではない…練習ではなく実戦なら!
1対1ではなくチーム対チームの試合なら!間違いなく俺が勝つ程度の小さな差だ!」

コインブラ「ほざきやがって…そんなに魂やら信念やらが大事だと言うのなら
明日の試合でドイツを倒してみるんだな。俺の見立てでは3−2でドイツが勝つ」

カルロス「ああ倒してやろうとも。俺がセレソンとは何かを見せてやる。
お前には絶望的に足りない物があると証明してやる。それを精々学ぶんだな。
それを見ても尚何も分からないのなら…お前は最初からセレソンにはなれなかったと言う事だ」

コインブラ「良いだろう。くだらん物を見る羽目になりそうだがな」

カルロス「…話は以上だ。さっさと寝ろ。これ以上口で語る事はない」

カッ、カッ、カッ、カッ…

コインブラ「……………」



かくして二人の主義主張は一切の妥協を見出す事なく、激突と火花のみを後に残した。

ブラジルユースは10番を着る選手が孤立したまま準決勝に挑む事になる。

233 :


234 :代理:2013/09/07(土) 02:56:40.58 ID:ArUV1VL2
〜大会22日目、リオ州のエスタジオ・ド・マラカナン〜

ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

観客「来た来た来たーーーッ!待ってましたァ!」「遂に我らがブラジルユースの出番だぜ!!」
「今日の相手はドイツだ!」「やっと歯応えのあるチームを倒せそうだな」
「今までのザコとはちょっと違うぞ!気をつけろよーっ!」「油断するな!ちゃんと勝て!」
「カルロス!得点王取れよーっ!」「ゲルティス!ドイツなんかに得点させるなよーっ!」

放送「全世界の皆さまこんにちは!ここエスタジオ・ド・マラカナンは最早数えるのも
嫌になる程超満員!観客席が抜けてしまわないか心配してしまう喧噪に包まれています!
それもその筈、今日のゲームは我らがブラジルユースがドイツユースと準決勝で激突するのです!
御存じドイツユースは大会前から優勝候補の一角として名高かった強敵!

グループ予選こそ2位突破だったものの、ここまでの4試合での戦績は18得点3失点と
2位突破だから何だと言わんばかりの堂々たる戦果!その証拠に準々決勝ではグループCを
1位突破したウルグアイユースを4−1で一蹴しており、また一足早く決勝進出を決めた
全日本ユースとも激戦の末に2−2で引き分けているのです!

準決勝の相手として不足なしのこのチームを率いるのは現在8ゴールで得点王ランキングで
カルロスくんと同率3位についているエースストライカーのカール・ハインツ・シュナイダー!
彼の得点力は我らがブラジルユースにとって多大なる脅威となるでしょう。
まずはこのシュナイダーくんを抑え込めるかどうかが守備における最重要課題となります。

そしてドイツは勿論守備も堅いのは言うまでもありません!その象徴はGKのミューラーくん!
豪快な体格とそれ以上に豪快なセービングは生半可なシュートを寄せ付けません!
鋼鉄の巨人と言う従来の異名に加え、今大会で雷神と言う新たな異名を得た彼に
我らがブラジルのシューター達はどう立ち向かうのでしょうか?目が離せません!」

準決勝のマラカナンスタジアムは当然の如くブラジルの勝利を願うブラジル人観客で満員だった。
ドイツ人の応援団がどれだけ声を張り上げてもかき消される程である。

235 :代理:2013/09/07(土) 02:58:00.58 ID:ArUV1VL2
松山「なんか、実況が露骨にブラジル寄りだな…」

三杉「当然の事だよ。ブラジルがホームチームなんだから」

赤井「これ位なら大人しい方っスよ。国によっちゃもっと酷かったりしますから」

翼「ブラジルが決勝に出てきた場合、俺達はもっと悪役にされるよ」

試合を観戦しに来た全日本ユースにも注目が集まる事はなかった。
近くの者達は彼らをチラチラと見はしたが、やはり気になるのは目の前の試合の様で
すぐにフィールドに視線を戻してしまう為彼らは落ち着いて会話が出来た。

中山「この試合はどっちが勝つとしても大いに参考になるな。一瞬たりとも見逃せないぞ」

中里「森崎。この試合、どんな結果になると思うでゴザルか?」

森崎「ん?そうだな…」

A 「シュナイダーには悪いが、ブラジルの大勝の予感がするぜ」
B 「僅差でブラジルだな。ドイツ相手に相性が良いと思う」
C 「五分五分だな。どっちに転ぶか、最後まで分からない」
D 「ドイツが勝つだろうな。流石に楽勝とは行かないだろうが」
E 「ブラジルの奴らは大した事がねえ。ドイツの圧勝だ」

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2013/9/7 12:00:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

236 :代理:2013/09/10(火) 02:51:01.79 ID:wKuX0GbD
>C 「五分五分だな。どっちに転ぶか、最後まで分からない」

森崎はしばらく考えてから分からないと答えた。

次藤「なんじゃ?お前にしちゃ煮え切らん答えじゃのう」

森崎「しょうがねえだろ、本当に分からないんだ。どっちも得点力が高いし、
守備力に大して差がある訳でもねえ。目立った弱点もない。そうなれば後は流れと駆け引きだ」

翼「…俺はブラジル有利と見るな」

森崎「あん?」

翼「一見攻撃力と守備力は拮抗している様に見えるが、ブラジルの方が攻守共に支配力が高い。
端的に言ってブラジルの方がチャンスを多く作れると思うんだ」

森崎「チャンスの数かよ。それだけじゃ分かったもんじゃねえぞ。
シュート撃ちまくったのにギリギリまで逆転できなかったのは何処の攻撃陣だ、ああ?」

翼「一般論だろ…それを言うならヘルナンデスにセーブ率で負けていただろうに」

早田「おいおい、こんな所でケンカしてんじゃねえよ」

森崎「チッ」

翼「………」

日向「どうせ見てりゃ分かるぜ。フフフ…」

237 :代理:2013/09/10(火) 03:23:02.11 ID:3HgBBD6r
全日本ユースが何時もの内ゲバをしている最中、フィールドでは両チームのキャプテンがセンターサークルで
闘志をぶつけあっていた。特に遺恨は無い二人の仲だったが、だからと言って仲良くする気は毛頭無い。

シュナイダー「こうしてフィールドで出会うのは初めてだな。カルロス・サンターナ」

カルロス「ああ。だがこれからお互い長い付き合いになるだろうさ。共に国の代表としてな」

シュナイダー「そうだな。この試合、俺はホームチームのブラジルを打ち倒し以後ブラジルから
恨まれる選手となるだろう。そしてお前は俺にリベンジを果たす事を義務付けられるだろう」

カルロス「いや、それはないさ。俺の方が歴史的な統一を象徴するチームの栄光を阻み、
新生ドイツの門出にケチをつけた存在としてドイツサッカーに首を狙われる様になるのさ」

シュナイダー「…良かった。優等生タイプと聞いていたが、きちんとそう言う事も言えるんだな」

カルロス「当然だ。お互いの健闘を誓い合う時は、同時に己の勝利を誓う物だろう?」

シュナイダー「良く分かっている様でなによりだ。それでこそ遠慮なく叩き潰せると言う物だ」

カルロス「こちらもな。さて、そろそろお客さんを焦らすのは止めてコイントスをしようか」

シュナイダー「ああ。審判、お願いします」

審判「(何時もこれ位無難なやり取りだったらな〜…)」

コイントスはドイツが取り、シュナイダーは迷いなくボールを選んだ。
試合はドイツユースからのキックオフで始まる。

238 :代理:2013/09/10(火) 03:23:45.47 ID:3HgBBD6r
クランケ「(東ドイツ出身の俺には正に未来がかかった試合だ)」
ヨハンセン「(決勝戦に行き、優勝し、ビッグクラブへ行くんだ!)」
マーガス「(敵の跳ね返し屋に負けて堪るか。俺は世界一のポストプレイヤーだ!)」
メッツァ「(とにかくパスを成功させなきゃ。僕にはそれしかないんだから)」
カペロマン「(さあて、ブラジルのサイドの守備はどんな物だ?)」
シェスター「(どんな攻め方でも対応してみせ、俺がヒーローだ!)」
ポブルセン「(ブラジルめ…地獄の底に突き落としてやる!精々苦しめ!)」
フライハイト「(今日は晴天か…雨の加護は得られない。苦しい試合になりそうだな)」
カルツ「(どう考えても楽には勝たせてくれないよなァ。忙しくなりそうだぜ)」
ミューラー「(師匠、見ていて下さい。俺はどんなチームにも負けない)」
シュナイダー「(さあ行くぞ。マリー、お兄ちゃんは勝ってみせるぞ)」



マウリシオ「(俺がオマケとか経験積み要員じゃないって所、見せなきゃな!)」
ドトール「(ドイツは強敵だ。一瞬の油断も許されない)」
アマラウ「(だが勝つのは俺達ブラジルに決まっているんだぜ)」
ジェトーリオ「(相手がカッカしてドツボに嵌ってくれると嬉しいんだけどな〜)」
ザガロ「(鋼鉄の巨人だか雷神だかをスクラップにしてやるぜ!)」
ディウセウ「(うひょー、強そう!オラワクワクしてきたぞ!)」
ネイ「(柔よく剛を制す!こうやって勝つのがモテル秘訣なんだよな〜)」
トニーニョ「(まずは序盤、必ず主導権を握ってみせる)」
サンタマリア「(こちらの作戦が嵌れば相手の弱点がどんどん露呈する筈だ)」
ゲルティス「(セルフコンディションチェック完了。これより実戦に入る)」
カルロス「(俺が、俺達が、セレソンだ!)」

239 :創る名無しに見る名無し:2013/10/11(金) 20:53:29.04 ID:EaK8h9+w
――――― 完 ――――――

240 :創る名無しに見る名無し:2013/10/12(土) 11:02:40.99 ID:oYqkksB+
↑分かったから黙って待ってような

241 :創る名無しに見る名無し:2013/10/12(土) 12:58:09.47 ID:Zw7tFTfs
そのレスがいらない
荒らしに反応したお前も荒らし
俺も荒らし

242 :代理です。:2013/10/12(土) 16:24:08.45 ID:hl6suVOg
ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!
ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

放送「待ちに待ったキックオーーーーーフ!前半のキックオフ権利はドイツユースから!
マーガスくんが蹴り、シュナイダーくんがしばらくキープしてから…ポブルセンくんに!ドリブル開始!」

シュナイダー「(まずはポブルセンの突進でジャブとしよう)」

サンタマリア「(ポブルセンか。それなら)ネイ、トニーニョ!」

ネイ・トニーニョ『OKだ!』

キックオフしたドイツはまずはポブルセンをけしかける事にした。
上手く突破できればチャンスが作れるし、そう上手くいかなくともブラジルの守りを試せると計算して。

ポブルセン「オラァ!かかってこいひ弱なブラジル人どもがァアア!!」

ダカダカダカッ!!

ネイ「ひ弱ときたか!」

トニーニョ「それは大間違いだ」

放送「サイドからネイくんとトニーニョくんが寄せてきた!ポブルセンくんを早めに止めたい!」

彼らの目論見はある意味当たる事になる。ブラジルの守りを試すと言う目的に置いては。

森崎「ん?早速ネイにトニーニョか」

中山「パルメイラス時代のチームメイトだよな?どうだ?」

森崎「二人共攻撃型のテクニシャンタイプだ。ポブルセンの突進は止められないだろうな」

243 :代理です。:2013/10/12(土) 16:24:40.92 ID:hl6suVOg
スピードとテクニックで勝負するドリブラー、ネイ。
ドライブシュートと堅実性に定評のあるMF、トニーニョ。
攻撃力は目を見張る物があるが守備力はそれ程でもない。
世間的な評価はこの様な物であり、森崎もそう認識していた。

今日、誰もが思い知る事になる。この二人を含めたブラジルユースの選手達は既に彼らが知る者達ではないと。

ネイ「(トニーニョ!ツインタックルだ、行け!)」

トニーニョ「(当然そのつもりだ)」

ズザザーッ!

ポブルセン「その程度かァ!」

ガゴォッ!!

放送「トニーニョくんタックル!しかしポブルセンくんのパワーに押され…」

ズザザァアアーッ!
バシィン!ポーーーーーン!!

ポブルセン「な…なんだとォ!?」

森崎「!!?」

244 :代理です。:2013/10/12(土) 16:25:18.30 ID:hl6suVOg
放送「ああーーーーっと!しかし間髪入れずネイくんがタックルし、ボールをこぼさせる事に成功!
こぼれ球はサンタマリアくんがフォロー!ドイツの出鼻を挫く事に成功しました!」

観客「よっしゃーーー!いいぞネイ!」「ナイスタイミングのタックルだ!」「見たかドイツ!」

トニーニョはポブルセンのパワーに押し負けたが、続くネイのタックルが運良く成功しこぼれ球になった。
観客の殆どは今のプレイをそう解釈したし、それは間違っていた訳ではなかった。

だが見る目を持つ者は分かっていた。今のディフェンスは運よくタイミングが絶妙だった訳ではない事を。
ネイとトニーニョが立花兄弟をも唸らせる連携で決めたタックルだったと言う事を。

政夫「おい!今の狙ってやっただろ!」

和夫「ああ!間違いない、コンビプレイだ!」

早田「先に行った奴を囮兼壁にして、計算された時間差で本命のタックルを強化したのか!」

三杉「森崎…確か彼らは、こんな技は使っていなかったよね?連携は得意だったが」

森崎「…ああ。俺がチームに居た頃はこんな事出来なかったぜ。全く、敵に回った途端新技なんか覚えやがって」

翼「まずはブラジルが主導権を握るかな?」



放送「ボールを奪い返したブラジル、パスワークを使い堅実にドイツ陣内に攻め入ります。
しかし序盤はガンガン行って良い時間帯、そろそろ仕掛ける頃でしょうか?」

フライハイト・カルツ・カルロス『………』

245 :代理です。:2013/10/12(土) 16:25:50.95 ID:hl6suVOg
サンタマリア「(やはりカルロスは警戒されているな。だが当然過ぎる事だ)ザガロ!」

バコッ!

カルロスが敵チームの選手達と睨み合いを余儀なくされているのを見たサンタマリアは
躊躇無くザガロにパスをした。ブラジルのタレントはカルロスだけではない為
この程度で彼が困る事はない。ザガロの実力を知っていれば尚更の事である。

ザガロ「よし、行くぜェ!」

ダダダダッ!

放送「サンタマリアくんからザガロくんへ!ザガロくん、突進開始!」

シェスター「来たなウナギマン!クランケ、サポート頼むぞ!」

クランケ「おう(ウナギマンって何だ?)」

ダダダダッ!

ドイツはシェスターとクランケがザガロのパワーに対抗すべくダッシュで迎え撃った。
当然ザガロが強引なドリブルの使い手と知っての事である。

ザガロ「…バカめ!」

バババババッ!

シェスター「えっ!」

クランケ「なにィ!」

ヒュンッ!

246 :代理です。:2013/10/12(土) 16:26:36.57 ID:hl6suVOg
故に、ザガロが強引なドリブルではなく華麗なドリブルを繰り出しテクニック勝負を
挑んできた時二人の反応は遅れ、大した事も出来ずに抜かれてしまった。

カルツ「(なんだと!?あいつ、ヒューガに似たタイプだった筈なのに!)」

フライハイト「(ブラジル代表としてのテクニックも持ち合わせていたか…)」

放送「ザガロくん抜いたーーーっ!力ではなく技でPA内に切り込みました!
チャンスだ!前半4分で早くも得点チャーーーーーーーーーンス!!」

観客「よっしゃーーー!流石ザガロだぜ!」「行け!先制点を奪っちまえ!」

こうしてブラジルユースはほぼ理想的な展開で最初のシュートチャンスを得た。

グワァアアアアアアアアッ!!

ザガロ「吹っ飛べデカブツ!ぬォオオオオオオ〜〜〜!!」

バッグワァアアアアアアアアアアアアアアン!!
ギュルギュルギュルギュル!

ミューラー「調子に乗るな…!」

247 :代理です。:2013/10/12(土) 16:27:35.12 ID:hl6suVOg
バッ!
バキィイイイイイイン…!
パァーーーーーーン!

ザガロ「…ちっ!」

ミューラー「この程度のシュートで俺は破れん」

だがいきなりダブルイールでゴールを許す程ミューラーは甘くなく、
勢い良く放たれたボールはミューラーの巨大な拳と地面に挟まれて甲高く破裂した。

放送「撃ったーーーーーっ!!ザガロくんのダブルイールだァ!…ああっとしかし、
ミューラーくんいきなりミョルニルをみせつけた!ボールは哀れ、破裂させられてしまいました。
前半4分、まずはブラジルが1本目のシュートを撃ちましたがこれは見事に防がれました」

観客「あ、あああ〜…」「ちぇっ、そう簡単には行かないか」「なぁに、何度でも撃てばいいのさ!」

カルロス「(よし、行ける。このまま攻撃権を独占し、シュートを撃ちまくる!)」

シュナイダー「(まずは流石はブラジルと言った所か。だがこの程度で萎縮していられん)」

248 :代理です。:2013/10/13(日) 12:46:34.13 ID:iSVSVTmD
ミューラー「ハァッ!」

ボッガァアアアアアアアアアアアアン!!

ミューラーは交換されたボールを勢い良く蹴り出した。当然前線のマーガス狙いである。

マーガス「(よし!コンドルとやらの実力、見せてもらうぞ!)」

サンタマリア「(予想通り、アマラウを意識し過ぎだ…ディウセウ!)」

ディウセウ「(おう!オラの出番だな!)」

放送「ミューラーくん大きくキック!早速ドイツの速攻パターン、マーガスくんの頭狙いです!
しかしブラジルにもコンドルの異名を持つ跳ね返し屋、アマラウくんが居る!
早速二人ともベストポジションを争って走りこみます!」

アマラウ「(本来は一対一で勝負したい所だがな…チームの為だぜ)」

マーガス「(ポジショニングが甘い…?これなら行ける!)」

マーガスはアマラウとの対決を試合前から意識していた。そして実力で打ち勝つつもりでも居た。
ブラジルユースの高いクリア役と言えばアマラウであり、それ以外のDFは自分の相手ではない…
特に大柄でパワーはあるがジャンプ力に欠けるディウセウは殆ど歯牙にもかけていなかった。

だがそれは大きな誤りだった。

バッ!
バッ!
バッ!

249 :代理です。:2013/10/13(日) 12:47:07.71 ID:iSVSVTmD
ディウセウ「キャ!ノ!ン!」

マーガス「!!?」

ガガガッガッ!!

ディウセウ「クリ!アーーーッ!!」

マーガス「ぐわああっ!?」

ドガアアッ!

ディウセウはジャンプ力でこそ及ばなかったものの、体の大きさを上手く行かして
ベストポジションを確保した上で競り合った。こうなるとパワー勝負では彼が圧倒的に有利で、
当然アマラウも居る状況ではマーガスは打ち勝つ事が出来ずに吹き飛ばされてしまう。

シュナイダー「(何!?アマラウだけでなく、ディウセウもあんなクリアが出来るのか!)」

アマラウ「(ジャンプ力がないんならパワーとポジショニングで補えばいい…
理屈は簡単だけど無茶しやがるなあコイツ。ザガロと気が合うのも納得だ)」

放送「ああっとしかし、頭一つ抜けたのはその二人ではなくディウセウくん!
豪快なクリアでマーガスくんごとボールを跳ね返した!これは幸先がいい!」

観客「よっしゃあ!ドイツの速攻パターンを防いだぞ!」「ディウセウ!ディウセウ!」

250 :代理です。:2013/10/13(日) 12:48:15.79 ID:iSVSVTmD
翼「おや?アマラウがマーガスの相手役かと思ったら…」

次藤「なんやアイツ、ワシと似た体格ばってんあんな事も出来っとね?」

若島津「ジャンプ力の無さを体格とポジショニングで補うクリアか。理には適っている」

葵「ドイツ、いきなりポストプレイ対策をされちゃいましたね?」

松山「毎回成功する訳じゃないだろうが、これであんまりマーガスには頼れなくなったな」

若林「…まずいぞ、ドイツ」

山森「そうですね、出鼻を上手く挫かれ続け…」

若林「それだけじゃない。ブラジルはドイツの攻撃パターンのほぼ全てに対策できているかも知れん」

赤井「えっ?マジっすか?」

三杉「…君もそう思ったか。どうやら、翼くんの予想通りの展開になるかもね」



ブラジルがシュートを積極的に撃っていくつもりなのは誰の目にも明らかだった。

放送「再びブラジルボール、しばらくパスを回します。下がり目に位置したサンタマリアくんが
司令塔となったオーソドックスなパスワーク、言わば嵐の前の静けさです」

251 :代理です。:2013/10/13(日) 12:49:05.51 ID:iSVSVTmD
ネイ「おいサンタマリア!そろそろくれよ!」

ダダダダッ!

ヨハンセン「(ネイが来る…?いや!?)」

サンタマリア「ナイスデコイ」

シュッシュッ!
ダダッ!

ヨハンセン「しまった!」

放送「おっとここでサンタマリアくんネイくんとスイッチ…いや!そう見せかけて
右サイドに切り込みました!シュートチャンスだ!」

フライハイト「(焦る事はない。サンタマリアよりも脅威度が高いのは…)」

サンタマリア「任せたぞ!」

ボムッ!

放送「撃たない、バックパス!これは少し距離を取っていたカルロスくんへのパスだ!」

ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

観客「よっしゃー!カルロスに渡った!」「いけーっ!ミラージュシュートだァ!」「決めろカルロス!」

フライハイト「(そう、カルロスだ。撃たせて止める)」

252 :代理です。:2013/10/13(日) 12:50:40.62 ID:iSVSVTmD
前半8分、カルロスがミラージュシュートを放つ。

カルロス「(ブロッカーは…二人か。だが関係ない。撃つ!)行くぜミラージュシュート!」

グワァアアアアアアアアアアアッ!!
バッギュゥウウウウウウウウン!!

放送「出たァ!カルロスくんのミラージュシュート!」

フライハイト「っ!」
クランケ「うわあっ!」

チッ…
ドガアッ!

ミューラー「チィッ!」

バッ!
バコォオオオオン!

これをフライハイトが反転ブロックで威力を弱め、ミューラーはパンチングで
(ブラジル側から見て)左コーナーキックに逃れる事に成功した。

放送「防がれたァ!これはコーナーキック!ブラジルのチャンスは続きます」

観客「あ〜〜〜っ、惜しい!」「なあに、コーナーならまだまだ行ける!」

サンタマリア「(コーナーか。それなら、出し惜しみせずに行くか!)」

253 :代理。:2013/10/14(月) 06:40:36.43 ID:87RfglEy
更にブラジルのチャンスは続く。

放送「コーナーキック!何かが起こりそうな予感がします!キッカーはサンタマリアくん。
一体どのシューターを使ってくるのか、我々以上にドイツが気にしているでしょう!」

フライハイト「(ディウセウは…駆け込もうと思えば駆け込める、程度の位置か…)」

ミューラー「(どいつもこいつも撃つ気満々…これ程までにシューターが多いチームと
戦った事はない。俺が予測などしたら薮蛇…ならばボールの動きだけを見るか)」

ピィイッ!

ディウセウ「おっしゃ!」

ダダッ!

岬「あっ!これはダイレクトだよ!」

翼「えっ?」

フライハイト「(ディウセウが走りだした…?いや、勢いがない。フェイクか。なら誰に…)」

サンタマリア「今だ!」

ダダッ!
グワアアアアッ!

フライハイト「なにィ!?」

バシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!
ギュルルルルルルル!

254 :代理。:2013/10/14(月) 06:41:51.89 ID:87RfglEy
放送「おお〜っ!?サンタマリアくんまさかの直接シュート!これは得意のバナナ…いや!
ブーメランシュートだ!バナナシュートより遥かに曲がるブーメランシュートです!」

カルツ「ちょっ、待て!」

シェスター「し、しまった!」

サンタマリアのブーメランシュートはドイツの誰も予測しておらず、
誰もブロックする事が出来なかった。ここまでは完全にサンタマリアの狙い通りだった。

ミューラー「騒ぐなグズども!」

バッ!
バコォオオオオオオオン!!

サンタマリア「なにィ!(ミューラーだけは読んでいたと言うのか?試合経験が少ない筈のアイツが!)」

ミューラー「この程度のシュート、何本撃っても無駄だ!」

シェスター「な、ナイスだミューラー!」

だがサンタマリアにとって誤算だったのはミューラーが最初から選手の動きなど見ておらず、
ボールだけ見ていた為惑わされなかった事だった。

放送「し、しかしミューラーくんこれも力強くパンチング!不意をついた筈のシュートでしたが
彼だけは勘で読んでいたのでしょうか?上手くシェスターくんの前方に弾きました!」

シュナイダー「よし、攻めるぞ!」

ドイツメンバー『おう!!』

255 :代理です。:2013/10/16(水) 01:06:18.18 ID:uDFXm/VZ
シェスター「そろそろ反撃させて貰わなきゃな!」

マウリシオ「そうは行かないッスよ!」

放送「シェスターくんにマウリシオくんがつい…」

シェスター「それ位じゃ俺は止められないぞ坊や!」

ババババッ!

マウリシオ「うえっ!?」

放送「た…がすぐに抜かれてしまいました!そしてシェスターくんパス!このボールはカペロマンくんに!」

早くも3本もシュートを撃たれたドイツは早いうちにやり返したいと言う心理で反撃を狙い、
マーガスのポストプレイに次ぐ得意戦法であるカペロマンのサイドアタックを試みる。

若林「得意のサイドアタックか…だが、これも当然対処済みだろう」

三杉「だろうね。ああ、やっぱりジェトーリオだ」

ジェトーリオ「は〜い、ここは通行止め。諦めてボール頂戴」

カペロマン「フッ。お前が噂の外道野郎か」

放送「このサイドアタックを阻まんとハーフライン間際でジェトーリオくんがついた!」

256 :代理です。:2013/10/16(水) 01:06:50.40 ID:uDFXm/VZ
カペロマン「俺のサイドアタックを止められるか?」

スタッ。
シュシュッ!
ダダダッ!

ジェトーリオ「やるねえ。サイドラインをすっごく上手く使ってるよ。で・も♪」

グイッ!

カペロマン「なっ!?(このタイミングでも審判に見えていないのか?)」

ズサッ!

しかしジェトーリオの見え難い反則を混ぜたディフェンスを突破する事はカペロマンには難しかった。
ただしドイツもただ単純にカペロマンの単独突破に期待していた訳ではない。

ジェトーリオ「それだけじゃ僕は抜けないよ…〜ん!?」

放送「ジェトーリオくん奪いました!…ああっと、しかし!」

シュナイダー「上手いディフェンスだ。ではボールキープの方はどうだ?」

ジェトーリオ「や、ヤバッ…!」

257 :代理です。:2013/10/16(水) 01:07:55.39 ID:uDFXm/VZ
ドゴォオオッ!

ジェトーリオ「ぐべぁああああ〜っ!!」

シュナイダー「こっちは大した事はないな」

カペロマン「おお!良い気味だぜ!」

ゲルティス「…PA内に微速後退。敵に時間を消費させ、切り込みかシュートの二択を強制しろ」

ドトール・アマラウ・ディウセウ『おう!』

放送「すかさずシュナイダーくんに奪い返され、ジェトーリオくん吹っ飛ばされた!
ブラジル、遂に自陣にドイツの侵入を許してしまいました!ドイツの最初のシュートが生まれるか?」

ドイツ側もまたカペロマンが止められた時用にシュナイダーが寄せており、ボールの再奪還に成功した。

中山「おおっ!今のはドイツの読み勝ちか」

日向「だが…ここからどうするつもりなんだろうな?」

シュナイダー「(前には…ドトール、アマラウ、ディウセウの3人か…)」

こうしてとうとうエースストライカーを筆頭に攻め入る事に成功したドイツだったが、
そこから先をどうするかが問題だった。ジェトーリオを突破してもまだDFは3人も残っており、
どの様な攻め方をしても対応が出来る体勢。勿論グズグズしていたらブラジルのMFが戻ってくる。

258 :代理です。:2013/10/16(水) 01:08:34.90 ID:uDFXm/VZ
ポブルセン「何してやがるシュナイダー!撃たないんなら俺に寄越せ!」

シュナイダー「…いいだろう。撃て」

ポンッ。

放送「シュナイダーくんチャンスエリアに駆け込んでから…左にパス!ここにはポブルセンくんだーっ!!」

シュナイダーはドリブルしながら考えた後、ポブルセンに撃たせる事にした。
そのまま通じれば良し、弾かれるのなら自分が追撃すれば良しと判断して。

ポブルセン「ブラジル人どもよ!俺の力を思い知れ!そして…後悔しろーーーっ!!」

グワアアアアアアアアアッ!!

放送「ポブルセンくんのマーダーショット!かなり強力なシュートです!」

ディウセウ「よしっ!いっちょやってみっかァ!」

ゲルティス「(この状況でのマーダーショットがディウセウを突破する確率…55%)」

バギュォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

ディウセウ「うぅううううりゃーっ!!」

ボグォオオオオオオッ!
ズズズズズ…
ポトッ。

ポブルセン「な…なにィ!?」

259 :代理です。:2013/10/16(水) 01:09:10.08 ID:uDFXm/VZ
ドイツの目論見は叶わなかった。ポブルセンのマーダーショットはディウセウがブロックに完全成功した。
やっと撃てた一本目のシュートはキーパーまで届かなかったのだ。

放送「止めたーーーっ!!ディウセウくんガッチリブロック!巨体を活かして踏ん張り
シュートの勢いに打ち勝ち、弾く事すらせずトラップしました!これはファンプレイです!」

ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

観客「いいぞいいぞディウセウ!」「ちょっとヒヤッとしたが、これなら安心だな!」

森崎「あー、ディウセウはブロック力も上がってるな。当然っちゃ当然だが」

翼「一年間あったんだ。リオカップの時よりはパワーアップしているだろうさ」

松山「でも、ビデオから想像していた姿より更に強いんだが…」

三杉「この大会はこれまで楽勝続きだったからね。新技をいくつか隠していたんだろう」

ディウセウ「ヘッヘヘー…」

ポブルセン「野郎ッ…!」

シュナイダー「(これは…相当な我慢を強いられる試合になるかも知れん…)」

シュート数で圧倒されそうな上に、折角撃てたシュートも厚い壁に阻まれる。
苦戦を予感したシュナイダーの顔は普段より更に鋭く厳しい物になっていた。

260 :代理です。:2013/10/22(火) 00:26:20.69 ID:SkRieUdS
ブラジルは更に苛烈な攻撃を続けていく。

ディウセウ「そーりゃっと!」

ボッコォオオオオオオオン!

放送「ディウセウくん大きく蹴り上げた!これをトニーニョくんがジャンピングトラップ。
ここからネイくんとのコンビプレイで攻め上がるのでしょうか?」

トニーニョ「(いや…今回は俺だけで行く。上がれ、ネイ)」

ネイ「(オッケー)」

ダダダッ!

放送「いや、二人の距離は開き気味です。どうやらトニーニョくん、しばらくは自力で攻め上がる模様!」

メッツァ「(あいつもドリブル上手いんだよなー。上手くカルツと連携しないと…)」

トニーニョ「そんな時間をやると思うか?」

ダダダダーッ!
ヒュッ!

メッツァ「えっ!?」

放送「ここでトニーニョくん加速!メッツァくんは驚いたのかノーチェックで行かせてしまいました!」

261 :代理です。:2013/10/22(火) 00:26:59.63 ID:SkRieUdS
トニーニョは単独で勝負したがらないメッツァの心理を読み、猛ダッシュで彼を置き去りにした。

カルツ「何やってやがるメッツァ!ええいシェスター、援護を!」

シェスター「分かっているさ!」

トニーニョ「(よし、ここで使うべきだ)」

グワアアッ!

放送「ああっとトニーニョくん振りかぶった!?これはロングシュートか?」

カルツ「(こんな距離でシュート?そんな馬鹿な事をしてくれるんだったらむしろラッキーだ)」

シェスター「(これはパスだ!つまり、俺のホウセンカが物を言う!)」

バッコォオオオオン!
ギュワーーーン!

更に逆サイドに流す大きなパスを出す。その軌道にはカルツとシェスターの二人が居た為
このパスの成功率は高くないだろうと思われた。

カルツ「(なんだこりゃ!?やたら速くて高いぞ!)」

シェスター「(届かない…けど、サイドラインを超えるだろうこれは…)な、なにィ!?」

放送「いや、パスです!速くて高い…高すぎるか!?いや、こ、これは!」

262 :代理です。:2013/10/22(火) 00:28:00.41 ID:SkRieUdS
翼「あれは…!ドライブパスじゃないか!」

ギュルルルルン!

しかしシェスターの予想と頭上を越えていったパスは強烈なドライブ回転により
狙い通り逆サイドにちょうどいい高さに落ちる様になっていた。

トニーニョ「甘いぞドイツ。俺にもこれ位は出来る」

森崎「あの野郎…これも昔に使ってりゃいい物を…」

ダダダダッ!

マウリシオ「ナイスパス!こいつは貰ったぜ!」

バッ!グルンッ!
グワァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

放送「この高いボールに駆け込むのはマウリシオくんだ!高くジャンプして
オーバーヘッドキックに行きます!クランケくん追いすがるが、間に合いそうにない!」

翼「!!?」

若林「あ、あのフォームは…!」

ミューラー「(フン。あんなキック力の無さそうな奴のオーバーヘッドなど…!?)」

バッ!

263 :代理です。:2013/10/22(火) 00:29:00.11 ID:SkRieUdS
マウリシオ「いっけぇええええええええ!!」

ブワッギュルァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

放送「マウリシオくんのオーバーヘッドキック…!違う!」

トニーニョのセンタリングからマウリシオが放ったシュートはただのオーバーヘッドキックに見えた。

ギュゥウーーーーーーン!!
グ、グ、グッ!

下に向かって打ち下ろされた筈のそのボールが非常識にも上に曲がり始めるまでは。

岬「翼くんのドライブオーバーヘッド…!?」

松山「マジかよ!」

翼「(マウリシオが…これが出来るなんて…!)」

マウリシオ「(俺は年下ってハンデに負ける気はサラサラないんですよ、ツバサ!)」

ミューラー「クッ…こんな…小細工になどォ!」

ブンッ!
バチィイイン!

放送「ドライブオーバーヘッドだーーーっ!!しかしミューラーくんかろうじて弾く!」

264 :代理です。:2013/10/22(火) 00:29:59.14 ID:SkRieUdS
マウリシオ「(げっ、これでもダメなのか?…まあいいや)」

予想外の大技に間一髪で気付いたミューラーだったがそれでも対応の遅れは拒めず、
咄嗟に腕を振り上げて不恰好に弾き上げるのが精一杯だった。

ネイ「チャ〜ンス♪」

ダダダダッ!
グワアアアッ!

それはつまり、ブラジルのチャンスが継続すると言う事である。

ミューラー「…おのれェ!」

放送「ボールは逆サイド!ネイくんだ!ネイくんが合わせに行っているーーっ!!」

観客「よっしゃーーーっ!!叩き込め!」「キャーーーー!決めてネイーーーーッ!!」

フライハイト「拙い…!」

ヨハンセン「やらせるかーっ!」

ダダダッ!

ネイ「よっと!」

ポコン。
ギュルンッ!
グワアアアアアアッ!

265 :代理です。:2013/10/22(火) 00:30:42.63 ID:SkRieUdS
フライハイト「(かわされた…が、これなら!)」

ねじ込みを狙うネイは得意のディレイドスピンボレーでDFを振りきり、シュートに行った。

ネイ「決めるぜ!…えっ!?」

シュウウンッ!

ミューラー「うぉーーーーーっ!!」

バギィイイイイイイン!

だがDFをかわした僅かな時間を利用したミューラーが、体勢の悪いまま飛び出しもう一度ボールを跳ね上げる。

放送「おおおおお〜〜っとォ!?しかしミューラーくんが物凄い勢いで飛びついたァ!
シュートが阻止され、ボールは更に弾かれて行く!」

観客「ウッソー!?何でそこに居るのよ!」「折角のネイのシュートだったのに!」

ネイ「(冗談だろ…なんであそこから間に合うんだよ…)」

ミューラー「…くうっ!?」

トニーニョ「まだだ、今度こそ!」

バッ!

266 :代理です。:2013/10/22(火) 00:31:41.91 ID:SkRieUdS
ここで更にシュートを撃たれていたらドイツは今度こそ失点していたかも知れない。
ブラジルもそれを狙ってトニーニョがこぼれ球に向かって飛んでいた。

マーガス「フザけるな!いい加減にしとけよ!」

バッ!

トニーニョ「うっ!?」

バコォオオオン!

だがドイツもマーガスが戻ってきて競り勝った事でやっとクリアに成功し、
3連続でシュートを浴びる事はかろうじて阻止した。

放送「これをトニーニョくんとマーガスくんが競り合い…マーガスくんクリア!
ブラジル、惜しくも畳みかけきれませんでした。前半18分、ここまで優勢に攻めていますが
ミューラーくんを中心とした粘り強い守りに後一歩の所で持ち堪えられています」

観客「くっそぉ、惜しい〜!」「まあまあ、ここは素直にドイツを褒めてやろうじゃないか」

森崎「ったく、一体いくつ新技用意してきやがったんだブラジルユースは」

シュナイダー「(これは…危険だ。危険な試合だ…!)」

こうしてピンチをまた切り抜けたドイツだったが、キャプテンのシュナイダーは冷や汗を禁じ得なかった。
ここまでのシュートはブラジルが5本に対しドイツはわずか1本。しかもドイツのシュートは
GKまで届いていないのに対し、ブラジルのシュートは全てミューラーの奮闘によって防がれている有様。

試合展開がブラジルの一方的優勢になっているのは火を見るよりも明らかだった。

267 :代理:2013/10/24(木) 02:52:25.19 ID:MOutQ6Vu
ドイツは2度目の反撃のチャンスの先陣をメッツァに切らせた。

放送「このこぼれ球はメッツァくんがフォロー!ドイツにとっては久々の攻撃チャンスです!」

シュナイダー「上がれメッツァ!ネイとトニーニョが戻っていない今がチャンスだ!」

メッツァ「分かってるよ!(でも…)」

ダダダダッ!

放送「パサーとして知られるメッツァくんですが、ここはドリブルで攻め上がります。
あっと、ブラジル誰もチェックに行かない?ネイくんとトニーニョくんが戻りに
走っていますが、このままではブラジルサイド奥深くまで攻め入られてしまうでしょう」

サンタマリア「(メッツァにチェックに行っても、パスカットは難しい。
それよりも他の奴らのマークを固め、パスを出しても意味がないと言う状況を作る)」

メッツァ「(やっぱりこうされちゃうよね〜…さて、どうしたものやら)」

幸運にも、メッツァは軽視された為にマークが緩く今度はボールをブラジル陣内に運ぶのは容易だった。
不幸にも、メッツァがボールを運んだだけでは決定的なチャンスを作るのは容易ではなかった。

山森「パスの出し所に困っていますね…」

若林「メッツァは自分で決定的な仕事は出来ない。故に放置されやすく、
ボールを前に運びやすくなると言うメリットはあるが、そこからどうするかが問題だ」

268 :代理:2013/10/24(木) 02:52:55.66 ID:MOutQ6Vu
メッツァ「(…相手の予想通りだろうけど、シュナイダーの体力を余らせないのが一番か)」

バコッ!

放送「ここでシュナイダーくんにパスが通った!ドトールくんとアマラウくんが詰めに行く!
ここで抜かせてしまってはドイツのシュートチャンスになってしまう!」

メッツァは悩んだ末にシュナイダーを頼る事にした。マーガスとカペロマンがしっかりマークされており、
ポブルセンが先程防がれていてはもうシュナイダーの個人技に頼る事しか思いつかなかった。

シュナイダー「(不利だと分かっていてもやるしかないか…!)」

バババッ!

ドトール「無駄だ。通しはしない」

アマラウ「ちょっとムシが良すぎないか、ってな?」

ズザザァッ!
バチィーーーン!

シュナイダー「くっ…!」

放送「通さない!ドトールくん上手くこぼしました!あっとしかし!」

ダダダッ!

カペロマン「まだだ!俺が居るぜ!」

放送「カペロマンくんが中央に寄ってきていた!これをフォロー!」

269 :代理:2013/10/24(木) 02:53:27.28 ID:MOutQ6Vu
しかしシュナイダーはアマラウのサポートを受けるドトールにしっかりマークされており、
ドリブルで抜き去る事が出来ずボールをこぼされてしまう。これをカペロマンがフォローしたが、
すぐにでもジェトーリオに追いつかれそうになったカペロマンはすぐ撃つしかない。

ジェトーリオ「あれっ?いいのかなー、君サイドじゃないと役立たずじゃん」

カペロマン「余計なお世話だ!くらえっ!」

グワアアアアアアアアアッ!!

放送「すかさず振りかぶる!カペロマンくんのサイドワインダーだーーーっ!!」

ゲルティス「俺に任せろディウセウ(この位置からのサイドワインダーの得点確率…5%)」

ディウセウ「いいのか?んじゃオラはフォローに備えるぞ」

カルツ「(くそっ…あの位置からじゃ多分…)」

バッコォオオオオオオオオオオオオオオオン!!

ギュインギュインギュインギュイン…!

ゲルティス「(キャッチ成功確率76%…)」

バッ!
シュィイイイイイイイイイイイイン…!

森崎「!!」

ガシイッ!

270 :代理:2013/10/24(木) 02:53:58.22 ID:MOutQ6Vu
ゲルティス「キャッチ成功」

カペロマン「…くそっ!」

放送「しかし止めたーーーっ!!ゲルティスくん物凄い反応速度でガッチリキャッチ!
左右にあれ程ぶれるシュートを迷いなく正確に掴み、トレードマークのダークイリュージョンの
凄さを見せつけました!流石はACミラン所属のキーパーマシンです!」

観客「よっしゃー!流石ゲルティス!」「どーしたドイツ!全然ダメじゃないか!」

赤井「出たっス!あれがゲルティスのセービングです!」

三杉「森崎に近いタイプだな。凄い瞬発力を伴ったセービングだ」

森崎「チッ。生意気な…正面からのサイドワインダーなんかキャッチ出来て当たり前だっての。
ありゃサイドから独特の軌道で惑わすから効果的なんだよ。正面からじゃただのツインシュートみたいなモンだ」

岬「うん。カペロマンがわざわざ中央で撃たされた時点でドイツの負けだね」

日向「このままじゃドイツは無様に負けるだけだ。どうするつもりなんだか」

止むを得ず即撃ったカペロマンのサイドワインダーは類まれなる瞬発力を見せた
ゲルティスのセービングに完全に阻まれた。ドイツはこれでやっとシュートを敵GKに
届かせたが、その結果は全く勇気づけられない物だった。

ルディ「(いかん…こうまで攻防両方で圧倒されるとは!このままでは先制点を奪われた時点で負けかねない!)」

シュナイダー「………くそっ」

271 :代理です。:2013/10/29(火) 01:14:37.89 ID:fNlvc22m
ゲルティスがあっさりサイドワインダーをキャッチした事で、当然またブラジルの攻撃が始まる。
ここでシュナイダーは決断を迫られた。

シュナイダー「(…戻るべきか、戻らぬべきか…)」

この試合彼はここまでカウンターに備え前線で張っていた。
基本的に彼は典型的なストライカータイプで、守備は前線では行うが自陣奥深くまで戻る事は殆どない。

こう表現すると人によっては守備貢献をしない我儘なFWと評するかも知れないが、
速攻に備える事で己の攻撃力で敵チームを威圧するのもFWの仕事の一つである。
FWが攻撃よりも守備を重視し自陣に戻れば当然チームの攻撃力は落ちるし
敵チームのDFが攻撃参加を得意とするタイプであれば積極的にそれを狙ってくるであろう。

だがそれらを承知した上でシュナイダーは今は自陣に戻り守備とボールキープに貢献すべきか真剣に悩んだ。
このまま攻撃され続ければ遠からず失点する確率はかなり高い。
少なくとも試合終了まで無失点のまま切り抜けられる事を期待するのは楽観的に過ぎるだろう。
ならば彼も自陣内でボール争いに関わり、試合の流れを変えるべきではないのか?



ルディ「(くそっ…私の見通しが甘かったと言うのか?だが、これでは修正する箇所など…)」

同じタイミングで彼の父親であるルディ監督も悩んでいた。昨晩与えた指示が殆ど役に立っていないのはまだいい。
作戦にミスがあったのならそれを修正すれば試合の流れを変えられる可能性があるからだ。

だが相手は攻撃力も守備力も想定していた範囲を優に超えており、しかも何か奇抜な事をしている訳でもない。
両チームが自分たちの得意な戦い方で真正面からぶつかりあった結果ブラジルが優勢になっているだけなのだ。
つまりそもそもミスなどしていないのだから、都合よく流れを変えられる修正箇所などない。
正攻法の修正ではなく奇策ならば話は変わるが、勿論それは多大なリスクを伴う。

272 :代理です。:2013/10/29(火) 01:15:41.23 ID:fNlvc22m
ルディ「(ダメだ…!いっそ私が無能ならまだ良かった!それなら打てる手が何かしらあった筈なのに!
今のままでは選手達が耐え抜き、反撃の機会をみつけるまで待つしかない!…なんと無力な監督だ)」

結果、ルディ監督は動きたくても動けなかった。
最初からベストメンバーを出しているのだから流れを変えられるスーパーサブなど居ない。
またドイツユースにはユーテリティプレイヤーが少なく、特に大胆にポジションチェンジ出来るのは
フライハイト位の物である。フォーメーションを弄って光明を見出すのも難しい。

ルディ「(いや…今、私が監督としてすべき事は選手達を…特に守備陣を信じる事だ。
ブラジルの攻撃は変幻自在の剣林弾雨。しかし問答無用で装甲を貫ける大砲は持っていない。
もし持っていたらとっくに使っていただろう。先制点が喉から手が出る程欲しいのは向こうも同じ。
故に…勝機はカウンターに有りだ!待っていればチャンスは必ず来る!その為には…)」

焦りに耐え抜いた熟慮の末、ルディ監督は動きたくても動けないのではなく、動きたくても動かない事を決めた。
藪蛇をつつく誘惑に耐え自分の作ったチームとそれを構成する選手達を信じる無策の策。
それこそがこの試合の勝利への道だと信じて彼は何も動かずじっと見守り続けた。
彼の息子であるシュナイダーが万が一誘惑に負けてしまった場合はすぐさま止めるつもりで。

ルディ「(お前だけは守備に下がってはいけないぞ、カール)」



カルロス「(相変わらずシュナイダーは前線に残っているのか?)」

サンタマリア「(ダメだな。ジェトーリオのサインは相変わらずだ)」

ブラジルユースもまた、シュナイダーの動きに注目していた。
それもサンタマリアが直接見るのではなくゲルティスからジェトーリオを経由したサインで。
彼らはシュナイダーに自分が観察されている事を視線で気付かれたくなかった。

273 :代理です。:2013/10/29(火) 01:16:46.35 ID:fNlvc22m
つまり、彼らはシュナイダーに守備に戻って欲しかったのである。

カルロス「(作戦は7割がた成功している。2トップ対策、攻撃権の独占、シュートラッシュ…
全て実現出来ているが、ミューラーが予想以上に固い事とシュナイダーが守勢に
回ってくれていないのが問題だ。奴を自陣に閉じ込めれば9割がた勝利が決まるんだが…)」



シュナイダー「(…戻らない。俺は戻ってはいけない!)」

ブラジルユースの目論見は外れた。わざわざサインを使い気付かれない様配慮したのは無駄になった。

シュナイダー「(ここで戻ってもジリ貧になってブラジルを喜ばせるだけだ。
俺が守備に戻ればキープ率は上がるだろう。だがそれは自陣内のキープ率であり
敵陣に攻め込める時間はむしろ減る。そしてそれはシュートチャンスの減少に繋がるんだ。
ブラジルも見た目程余裕がある訳じゃない。あれだけ撃ちまくっていてもミューラーを
崩せない事は必ず近い内に苛立ちと油断に繋がる!その一瞬のスキこそが反撃のチャンスだ!)」

シュナイダーは熟慮の末にあくまで前線で待ち続ける事を決断した。
この決断が前半と先制点の行方を左右する事になる。

放送「さあここでザガロくんがボールを持ちました!丁度いいシュートレンジです!」

274 :代理です。:2013/10/30(水) 23:54:23.65 ID:R7VaNLf4
後半23分、またしてもドイツ守備陣を引っ掻き回して作ったチャンスで
シュートを撃ったのはザガロだった。

グワァアアアアアアアッ!!

ザガロ「そろそろ諦めやがれ!ぬぉおおおおおお〜っ!!」

バッグワァアアアアアアアアアアアアアアン!!
ギュルギュルギュルギュル!

放送「ザガロくんのダブルイール!今度こそ決まるか?」

ミューラー「諦めるのは貴様らだ。その程度のシュート、何本撃とうと…」

バッ!
バゴォオオオオオオオン!

ミューラー「俺には通用せん!」

ザガロ「な、なにィ!この野郎…!」

それは適切なシュートレンジからブロッカーの穴を上手く突いた良いシュートだったが、
ミューラーは衰えぬキレを見せ、これも上手く弾いた。

フライハイト「(ミューラーは良く持ち堪えている…だがこれ以上それに依存する訳にはいかない。
ブラジルも試合開始直後からずっと優勢だった事で緩み始める…流れを変えるならこのタイミングだ)」

ダダダダッ!

そしてフォローしたフライハイトがドリブルで上がり始めたのがドイツの反撃の始まりだった。

275 :代理です。:2013/10/30(水) 23:54:59.84 ID:R7VaNLf4
放送「しかしこれも防がれました!まだ得点は…あっと、これをフォローしたフライハイトくん
ドリブルで上がり始めた!攻められっぱなしに堪らずオーバーラップで打開を図ったか?」

サンタマリア「(唯一のブロッカーであるフライハイトが上がってきたか…奪えばチャンスだ!)」

フライハイト「(…ドリブル勝負は危険だ。パスがベターだが、ベストな選択は…)」

この時フライハイトは自分がブラジル陣内まで攻め込むつもりはなかった。
パスで味方に託すか、それ以上の事が出来る様味方がフォローしてくれる事を期待していた。

カルツ「フライハイト!俺にやらせろ!」

フライハイト「…ナイスフォロー」

クルッ!
ダダッ!

サンタマリア「なっ…カルツが!?」

カルツ「(ブラジルユースめ…認めるぜ。お前らは上手い。嫉妬が堪え切れない位にな。
基本も技術も両方とも俺より上だ…だが上手いイコール強いイコール勝てるじゃないんだぜ)」

彼の期待にはカルツが答えた。小柄さを利用してフライハイトを遮蔽に使い、
サンタマリアの視線から隠れてフライハイトの後を追っていた。
それを察したフライハイトはボールを置き去りにしながら反転し、
カルツに攻撃を託して自分は守備に戻って行った。

276 :代理です。:2013/10/30(水) 23:55:36.60 ID:R7VaNLf4
カルツ「(強い奴が勝つんじゃない、勝った奴が強いんだ!ってのはウチのキャプテンの座右の銘でな。
俺はその心がけで何もかも俺より上を行く天才に勝った事がある。今回もそうさせてもらうぜ!)」

サンタマリア「くっ、マウリシオ!フォローを…」

カルツ「遅いぜよ!」

ガガガガッ!
ドゴオッ!

サンタマリア「ぐはぁ!」

不意をつかれたサンタマリアはカルツを止める事が出来ず、自陣内への突入を許してしまった。
ブラジルユースの守りにほころびが出来た瞬間だった。

放送「いや、カルツくんだ!サンタマリアくん吹っ飛ばされた!ドイツ、業を煮やしたか強引な攻めだ!」

翼「カルツが上がってきた…!」

若林「開き直ったか…だが、さっきからカルツは守備であまり貢献出来ていなかった。
ならいっそ攻撃に転じた方が良いかも知れん。なによりカルツはノーマークには出来ない選手だ」

日向「…おい赤井。ブラジルのGKの一対一能力はどんなモンだ?」

赤井「えっ?えーと、ゲルティスは…そうですね、ヘルナンデスに一段劣る位ッスよ。
もしカルツに一対一に持ち込まれちゃったら割とあっさり失点するかも…」

ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

観客「おいおい、攻められているじゃないか!」「早く止めろよ!失点するんじゃない!」

277 :代理です。:2013/10/30(水) 23:56:48.42 ID:R7VaNLf4
ジェトーリオ「もう、何やってるのさ!マウリシオ、マーク代わって!フリーにしなきゃいいから!」

マウリシオ「お、おう!」

ゲルティス「シュナイダーとマーガスのマークを外すな。カルツの突破にも備えろ。
カペロマンとポブルセンは撃たせてもいい、俺が止める」

ドトール・アマラウ・ディウセウ『おう!!』

シュナイダー「(対応はしているが、焦り出したな…完璧な守りなどない。
相手がリスクを覚悟すれば尚更の事だ…いける!)」

ここでブラジルは堪らずジェトーリオがカバーに入り、カルツを止めに行こうとした。
このままカルツにみすみす一対一の機会を与える訳にはいかないと言う判断による行動である。
だがカルツが狙っていたのは自力の得点ではなかった。

カルツ「(よし…いい感じに乱戦になってきたぜ。マーガスの位置を確認して…今だ!)」

ボコォン!

ディウセウ「おっ、ロブか!アマラウ、オラと来てくれ!」

アマラウ「分かっていらァ!…えっ!?」

カルツ「おっと、ごめんよっと」

アマラウ「て、てめェ!」

ゲルティス「(…計算外!)」

278 :代理です。:2013/10/30(水) 23:57:21.32 ID:R7VaNLf4
カルツの狙い。それは自分のドリブルでブラジルの守備をかき回してからマーガスを使う事だった。
無論ただ単にマーガスに上げるだけではアマラウとディウセウの二人がかりにやられる確率が高い。

放送「カルツくんボールを横に浮かせた!これにマーガスくんが合わせに…
あっと、クリアに行っているのはディウセウくんだけだ!?アマラウくんダッシュが遅れている〜っ!!」

ディウセウ「いっ!?オラだけかよ!」

マーガス「(すまんカルツ!これだけお膳立てされたんだからやってみせる!)」

よってカルツは狭いチャンスエリアに駆け込み、タイミングと位置関係を吟味してからボールを浮かせた。
彼自身の体が障害物となり、アマラウが一瞬だけダッシュが遅れてしまう様にして。

バッ!
バッ!

ディウセウ「やべっ!キャ!ノ…」

マーガス「無駄だッ!俺は世界一のポストプレイヤーだ!」

ガゴゴゴォオッ!!
ドガアアッ!

ディウセウ「んぐぁああああ〜っ!!?」

マーガス「後は頼むシュナイダー!」

全てはシュナイダーに絶好のチャンスでシュートを撃たせる為である。

放送「ディウセウくん吹っ飛ばされた!ドイツのポストプレイが…成功してしまったーーーっ!!」

279 :代理です。:2013/10/30(水) 23:58:08.44 ID:R7VaNLf4
シュナイダー「(よくやってくれた、皆)」

グワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

ドトール「いかん…間に合わない!」

アマラウ「くそっ、やってやるよ!やりゃあいいんだろ!」

ゲルティス「(ネオファイヤーショットによってゴールを奪われる確率…51%!)」

放送「シュナイダーくん振りかぶる!ネオファイヤーだ、ネオファイヤーが来ます!」

観客「ギャーーー!!」「守れゲルティス!」「何とかしろォ!」「何やってんだ!」

シュナイダー「ここで決める!ドイツユースのキャプテンとして先制点を奪う!」

森崎「………」ゴクリ



             シュナイダー「 N E O   F I R E ! ! ! 」

          ズワッグォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンン!!!!

280 :代理です。:2013/10/30(水) 23:58:40.64 ID:R7VaNLf4
ギュグォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
ドガアアアアアッ!

アマラウ「ぐべがーーーっ!!」

ゲルティス「…ハァアアアア!」

バッ!
シュィイイイイイイイン…!
ガシィイイッ!!

シュナイダー「!!」

ギュルギュルギュルギュルギュル…!

ゲルティス「(威力…想定以上!推進力…不足!握力で補填…不可!!)ガ、ァッ!」

バチィイイッ!
ギュパァーーーーーーン!
ドゴォオオオオッ!
ポン、コロコロコロ…

シュナイダー「…ふぅ」

ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

前半27分、シュナイダーのネオファイヤーショットがアマラウを吹き飛ばした後に
一度はキャッチに成功しかけたゲルティスの両手を弾き開かせてブラジルゴールを突き破った。

281 :代理です。:2013/10/30(水) 23:59:40.20 ID:R7VaNLf4
.


ブラジル 0−1 ドイツ



大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
10ゴール ストラット
9ゴール シュナイダー、日向
8ゴール カルロス、ディアス
6ゴール ザガロ
5ゴール 火野、ビクトリーノ
4ゴール 翼、カペロマン、森崎、ランピオン、カマーチョ
3ゴール ポブルセン、ナポレオン、ピエール、チャンドラー、ロリマー、ミハエル、サトルステギ
2ゴール トニーニョ、マーガス、李邦内、李邦坤、アルシオン、イスラス、レンセンブリンク、三杉
1ゴール ルーク、肖、岬、山森、フライハイト、ネイ、ロペス、ガルシア、クライフォート、
     カイザー、マッハー、クリスマン、政夫、ディウセウ、マウリシオ

大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト アルシオン
5アシスト サンタマリア
4アシスト 岬
3アシスト マーガス、翼、ダ・シルバ、ネイ、チャンドラー、火野、パスカル、ランピオン、
2アシスト カペロマン、カルロス、バンビーノ、カルツ、ピエール、王、森崎、トニーニョ
1アシスト カルツ、メッツァ、テイラー、飛、山森、早田、ビクトリーノ、エスパダス、クリスマン、イスラス、シェスター、
      バビントン、クライフォート、カイザー、和夫、ジェトーリオ




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282 :代理です。:2013/11/07(木) 12:16:15.48 ID:B+O3NuhO
ドイツが先制ゴールを決めた瞬間、ほんの僅かな間だけ競技場の時間が止まった。

放送「ゴ…ゴ〜〜〜ルゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!
前半27分、シュナイダーくんのネオファイヤーショットがブラジルゴールを突き破りました!
攻めに攻めまくっていた筈の矢先のまさかの失点!ブラジル、カウンターで先制されてしまいました〜!」

ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

観客「なっ…何やってんだーーーっ!」「バカヤロー!あっさりカウンターさせやがって!」
「あれだけ押していたのに何で先制されているんだよ!」「油断しているからこうなるんだ!」

無論それが長く続く訳もなく、動揺しながらの実況が放送されると共に観客が悲鳴混じりに
怒号を上げ、彼らの期待を裏切ったブラジルユースを糾弾する。
ブラジルの先制点は時間の問題だと思われた所に逆に先制されてしまっては彼らの怒りも
無理のない事であり、中立の立場の全日本ユースの選手達も大きな驚きに満たされていた。

日向「…ドイツが先制しやがったか。それも良い時間帯だ」

三杉「ブラジルに隙があった…と言うよりは、ドイツがじっとカウンターチャンスを
伺っていたんだろうね。フライハイトとカルツの働きが絶妙だった」

松山「マーガスも2人がかりじゃなければ抑えられなかったのが大きいんじゃないか?」

若林「マーガスはそれ位はやってくる。一番大きいのはシュナイダーのここぞと言う時の
勝負強さだ。ここで決められなかったらこれ以降の試合展開の天と地程の差が出ていただろうよ」

中山「キープ率やシュート数の比較で思える程ブラジルが圧倒していた訳でもなかったんだな…」

森崎「へっ、どうだ翼。見事に俺の言った通りになってきたぞ」

翼「何を勝ち誇っているのさ。ブラジルがこの程度で参る訳がないだろう?本当の勝負はここからだ」

283 :代理です。:2013/11/07(木) 12:16:47.70 ID:B+O3NuhO
ルディ「(よしっ…よし!我慢勝ちだ!良い精神力だ、皆!これでぐっと戦いやすくなる!)」

ロベルト「(えっ?あれ?何でいきなりゴールされているんだ〜〜〜!?
い、いや落ち着けロベルト。たった1点、たった1点だ。すぐに取り返せる…よな?)」

無論両チームの監督も心を動かされない訳がなく、ルディは劣勢に晒されながらも
耐え忍んでから掴んだチャンスをモノにした選手達を誇りに思い、
逆にロベルトは混乱しながらも必死に冷静さを装い口を閉ざしていた。
そしてもう一人、このゴールで心を乱された者が居た。

コインブラ「(…それ見た事か)」

ブラジルユースベンチで腕組みをしていたコインブラである。

コインブラ「(ドイツのミューラー相手にあの程度のシュートを連発してもゴール出来る確率は高くない。
ねじ込みを狙うにしても、ミューラーは飛び出しが強いしクリアの得意なフライハイトも居る。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言っても、その間に大砲を当てられては何の意味も無いだろうに…)」

昨夜、自分の力なしではドイツが勝つだろうと予想していたコインブラは今
腕組みをしながら苛立ちに顔を歪めていた。双方の戦力を比べた上でブラジルユースの戦術を
考慮した結果、自分が懸念していた通りにブラジルがやられていく。
実に不愉快な光景だった。

コインブラ「(このままでは前半中にドイツがもう1点取るかも知れん。
カルロス達が焦って前がかりになれば、ドイツは確実にそれを突いてくるだろう…
なによりシュナイダーはまだ何か見せていない切り札を隠している気がしてならん)」

彼の視線の先ではちょうどシュナイダーがブラジルゴール前から引き上げる所だった。

284 :代理です。:2013/11/07(木) 12:17:19.96 ID:B+O3NuhO
ゲルティス「……………」

シュナイダー「(なんだコイツの目は…俺を観察しているのか?)」

見事先制点を上げたシュナイダーだったが、クールな彼は派手な
ゴールパフォーマンスをせず短くガッツポーズをして息を整えるだけだった。
それが幸いし彼はゲルティスが自分を無表情に見つめている事に気付けた。

ゲルティス「(データは取れた…もう0.2秒早く反応すればいい)」

シュナイダー「(この目…ゴールを奪われた悔しさが何処にもない。だが怯えも全くない。
次こそ止めてみせると言う闘志すらない。まるで機械が別の機械をチェックしている様だ…
となると、長時間こいつに観察する時間を与えるのは良くないな)」

ゲルティスは異様な程に冷静にシュナイダーを見つめていた。
それに不気味な脅威を感じたシュナイダーはさっさと自陣に戻り、仲間達と合流する。

マーガス「ナイスゴール、シュナイダー!流石だぜ!」

カルツ「ちゃ〜んと期待に応えてくれたのう。バクチに出た甲斐があったぜ」

カペロマン「全く、何時も何時も美味しい所持っていきやがって」

シュナイダー「…喜びすぎるな。これでやっと互角になった位だ」

メッツァ「えっ?これで互角?」

当然チームメイト達は先制点を大喜びしていたが、シュナイダーはそれを一喝して冷ました。

285 :代理です。:2013/11/07(木) 12:18:05.78 ID:B+O3NuhO
シュナイダー「リードは出来たが、カウンターを成功させただけでは戦況は変わらない。
シュート数もキープ率も向こうが圧倒していると言う現実は変わらないんだ」

シェスター「そうだけど、リードされたらあいつ等も萎縮するんじゃないか?
もしくはそれを乗り越えようとして、逆に前がかりになるんじゃないか?」

シュナイダー「後者はまだしも、前者は期待できない。こっちに戻ってくる間に
見てきたが、奴らは殆ど動揺していない。元々点を取って勝つつもりだったんだ、
先に一点取られても大した問題じゃない…その思いが奴らを支えている。それともう一つ」

カルツ「なんだ?…あ、さっきゲルティスと睨み合っていた時の事か?」

シュナイダー「そうだ…いや、違うな。あいつは睨んできてなどいなかった。
俺の全てをまるでコンピュータの様に分析していた。恐らく、次にネオファイヤーを
撃たれた時にどうやって止めるかをシミュレートしていたのだろう」

ポブルセン「グダグダ長いんだよ。だったらどうするってんだよ」

シュナイダー「策はある。フライハイト、チャンスだと思ったら上がってきてくれ」

フライハイト「…アレを使うのか?」

シュナイダー「そうだ。ネオファイヤーを止められる自信があるのなら…
わざわざそれに付き合う必要もない。最適な手段を使って2点目を取り、奴らの心を折る」

フライハイト「…分かった。だが何時チャンスが来るかは運が絡む。辛抱強くあってくれ」

シュナイダー「そのつもりだ。皆、これまで以上に強い精神力で戦うぞ!」

ドイツメンバー『おう!!!』

286 :代理です。:2013/11/07(木) 12:18:43.88 ID:B+O3NuhO
一方フィールドの向こう側ではジェトーリオが首を振っていた。

ジェトーリオ「向こうさんの雰囲気からして、油断はしてくれないみたいだね〜」

ネイ「当たり前だバーカ。そんな甘いチームじゃないのは最初から分かっていただろ」

ドトール「…反省の残るカウンターの食らい方だった」

アマラウ「くそっ、小癪な連携使いやがって!…やられたぜ」

ザガロ「何やってんだサンタマリア!あっさり吹っ飛ばされておねんねしやがって!」

サンタマリア「…ああ、俺の失態だ。そろそろ賭けに出てくるかと思っていたが、手段の読みが甘かった」

ディウセウ「そんな事言うなよザガロ〜。オラだってマーガスにやられちまったんだから」

トニーニョ「誰のせいと言う訳じゃない。大きなミスがあった訳でもない。それより気を取り直そう」

マウリシオ「どうするッスか?カルロス」

シュナイダーが観察した通り、ブラジルユースの面々は先制点を奪われた事を悔やみながらも
殆ど取り乱していなかった。彼らの自信はこの程度では全く揺らがない。
いち早く気持ちを切り換えようと言う空気が形成され、チームの闘志は順調に再構築された。

カルロス「どうと言う事もない。カウンターをゼロにしながら攻め続けられる等と言う
都合の良い手段等無いんだ。相手の強さは素直に認めるんだ、だが萎縮するな。
今まで通り積極的に攻めていけば必ず逆転出来る…俺達にはそれだけの力がある」

287 :代理です。:2013/11/07(木) 12:19:16.81 ID:B+O3NuhO
トニーニョ「…まあ、何かを変える必要はないな」

ネイ「追う立場になったんだ。より激しく攻撃して当たり前だな」

ドトール「頼んだぞ。守備の微調整はこちらでやっておく」

アマラウ「おう、もうあんな手に引っかかりゃしないぜ」

カルロス「よし、では皆…」

ゲルティス「待ってくれ」

ブラジルメンバー『えっ!?』

ゲルティス「さっきの失点とは無関係に、一つ気付いた事がある。丁度良いタイミングだから
全員に知らせておきたい。ドイツに聞かれない様に俺の側に集まってくれ」

サンタマリア「なんだ?一体何に気付いたんだ?」

ゲルティス「…ドイツの弱点を新たに一つみつけた」

カルロス「!…それは何だ?」

更にゲルティスがドイツに新しい弱点を発見したと言い、その内容を小声で伝えた事で
彼らの士気は更に高まっていく。この士気の高まりが試合のこの後を左右するのは言うまでもない。

288 :代理です。:2013/11/07(木) 12:20:03.48 ID:B+O3NuhO
ジェトーリオ「え〜?マジ、それ?」

ザガロ「胡散臭えな…そんな都合の良い事があるのかよ?」

ゲルティス「この試合で実際に戦い、観察して確信した。
恐らくは向こうも気付いていない弱点だろうが…俺には分かる」

ディウセウ「う〜ん。ゲルティスが言うんならそうなんかな〜」

サンタマリア「俺も半信半疑だと言わざるを得ないが…幸いその弱点を突く為に
作戦を変更する必要はない。外れていてもノーリスクならば期待してみてもいいだろう」

カルロス「そうだな。もしゲルティスの洞察が当たっていたら試合終盤に活かせるかも
知れないと思っていたチャンスが予定より早く来る。それなら俺達の勝利は確実になる…が、
それに頼るまでもなく得点するつもりで戦うぞ、皆。気合を入れろ!」

ブラジルメンバー『おう!!』

先制点が生まれても、ドイツもブラジルも戦い方を大筋で変えるつもりはなかった。
両陣営のこの決断が、試合を更にヒートアップさせ次のゴールを、その次のゴールを呼ぶ事となる。

289 :代理です。:2013/11/20(水) 07:41:13.47 ID:eNIuOfw5
ピィイイイイイイッ!

放送「気を取り直す様にブラジルのキックオフからリスタート!ザガロくん、カルロスくんと
渡ってボールはネイくんに。ここは一つ、トレードマークの美技で士気を盛り立てて欲しい物です」

観客「キャーーー、ネイーーーーッ!!」「ネイー!ドイツなんかやっつけてー!」

ブラジルユースのキックオフ後の仕切り直しを任されたのはネイだった。
甘いマスクと話術と派手な個人技で女性ファンが沢山居る彼の活躍を感じ取り、黄色い悲鳴を上げた。

ネイ「(フフッ、女性ファンの声援には応えなくちゃな)」

ネイはそれに誰も予想しなかった方法で応えた。

ダッダッダッ…
ブンブン。

キャーーーーーーーーーーー!!

滝「あれ…あいつ、手を振ってないか?」

井沢「…女に向けてサービスしてやがる」

来生「ギャハハハ!ドリブル中に何バカやってんだ!」

森崎「(ネイ…お前よりにもよって来生に正論言われてるぞ…)」

翼「………!?」

放送「お、おおおっ!?なんとネイくん、ドリブルしながら余所見をして観客席に手を振っています…
こ、これはパフォーマンスでしょうか、それともファンサービスでしょうか?」

なんと彼はややゆっくりとドリブルしながら観客席の方を向いて笑顔で手を振り始めたのである。
まるでゴールパフォーマンスの様な余所見行為は誰がどう見てもとんでもない愚行に見えたが、
この時点で一部の者だけは勘付いていた。彼が何をしようとしていたかを。

ポブルセン「テメェ、フザけんなァアアア!!」

ダダダダッ!!

ポブルセンは愚行としか見なさなかった大半の内の一人だった。
元々ネイの様なタイプが特に嫌いな彼は殺意露わに突撃しに行った。

ポブルセン「雌共に媚びるんだったらボールを俺に寄越してからいくらでもしやがれ!」

ネイ「…このボール、欲しいのか?」

ブンッ…
ポーーーン…

それを見たネイはにやりと笑い、ポブルセンを嘲る様な中途半端な勢いで
ボールを浮かせ、ポブルセンの頭上を越えさせた。

ネイ「ならやるよ。取ってこいよ」

ポブルセン「っの野郎ぅゥウウウ〜〜〜!!」

当然ポブルセンは急ブレーキしてUターンし、ダッシュした。
こうすればネイよりも先にボールを抑えられるのは当たり前である。

290 :代理です。:2013/11/20(水) 07:42:02.16 ID:eNIuOfw5
メッツァ「えっ!?ちょっ、ポブルセン!」

ポブルセン「ぬわっ!がっ!てめえ、邪魔だ!」

ドタドタッ!
ドサッ!

同じくボールを確保しようとしていたメッツァと揉み合わなければの話だが。

ネイ「なんだよ、やっぱり要らないのか?じゃあお先に〜っ♪」

ポブルセン「キサマァアアアアアア!!」

放送「おおっとネイくんボールを浮かせ…それを取りに行ったポブルセンくんとメッツァくんが
ぶつかった隙に悠々突破!これは周りを良く見た上でのトリックプレイだ!」

若林「!翼、これは!」

翼「ああ…」

三杉「(ん?この二人のこの反応…まさか!)」

森崎「(ネイの奴、ひょっとして…)」

この時点でネイの新たな力に気付いたのはまだ少数だった。

カルツ「上手くやりやがったな。だが俺はそうは簡単に行かんぜよ!」

放送「だがカルツくんが寄せてきた!ネイくん、サイドライン際に追い込まれる!」

291 :代理です。:2013/11/20(水) 07:42:33.93 ID:eNIuOfw5
カルツ「(さあて、すぐ傍にラインがあるぜ。右か、それとも俺の股下か頭上か…どっちだ?)」

続くカルツはポブルセンの二の舞を踏むまいと慎重にネイをライン際に追い詰め、
ネイの選択肢を減らそうとした。ライン際に追い込んだ以上それ以上サイドアタックは出来ず、
狭い範囲で彼と勝負せざるを得ないだろうと判断した結果である。

だがネイの次のプレイは彼の予想を裏切る物だった。

ネイ「残念…こっちだぜ!」

ダダッ!

カルツ「なっ!?」

ネイは自分だけサイドラインを跨り、ボールをライン上に保ったままドリブル突破を図ったのだった。
それは本当にラインの上ぎりぎりで、近くに居た副審は思わず笛を吹きそうになった程である。

カルツ「くっ…このォ!」

ズザザーッ!

ネイ「遅いぜ!出直してきな!」

バッ!

意表を突かれたカルツが慌ててタックルを仕掛けても間に合う筈がなく、
ネイは余裕を持ってジャンプでかわし3人抜きを達成した。

この奇想天外な発想とそれを為し得るテクニックを併せ持った人種を何と呼ぶか、
知らぬ者はここには居ない。そしてネイがその人種に加入した事もこのプレイで理解された。

292 :代理です。:2013/11/20(水) 07:43:13.95 ID:eNIuOfw5
翼「間違いない。彼もファンタジスタだ!」

ファビオ・デルネイ・フロレンシオ。通称ネイ。彼もまたファンタジスタと呼ばれる人種だった。

放送「おお〜〜〜っ!更にネイくんライン際ではなくライン上のドリブルと言う神業!
これは素晴らしい!予想外のテクニカルなトリックプレイ!これは…これは正に
ファンタジスタ!ファンタジスタと言って良い、予想以上の華麗な美技でした!」

キャーーーーーーーーーーーーーー!!!

観客「ネイーーー!抱いてーーーー!」「すごーーーーい!!」「3人抜きよ!3人抜き!」
「そのままドイツなんかやっつけちゃえー!」「女どもウルセーぞ!」

若林「翼、ディアス、アルシオン、そしてネイ。これでこの大会にはファンタジスタが4人居る訳か」

三杉「なるほどね。君と翼くんがいち早く反応していたのはやっぱりこれか」

日向「ケッ、どいつもこいつも。まるでファンタジスタのバーゲンセールじゃねえか」

松山「でも、あいつただでさえ凄いドリブラーだったのに…あんな事まで…!」

中山「放っておくと何をされるか分からないが、かと言って対処しにくい。やり辛いな…」

森崎「…随分パワーアップしたな。ま、ブラジルならこれ位やってくるって事か」

293 :代理です。:2013/11/20(水) 20:17:23.63 ID:eNIuOfw5
ファンタジスタと言う世界でも極稀にしか見られない才能をネイが見せた事で
ブラジルユースの面々以外全てが驚愕を味わう。
だがそこからの展開はブラジルもドイツも観客も、誰も予想していなかった物になった。

放送「さあネイくん右サイドを深く抉る!ここからどうするのか?」

ネイ「(勿論こうするのさ!トニーニョ!)」

グワアアアアアアッ!

トニーニョ「(来い、ネイ)」

バッコォオオーーーーーン!

ミューラー「(アーリークロス?…いや、これは!)」

放送「ネイくんここで振りかぶって蹴った!弾丸性のアーリークロス…いや!?」

トニーニョ「(3、2、1…今だ!)」

グワアアアアアアッ!
バッシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!

放送「これはブースターシュートだァ!トニーニョくんがボレーで蹴り
速度を格段に増したボールがドイツゴールを襲う!」

ミューラー「…このっ!」

バッ!
バゴォオオオオッ!

ネイ・トニーニョ『なにィ!』

294 :代理です。:2013/11/20(水) 20:18:09.44 ID:eNIuOfw5
それはミューラーがネイとトニーニョのブースターシュートを弾いた所から始まった。
二人分のキック力が足された事で凄まじいスピードで飛ぶこのシュートにはさしものミューラーも
対応に苦慮したが、それでもパンチングで跳ね上げる形で防ぐ事には成功した。

放送「かろうじて弾いた!ボールは高く浮いた!」

カルロス「(チャンス!)」

ダダダッ!
バッ!
グルルルルッ!

フライハイト「シェスター、コースを制限してくれ」

シェスター「任せろ!」

ダダダッ!
バッ!

放送「これにカルロスくんがローリングオーバーヘッドに!しかしフライハイトくんも飛びつき…!」

ガシィイイイイイッ!

カルロス「くっ!(遠かったか…?)」

フライハイト「(押し返せない…!)」

ポーーーーン!

放送「こぼれ球ーっ!ボールはペナルティエリア外の外へ!これをフォローしたのは…」

295 :代理です。:2013/11/20(水) 20:18:54.57 ID:eNIuOfw5
続くカルロスのローリングオーバーヘッドはフライハイトが味方のサポートを得てこぼれさせた。
そしてザガロがこのボールをフォローし、それにポブルセンが追いすがった事でアクシデントは発生した。

ザガロ「邪魔すんな、どけっ!」

ポブルセン「てめえが消えろ!」

ガガッガッガガッ!!

放送「ザガロくん!しかしポブルセンくんが執拗にアタックしてくる!これは撃てないか?」

ザガロ「この野郎ーーーっ!!」

ガシュッ!
ブシャアアアッ!

ポブルセン「があああああっ!!?」

ドタッ。

ザガロ「あ…」

両チームの最も気性の荒い選手同士がぶつかりあった結果、どちらかが反則を犯すのは自明の理だったかも知れない。
今回先に手ではなく足を出したのはザガロであり、削られたポブルセンは足から流血しながら倒れた。

ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!

ポブルセン「………フシュルルルルルル…!」

ここからポブルセンの暴走が始まった。

296 :代理です。:2013/11/22(金) 07:49:17.27 ID:2QEDLwyc
放送「あーーっとこれは反則!ザガロくんがポブルセンくんの足を削ってしまった!
審判が今ザガロくんに近寄って…ああーーーっ!!」

ビッ!

放送「イエローカード!イエローカードが出ました!この試合初の反則ですが
ゴールチャンスに焦って相手を怪我させてしまった事が厳しく判定されました!」

観客「あちゃー、やっちまったか」「ザガロめ。大会中はカードコレクター止めてくれよ」

ザガロ「ぐっ…!」

カルロス「何をやっているんだ。頭を冷やせ」

ディウセウ「まーたやってやがる。ホントにしょーがねーなーアイツは」

シュナイダー「(向こうの攻撃を止めたのはいいが、ポブルセンが負傷か…
ザガロにイエローカードが出た事を合わせてもあまり得とは言い難いな)」

ポブルセンが負傷した事で当然試合は一旦ストップし、ザガロはイエローを食らってしまう。
やや厳しめの判定かも知れないがそれに異を唱える者はおらず、
それよりもポブルセンの負傷の深さとこのアクシデントの影響がどう出るかにすぐさま意識を移す。

審判「大丈夫かね、君」

ポブルセン「………ルゥ………」

カルツ「あーこりゃ完全に出血してるな。タンカ持ってきてくれー!」

だが本当のアクシデントはこれからだった。

297 :代理です。:2013/11/22(金) 08:25:34.41 ID:2QEDLwyc
クリストフ・ポブルセン。暴力的で自己中心的な性格とプレイスタイルで悪名高い旧東ドイツ出身のMFである。

彼の過去についてはあまり知られていない。
東ドイツの少年サッカーリーグでは記録上かなりの好成績を残していたのだが、その当時から既に
激しい気性を隠さなかったとも証言されている。だが貧しく不安定な東ドイツに見切りをつけ
命がけで西ドイツに亡命したのにも関わらず引き取ってくれるクラブが無かった事、
更に南米に渡っても何処にも買われなかった事が彼の性格を決定的に歪めた原因だと推測されている。
また本人はサッカー等好きではないと何回か公言しており、それもまた彼の歪みの一部だろう。

不幸な生い立ちだが同時に自業自得な人物。彼を知る者は大抵この様な評価を下すだろう。
そして似た様な境遇に負けず前向きに生きる者、例えば同じく東ドイツ出身のフライハイトなどが
居るのだから比較対象として見下し、ごく自然に嫌悪感を抱くだろう。
あるいは下を見たらキリがない、過去よりも未来を重視しろ等と正論を説くかも知れない。

ポブルセンはそう言った良識や正論と言った物が大嫌いだった。
彼にとって何よりも大事なのは自分の恨みと怒り、そしてそれらを堪能する為の暴力だった。
八つ当たりこそが自分の生き甲斐であり存在意義だと開き直っていた。
故に憎い日本やブラジルに翻弄されたり上手く復讐出来ていない
今大会のパフォーマンスに彼は満足していない。満足している訳がない。



ポブルセン「…ゥルルルゥァアアアアアアアアアア!!!」



よりにもよってブラジルユースの選手に怪我をさせられた今、彼は爆発した。

298 :代理です。:2013/11/22(金) 08:26:19.61 ID:2QEDLwyc
シィーーーーーーーーーーン…

獣ですら発するとは思えない不気味な怒声をポブルセンが出した時、誰も何も言えなかった。
彼の容態を案じていた審判も、治療の準備をしていたドイツユースも、仕切り直しを考えていたブラジルユースも、
ブラジルを応援していた観客も、成り行きを見守っていた全日本ユースも、そして実況放送も。

スッ。
トサッ…

ポブルセン「シェスター、すぐに俺に渡せ」

シェスター「えっ!?」

審判「お、おい、君、血が出てい」

ギラッ!

審判「る…ん…」

そのままポブルセンは自らボールを地面にセットしシェスターにフリーキックを行い
自分にボールを寄越せと要求した。自分が流血しているのにも関わらずである。
審判はポブルセンの怪我を案じて彼を止めようとしたが、
その気遣いで得られたのは殺気に満ち溢れ血走った眼と見難く歪んだ凶悪な表情だけだった。

ポブルセン「笛を吹け」

審判「!!!」

ピ、ピィイイッ!

哀れな審判は本能的な恐怖に逆らえず要求された通りに試合再開の笛を吹いてしまった。

299 :代理です。:2013/11/22(金) 08:27:44.08 ID:2QEDLwyc
シェスター「(ゲッ、マジかよ!?…いや、ここでやらせなきゃコイツ確実に乱闘する!
ええい、どうせ暴れさせるんだったらインプレー中の方がまだマシだ!)」

バコッ!

シェスターはポブルセンを良く知っていた分、ここで試合再開しなかったらポブルセンが
試合を滅茶苦茶にしてしまうだろうと瞬時に判断し要求通りフリーキックを蹴った。

ポブルセン「…シャァアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

ダカダカダカダカッ!

ザガロ「なっ!?」

ドゴォオオオッ!

ザガロ「グワァアアアアアッ!!?」

ブラジルメンバー『ザ、ザガロ〜〜〜ッ!!?』

そしてボールが受け取ったポブルセンが最初に行った事はブラジル陣内への突撃…ではなく
自分を負傷させたザガロをフレームドリブルで撥ね飛ばす事だった。

放送「…ハッ!?な、なんとポブルセンくん治療を拒否!試合がフリーキックで再開し…
ザ、ザガロくんをドリブルで吹っ飛ばしたァ!?何が起きているのでしょうかこれは!」

300 :代理1/3:2013/11/22(金) 23:39:31.66 ID:PgrKKzIL
観客「あああ〜っ!?」「おい、プレイ止めるんじゃなかったのよ!」「治療拒否か?」
「つーか今わざとザガロに当たりに行ってたぞ!」「何しやがるこの放火魔野郎!」

翼「あっ…」

若林「あの馬鹿らしいな…」

日向「フッ、良い根性じゃねえか。馬鹿だがな」

カルツ「無茶するなポブルセン!怪我を悪化させる前にワシに…」

ポブルセン「ガァアアアアアアアアアアアアアア!!」

ダダダダダッ!

カルツ「だぁ〜っ、聞きゃしねえ!」

ザガロを吹っ飛ばしたポブルセンは更なる奇声と共にブラジル陣内に向かって中央突破を図った。
観客がどよめこうと味方が宥めようと耳を貸す事なく一目散に走るその姿は
誰の目にも彼らしい怒り任せの愚行にしか見えなかった。
怪我をしたのに治療もしないまま単独でドリブル突破を仕掛けるなど、
例えドリブル能力に自信があっても常識的には無謀かつ危険である。

サンタマリア「(馬鹿め、頭に血を上らせて痛みを無視しても怪我の影響は確実に出る。
しかも負傷悪化のリスクを背負ってまでやる事がただの単独中央突破だと?下策の極みだ!)
マウリシオ、時間差で左右から挟むぞ!念の為ジェトーリオとドトールも中央に詰めておけ!」

マウリシオ「アイサー!」
ジェトーリオ「了解―っと」
ドトール「任せろ」

301 :代理2/3:2013/11/22(金) 23:40:01.62 ID:PgrKKzIL
当然ブラジルはすぐに対処し、サンタマリアとマウリシオが中盤でボールを奪いに行く。
万全状態ならまだしも負傷したポブルセンならボールを奪える確率は高い筈だった。

しかし彼らは即座に思い知る事になる。狂人は時として人の常識を覆し限界を超えてしまう事を。

ポブルセン「死ね!」

ギュウンッ!
ドガガガガッ!!

マウリシオ「えっ!?ぎゃああああああああああっ!!」

サンタマリア「な…何だと!?」

ポブルセンの動きは怪我をしていなかった数分前より鋭くなっていた。
彼のドリブルはパワーとスピードの両方が増しており、マウリシオは哀れにも盛大に吹き飛ばされた。

サンタマリア「(馬鹿な!そんな事は有り得ない!何かの間違いだ!)」

サンタマリアはワンプレイでそれが分かった。だが今まで培ってきた彼の常識と理性がそれを受け入れられなかった。
どんな名選手でも怪我をしたらハンデを負うのは当然。精神力や小細工でそれを補う事や乗り越える事なら出来るだろう。

ポブルセン「殺してやる!」

ズガガガガッ!

サンタマリア「ぐわああああああああ!!」

だが何処に怪我をしたら逆上のあまり普段より明らかに強くなる選手など居るだろうか?
そこまでの怒りと恨みを燃やせる選手などサンタマリアも見た事がなかった。
故に本当にそんな選手が目の前に現れてしまった時、彼にそれを止められる筈がなかった。

302 :代理3/3:2013/11/22(金) 23:40:31.76 ID:PgrKKzIL
放送「あああああ〜っ!?更にポブルセンくん中央突破でマウリシオくんとサンタマリアくんを
暴走列車の如く撥ね飛ばしたァ!何故怪我を治療しない状態であんな事が出来るのか!?
彼は痛みを感じないのでしょうか?目の前の光景が信じられません!」

観客「な、なんだそりゃああああ!?」「血を見てキレたのか?それでパワーアップか?」
「バカ野郎、脚の怪我ってサッカーだと致命的なんだぞ!それでパワーアップ出来て堪るか!」
「でも明らかに勢いがさっきより強くなってるぞ!」「ヤバいぞ、守れーーーーっ!!」

ポブルセンがそんな特殊な選手だとは誰も知らなかった。

翼「な…なんなんだアレは若林くん!明らかに動きが悪くなるどころか良くなったよ!?」

若林「知らん!俺もこんな状態の奴は見た事がない!」

日向「…なんだあのキチガイは。どうなっていやがるんだ」

三杉「彼の狂気の為せる技か…?だとしても、こんな事が人間に可能だなんて…」

松山「ブラジルは完全にパニックに陥っているぞ!」

森崎「おいおい、まさか本当にこのまま一人でゴールしたりしねえだろうな…?」

観客と全日本ユースは勿論、味方のドイツユースの選手達でさえ知らなかった。
ただ彼らはポブルセンと日常的に接していた為、誰よりも早く“ポブルセンなら有り得る”と
割り切る事が出来、その割り切りが彼らに先手を打たせてくれた。

シュナイダー「(なんて事だ!まさか奴がこれ程まで狂っていたとは!如何にポブルセンでも
信じ難い…だが、目の前にあるのは現実だ。そう、俺達にとって有利な現実。
ならばその現実から逃げる理由も、この奇貨を逃す理由もない!フライハイト!)」

フライハイト「(ああ、またとないチャンスだ。アレを使う)」

303 :代理1/7:2013/11/23(土) 15:46:33.91 ID:sRJ/rZsa
放送「ポブルセンくんが上がる上がる!相変わらず彼はパスなどしそうにありません!
しかし今は彼の中央突破が得体の知れない脅威となっているのです!早く止めないと危険だ!」

観客「わ〜〜〜っ、何やってやがる!」「早く止めろ!止めろってば!」「そいつに撃たせるなーっ!!」

ディウセウ「落ち着け皆ァ!ジェトーリオとドトールはサンタマリアの指示通りに守るんだ!
アマラウ、もしもの時はオラ達で意地でも止めっぞ!」

アマラウ「分かってる!あんな奴に好き勝手にさせて堪るか!」

ドトール「行くぞジェトーリオ。パターンDで頼む」

ジェトーリオ「Dかよ〜。全くもう、僕に厄介ごと押し付けて…」

同点ゴールを狙おうとしていた矢先のハプニングにさしものブラジルユースの面々も
動揺を隠せなかったが、それでも状況を制御下に置こうと適切な対処はした。
まずはジェトーリオがカペロマンのマークを離れてドトールより一足先にポブルセンに近づく。

クイッ、クイッ。

ジェトーリオ「(ほら、ほら、掴んじゃうよ〜)」

ドトール「(よし、気がそらされている内に回り込めば…)」

ジェトーリオはつかず離れずの距離を取ってからこれ見よがしに手で何かを摘む仕草をしてみせた。
彼の得意とする審判に見えない様にユニフォームを引っ張りその鋤にボールを奪う
通称ダーティディフェンスを仕掛ける事を暗示しているのである。
そしてそれは実際には囮であり、ポブルセンがジェトーリオに気を取られた所に
ドトールが横からスライディングタックルで奪うのが彼らの狙いだった。

だがポブルセンはそんな物に惑わされずに済む方法を思いついていた。

304 :2/7:2013/11/23(土) 15:47:05.06 ID:sRJ/rZsa
ポブルセン「くたばれ!」

バゴオッ!

ジェトーリオ「ぶぼぉおおおお!?」

ドサッ…

ドトール「なっ!?」

放送「ジェトーリオくんがここでマークについ…あああっ!?こ、これはシュートだったのか、
それともマーガスくんへのフィードだったのでしょうか?ポブルセンくんが蹴り出したボールが
ジェトーリオくんの顔面に直撃!ジェトーリオくん堪らず崩れ落ちてしまったァ!」

観客「なんだとォ!?」「絶対わざとだろ、アレ!」「ジェトーリオより外道な奴が居た!」

ポブルセンはジェトーリオの顔面目掛けてボールを蹴り、その衝撃で彼を倒してしまった。
凶悪ではあるがルール上はファウルにならない行為を食らってしまいジェトーリオは
ユニフォームを掴むチャンスすら与えられずに突破され、ドトールは一対一の勝負を強いられる。

ドトール「くそっ!」

ズザザァアアアアーッ!

ポブルセン「消えろ!」

ドガアアアッ!

ドトール「がはああああああ!」

そしてドトールもポブルセンの突破を許してしまい、いよいよポブルセンがヴァイタルエリアに侵入した。

305 :代理3/7:2013/11/23(土) 15:47:35.55 ID:sRJ/rZsa
放送「ドトールくんもダメだぁあああ!!ポブルセンくん、まさかの5人抜き!
まさかまさか本当にこのまま一人でゴールしてしまうのか!?そんな惨劇が起きていいのでしょうか!」

観客「ぎゃあああああああああ!!」「止めろ!止めてくれー!」「何やってるんだ皆!」
「もう頼りになるのはディウセウとゲルティスだけだ!」「2点目なんか入れさせるなーーーっ!!」

ルディ「(ラ、ラッキーな出来事と言えるのかコレは…?)」

ロベルト「(ぎえ〜〜〜!何でこんな事になっているんだ〜!?)」

グワアアアアアアッ!!

ディウセウ「(来るっ!…ポブルセンはオラがなんとかする。ゲルティスおめえはシュナイダーを頼む!)」

ゲルティス「(シュナイダーがフォローに走りこんでいる事を確認。要警戒)」

そしていよいよポブルセンがシュートの為に足を振り上げた時、
ブラジルに残された守備陣はそれでもある程度の冷静さを保っていた。
ポブルセンを止めてももっと恐ろしいシュナイダーにねじこまれては何の意味もないのを
彼らはきちんと意識しており、シュナイダーがポブルセンをフォローする形で
走ってきているのを見逃さなかった。無論マーガスとカペロマンの位置確認も忘れていない。

ポブルセン「てめえら全員!死にやがれぇえええええええええええ!!!」

ブワッギュォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!

そして遂にポブルセンのマーダーショットが放たれた。
フレームドリブルと同様、何時もより一段上の威力が乗せられたマーダーショットだった。

放送「撃ったーーーーー!!ポブルセンくんのマーダーショット!」

306 :代理4/7:2013/11/23(土) 15:48:06.97 ID:sRJ/rZsa
ボグォオオオオオオ!!

ディウセウ「ぐぅ…ぁあああああ…!!」

約20分前に一本目のマーダーショットを見事トラップしたディウセウも今度は押し負けるかに見えた。

アマラウ「うぉーーーーっ!!」

バッ!
ガシイイッ!

ディウセウ「アマ、ラウ…すまねえ、なっ!」

ポーーーーン!
ドタドタッ!

アマラウ「ぐえっ!」

ディウセウ「ゲホッ…」

ポブルセン「ナ…ナニィイイッ!!」

それを救ったのがアマラウだった。彼はディウセウの背中に飛びつき支える事でかろうじて
ディウセウにシュートを弾かせる事に成功した。無論その代償は安くなく、ディウセウの下敷きに
なる形で倒されてしまうが息を切らしたポブルセンが追撃を加える事は出来なかった。

ダダダダッ!

シュナイダー「(よし。ここからなら蹴り込める)」

ただし、追撃はシュナイダーが加える気満々だった。

307 :代理5/7:2013/11/23(土) 15:48:37.08 ID:sRJ/rZsa
放送「ディウセウくんとアマラウくん吹っ飛ばされ…ない!なんとか跳ね返しました!
二人の協力プレイです!ああ〜っとしかし、よりにもよってシュナイダーくんがねじこみにィ!」

観客「危ね〜〜〜っ!」「いや、まだだ!まだ危ない!」「ゲーッ!シュナイダーかよ!」
「止めろゲルティス、止めるんだ!」「もう頼りになるのはお前だけだァ!何とかしてくれ!」

ゲルティス「(ネオファイヤーショット…さっきの軌道をリプレイし、シミュレートするんだ…)」

この場面でシュナイダーのネオファイヤーショットを予期しない者など居なかった。
誰もがあれこそがドイツの最強の主砲だと知っており、この試合でも先制点を上げているそれを
意識しない訳がない。それに匹敵する主砲がもう一つあるなどと誰も予想出来ない。

ピタッ。

ゲルティス「!?」

だが事実、ドイツはネオファイヤーショットに匹敵する切り札をもう一枚隠し持っていた。
それを使う為にシュナイダーは一瞬だけ立ち止まり、何かを待つ。

ダダダダッ!

彼が待っていた物。それはアイコンタクトで呼び寄せていたフライハイトの存在だった。

ゲルティス「(フライハイト!?まさか、ウォッシャードライブ?だが今は晴天…これは!)」

コインブラ「(来た!これが奴の隠していた切り札か!)」

放送「おや?シュナイダーくん立ち止まった…と思ったら誰かが後方から走ってきた!こ、これは!」

308 :代理6/7:2013/11/23(土) 15:49:07.63 ID:sRJ/rZsa
        グワアアアアアッ!                      グワアアアアアッ!

       ブラジルメンバー「なにィ!」「ツインシュートだとォ!?」「あの二人が!」

  ゲルティス「(既存データ無し!参考データ…日本のドライブタイガーで代用!演算…時間不足!!)」

                  森崎「あいつら…まだこんな物を…!!」

シュナイダー「 F I R E ! ! 」         フライハイト「 D R I V E ! 」

                バギュゥゥルゥウウウウウウウウウウウッ!!!!

                   ゲルティス「ハァアアア!!」

        そのシュートは翼と日向が使えるドライブタイガーツインシュートと良く似ていた。
         物凄い速度と威力を持ったボールが幾重にもぶれながら急上昇から急降下と言う
               厄介極まりない軌道を描く点ではそっくりだった。

             ゲルティス「(…防御、不能!!)アガアアアアアッ!!」

                       ドガアアアッ!

                 しかし威力と精度はこちらの方が上だった。
             そしてそれ以上にネオファイヤーショットを警戒していた所に
                全くの新技を出されたのが大きかった。大きすぎた。

                        バリィイッ!
                       ブスブスブス…
                       ブギュルルルル…

               ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

309 :代理7/7:2013/11/23(土) 15:49:38.05 ID:sRJ/rZsa
ブラジル 0−2 ドイツ



大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
10ゴール シュナイダー、ストラット
9ゴール 日向
8ゴール カルロス、ディアス
6ゴール ザガロ
5ゴール 火野、ビクトリーノ
4ゴール 翼、カペロマン、森崎、ランピオン、カマーチョ
3ゴール ポブルセン、ナポレオン、ピエール、チャンドラー、ロリマー、ミハエル、サトルステギ
2ゴール トニーニョ、マーガス、李邦内、李邦坤、アルシオン、イスラス、レンセンブリンク、三杉
1ゴール ルーク、肖、岬、山森、フライハイト、ネイ、ロペス、ガルシア、クライフォート、
     カイザー、マッハー、クリスマン、政夫、ディウセウ、マウリシオ

大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト アルシオン
5アシスト サンタマリア
4アシスト 岬
3アシスト マーガス、翼、ダ・シルバ、ネイ、チャンドラー、火野、パスカル、ランピオン、
2アシスト カペロマン、カルロス、バンビーノ、カルツ、ピエール、王、森崎、トニーニョ
1アシスト フライハイト、カルツ、メッツァ、テイラー、飛、山森、早田、ビクトリーノ、エスパダス、クリスマン、イスラス、
      シェスター、バビントン、クライフォート、カイザー、和夫、ジェトーリオ

310 :創る名無しに見る名無し:2013/11/23(土) 23:05:49.44 ID:MmsBf/zW
これはいいボブ

311 :創る名無しに見る名無し:2013/11/26(火) 23:11:03.27 ID:/EgtqWZE
イマイチボブルセンが小者にしか見えてなかったけど、今回で印象変わったわ
カッケェ

312 :創る名無しに見る名無し:2013/11/27(水) 20:57:53.38 ID:+s3hXUlF
怪我が悪化して退場しそうだな

313 :代理です。:2013/12/04(水) 00:12:05.05 ID:xsQxzBIt
放送「ゴ…ゴ…ゴォオオオオオオオオオオオ〜〜〜〜ルゥウウウウウウウ!!!
ぜ、前半36分、ドイツが、ドイツが…!シュナイダーくんとフライハイトくんの
ツインシュート…ファイヤードライブツインとでも言うべきでしょうか…
ツインシュートでゲルティスくんを吹っ飛ばし、2点目…2点目です!
ブラジル、無得点のまままさかの2点リードを許してしまいました〜〜〜〜!!」

まさかのドイツの追加点を実況は悲鳴の様にアナウンスした。

ブゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!

観客「何やってやがんだーーーっ!!」「てめえらそれでもセレソンか!」
「よりにもよって2点リードだと!?わざとやってんのか!」「お前ら負けたいのかァ!」
「ゲルティスッ!貴様イタリアで何を学んできたんだ、八百長のやり方か!?」
「ポブルセンなんかをあそこまで好き勝手やらせやがって!」「まだ1点も取れてないじゃないか!」
「お前ら全員そのユニフォーム脱げ!今すぐだ!」「ブラジルの恥どもめーーーっ!!」

それを聞くのを待っていたかの様に観客の大多数が物凄い騒音を立てる。
彼らはドイツがどれ程凄いプレイをしようとどんな想定外のアクシデントがあろうと
そんな事は関係ないとばかりに敵を力で捻じ伏せるブラジルの姿を期待していたのだ。
その期待がこのままでは惨敗しかねない程のペースの連続失点と言う無様な展開で
裏切られては彼らに怒るなと言う方が無理である。

葵「うわっ、凄いブーイング…セリエAにも劣らないやこりゃ」

赤井「ぼ、暴動にならないだろうな…?過去にいくつか例はあるぞ…」

山森「万が一の時は、最寄りの出口に避難した方が良さそうだね」

314 :代理です。:2013/12/04(水) 00:12:49.42 ID:xsQxzBIt
松山「それにしてもまさかドイツが前半の内に2点リードとはなあ…」

三杉「展開的にはむしろ押されていた筈なのに、冷静に戦況を見極めチャンスを物にしたね」

若林「ファイヤードライブと言う切り札を隠し持っていた事、それを躊躇なく切った事、
ポブルセンの予想外の暴走をむしろ好機と見なした事…好判断が重なった結果だな」

日向「あのキチガイの評価を上げざるを得ないか…つくづくバカとハサミは使い様だな」

早田「なんだよこりゃあ。ハッキリ言ってブラジル大ピンチじゃねえか」

次藤「味方の筈の観客まで敵に回しちょるばい。どげんすっとね?」

翼「……………」

森崎「……………」

全日本ユースの面々も予想外のスコアにざわめく中、翼と森崎は沈黙を保っていた。
修行先に選んだブラジルがまさかこんな体たらくになるとはと驚く一方、
リオカップではブラジル人ではない彼らが主役だった事も思い出してある意味納得していたのだ。
間違いなく強いのだが、それでも無敵には程遠いのかも知れないと。

この様に誰もがドイツの快調とブラジルの苦境を否定できなくなったこの瞬間、
当事者達はどんな精神状態で居ただろうか。

315 :代理です。:2013/12/04(水) 00:13:22.17 ID:xsQxzBIt
ブラジルメンバー「………」「くそっ…」「やっべぇ〜」「ひゃー、ブーイングが…」

シュナイダー「(よし。流石にダメージは小さくないな)」

ブラジルユースの選手達は精神的ダメージに耐えていた。逆に言えばそれを隠す余裕はなかった。
それをしっかり観察したシュナイダーは満足気に頷き、次に息を荒げるポブルセンに振り返った。

ポブルセン「てめえ…」

シュナイダー「余計な事を、等とは言わんだろうな?お前があのままゴールを決めていたら
それはそれでとても有り難かったぞ。その前の活躍だけでも十分だったがな」

ポブルセン「クソが…偉ぶるんじゃねえ…」

シュナイダー「人を威嚇したいのならせめて息を整えてからにしたらどうだ?
ついでに治療も今の内に受けてこい。さもなくば負傷悪化で憎いブラジル相手に最後まで戦えず、
日本との決勝戦もベンチから見ているだけと言う下らん結末になりかねんぞ」

ポブルセン「俺に指図…するんじゃねえ…」

ザッザッザッ…

ポブルセンは先程のワンマンプレイで激しく消耗していた。勿論怪我も未治療のままである。
それを指摘し嫌々ベンチに向かわせるのはシュナイダーにとって容易い事である。
そのままフライハイトと共にドイツ陣内に引き上げると他の仲間達に歓迎された。

カルツ「奴さんは本当にどうしようもないのう。今回は奴の暴走が役に立ったが」

フライハイト「…ある意味扱いやすい奴ではあるさ」

316 :代理です。:2013/12/04(水) 00:13:59.04 ID:xsQxzBIt
カペロマン「お前らも大概な性格だよな」

シェスター「ともあれ、ナイスゴール!絶好調じゃないか」

マーガス「そうそう。ブラジルの奴ら顔を引きつらせてたぜ」

シュナイダー「ああ。1点ならまだしも、2点リードされると言うのは非常に大きい。
如何に猛者揃いのブラジルと言えど、ダメージは隠しきれないし自国民まで敵に回した。こうなると
ホームアドバンテージも逆にプレッシャーとして害の方が勝り、またブラジルだからこそ
“こんな筈じゃなかった”と言う焦りも大きいだろう。奴らの心は最早ヒビだらけになっている」

カルツ「それじゃ、早めに3点目を狙いに行くのかい?」

シュナイダー「…いや、こっちの消耗も激しいからそれは後半に狙った方がいいだろう。
ハーフタイムの時点で2−0のままなら向こうは更に焦り、後半の早い内に隙が生じる。
そこにトドメを刺すのが理想的な展開であり、勝利への方程式だ」

メッツァ「じゃ、前半の残りはマイボールになったら遅攻だね。了解」

シュナイダー「そうだ。今大会優勝候補大本命としてもてはやされ、苦戦らしい苦戦を
しなかったブラジルは精神的な限界が近い。そこを容赦なく突き崩すぞ。気合を入れろ!」

ドイツメンバー『おう!!』

ここでシュナイダーは試合の残り時間、自分達の消耗、そして敵の状態を考慮し
勝ちを焦らず改めて冷静に戦う事を呼びかけた。勝負に徹するリアリストの彼らしい指示と言えよう。

だが彼は一つ知らない事があった。
ブラジルユースの選手達が大会前に自信を粉々にされた経験があると言う事を。
驚愕と絶望と屈辱に対する耐性と、そこから立ち直れる強さを持っていると言う事を。

317 :代理です。:2013/12/05(木) 07:52:00.61 ID:3XGyGvUw
放送「スタジアムが崩壊しそうな程のブーイング!観客は不甲斐ないブラジルユースに
怒りを露わにしています!勿論もしこのまま負けてしまっては更なる批判を避けられません!
なんとか逆転の一手を打って欲しい所ですが、ピッチレポーターによると今の所
ブラジルベンチが動く様子は無いそうです!ロベルト監督も無表情で腕を組んでいるだけです!」

観客「ロベルトーーー!何やってんだこのピンチで!」「早く何か手を打てよ!何かあるだろ!」
「このままじゃ何も出来ないままでやられるぞ!」「黙って見ていりゃ逆転出来ると思ってるのか!」

ロベルト「……………」

観客の怒りはとどまる所を知らず、当然の如く選手達だけでなく監督のロベルトにも向けられる。
だが当のロベルトは指示を出すのでも選手交代を行うのでもなく、微動だにせず無言でいるだけだった。
この状況でそれを好意的に受け止められる筈がなく、更にいきり立った観客たちは別の対象に怒りを向けた。

観客「誰か何とかしろよ!スーパーサブとかさ!」「スーパーサブと言えば…10番のアイツはどうした!」
「コインブラとか言う10番を持ってるクセに試合に出てこないアイツは何やってんだ!」
「この大会一度も試合に出てねーじゃねーか!」「10番持ってるんならさっさと何とかしろーっ!!」

その対象は勿論、謎の10番であるコインブラ。
この大ピンチを覆すヒーローを求める者達は期待に応えようとしない選手に罵倒を浴びせ、
挑発によって力を引き出そうとする。それがコインブラの心に響く事を願って。

コインブラ「(…やはりこうなったか。親父にもこんな事をしていたんだろうな)」

しかし彼らが怒れば怒る程コインブラの心は冷えるばかりだった。

318 :代理です。:2013/12/05(木) 07:52:56.27 ID:3XGyGvUw
コインブラ「(分かっただろうカルロス。頂点を目指すのは成功しても失敗しても空しい事が。
そしてお前たちではドイツに勝てないと言う事が。それでも尚お前たちは足掻き続けるのか?)」

コインブラは観客の罵声など全く聞こえていないかの様にひたすらフィールドを見続けた。
カルロス達が絶望のあまり彼に助けを求めるのか、それとも絶望の中でもがき続けるかを確かめる為に。

だがカルロス達の反応はそのどちらでも無かった。



カルロス「…皆、怪我はないか?」

ブラジルメンバー「俺は大丈夫だ」「ああ、何とかなァ」「もう確認した、一人も負傷者はいない」

カルロス「そうか、不幸中の幸いと言う奴だな」

カルロスがまず最初にした事は怪我人の有無の確認だった。あれだけ盛大にポブルセンに
暴れられたブラジルユースだったが幸いにも誰も怪我しておらず、治療の必要は皆無だった。

チラッ。

カルロス「………」

コインブラ「………」

そして次に彼が行ったのは平淡な表情で自分達のベンチを見る事だった。
自然とコインブラと視線が合い、一瞬だけ二人の間に目に見えない火花が散る。

319 :代理です。:2013/12/05(木) 07:53:44.28 ID:3XGyGvUw
だがそうしていたのはほんの1秒程度で、すぐに彼はチームメイト達に向き直り朗々と問いかけた。



カルロス「それでは、コインブラを頼ろうなどと考えている軟弱者も居ないだろうな?」



ザガロ「…当ったり前だ!死んでもそんなマネをして堪るか!」

ネイ「嫌だよ。カッコ悪いし、それで勝てたとしてもサッカー選手失格だろ」

最初にそれに答えたのはもっともプライドが高く気性も荒いザガロだった。
それにネイが続き、その他の選手達も次々と異口同音にコインブラの参加を拒否する。

アマラウ「俺だってお断りだ!いくらアイツに実力があろうともな!」

ディウセウ「2点取られたからってそんだけで諦める程オラは柔じゃねえぞ」

マウリシオ「そんな事する位ならいっそボイコットした方がマシっスね!」

ジェトーリオ「大体アイツが入ったからって状況が良くなる保証もないじゃん」

ドトール「そもそもコインブラはチームにフィットしていない。特に精神的にな」

トニーニョ「俺達がいくらプロフェッショナリズムに徹しても、奴の方にその意識がない」

サンタマリア「戦力的な意味でも反対だ。デメリットがメリットを上回る確率が高過ぎる」

ゲルティス「コインブラの力で勝つ事は他のフィールダー全員の士気と自信を代償とするだろう」

320 :代理です。:2013/12/05(木) 07:54:20.84 ID:3XGyGvUw
コインブラに頼って勝たせてもらおうと考える者は誰ひとりとして居なかった。
カルロスは満足気に頷き、握り拳を作って熱弁を振るう。

カルロス「俺も正に同意見だ。サッカー選手としてのプライドを犠牲にし、たった一人の力を頼って
得た勝利など何の価値もない。それどころか頼ろうとした結果負ける危険性も高い。
そんな状況では絶対にコインブラは投入できない。監督もそれが分かっているから何もしないんだろう。
今ただただ無言で座っているのは俺達の力で勝ってみせろと言っているんだ。
それが出来ないのならコインブラを加える意味も世界一になる資格も無いとな」

ブラジルメンバー『……………』

カルロス「コインブラに出番があるとしたら、俺達を認めさせた後の決勝戦だ。あいつは昨夜俺にこう言った。
“自分抜きならドイツが3−2で勝つ”とな。そして俺は誓った。その予想を覆してみせると。
そして俺達にはそれが出来る筈だ。ドイツは2点リードしたが、元々俺達のゲームプランでは
2点以上取るつもりだった。ゲルティスがさっき言った事を加味すれば3点以上も取れる筈だ」

ブラジルメンバー『……………』

カルロス「勝つぞ皆!コインブラの驕りも、観客の怒りも、ドイツの誇りも全て
俺達の力で打ち砕き、俺達がセレソンだと証明するんだ!!」

ブラジルメンバー『おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!』



彼の熱弁に対するブラジルユースの選手達の気合が衝撃波の様にスタジアム中に響き渡った。
自分達はまだ死んでいない、負けていない、そうなるつもりも毛頭ないと宣言していた。

321 :代理です。:2013/12/05(木) 07:54:55.01 ID:3XGyGvUw
観客「おおっ!?まだやる気だぞアイツラ!」「空元気じゃねーだろうなオイ!」
「さっさと結果を出せよ!せめて前半の内に1点入れておかないと本格的に不味いぞ!」

放送「おお〜〜〜っと!!ここでブラジルユース気合を入れ直しました!
絶対に逆転してみせると言う強い意志を感じさせる声でブーイングが収まりました!
この気合が今度こそ空回らない事を心底願いたいものです!」

それは観客と実況からの信頼を回復させ。

シュナイダー「(何!?何だこの気迫は…虚勢…違う。自棄…違う。開き直り…違う!
自分達の力と勝利を疑っていない自信だ!何故だ、この状況で何故気迫が衰える所か増すんだ!?)」

ドイツを戦慄させ。

森崎「あれ…?あいつら、全然堪えてないのか?ほんの少しも?」

翼「…カルロスは一体どんな魔法の言葉を使ったんだ?」

全日本を困惑させ。

コインブラ「……………!?」

コインブラをも驚愕させた。



ロベルト「(どどしよっどどしよっどどしよっポーカーフェイスなんでなんで2点もリードされてるの
ポーカーフェイスああああ何か手を打たないと何も思いつかないポーカーフェイス
このままじゃ負ける負ける負けるポーカーフェイスヤバいヤバいピッチレポーターがこっち見てる)」

ロベルトは冷静を装うのに精一杯で何も気付いていなかった。

322 :代理です。:2013/12/06(金) 00:29:49.97 ID:dk6JOTb3
ピィイイイイイイイイイイッ!

放送「ブラジルユースのキックオフ!前半はロスタイムを含めても後精々10分!
後半になる前に何とか1点返しておきたい所ですが、どうするのでしょうか?
まずはパスワークからマウリシオくんにボールが渡りました」

2点リードされてもブラジルは攻め方を変えなかった。
元からシュートを数多く撃つ事には成功しているのだからわざわざ変える必要などないだろう。

マウリシオ「さーて、サイド突破サイド突破」

カペロマン「そう簡単に出来ると思ってるのか?」

マウリシオ「出来るよ。ジャパンカップの時もそうだったけど…」

バババッ!

カペロマン「うっ!」

マウリシオ「やっぱりアンタ守備下手だよな!」

グワアッ…
バコッ!

放送「まずはマウリシオくん左サイドを突破!そのままカルロスくんにパスを出しました!」

シェスター「甘いぞ!ニンポー・ホウセンカ!」

ギュルンギュルンギュルン…!
パシッ!

323 :代理です。:2013/12/06(金) 00:30:35.56 ID:dk6JOTb3
マウリシオ「げっ!?」

放送「しかしこれはシェスターくんがカット!やや甘いパスだったか?」

シェスター「よし、またこっちの攻撃だ!」

バコォン!

ネイ「そうは…」

スススッ…
シュッ!

ネイ「いくか!」

パシッ!

放送「おっと、ネイくんがカットし返した!ブラジルのチャンスはまだ続きます!」

シェスター「なにィ!?一体何処から!」

カルツ「(シェスターの視点だと、ワシの陰に隠れていた様に見えたのか…?)」

岬「上手いなあ。パスカットに向かっている事に気付かせなかったよ」

森崎「ネイの奴また新技を…前はパスカットなんて得意じゃなかったのに」

324 :代理です。:2013/12/06(金) 00:31:34.08 ID:dk6JOTb3
ドイツメンバー「マズい!」「ブースターシュートが…!」

ネイ「おっと、そうとは限らないぜ!」

バコッ!

放送「ネイくんパス!トニーニョくんにボールが渡りました!ここはシュートレンジだ!」

トニーニョ「ナイスパス」

グワァアアアアアアアアアアアッ!!

ドイツメンバー「えっ?ただのグラウンダーのパス?」「今更ただのドライブシュートか?」

ミューラー「(ただのドライブシュート…じゃないな。奴はミラクルドライブも撃てる。それにあの蹴り足は…)」

翼「あ。これはフライングドライブだ!」

トニーニョ「いけェ!」

バッシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!
ギュルルルルルルルン!!

ミューラー「バレバレだ!」

バッ!
ブォンッ!
バキィイイイイイイイイイイイイッ!!
プシューーー…

325 :代理です。:2013/12/06(金) 00:32:21.89 ID:dk6JOTb3
トニーニョ「くっ…まだ入らないのか…」

ミューラー「ふー…」

放送「しかし…ダメです!ミューラーくんのミョルニル炸裂!トニーニョくん通常の
ドライブシュートではなく斜め回転のフライングドライブを撃ちましたが、
それでもドイツの雷神には通用しなかった!何という難攻不落ぶりでしょうか!」

観客「だああああ、また防がれた!」「畜生、もっと強力なシュートは撃てないのかよ!」

ドイツメンバー「よーし、流石ミューラー!」「その程度じゃ通用しないぜブラジル!」

森崎「トニーニョのフライングドライブか…まああいつキック力大した事ないしな」

翼「(ブラジルユースはもっと強力なシュートを用意してこなかったのか?
チームにゲルティスが居る以上、どれ位のシュートなら世界最高クラスのGKを
現実的な確率で破れるか分かっていなかった筈はないだろうに…本当に数を撃つだけなのか?)」

だがシュートに持っていけても肝心のシュートが悉く防がれる。
いずれはミューラーもミスをするかも知れないが、このままでは逆転は至難の業。
誰もがそう思っていた。

ブラジルメンバー「(良い気になりやがって…)」「(大丈夫だ。必ず作戦の効果は出る!)」

ゲルティス「(………恐らく、次だ。次のシュートで…)」

ブラジルユースの選手達以外は。

326 :代理です。:2013/12/11(水) 08:19:26.82 ID:8mHjKc2b
バッゴォオオオオオオン!

放送「ミューラーくんのゴールキック!これは前線に一気に届けるハイボールだ!」

ドイツは再びマーガスのポストプレイからのカウンターを狙った。

ディウセウ「わりっ、ちょっと息切れだ。ドトールカバーしてくれ」

ドトール「そう予想していた」

アマラウ「行くぞドトール!」

マーガス「よし、ディウセウが来ないなら…!」

ドドドッ!
バッ!バッ!バッ!
ガシィイイイン!

アマラウ「甘いなァ!」

バシィイイイイイイン!!

マーガス「なにィ!?」

放送「しかし今回はアマラウくんが競り勝った!そうそう何度もポストプレイが成功する物ではありません!
このこぼれ球はサンタマリアくんがフォロー!まだブラジルの攻撃は続きます!」

観客「シュートを跳ね返されてカウンター食らうのは見飽きたぞ!」「いい加減何とかしろー!」

これはアマラウが競り勝った事で失敗に終わり、再びブラジルが攻撃権を得る。

327 :代理です。:2013/12/11(水) 08:20:01.95 ID:8mHjKc2b
サンタマリア「(何とか、か。確かに何とかしなくてはならないな)」

ポブルセン「考え事してんじゃねえ!」

カペロマン「お前なあ、奇襲なら黙ってやれよ」

サンタマリア「(まずはこいつらからだ。どうせカペロマンは守備はサポートする気しかない)」

シュッ!

カペロマン「うおっ!?」

ポブルセン「てめえ、逃げんな!」

サンタマリア「(よってまずはカペロマンに近寄り、手柄を焦るポブルセンを怒らせ)」

パコッ!

カペロマン「わっとっ!?」

ポブルセン「おいっ!?」

サンタマリア「(二人の中間、ややカペロマン寄りの位置にボールを蹴りだし)」

ダダダッ!

カペロマン「なっ…やられた!」

ポブルセン「クソがっ!」

サンタマリア「(”お見合い”を誘発させてから一気に抜き去る!)」

328 :代理です。:2013/12/11(水) 08:20:52.10 ID:8mHjKc2b
次にサンタマリアが頭脳的なドリブルを駆使し、前線に切り込んだ。
こうして再びブラジルがシュートチャンスを得、今度はどうするのかが注目される。

放送「サンタマリアくん二人抜き!良い位置に駆け込んだ!さあここからパスを出すのか、
それとも自分で撃ちに行くのか?しかし最早攻撃パターンはあらかた試されつくした感が拒めません!」

松山「ブラジルは次はどうするんだ?もうドイツも慣れてきた感があるぞ」

三杉「大きな切り札がない限りは、ドイツの油断を待つしかなさそうだが…」

岬「切り札を持っているとしたら、カルロス・サンターナかな?」

ドイツメンバー「(来るなら来い)」「(何度でも防いでやる)」

ミューラー「(さあ、次はどいつが撃ってくるんだ?)」

サンタマリア「………」

タタッ…
ガコッ!

ドイツメンバー「えっ」「なんだ!?」

ここでサンタマリアがしたのは走りながらの突如のバックパス。そこには誰もシューターは居ないかと思われた。

ダダダダッ!

ジェトーリオ「チャ〜ンス♪」

だが実際にはジェトーリオがマーク無しで走り込んでいた。

329 :代理です。:2013/12/11(水) 08:21:33.19 ID:8mHjKc2b
放送「おっとここでサンタマリアくんヒールパス?これを受けたのは…ジェトーリオくんだ!」

グワアアアアアッ!

放送「ジェトーリオくん振りかぶる!得意のドライブシュートか?」

ジェトーリオ「いけェーーー!!」

バシュゥウウウウウウウウウウウウウッ!!
ギュルルルルルルル!

翼「ドライブシュート!…いや、本当にただのドライブシュートだな」

若林「あの程度じゃミューラーにはまず通用しないだろうに…」

ジェトーリオは撃った。得意のドライブシュートを。フリーで撃てた分勢いはあったが、
それでもミューラーを脅かせるとは思い難いただのドライブシュートであった。

ミューラー「…フンッ!」

バッ!
バコォオオオオオオオオオオン!!

そしてそれは当然の様に悠々とパンチングで跳ね返された。大抵の者はこう思っただろう。
無駄撃ちになった。やはりあの程度のシュートではミューラーのセービングは破れないと。

ブラジルメンバー『!!!』

だがブラジルユースの選手達だけはミューラーのセービングに違う物を見た。
それはすなわち、彼らが待ち望んでいた勝機と希望だった。

330 :


331 :代理です。:2013/12/12(木) 08:20:48.46 ID:pq4C9zD9
カルロス「(来た!ゲルティスが正しかった!今のセービングを見て確信した!)」

この勝機に誰よりも激しく真っ先に食いついたのがカルロスだった。
ブラジルユースキャプテンとしての不屈の闘志と
世界屈指のストライカーとしてのゴールへの嗅覚両方が彼に叫んでいた。
こここそが勝負所であり、ここで得点しなければならないと。

放送「ダメだ〜〜〜っ!不意打ちのドライブシュートも通用しない!これまたパンチング!
そうこうしている内にもう前半44分!このままドイツの2点リードで後半を迎えてしまうのか!?
このこぼれ球はヨハンセンくんがフォローします!」

ヨハンセン「よし、カルツ!」

バコッ!

カルロス「(ハーフタイムには逃げさせない!前半終了間際のこのタイミングで勝負だ!)」

バッ!
グルルッ!
パシッ!

ヨハンセン「なにィ!」

放送「あっと、ここでカルロスくんがムーンサルトパスカットで華麗にパスカット!
まだだ、まだブラジルの攻撃は終わりません!前半終了間際の猛攻は実を結ぶか!?
ミューラーくんは既に立ち直っていますが得意のミラージュシュートを決めて欲しい所!」

観客「今度こそ決めろーーーっ!!」「ミラージュシュートをぶちかましてやれェ!」

カルロスは自らボールを奪い、僅かに駆け込んでから足を思い切り振りかぶった。

332 :代理です。:2013/12/12(木) 08:21:25.30 ID:pq4C9zD9
                         カルロス「いくぜ!」

                    グワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

                          ミューラー「!!?」

                その時ミューラーは予感した。今までよりも強力なシュートが来ると。

                   シュナイダー「(何!?振り足が今までとは違う!)」
                   フライハイト「(ミラージュシュートではない…!)」

                       森崎「(うおっ!?この感覚は…!)」
                      翼「(カルロス!何かやるつもりだな!)」

                   他にもカルロスが何か切り札を切った事を感知した者は居た。
                      だが立ち向かえるのはミューラー一人だった。



                       カルロス「ファントムシュート!!」

                      ブワッギュゥウウウウウウウウウウウッ!!!
                    ギュゥィインギュゥィインギュゥィインギュゥィイン…!




.

333 :代理です。:2013/12/12(木) 08:21:58.85 ID:pq4C9zD9
                   左右にぶれながら緩やかなカーブを描くそのシュートは一見
                  ザガロのダブルイールやカペロマンのサイドワインダーに似ていた。
                   速度はそれらより少し上だったが、ネオファイヤーには明確に劣る。

                    ミューラー「(…違う!これはただの横ブレじゃない!)」

                                バッ!

                だがミューラーはこれがただ単に左右にぶれるだけのシュートではないと予感し、
                         油断なく全力でセービングに行った。

                           ブワァアアアアアアアアアアア…!!

                          ミューラー「(…こんな変化かよ!?)」

                              彼の予感は当たった。
                   ファントムシュートはミラージュシュートよりも更に幾重にも分裂し、
                          広範囲のボールの雲を作ったのだった。

                       今のミューラーには半分以上のボールが残像だと看破出来た。
                      だが残ったボール数個の内どれが本物かまでは見極められなかった。

                                ブンッ…

                          ミューラー「くっ…くそォオオオ!!」

                   当たりさえすれば、の思いで振り下ろした腕にボールがかする事は無かった。

                               バリィイッ!
                              トントントン…
                       ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

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334 :代理です。:2013/12/12(木) 08:22:31.54 ID:pq4C9zD9
.


ブラジル 1−2 ドイツ



大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
10ゴール シュナイダー、ストラット
9ゴール カルロス、日向
8ゴール ディアス
6ゴール ザガロ
5ゴール 火野、ビクトリーノ
4ゴール 翼、カペロマン、森崎、ランピオン、カマーチョ
3ゴール ポブルセン、ナポレオン、ピエール、チャンドラー、ロリマー、ミハエル、サトルステギ
2ゴール トニーニョ、マーガス、李邦内、李邦坤、アルシオン、イスラス、レンセンブリンク、三杉
1ゴール ルーク、肖、岬、山森、フライハイト、ネイ、ロペス、ガルシア、クライフォート、
     カイザー、マッハー、クリスマン、政夫、ディウセウ、マウリシオ

大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト アルシオン
5アシスト サンタマリア
4アシスト 岬
3アシスト マーガス、翼、ダ・シルバ、ネイ、チャンドラー、火野、パスカル、ランピオン、
2アシスト カペロマン、カルロス、バンビーノ、カルツ、ピエール、王、森崎、トニーニョ
1アシスト フライハイト、カルツ、メッツァ、テイラー、飛、山森、早田、ビクトリーノ、エスパダス、クリスマン、イスラス、
      シェスター、バビントン、クライフォート、カイザー、和夫、ジェトーリオ

.

335 :代理です。:2013/12/17(火) 13:15:37.62 ID:U0V23mBA
ドイツメンバー「あ…」「そ、そんな…」

ブラジルメンバー「よ、よし…!」「やっと…!」

どんどん先細りしつつあったブラジルユースの命運を盛り返す起死回生の一撃が決まり、
スタジアムがほんの短い間だけ静寂に包まれる。

グッ!

カルロス「見たか!これが世界を制する為に編み出した俺の切り札、ファントムシュートだ!!」

ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

それは天高く拳を突き上げたカルロスの雄叫びをキッカケに破られた。

放送「決まった!ゴール、ゴール、ゴォオオオオオオ〜〜〜〜〜〜〜〜ルゥウウウ!!!
前半ロスタイム直前にカルロスくんの新必殺シュートが炸裂!その名はファントムシュート!
ミラージュシュートを上回る恐るべき分裂ぶりでドイツの雷神を惑わしたのです!
0−2のまま終わってしまうかに見えた前半終了間際のこの一撃はブラジルの息を吹き返す
値千金の会心の一撃と言って良いでしょう!意地を見せましたカルロス・サンターナ!」

観客「よっしゃあ!」「ようやくかよ!」「信じていたぞ我らがカナリア軍団よ!」
「やっとミューラーがミスしやがったぜ!」「違う、カルロスがやってくれたんだ!」
「このまま後半さっさと逆転しろよ!」「カルロス!」「カルロス!」「カルロス!」

ロベルト「(ふーっ…ようやくやってくれたか。本来は後半まで出さない筈だったんだけどなあ)」

コインブラ「(やっと1点か…だがこれで勝てる訳じゃない。どうするつもりなんだ)」

ルディ「(うぬっ…まだ大きな切り札を隠し持っていたとは…この1点は仕方がないな)」

336 :代理です。:2013/12/17(火) 13:16:16.60 ID:U0V23mBA
松山「い、今のどうやって撃ったんだ?ツインシュートよりもブレていたぞ?」

三杉「ミラージュシュートの発展形だとは思うけど、詳しい原理は分からないな」

中山「DFの立場からすれば、速くて曲がって更にブレまくるなんて酷いシュートだぜ」

日向「フン、今更この程度のシュートにビビっている訳にはいかねえだろうが」

翼「だけど、無いと思われていた大砲があったのは大きい…流れは変わったよ」

森崎「このタイミングで得点していなけりゃブラジルは大変な事になっていたな…」

ブラジル人が圧倒的大多数を占める観客は当然狂喜乱舞したが、全日本ユースの面々は
比較的冷静にこの流れを眺めていた。カルロスが切り札を隠していたのは
それ程の驚きは呼び起さず、むしろこの1点が試合の後半にどう影響するかに興味津々だった。



シュナイダー「(なるほど…これが奴らの心の支えだったのか。確かにとっておきの新技が
残っていると言う事実は劣勢時に闘志の下限を保ってくれる。そして奴らは見事にその新技を
決めてみせた。それも前半終了間際と言う良いタイミングでだ…流石はブラジルだ。だが…)」

失点したドイツユースの面々は流石に多少は動揺していたが、その中でシュナイダーは
一際冷静さを保っていた。ブラジルユースの選手達とすれ違いながら
ドイツ陣内にゆっくり歩み戻るその姿にはいささかの怯えも見えなかった。

シュナイダー「(こちらも元からブラジル相手に無失点で勝てるなどと楽観はしていない。
俺達は1−0の勝利を至上とするイタリアじゃないんだ。打撃戦で相手に打ち勝つドイツだ。
それを皆に思い出させなくてはな)今のは止められただろう、ミューラー」

ミューラー「………フン!」

337 :代理です。:2013/12/17(火) 13:17:15.91 ID:U0V23mBA
ドイツゴール前に辿り着いた彼がまず行ったのはミューラーへの挑発だった。
あまり仲が良いとは言えないこの二人は共に超がつく程強気な性格であり、負けん気も強い。
慰めの言葉よりも挑発の方がはるかに心地いい人種であり、お互いをそう理解しているのである。

シュナイダー「実に奇妙な増え方をするシュートだったが、威力や速度は俺のネオファイヤーの方が
明らかに上だ。そしてお前は日常的に俺のネオファイヤーを浴びている。二発目は止められるよな?」

ミューラー「誰に言っているんだ。分かりきった質問をするな」

シュナイダー「それなら良い。他の者も、あの程度で萎縮などしていないだろうな?」

カルツ「当然ぜよ。ブラジルならあれ位やってきてもおかしくないしな」

フライハイト「足への負担も大きい筈だ。カルロスはあれを連発できない」

シェスター「まだまだ俺達が1点リード中なんだ。気を取り直せばいいさ!」

カペロマン「向こうだってディウセウがヘバってきてるしな。いけるいける」

シュナイダー「よし。まずは前半を無事に終えて後半仕切り直しだ。いいな?」

ドイツメンバー『おう!!』

幸いミューラーは悔しさを糧にすぐ立ち直っており、顔の汗を盛大に飛ばす事で挑発に挑発で応えた。
他の者もそれに釣られて前向きなムードを作り直し、シュナイダーの気合に一斉に応答した。

シュナイダー「(これでいい。ここからが本当の勝負だ…だが…)」

しかしこの時シュナイダーは一つの不安を感じていた。彼らしい冷徹な表情の下で
正体不明の違和感を感じており、チームメイト達からそれを隠すのに苦労していた。

シュナイダー「(なんだ…?何かを見落としている気がする…この違和感は何だ…?)」

338 :代理です。:2013/12/26(木) 09:55:49.05 ID:3fBd9yvy
ピッ、ピィイイイイイイイイイ!!

その後前半は僅かなロスタイム以外は何事もなく終わった。

放送「前半終了です!カルロスくんのゴール以降、両チームとも目立った動きは見せず
約2分のロスタイムは盛り上がりなく終わりました。スコアは1−2、ドイツがリードしています。
ブラジルが序盤からキープ率、シュート数共に明確に上回りながら中々得点できず、
ドイツに上手くカウンターを決められてしまうと言う不気味な展開になっています。
果たして後半、ブラジルの逆転はなるか?緊迫感に溢れるハーフタイムに入ります」

観客「畜生、まだドイツが1点リードか…」「0−2のままよりはずっとマシだが、嫌な試合展開だぜ」
「ファントムシュートもそう何発も撃てないだろうし…マズいな」「後半も前半みたいに支配できるかな?」
「難しいな…ドイツが何も対策してこないハズはないし」「選手達の消耗も心配だ。トバしていたからな」

三杉「流石にブラジルの観客は目が肥えているね。参考になる議論を行っているよ」

松山「そうだな。まだまだリードしているドイツが優位なのを良く分かっている」

中山「ブラジルは積極的に攻撃できるのは良いが、それを前半の内に散々見せちゃったからなあ」

若林「ミューラーの奮闘とカウンターの成功による結果論だが、戦術をミスったかも知れん」

日向「後半序盤が鍵だな。どっちが勝っても手の内を曝け出してくれそうだがな」

翼「ブラジルの落ち着き様を見る限り何かまだ切り札を残しているんだろうか…?」

井出「(切り札…あのブラジルの10番は…未だに出てこないんだな…?)」

後半の展望はスコア通りドイツが有利。ブラジルは何時まで攻勢を続けられるか、そして後半こそ
ミューラーの粘りを崩す事が出来るのか?出来たとして、これ以上カウンターの被害を抑えられるのか?
全日本ユースの選手達を含めた観客達は概ねその様なビジョンを共有していた。

339 :代理です。:2013/12/26(木) 09:56:21.04 ID:3fBd9yvy
〜ドイツユースロッカールーム〜

ルディ「ポブルセン、ケガの具合は大丈夫か?」

ポブルセン「問題ありませんっつってんだろ…」

ルディ「よかろう。そこまで減らず口を叩けるのならまだまだ戦ってもらう
(限界の見極めは誤ってはならんな…試合終了まで持つかどうかははっきり言って分からん)」

ドイツユースがハーフタイムに行ったのは2点目の殊勲者ポブルセンの負傷のチェックだった。
ポブルセンは確かに負傷している筈なのに動作にも精神にもまるで衰えを見せず、それどころか
キレが増していると言う状態を未だに維持していた。その非常識な精神力が何時まで続くか
一抹の不安を抱きながらもルディは彼を使い続ける事にし、次の懸念事項に移る。

ルディ「クランケ、ヨハンセン。残念ながらお前達は試合から消えていたな」

クランケ「うっ…申し訳ありません」

ヨハンセン「す、すみません」

ルディ「ああいや、責めている訳ではない。ブラジルの攻撃パターンの多彩さが私の予想を上回っていただけだ。
ああまでバックパスやミドルシュートを駆使し、逆にサイドアタックをやる気がないとお前達のスタイル上
どうしても出来る事は少ないだろう。だが、修正出来る事は何もない。サイドを完全にフリーにすれば
そこに進入し狙いすましたシュートを撃ってくるだろうからな…損な役割になるが後半も縁の下の力持ちに務めてくれ」

クランケ「はい…」

ヨハンセン「…分かりました」

340 :代理です。:2013/12/26(木) 09:56:58.12 ID:3fBd9yvy
ルディ「だが、流石に前半の様にシュートを撃たれまくるのは危険すぎる。なにせ前半だけで11本だ…
後半も11本撃たれたら勝てるものも勝てない。そこでだ、シュナイダー」

シュナイダー「はい」

ルディ「後半は前半よりも守備的にプレイしろ。前半の様にカウンターに専念する必要はない」

ドイツユースにとって後半の最重要課題はブラジルユースのシュート数を減らす事だった。
これを成し遂げる為の対抗策は当然、高いボール奪取力とキープ力を持つシュナイダーの守備参加である。

ルディ「無論隙あらばシュートを狙いに行け。だが後半重要なのはお前が最後までフィールドに立ち、
ブラジルから時間の余裕を奪う事だ。膠着状態になればなる程こちらが有利になるのだからな」

シュナイダー「はい(当たり前過ぎる程の選択だ。故に向こうが最も嫌がる)」

ルディ「他は特に何も変える必要はない。強いて言えばマイボール時は前進よりも支配を心がけて
いけと言う位だな。特にメッツァとカルツが役割分担していけば、ブラジルを困らせる事が出来るだろう」

ドイツメンバー『はい』

341 :代理です。:2013/12/26(木) 09:57:54.45 ID:3fBd9yvy
ルディ「指示は以上だ。自信を持っていけ。真のサッカー王国はブラジルではなくドイツ。それを証明してこい!」

ドイツメンバー『はい!!』

シュナイダー「はい!!(だが…何だこの不快感は?まだ何かがある様な気がしてならない…)」

このハーフタイムでドイツユースが行った作戦会議の結果は一言で言うならば堅実にして王道。
リードを奪えたのだからそのアドバンテージを最大限活かしつつ、前半味わった脅威に対策する。
人によっては面白味がないと言うかも知れない程当然な戦い方であり、それ故に穴は無い筈だった。

シュナイダー「(ブラジルにまだ何か切り札や隠し玉があっても、それを過剰に恐れる必要はない筈だ。
だが…俺のサッカー選手としての何かが訴えている。優勢ではない、ピンチだと!一体これは何だ…?)」

それでもシュナイダーは得体の知れない不安を感じていた。いくら考えても分からない物は分からないと
割り切り、余計な不安を味方に与えない為にポーカーフェイスを貫く事は出来たがそれだけだった。

ミューラー「(ちっ…何だ?俺とした事が。カルロスに一点奪われた事でショックを受けた?
有り得ん。俺はかつて自信を打ち砕かれ、それを蘇らせた。今更一点位で動揺するバカじゃない…)」

この時ミューラーも人知れずシュナイダーと同様に訳の分からない不快感に苛まされていた。
彼もまたシュナイダー同様周囲に不必要な弱音を吐くタイプではなく、それを口にする事はなかった。

故に当事者のミューラーも含めてドイツの誰も気付かなかった。ミューラーが疲労している事に。

342 :代理です。:2013/12/26(木) 09:58:49.24 ID:3fBd9yvy
〜ブラジルユースロッカールーム〜

ロベルト「1−2か…2点目は余計だったな…(監督らしい台詞その39、っと)」

ディウセウ「ワリィ、監督。むざむざやられちまった…」

ロベルト「…これ以上の失点が許されないのは当然として、最低でも後2点が必要だぞ。分かっているのか?」

ブラジルユースの方はと言うと、ロベルトの叱責から始まっていた。
攻撃回数で上回っているのにスコアでは下回っていると言うのは失態以外の何でもない。
ロベルトはこういう時は選手達に自主的に改善案を言わせる様仕向ける様にしていた。

コインブラ「……………」

ロベルト「(コインブラが出せればなあ〜…でも皆居ない者扱いしているし、コイツも出るって言わないし…)」

彼自身はコインブラ投入以外の手が思いつかず、その手が実行不可能に近い今内心困り果てていた。
ブラジルユースの恥部であるが、幸いにしてそれを知る者はロベルト本人以外は居ない。

カルロス「分かっています。後半必ず逆転してみます」

ロベルト「ほう。そう言い切る自信の根拠はなんだ?(これで後はサンタマリアとかが説明してくれるな)」

ロベルトは選手達の自主性を煽り自発的に作戦を”提案”や”主張”させる話術に長けていた。
ブレインタイプの選手が複数居るブラジルユースではこのやり方は特に上手く行っており、
普段はサンタマリア、トニーニョ、カルロスなどがロベルトの代わりに積極的に喋ってくれるのである。

ゲルティス「…ミューラーの消耗です」

ロベルト「なにィ!?」

コインブラ「……………?」

343 :代理です。:2013/12/26(木) 09:59:32.40 ID:3fBd9yvy
しかし今回発言したのはゲルティスであった。予想外の人物から全く予期していなかった指摘が飛び出し、
ロベルトを驚愕させる。同時に誰も見ていなかったがコインブラも疑問符を顔に浮かべていた。

ゲルティス「俺は試合前からミューラーを分析していました。そこで目を惹いたのが
ミューラーの極めて特殊な経歴です。アイツは公式戦はおろか、練習試合すらまともな数をこなしていない」

ロベルト「そ、それがどうしてミューラーの消耗に繋がるんだ?」

ゲルティス「言葉で説明するのは難しいですが…実戦と練習は違うとはあらゆるスポーツに関して言われます。
練習通りの動きが出来る様になる為に、そして練習時以上に冴え渡る為に実戦経験の蓄積が問われるのです」

ロベルト「それは分かるし、文句もないが…ミューラーはプレッシャーに苦しんでいる様にはとても見えんぞ?」

ゲルティス「ええ、それ自体は驚異的な事であり、賞賛に値します。ですがそのツケは確実に現れます。
ゴールキーパーは精神力を問われるポジション。そして経験は精神力を支える物。その支えがないミューラーは
精神力を浪費し、体力が尽きた時それを補う為の蓄えを失くしているのです。プレッシャーの耐え方が非効率的、
とでも言うべきでしょうか。本人はとても強気なタイプらしいので恐らく自分も味方も気付いていないでしょうが…」

ロベルト「んん〜…?何だか、シックリ来ないな…」

ゲルティスの主張は話し方その物は論理的だったものの、それが精神力と言う抽象的なテーマだった為
ロベルトはしきりに首をひねる事しか出来なかった。そこでカルロスが無理もないと苦笑し話をまとめにかかる。

カルロス「俺達もゲルティスが最初に言い出した時は半信半疑でした。これはキーパーでない限り
分からない事なのかも知れません。ですがゲルティスの主張を裏付ける物があります。
前半終了間際、ミューラーの動きが僅かながら鈍っていた事です」

ロベルト「(え、そうだったのか?ヤバい、全然分からなかった…)」

サンタマリア「いずれにせよ、後半も積極的に攻めると言う点で俺達のやる事に何も変わりはありません。
ただ当初の予定よりもミューラーの消耗に期待できると言うだけです。お任せください、監督」

344 :代理です。:2013/12/26(木) 10:00:04.57 ID:3fBd9yvy
ロベルト「(ええい、分からない物を考えるよりも監督らしいセリフだセリフ!)…良いだろう。
ここはゲルティスの観察眼に期待する。そして攻めて攻めて攻めまくるのも試合前の作戦通りだ。
無論ドイツも修正は施してくるだろうが、それは力でねじ伏せろ。いいな?」

ブラジルメンバー『はい!!』

ロベルト「ファントムシュートは予定より早く使ってしまったが、まだアレとアレが残っている。
それを最も効果的なタイミングで使い、勝負を決めに行け。いいか、ブラジルは勝つからこそブラジルなんだぞ!」

ブラジルメンバー『はい!!』

ブラジルユースの狙いはミューラーの疲弊。そしてそれを後押しする為の温存していた新技の数々。
これらが機能すれば逆転勝利は決して難しい事ではないと言うのが彼らの後半に向けた意気込みだった。

コインブラ「(経験不足によるミューラーの消耗、だと…?)」

ただ一人、コインブラだけはその意気込みを分かち合っていなかった。

コインブラ「(そんな物は奴から見えてこないぞ…)」

選手の力量を見抜く眼力に自信がある彼はゲルティスの言うミューラーの弱点を見出せていなかった。
そんな物があるとは到底信じられなかった。

十数分後、彼は思い知る事になる。彼にも見抜けない物があるのだと。

345 :代理です。:2014/01/02(木) 12:43:41.07 ID:+Wgx0nCp
ピィイイイイイイイイイイイイイ!

前半はドイツのキックオフから始まった為、後半は当然ブラジルのキックオフから始まる。
ザガロのキックオフを受けたカルロスはまずサンタマリアにボールを戻した。

放送「後半開始です!早い内に同点に追いついておきたいブラジル、まずはサンタマリアくんが
ボールを託されました。そのサンタマリアくんに向かってくるのはシュナイダーくんとポブルセンくん!」

シュナイダー「貰うぞ」

ポブルセン「寄越せェ!」

サンタマリア「(予想通り、シュナイダーが積極的に守備参加しそうだな。やり辛くなりそうだ…だが!)」

グワアアッ…
バシュルルルルルッ!
ギュィイーーーーーン!

シュナイダー「なにィ!」

ポブルセン「なんだと!」

岬「ああ成程。ブーメランシュートが出来るんなら当然これも出来るだろうね」

サンタマリア「お前達では俺のパスをカットするのは難しいだろう?」

まずブラジルはサンタマリアのブーメランパスでシュナイダーとポブルセンを振り切った。

346 :代理です。:2014/01/02(木) 12:44:12.67 ID:+Wgx0nCp
放送「鋭いっ!サンタマリアくんがブーメランパスで見事ドイツの二人を翻弄!
大きく右サイドに展開してネイくんが持った!」

観客「キャーネイーーー!!」「後半こそ大活躍してよー!」「派手に決めちゃってー!」

ネイ「いいねえ、黄色い声援ってのは。リクエスト通り派手にやっちゃうか!」

ダダダッ!

ここからネイがドリブルでバイタルエリアに近づき、そのまま突破を試みる。

放送「ネイくんチャンスを作りに切り込む!だがドイツのダブルボランチが立ち向かうぞ!」

シェスター「なんの!女性ファンの多さなら負けないぜ!」

ネイ「ほ〜う、言ってくれるじゃん。ならここでカッコよくお前を抜いてお前のファンも貰うぜ!」

シェスター「そうはいかないぜ。ゲルマン忍者こそ最モテだ!」

サササッ!
バッバッ!

カルツ「お前ら何の話しとるん…じゃ!っと」

ズザザーッ!
バチィ!

ネイ・シェスター『あっ』

トニーニョ「フザけすぎだ…」

だがその試みは失敗し、ボールはこぼされた末にカペロマンの足下に収まった。

347 :代理です。:2014/01/02(木) 12:45:33.39 ID:+Wgx0nCp
放送「あーっとネイくん抜けない!こぼれたボールはカペロマンくんの下に!ドイツの反撃が始まる!」

カペロマン「女ファンだったら俺も多いぜ。お前はモテなさそうだな、ボーヤ」

マウリシオ「勝手に決め付けんな!」

ズザザーッ!

カペロマン「それと、お前のディフェンスも人に言えない位軽いぜ!」

シュパァン!

マウリシオ「くそっ!」

カペロマン「(さて、ここまではいいんだが…)」

カペロマンはすぐさま右サイドアタックを開始し、軽くマウリシオを翻弄した。
しかし彼にとって真の問題はこの後に控えるエースキラーのジェトーリオである。

ジェトーリオ「いらっしゃいませー♪ボールはこちらでお預かり致しまーす♪」

カペロマン「気持ち悪いなお前」

放送「カペロマンくんが右サイドを駆け上がりました。しかしここでジェトーリオくんが来ました。
ボール狩りの名人として恐れられる彼を何とかして突破しなければ右サイドアタックは続けられません!」

348 :代理です。:2014/01/02(木) 12:46:54.69 ID:+Wgx0nCp
カペロマン「(こいつの汚い守りは極めて厄介だ。審判に捕まるリスクも当然ある筈なんだが、
それは何時起きるか分からないし何時までも起きないかも知れない。この試合中ずっと無事かも知れないんだ。
そんな不確定要素に期待しつつじゃ俺のドリブルでの勝負は分が悪い。どうすれば…)」

ダダダッ!

マーガス「カペロマン!俺だ、俺を使え!」

カペロマン「お、良い所に来たじゃないか!」

パンッ!ダダッ!パンッ!ダダッ!

ジェトーリオ「ありゃー、そう来ちゃうのね…で、も」

ジェトーリオ相手にドリブル勝負は分の悪い賭け。そう割り切ったカペロマンは
マーガスとのワンツーを使ってジェトーリオを抜き去ろうとした。

ジェトーリオ「別に奪う必要はないんだよね僕。君をフリーにさえしなけりゃね」

カペロマン「なにィ!?」

マーガス「こいつ…取る気がないのか…?」

だがジェトーリオはパスコースに割って入ろうとせず、二人の進行を許しながら
一緒に自陣内に下がりカペロマンからつかず離れずの距離を保った。

放送「カペロマンくんマーガスくんとワンツーリターンを開始!ジェトーリオくんこれを取れないが、
必死にカペロマンくんに食らいつく!しかしボールを奪えないまま右サイドへの侵入を許してしまったァ!」

観客「わーっ!また危ないぞ!」「こらージェトーリオ!ちゃんとボール奪えー!」

森崎「(いや、ブラジルとしちゃアレでいいんだろ…)」

349 :代理です。:2014/01/02(木) 12:47:53.00 ID:+Wgx0nCp
ジェトーリオはワンツーで振り切られる位ならボール奪取を諦め自陣への侵入を許してでも
カペロマンをフリーにさせなければ失点の危険は薄いと言うサンタマリアの指示に従っていたのである。
当然この行動の意味は分かりやすく、カペロマンが怒りを込めてジェトーリオを睨みつける。

カペロマン「フリーにさえしなければ俺なんか怖くない、ってか?」

ジェトーリオ「うん、その通りだよ」

カペロマン「ナメるなァ!!」

グワアアアアアアアッ!
バッシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!
グイングイイングィイン…!

放送「撃ったーーーっ!!カペロマンくんのサイドワインダーだァ!!」

ゲルティス「(キャッチ成功確率55.6%…)ハァアアアアア!」

バッ!
シュィイイイイイイイイイイイン…
ガシィイイイッ!!

ゲルティス「キャッチ成功」

カペロマン「そ、そんなァ…!」

ジェトーリオ「君がゲルティスの事をナメてるんじゃないの〜?前半の2失点で雑魚キーパーだと思ったの?」

放送「しかしこれはゲルティスくんがファインセーブ!これ以上の失点は許さないと言う気迫を見せ付けました!」

この読みは当たり、カペロマンのサイドワインダーはブラジルゴールを脅かす事が出来なかった。
何本も撃てばその内入るかも知れないが、そんな余裕はドイツのチャンス数にもカペロマンの体力にもない。

350 :代理です。:2014/01/06(月) 20:06:54.78 ID:+/NZWyDG
パンッ!バコッ!バシュウッ!

ディウセウ「任せっぞ、サンタマリア」

サンタマリア「ああ」

放送「ブラジル、再びサンタマリアくんにボールを回し攻撃の起点を任せます。
ここからどんなゲームメイクを見せてくれるのか?」

3失点目を防いだブラジルはしばしパスを回してから再びサンタマリアにボールを持たせた。

ドイツメンバー「(くそっ、またサンタマリアか…)」「(ブーメランパスに気をつけないと)」

サンタマリア「フッ」

ダダダッ!

ドイツメンバー「あっ!」「しまったドリブルか!」

サンタマリア「パスを警戒されればドリブル。ドリブルを警戒されればパス。基本だ」

放送「サンタマリアくんここはドリブル!ドイツ陣内の中部へ突き進みます。
このままドリブルで何処までいくのか?ひょっとして自分で撃ちに行くのか?」

サンタマリアはまたもブーメランパスか、とドイツが警戒したのを見計らってあえてドリブルで
突き進んだ。無論その程度の意表を突いただけではノーチェックで切り込める範囲は限られる。

ポブルセン「ァアアアアアアッ!!」

ダダダッ!

サンタマリア「(とは言え、ここまで来たらやはりブーメランパスの方がいいな)」

351 :代理です。:2014/01/06(月) 20:07:35.38 ID:+/NZWyDG
グワアアアアアアッ!
バシュルルルルルッ!!
ギュィイイイイイ…

放送「サンタマリアくんここでパス!ブーメランパスで一気にシュートチャンスを作りに…」

シェスター「おおっと、2度もやらせないぜ!」

バッ!
ギュィンギュィンギュィン…
バチィッ!

サンタマリア「なにィ!」

ポーーーン…

トニーニョ「なんのまだだ!」

ダダダッ、バッ!
グワアアアアアアアアアッ!!

放送「いやこれはシェスターくんに弾かれた!だがトニーニョくんがすかさず飛びつくぞーっ!」

だがキラーパスとして放ったブーメランパスはシェスターに阻まれ、見当違いの方に飛んでいった。
ならばとトニーニョが飛びつき、スカイドライブを撃ちに行く。

フライハイト「くっ…」

カルツ「くそっ、間に合わん!」

352 :代理です。:2014/01/06(月) 20:08:22.86 ID:+/NZWyDG
トニーニョ「スカイドライブだ!」

バッギュワァアアアアアアアン!
ギュルルルルルルルル!!

放送「トニーニョくんのスカイドライブ!」

ミューラー「フン、それはもう見飽きたぞ!」

バッ!
バコォオオオオオオオン!

トニーニョ「くっ!(ハーフタイムである程度回復しているな…)」

フライハイトとカルツもこれを妨害しようとするが間に合わずトニーニョのスカイドライブは放たれた。
しかしこれもミューラーの牙城を脅かす事は出来ず、パンチングでヨハンセンの方に弾く。

放送「しかしこれは弾かれる!後半も磐石だミューラーくん!パンチされたボールはヨハンセンくんの方に!」

ヨハンセン「よし、メッツァ!」

バコッ!

ネイ「はい予想的中!」

シュッ!パシッ!

ヨハンセン「な、なにィ!」

放送「しかしネイくんがすぐさまカット!まだブラジルの攻撃は続くぞ〜っ!」

353 :代理です。:2014/01/06(月) 20:08:58.78 ID:+/NZWyDG
ヨハンセンはフォロー後すぐにメッツァに繋ごうとしたが、これはネイに読まれていた。
ネイはパスカットに成功し、すぐさまドイツのPA内に切り込み敵を引きつける。

ネイ「(そろそろ…ほらっ!)」

バコッ!

ザガロ「よし。行くぜーーっ!!」

グワァアアアアアアアアアアッ!!

放送「切り込んで…ザガロくんに!ザガロくん振り上げる!ダブルイールだ!」

バッグォオオオオオオオオオオオオオオン!!
ギュルギュルギュルギュル!

そのままネイはヒールパスでザガロに渡し、ダブルイールを撃たせた。

ミューラー「何度やっても同じだァ!」

バッ!
バキィイイイイイイイイイイッ!
バシュッ、シューーーーー…

観客「ああああっ!」「ま、またかよ…」「畜生!これだけ撃ちまくって入らないってどういう事だ!」
「このままじゃ逆転どころか同点すら怪しいぞ…!」「それどころかもしドイツにもう1点入れられたら…」

354 :代理です。:2014/01/06(月) 20:10:04.84 ID:+/NZWyDG
放送「ああ〜っ…し、しかしまたもやミョルニル炸裂ゥ!!ボールが叩き潰された!
何本撃っても崩れてくれない!何と言う鉄壁ぶりでしょうかミューラーくん!
前半の絶好調を維持する彼相手には最早ファントムシュートを撃つしかないのでしょうか?
ドイツにとっては何とも頼もしき姿はブラジルにとっては最早悪魔にすら見えてきます…」

ドイツメンバー「やったァ!」「流石ミューラーだぜ!」「へへ、頼もしいな」

だがこのシュートすらミューラーは勢い良く叩き落とし、ボールを地面に挟んでパンクさせてしまった。
前半終了間際の失点など無かったかの様な鉄壁ぶりを維持するミューラーの勇姿に
元気付けられるドイツユースの面々だったが、ブラジルユースの選手達は知っていた。

ザガロ「(フン、何が何度やっても同じだ…もうそんな事は言えなくなるぜ)」

ブラジルメンバー「(よし…動きが鈍り始めている)」「(ここから更に連射だ)」「(2点目はすぐそこだ!)」

たった今、ミューラーは限界に達したと。

ミューラー「(…なんだ!?今俺の全身を襲った違和感はなんだ…?)」

フライハイト「(ミューラーの様子がおかしい…?)」

シュナイダー「(いよいよもって俺の勘が叫んでいる…!今はピンチなんだと!だが、ピンチの内容が分からない…
考えている時間もない…ならばピンチの側にある筈のチャンスを掴むしかない!3点目を狙う!)」

森崎「ん?…おい井出。今のでブラジルのシュートは何本目だ?」

井出「え?13本目ですよ。前半11本撃ちました」

森崎「13本………」

355 :代理です。:2014/01/07(火) 09:41:20.56 ID:0CjTdtcn
ピィイイイイイーッ!

ポンッ!パンッ!ボコッ!

カペロマン「ナイスパス!」

ジェトーリオ「また君なの〜?」

放送「ドイツ、またしてもカペロマンくんが右サイドアタックを仕掛けます。これが一番確実な手なのでしょうか?」

新しいボールと交換した後試合を再開したドイツの攻め方は再びカペロマンのサイドアタックだった。
ジェトーリオがマークについている分自由に撃てないとは言え、
ワンツーを併用すればブラジル陣内に攻め込む事は可能なのである。

カペロマン「(さてどうしたもんか…サイドワインダーは精々後2本。ムキになって撃ちに行っても
俺の体力とチームの攻撃チャンスをフイにしてしまうだけで終わりそうだ。
だからと言ってワンツーで時間稼ぎなんかさせてくれる程甘い守りはしてくれないし…ん?)」

シュナイダー「(カペロマン、俺に持ち込むんだ)」

カペロマン「(シュナイダーか…そうだな、そろそろメッツァにも働いてもらうか!)」

グワアッ!
バッコォオオオオオン!

放送「あっとカペロマンくん大きくパス!これはサイドチェンジだ!メッツァくんにボールを託しました!」

ほんの数秒迷った末にカペロマンはシュナイダーのアイコンタクトに気付き、シュナイダーに繋ぐべく
逆サイドのメッツァに渡した。当然ブラジルもメッツァを放置する訳ではなく、ネイとトニーニョの二人がつく。

356 :代理です。:2014/01/07(火) 09:42:11.35 ID:0CjTdtcn
ネイ「おっと、こっちだってフリーパスじゃないぜ!」

トニーニョ「ボールが破裂したお陰で俺達も戻れたんだからな」

メッツァ「あー、確かにそうだね。でも」

ブンッ…
バシュルルルルルル!

ネイ「うっ!?」

トニーニョ「そんな!」

メッツァ「ほらだめじゃん。僕のパスを取るのは簡単じゃないよ」

シュナイダー「ナイスパス」

放送「メッツァくんパス!ネイくんトニーニョくんカットできない!ドイツの名パサーの技が冴え渡る!
そして…シュナイダーくんにボールが渡ってしまったァ!ここで止めたい!」

観客「わ〜っ、まずいぞ!」「バカ、何やってんだ!」「早く止めろ〜〜〜っ!!」

ドトール「アマラウ、ついてきてくれ」

アマラウ「おう!」

しかしネイとトニーニョのどちらもメッツァのトップスピンパスを阻む事は出来ず、
シュナイダーがブラジル陣内でボールを受けた。この時彼を止めに向かったのはドトールとアマラウである。
ボール狩りに長けたドトールが相棒のアマラウのサポートを得ればシュナイダーを阻める確率は低くない。

357 :代理です。:2014/01/07(火) 09:43:22.66 ID:0CjTdtcn
シュナイダー「(この試合、ここで点を取らなければマズい!敗北すら有り得る!
俺の勘がしきりにそう叫んでいる。だから今回は…是が非でも押し通る!)」

ダダダッ…
ピタッ!

ドトール「なっ!?」

アマラウ「げっ!」

シュナイダー「HA!!」

ヒュウウウッ!!
ドグワシャッ!

ドトール・アマラウ『ぐわあああああ〜!!』

サンタマリア「なっ!…ま、まずい!」

ただし、確率はあくまでも確率。分が悪いとは言えシュナイダーにもこの二人を突破できる可能性は
ちゃんとあり、今回シュナイダーはカイザーマルシュを用いる事でそれを成し遂げた。

ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

こうして後半15分、ドイツにビッグチャンスが訪れた。

358 :代理です。:2014/01/07(火) 09:44:21.12 ID:0CjTdtcn
放送「と…止められないーーーっ!シュナイダーくんの突進が阻めなかった
ドトールくんとアマラウくんが痛々しく宙を舞う!そしてもうここはシュートレンジだーーっ!!」

観客「ギャーーーーーーッ!またシュナイダーにやられるのかよーっ!?」「止めろ、止めるんだ!」
「いい加減意地を見せろ!ゲルティス!」「ディウセウ止めろ!止めないとお前はただの木偶の坊だぞ!」

ルディ「(よし!ここで入れば勝利はほぼ決まりだ!頼むぞカール!)」

ロベルト「(わ〜〜〜っ!そんな馬鹿などうしようどうしようどうしよう!)」

全日本メンバー「ここでネオファイヤーのチャンスだと…!?」「まさか、ハットトリックか?」

森崎「………」ゴクリ

この時ブラジルに残された守備陣はディウセウとゲルティスの二人だけだった。
ドトールとアマラウはたった今シュナイダーの手によって吹き飛ばされ、
ジェトーリオは逆サイドに居り何も出来ない。サンタマリアとマウリシオが戻ってきては
いるものの、やはりブロックに飛べる位置ではないし例え飛んでも役には立たない。

ポブルセン「(防げ!俺の方に弾いてこい!)」

マーガス「(こぼれ球になったら必ず叩き込んでみせる!)」

カペロマン「(お零れ狙いってのはちょっとカッコ悪いが、ゴールはゴールだ!)」

勿論シュナイダー以外のシューター達もチャンスを物にすべく駆け込んでおり、
例え防げても弾き方が悪かったら失点してしまう確率はかなり高い。

失点は勿論駄目。弾くのも駄目。ネオファイヤーと言う超火力の前に厳しい勝利条件を
たった二人で達成しなくてはならなくなったディウセウとゲルティスはどうしたか。

359 :代理です。:2014/01/07(火) 09:45:58.66 ID:0CjTdtcn
             ディウセウ「(ホント、コイツはすげえや…ワクワクが止まんねェ)」

        ゲルティス「(ネオファイヤーが来る…フライハイトは遥か後方。ファイヤードライブの見込み無し)」

        シュナイダー「(このゴールで決勝への切符を掴む!全日本ユースが待つ決勝の舞台への切符を!)」

                     グワアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

        ディウセウ「(ブロッカーってのは楽しいな!こういうすっげえ奴の一撃を受け止められるんだかっな!)」

         ゲルティス「(シュートコースシミュレート…完了。ディウセウのブロックシミュレート…完了)」

              放送「シュナイダーくんのネオファイヤーショットーーーーーーッ!!!」

                  シュナイダー「 N E O   F I R E ! ! ! 」

               ズワッグォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンン!!!!
                    ギュグォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

                      ディウセウ「オラがやらなきゃ誰がやるーーーっ!!」

                       ドッゴゥウウウウウウウウウウウウウウッ!!!

                             シュナイダー「!!?」

              ディウセウは怯えなかった。勇気を振り絞りすらしなかった。純粋に喜びで奮い立った。
                人間を軽く殺せそうな威力の恐怖の弾丸に自らの胴体を大喜びで差し出した。

360 :代理です。:2014/01/07(火) 09:47:22.96 ID:0CjTdtcn
                 ほんの一瞬だけ、ディウセウは完全にボールを受け止めたかの様に見えた。

                             ドッガァアアアアッ!!

               次の瞬間ディウセウの巨体はなぎ倒され、ネオファイヤーショットの進撃は再開した。

                           シュナイダー「(…バカな!)」

                    だが強き者達には分かった。その速度と威力が一段落ちたのが。

                           ゲルティス「ハァアアアア!!」

                                 バッ!
                           ガシィイイイイイイイイイイッ!!

                         そしてボールはゲルティスの手中に捕らわれた。

                             シュナイダー「………!」

                          ギュルギュルギュル…ギュル…ギュル…
                                 ピタッ。

                ボールはゲルティスの手を弾かなかった。ゲルティスの手からも弾かれなかった。

                                 スタッ。

                       ゲルティス「キャッチ成功…ナイスブロック、ディウセウ」

                         ディウセウ「ヘヘッ…やったな、ゲルティス!」

            華麗に着地するゲルティスと地面に腹這いのディウセウが賞賛を交し合った時、誰もが認識した。
                   今、シュナイダーのネオファイヤーショットが完全に防がれたのだと。

361 :代理です。:2014/01/07(火) 09:48:39.40 ID:0CjTdtcn
放送「キャ…キャッチ!キャッチ成功!ゲルティスくんスーパーセーブで完全にキャッチしました!!
しかしこれは直前に身体を張ったディウセウくんの奮闘のお陰でもあるでしょう!
彼が身を挺してシュートの威力を弱めていなかったらキャッチではなくこぼれ球になり、
ドイツのゴールチャンスが続いていたかも知れません!しかし現実はこの二人が魅せてくれました!
大会得点王暫定一位の必殺のネオファイヤーショットが!今!破られました〜〜〜〜〜ッ!!」

ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

観客「よっしゃーーーー!何とか防いだ!」「良くやったディウセウゲルティス!」「あっぶねー、心臓止まるかと…」
「やりゃ出来るじゃないか!前半からそうしていろよ!」「ここでネオファイヤーを防いだのは大きい!大きいぞ!」
「ゲルティス!」「ディウセウ!」「ゲルティス!」「ディウセウ!」「ゲルティス!」「ディウセウ!」

ドイツメンバー「そ、そんなァ…」「ネオファイヤーが…完全に…」「あ、慌てるな!日本だって同じ事をしてきただろ!」

コインブラ「(何?…今のは弾いた所をねじこまれると思ったのに)」

森崎「(ちっ、生意気な。ネオファイヤーをキャッチしやがるとは…
しかしこれでドイツの攻撃力はかなり落ちた。そして守備力は…どうなんだ?
ミューラーの体力が大体若林程度だと仮定して、後3本も食らったら動きが鈍りだすぞ…)」

劇的なビッグセーブにブラジル側は沸き立ち、ドイツ側は意気消沈する。
客観的に言って、試合の流れが変わり始めた瞬間と言って良いだろう。

ブラジルメンバー「(勝った)」「(このまま同点、そして逆転だ)」「(次の攻撃でドイツを絶望の淵に叩き込む!)」

カルロス「(ヒヤッとしたが…良く守ってくれた。今度は俺達攻撃陣がこの死守に応えてみせる。
シュナイダー、そしてミューラー。お前達のショータイムはもう終わりだ!)」

だがブラジルユースの選手達だけは確信していた。流れが変わり始めた所ではないと言う事を。

362 :代理です。:2014/01/15(水) 12:55:38.10 ID:LvPjOZcC
次に活躍したのはネイだった。

放送「後半16分、さあブラジルの反撃です。ゲルティスくんからジェトーリオくん、
それからネイくんへとボールがつながっていきます。ここからドリブル突破か?」

ネイ「(ネオファイヤーが止められた事でドイツは浮足立った。ここで更に揺るがすぜ!)」

ダダダダーッ!

放送「期待通りにドリブル開始!ブラジルユース屈指のドリブラーがドイツ陣内を切り裂きにかかる!」

ポブルセン「クソがっ!何度も何度も突破させるか!」

メッツァ「(やだな〜何この流れ。早くボールを奪い返さないと…)」

ネイ「フッ!」

ババババッ!
クルッ!
シュパアン!

ポブルセン「な、なにィ!?」

メッツァ「うわ〜やっぱり止められない〜!」

放送「ネイくん抜いた!ポブルセンくんとメッツァくんの二人を抜き去り、尚も切り込む!」

363 :代理です。:2014/01/15(水) 12:56:12.61 ID:LvPjOZcC
カルツ「くそっ!ワシらで止めるぜよ!」

シェスター「撃たれる前に止めるんだ!」

ネイ「その判断は良いんだけどな…」

グルンッ!
ヒュンッ!
ダダッ!

シェスター「うっ」

カルツ「そんなァ!」

ネイ「ブラジル代表でドリブラーを名乗るってのは大変なんだぜ!」

放送「ネイくん更に二人抜き!4人抜きだァ!早速ブラジルにチャンスがやってきましたァ!」

観客「キャーーーネイーーーッ!」「ネイ愛してるわーーーっ!」「そのままゴールよー!!」

ネイ「(よし、そろそろ撃つか…体力の余っていそうなのはマウリシオだな)それっ!」

グワアッ…
バッコォオオオオオオオン!

放送「ネイくんここで大きく逆サイドへ展開!合わせに行くのは…マウリシオくんだ!」

ネイは試合の流れの変化を象徴する様な華麗なドリブル突破でドイツを慌てさせ、
ファーサイドへのセンタリングを行った。それに合わせに行くのはマウリシオだった。

364 :代理です。:2014/01/15(水) 12:58:06.75 ID:LvPjOZcC
フライハイト「(この流れで決めさせてはいけない!押し返すんだ!)」

クランケ「(こんなタイミングでリードを失って堪るか!)」

ダダダッ!バッ!バッ!

マウリシオ「よーし、同点ゴールを貰っちゃうぜ!ドライブオーバーヘッドだ!」

ダダダッ!バッ!

マウリシオ「うぉおおおおおおおおおりゃっ!!」

クランケ「しまった!」

フライハイト「…不覚!」

バッゴォオオオオオオオオオオオオオオオオン!
ギュゥウウウウウウウウウウウウウン!!

マウリシオは前半と同じくドライブオーバーヘッドを放った。
チーム全体の士気の差が影響したのかフライハイトとクランケはこれを阻止するのが間に合わず、
逆さまのドライブ回転がかかったシュートが勢いよくドイツゴールに向かう。

放送「マウリシオくんのドライブオーバーヘッド!」

ドイツメンバー「(くそっ、また撃たれた!)」「(それでもミューラーなら…)」「(ミューラーならなんとかしてくれる…)」

365 :代理です。:2014/01/15(水) 13:06:34.58 ID:LvPjOZcC
この時ドイツユースの選手達は撃たせてしまった事を後悔しつつも、これまで通りミューラーが防いでくれると
当たり前の様に思っていた。実際にこれまでカルロスのファントムシュート以外は全て防いでくれたのだから
ファントムシュートに比べれば数段落ちるマウリシオのドライブオーバーヘッドならきっと問題ない。
そう思ってしまうのもある意味当たり前ではある。

だが、彼らは思い知る事になる。ミューラーに負担をかけ過ぎた代償を。

ミューラー「フン、またこれか………ッ!?」

ズシィン…

シュナイダー「!!?」

ブラジルメンバー『 ( 計 画 通 り ) 』

ミューラー「ぬ…おおおっ!」

バッ!
バコォオオオオオッ!

この時もミューラーはパンチングでマウリシオのシュートを弾く事に成功した。
だがそれは今までの余裕すら伺わせる力強さとは程遠い、第一歩の踏み出しが遅れ
今までより明らかに鈍い飛びつき方の不恰好なセービングだった。

放送「しかしこれも入らず〜っ!不意をつかれたかやや反応が遅れた様にも見えましたが
結局防いでしまいました!流石と言わざるを得ませんこの鉄壁っぷり!」

ドイツメンバー「(ち、違う!不意なんか突かれていない!)」「(ミューラーの様子がおかしい!)」

ミューラー「(なんだこれは…何故だ!?何故体が重く感じる…!何故息が苦しい!)」

366 :代理です。:2014/01/15(水) 13:07:41.03 ID:LvPjOZcC
若林「なにィ!どうしたんだミューラーは!?」

翼「明らかに動きが鈍った!」

日向「…ケガでもしやがったのか?」

森崎「いや、これは…!まさか、スタミナ切れなのか!?」

大半の観客には分からなかったであろうミューラーの変調だったが、フィールドの当事者の22人はすぐに気付いた。
しかし何が起きたか分からないドイツユースの選手達とこれを想定し待ち構えていたブラジルユースの選手達では
咄嗟に取れる対応の巧みさに巨大な差があった。差がありすぎた。

そしてその差は値千金の同点弾となって形作られた。

カルツ「(ど、どうしちまったんだミューラーは…ケガか、ケガなのか!?)」

ボールをフォローしたカルツは激しく動揺していた。自分が動揺している事を隠す事すら出来ない程動揺していた。
後日彼はこの瞬間をサッカーをやっていて最も後悔した瞬間の一つに挙げる程隙だらけだった。

カルロス「もらった!」

バシッ!

カルツ「あああっ!?」

放送「このこぼれ球を拾ったのはカルツくん…と思いきやカルロスくんがあっという間に奪ったァ!」

367 :代理です。:2014/01/15(水) 13:09:29.95 ID:LvPjOZcC
ドイツメンバー「ヤ、ヤバい!」「カルロスがーーーっ!!」「止めろ、止めるんだ!」

ドドドドドドッ!!

カルロスがカルツからボールを奪った直後、ドイツユースの選手達は思わず四方八方から殺到せずには居られなかった。
前半終了間際に彼が似た様な位置でボールを奪い、そこからゴールを奪った事を思い出さずには居られなかったのだ。

カルロス「…ザガロ!やれ!」

パコン!

ドイツメンバー「(ここでザガロ?)」「(いや、カルロスよりは有難い…!)」

故にカルロスがザガロに低い浮き玉のパスを上げた時彼らは安堵せずには居られなかった。
カルロスにファントムシュートを撃たれるよりはザガロのダブルイールの方が幾分マシだと。

ザガロ「フッフッフッフッフッ…」

ダダダッ!
バッ!
グワアアアアアアッ!

放送「カルロスくん囲まれそうに…なりつつも逆サイドにパス!これに飛びこんだのはザガロくんだーっ!」

ドイツメンバー「なにィ!?」「あいつにダイレクトシュートがあったのか!?」「そんなァ!」

だがザガロはボールをトラップせずにそのままダイレクトでボレーシュートに行こうとしていた。
これが何を意味するか分からない者はドイツユースには居ない。

安全牌だと思っていたザガロにも切り札があったのだ。当然ダブルイールよりも強力な。

368 :代理です。:2014/01/15(水) 13:10:31.24 ID:LvPjOZcC
ザガロ「串刺しにしてやるぜ!これが俺のエリアルダブルイールだァ!!」

ブワッギュァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
ギュルギュルギュルギュル!!

エリアルダブルイール。それは低空のボールをボレーシュートで放つダブルイール。
言葉で言ってしまえばただそれだけだが、駆け込み飛びつく勢いを乗せたシュートとはそれだけで
厄介な物であり、ただでさえ重く速いダブルイールがそうなるのだから十二分に脅威と言える。

ミューラー「くっ!こんな物ォオオ!!」

バッ!
ガチィイイイイッ!!

ミューラーは必死に飛びついた。重く感じる拳でシュートコースに挟み込んだ。

ミューラー「こ、こんなもの…!」

ググググググッ…

ミューラー「こん、な…うぁあああああああっ!!!!」

バァアアアアーーーーン!
ギュルンッ、ドサッ!グタッ…
バリィイイイイイッ!!

ミューラー「ガ、ハッ…」

ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

だが彼は負けてしまった。拳を跳ね上げられ、身体を横転させられ、地面に叩きつけられた。
その衝撃で息を吐き出させられた彼にはネットが破れる音も笛の音も良く聞こえなかったが、失点した事だけは痛い程分かった。

369 :代理です。:2014/01/15(水) 13:11:23.15 ID:LvPjOZcC
.


ブラジル 2−2 ドイツ


大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
10ゴール シュナイダー、ストラット
9ゴール カルロス、日向
8ゴール ディアス
7ゴール ザガロ
5ゴール 火野、ビクトリーノ
4ゴール 翼、カペロマン、森崎、ランピオン、カマーチョ
3ゴール ポブルセン、ナポレオン、ピエール、チャンドラー、ロリマー、ミハエル、サトルステギ
2ゴール トニーニョ、マーガス、李邦内、李邦坤、アルシオン、イスラス、レンセンブリンク、三杉
1ゴール ルーク、肖、岬、山森、フライハイト、ネイ、ロペス、ガルシア、クライフォート、
     カイザー、マッハー、クリスマン、政夫、ディウセウ、マウリシオ

大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト アルシオン
5アシスト サンタマリア
4アシスト 岬
3アシスト カルロス、マーガス、翼、ダ・シルバ、ネイ、チャンドラー、火野、パスカル、ランピオン、
2アシスト カペロマン、バンビーノ、カルツ、ピエール、王、森崎、トニーニョ
1アシスト フライハイト、カルツ、メッツァ、テイラー、飛、山森、早田、ビクトリーノ、エスパダス、クリスマン、イスラス、
      シェスター、バビントン、クライフォート、カイザー、和夫、ジェトーリオ


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370 :代理です。:2014/01/24(金) 07:35:46.71 ID:KM299Lig
放送「ゴ…ゴール!ゴール!ゴールだぁあああああああああああああ!!!
後半22分、カルロスくんのアシストからザガロくんがボレーシュートでダブルイールを放ち
ミューラーくんを豪快に吹き飛ばして待望の同点弾を決めてくれたぁあああ!
2−2!2−2です!前半2点リードされた時はどうなる事かと悲嘆にくれた
全ブラジル国民を歓喜に湧き上がらせる有難すぎるゴールがたった今決まりました!」

ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

観客「よくやったぞザガロォオオオオオオオオオオオオ!!」「やっと活躍したか!待たせやがって!」
「それでこそセレソンのストライカーだ!」「とうとう同点だ!見たかドイツ、ざまあみろ!」
「ザーガーロ!」「ザーガーロ!」「ザーガーロ!」「ザーガーロ!」「ザーガーロ!」「ザーガーロ!」

中山「ど、同点か!これは形勢逆転と言える、が…」

早田「…おい次藤、今の…エリアルダブルイールつったか?あれ、どう思う?」

次藤「うーん…かなり強力なシュートばってん、ネオファイヤーとかに比べるとのう…」

赤井「俺も同感ッス。ミューラーがあそこまであっさりやられたのはおかしいです!」

日向「だったら答えはシンプルじゃねーか。ミューラーに何かが起きたんだろ」

翼「急に動きが鈍っていた。それなら可能性は二つ。ケガか、それとも森崎が言っていた様に…」

森崎「…スタミナ切れだ。間違いない。あれは疲労によるスピードダウンだ!」

ミューラーの異常に気づいた者は最初はほとんど居なかった。観客たちは劇的な同点ゴールに
大騒ぎするのに忙しく、注目の的は敵のミューラーではなくヒーローのザガロだったのだ。
全日本ユースの面々はミューラーの異常にいち早く気付いたが、彼らが気付いたからと言って何かが変わる訳ではない。

371 :代理です。:2014/01/24(金) 07:36:22.49 ID:KM299Lig
ミューラー「ぐっ…うううっ…!」

ドイツメンバー「ど、どうしたんだミューラー!」「しっかりしろ!」

ルディ「くっ…タンカだ!ドクター、来てくれ!」

ブラジルメンバー「(フッ、今頃慌てたってもう遅いぜ)」「(なんならサブキーパーでも入れるか?)」

ロベルト「(おー、ゲルティスの言う通りだった。よっしゃよっしゃ、これで勝った!)」

コインブラ「(…馬鹿な。本当に、ミューラーに、そんな弱点が…!?)」

観客「あれっ?ドイツゴール前がなんかおかしいぞ?」「ミューラーがケガでもしたのか?」

だが何時までも気付かれない訳もなく、滝の様な汗を流しながら立ち上がれないでいるミューラーに
ドイツの選手達やベンチスタッフが駆けつければ自然と観客達の注意もそこに向かう。

放送「あっと、喜びに沸き立つブラジルユースとは対照的にドイツユースはなにやら非常事態の模様!
ミューラーくんが苦しげに立ち上がれないで居ます!これは先程のセービング失敗で負傷したのでしょうか?」

ルディ「どこだ、どこを痛めたミューラー!」

ミューラー「何処も…何処も痛めてなどいない…」

ルディ「強がるな!すぐに交代させるとは限らん、正直に言え!」

ミューラー「本当だ…俺は怪我などして、いないんだ…!」

ルディ「ええい、ドクター!」

372 :代理です。:2014/01/24(金) 07:37:13.01 ID:KM299Lig
最初ドイツユースはミューラーが負傷したのだと勘違いし、チームドクターにチェックを行わせた。
だがチームドクターはミューラーの体を調べていく内に見る見る困惑の表情を浮かべた。

ルディ「どうですか」

ドクター「いえ…何処も負傷していません。彼の言う通りです」

ルディ「なっ…そんな馬鹿な!こんなに苦しそうにしているのに!」

ドクター「…これはただの疲労です。スタミナが切れたのです」

ルディ「はあ…?」

ドイツメンバー「えっ、スタミナ切れ?」「有り得ないだろ!こいつ何時も持久練習でトップクラスだったじゃないか!」

審判「…あの。負傷でないのなら、スタッフはピッチの外に出て下さい」

ルディ「くっ…わ、分かりました…」

放送「今ピッチレポーターから報告が来ました。ミューラーくんは負傷したのではなく
疲労していただけとの事。ドイツは特に選手交代をする様子もありません」

観客「なんだ、スタミナ切れか?」「あんだけシュート浴びてりゃなあ」「でもなんか早くないか?」

ミューラーは負傷したのではなくただ単に疲労しただけだった。
まるで予想していなかった事態に困惑するドイツだったが、ルール上負傷ではないのなら時間を止めては貰えない。
ドイツユースは予想外のピンチに急きょ対処を問われる事になった。

373 :代理です。:2014/01/24(金) 07:38:02.32 ID:KM299Lig
シュナイダー「(こ、これか…!?これがさっきまでの違和感の正体だったのか?
だが何故だ。ミューラーに持久力の欠如が伺えた事なんてなかった。確かにシュートをひたすら
浴び続ければ限界を迎えるのは当たり前だが、後3本程度は持って良かった筈だ…
何故だ?大会で蓄積した疲労か…?いや、今重要なのは何故ではない!
今何が起きていて、それを踏まえてどうするかだ!それが俺のキャプテンとしての義務だ!)」

この時チームをまとめるのはやはりキャプテンのシュナイダー以外は居ない。
彼はいち早く原因の究明よりも現状の把握と対応が大事だと判断し、
前線からドイツゴール前に戻りつつ素早く周囲を見回した。

当然彼が見たのは喜びに沸き返り、ザガロを祝福するブラジルユースの選手達である。

ディウセウ「やったなーザガロ!良いタイミングの同点ゴールだぜ!」

ザガロ「フン、当然だ。あんな奴相手にノーゴールで終わって堪るか」

ジェトーリオ「今まで散々苦労していた癖にね〜。ぶっちゃけ、切り札のお蔭でしょ」

サンタマリア「よせジェトーリオ。ストライカーは結果を出せばそれが全てだ」

ザガロ「ククク。運が良かったな、今の俺は機嫌が良い」

彼らが何を言っているかは距離があった為聞こえなかったが、雰囲気と様子は観察できた。
それだけでシュナイダーは2つ分かった事があった。

シュナイダー「(ミューラーが苦しんでいると言うのに、それを驚く様子も喜ぶ素振りもない…
そうか、奴らにとってはこれは想定していた事態か。どうやってそれを予測していたかは
分からないが、奴らは作戦を成功させた。だが…その作戦には代償もある!)」

まだ勝ち目は十分にある。それを確信したシュナイダーは味方達を鼓舞す為に自陣ゴール前に辿り着いた。

374 :代理です。:2014/01/24(金) 07:39:13.21 ID:KM299Lig
シュナイダー「しっかりしろ皆。ミューラー、まだやれるな?」

ミューラー「…当たり前だ!」

ドイツメンバー「シュナイダー…」「で、でもこれからどうしたら…」

シュナイダー「確かにこれは予定外のトラブルだ。ピンチと言って良いだろう。今までの様に
シュートを撃たれ続ければあっさり逆転される。ただし、今までの様に撃たれ続ければの話だ」

マーガス「そりゃ、撃たれなければ問題はないだろうけど…この試合ずっとシュート数で圧倒されているのに…」

カルツ「…いや、これからはそうとは限らんぞ」

プッ!

最初に立ち直ったのはカルツだった。シュナイダーとの付き合いが長い彼はシュナイダーが
何を言わんとしているかをいち早く察知し、気合を込めて爪楊枝を吐き出した。

カルツ「ブラジルは攻撃しまくり、シュートを撃ちまくった。つまり攻め疲れが必ず発生する。
そういう事だろう、シュナイダーちゃんよ?(ジャパンカップを思い出すぜ)」

シュナイダー「そうだ。さっき奴らの様子を確認してきた。今まで均等にシュートを
撃ち分けさせていた分目立たなかったが、よく見ればシューターの誰もがもう少し疲労したら
動きが鈍り出す状態になっている。フィールダー全般の疲労量では明らかに向こうが上回っているんだ」

シェスター「なるほど。向こうは今までの様に撃ちまくりたかったら更に疲労が深まるって訳か!」

カペロマン「だが、それでも後半終了くらいまでは持ち堪えそうだぞ。どうするんだ?」

ポブルセン「まさか時間稼ぎをするなんて言わねえだろうな…!」

375 :代理です。:2014/01/24(金) 07:40:19.69 ID:KM299Lig
シュナイダー「時間稼ぎではない。持久戦だ」

ポブルセン「ああん?」

シュナイダー「確かにパスで逃げ回ればこのまま同点で延長戦に逃げ込めるかも知れない。
だがそれでは奴らも回復してしまう。ミューラー1人が回復するよりもブラジルのシューター達…
オーバーラップの可能性を除外しても6人か。6人が回復するペースの方が断然早い。
延長戦に逃げ込んでも結局同じくミューラーを消耗させられる展開になってしまう」

フライハイト「…つまり、選択肢は一つ。奴らを消耗させつつミューラーを休ませる。
ボールキープだけを最優先し消極的に逃げ回るのではなく、積極的に中盤で戦い奴らを
脅かしつつボールキープし、フィールダー同士の持久戦を挑むしかない」

シュナイダー「そういう事だ。奴らがミューラーの消耗を狙うのなら、こっちは奴ら全員を消耗させる。
無論相手がこの持久戦に乗ってこない事は有り得ない。そんな事をしたら折角消耗させたミューラーを
むざむざ休ませた上に、こっちに後半終了間際のノーリスクの総攻撃チャンスを与えてしまう訳だからな」

メッツァ「うーん…前線の守備力も高いブラジル相手にそんなマネできるの?」

シュナイダー「お前がそんな弱気でどうする。この作戦で最も活躍しないといけないのはメッツァ、お前なんだぞ」

メッツァ「うえっ!僕ぅ!?」

カルツ「いい加減やる気出せコラ。どうせやる事は何時もと変わらん、自慢のパスで相手を翻弄してりゃいいんだよ」

カペロマン「それにお前だけじゃない。俺やカルツ、シェスター、フライハイトも中盤で戦うんだろ、シュナイダー?」

シュナイダー「ああ、それにマーガス」

マーガス「ああ、俺もやるぞ!ピンチになったら俺に上げろ、仕切り直しのチャンスを作ってみせる!
大丈夫だ、アマラウもディウセウも中盤だと俺についてこない。もしついてきたら逆に俺が2人引き受けているって事だぜ」

376 :代理です。:2014/01/24(金) 07:40:51.32 ID:KM299Lig
クランケ「分かった!俺達もやるぞ!」

ヨハンセン「今まで役に立っていなかった分を取り返す!」

ポブルセン「…そういう事か。同点で逃げようってハラじゃねえんなら別にいい」

ミューラー「(くそっ…こんな形で他人に頼る羽目になるとは…師匠、まだまだ俺は甘かった…)」

フライハイト「シュナイダー、お前は体力節約も兼ねて前線に居てくれ。お前と言う驚異が居続ける限り
ブラジルのDFも大胆なオーバーラップはしにくい。それにお前が疲労したら3点目も取り辛い」

シュナイダー「分かっている、そのつもりだ。よし行くぞ皆。ドイツに底力勝負を挑んだ事を後悔させてやるんだ!
サッカーは強い者が勝つんじゃない、勝った者が強いんだ!俺達の強さは俺達の勝利で証明するぞ!」

ドイツメンバー『おおおおおおおっ!!』

シュナイダーがこの状況で見出した光明。それはミューラーを疲れさせる為にブラジルのフィールダー達が
ドイツのフィールダー達よりもより激しく疲労していると言う事実だった。
相手の作戦が成功したのは仕方ない、ならばその作戦の為に支払った代償に弱みにつけこむ。
“強い者が勝つのではない、勝った者が強い”と言う信条を持つリアリストの彼らしい作戦と言えよう。

ネイ「おっ、向こうさんまだまだやる気だねえ。同点だから当然か」

トニーニョ「この程度で諦めてくれる程甘い相手じゃない。だが奴らの次の手は分かっている」

サンタマリア「ああ。ミューラーを休ませつつ俺達を走らせ、隙あらば得点を狙ってくるだろう」

カルロス「つまり、純粋な体力勝負及びボール争いだ。良いだろう、走り合いでも俺達は負けないぞ」

ただしブラジル側にとってこの作戦は特に意外な物でもなかった。
お互いの手の内が分かった末での真っ向勝負の行方に後半の、そして試合の行方が託される展開となった。

377 :代理です。:2014/01/27(月) 18:47:23.46 ID:rHi1mXlV
ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

放送「とうとう2−2となりましたこの試合、4度目のドイツのキックオフです!
前半の貯金を使い果たしてしまったドイツはPK戦を狙うのでもない限り攻撃に出なければいけません!
さあ彼らは一体どうするのか?まずはシュナイダーくんからカペロマンくんへ」

ジェトーリオ「はいはい、いらっしゃーい」

カペロマン「そういう訳にもいかないんで、なっ!」

バコッ!

放送「あっとカペロマンくん、いったんボールをカルツくんに戻しました。カルツくんここから直進!」

カルツ「どけっ!」

ドガアッ!

マウリシオ「うわあ〜っ!!」

サンタマリア「(カルツのキレが増した…これがあいつの底力か。だが恐らく俺を抜きにはかからない筈)」

カルツ「(このまま愚直にサンタマリアに突っ込むのもリスキーだな…)」

バコッ!

放送「カルツくんこのまま上がって…いかない!シェスターくんに展開!シェスターくんは更に
メッツァくんに繋ぎます。ドイツ、ここは時間をかけてじっくり攻めるつもりの様です」

378 :代理です。:2014/01/27(月) 18:49:18.96 ID:rHi1mXlV
ルディ「(うむ…それしか選択肢がない。多分ブラジルにも読まれているだろうが、
ここはなんとか遅攻で押し勝つんだ!そうすればまだまだ試合は分からん!)」

ロベルト「(なんだよ、焦って速攻とかしてくれればよかったのに…まあ大丈夫だろ
ボール争いでも体力勝負でもウチの方が有利だ。ミューラーが回復しきる前に奪えばそれで勝ちだ)」

若林「これは…ドイツはフィールダー同士での勝負を仕掛けに来たか…」

早田「なるほどな。ミューラーを休ませながら少しずつ戦線を上げていくのが狙いか」

次藤「パスだけで逃げ回っちゃ押し込まれるけん、危険じゃしの」

三杉「同時にブラジルの体力を削る狙いもあるだろうね。ただ、もうしばらくは持ちそうだが」

松山「上手くいくのか、これ?この試合、中盤争いはブラジルが終始リードしていたじゃないか」

岬「いや、ドイツはブラジルを止めるのには苦労していたけど、ブラジルを攻める事自体は出来ていたよ」

中山「この状況では確かにこれが最善の手だ。だけど…これ、ブラジルの思う壺なんじゃないか?」

日向「ああ、読まれているだろうな。ただでさえ決して有利な戦い方とは言えねえのによ」

翼「前半2点リードされて尚この盛り返しぶりと試合運び…これが、ブラジル…」

森崎「(…もしブラジルが決勝の相手だとしたら…俺も、同じ事をやられたら…!)」

379 :代理です。:2014/01/27(月) 18:50:07.01 ID:rHi1mXlV
その後ドイツは必死に走り回った。逃げ回るのではなく相手を疲弊させる為に。

シュナイダー「(まだだ…これでは全然時間が足りていない…!)」

アマラウ「(くそっ、こいつがここに居るせいで前に加勢できねえ!)」

ドトール「(焦るな。焦ったら負けだ。皆を信じるんだ)」

オフサイドラインぎりぎりの位置でブラジルDFを牽制しつつ後ろを見守るシュナイダーの表情は
隠し切れない焦りを無理やり押さえつけていた為か何時も以上に鋭く険しくなっていた。



この時ドイツで最も活躍したのはメッツァだった。

バシュルルルルルルル!!

ネイ「くそっ!こういう展開の時は本当にうざったいタイプだなお前!」

メッツァ「褒めても何も出ないよ〜(ああんもう、なんで僕がこんな責任重大な目に…)」

トニーニョ「(メンタルは弱いと見ていたが…まだミスはしてくれないか?)」

アンドレアス・メッツァと言う選手は生粋のパサーである。ドリブルもそれなりに得意ではあるが、
彼の取り柄はトレードマークのトップスピンパスであり、成功率の高いそれに頼って
ひたすらパスを供給する事を最優先するのが彼のプレイスタイルである。

はっきり言ってかなり消極的なプレイスタイルであり、それは責任を問われるのを嫌う
自分勝手で弱気な性格の賜物だったが他に優秀な攻撃要員が居るならばチーム貢献度は高い。
相手チームからすれば彼にボールが渡ると高確率で危険なパスを通されてしまうが、
かと言ってマークで人数を割いたりしても本人はパス以外の形では攻撃に関わろうとしない為
結果として他の選手達を活かされてしまうのは変わらないのである。

380 :代理です。:2014/01/27(月) 18:50:47.16 ID:rHi1mXlV
そして勿論、時間を稼ぐ状況ではメッツァの存在感は増す。
相手チームは早くボールを奪わないといけない為、メッツァにボールが渡る度に
パスで逃げられる事を覚悟の上でメッツァに駆け寄らなければいけない。
ポジション上マッチアップの機会が多いネイとトニーニョは煮え湯を飲まされる事になった。



無論ドイツはメッツァ一人に頼りきりだった訳ではない。

カペロマン「サイドは俺の戦場だ…そう簡単に渡して堪るか!」

ババッ!
キキッ!
バッコォオン!

サンタマリア「くっ!」

マウリシオ「し、しまった!」

ジェトーリオ「(う〜ん、マーガスが嫌な位置に居るなあ。迂闊に突っ込めない…)」

カペロマンは右サイドでボールキープに貢献し。



バッ!
バコォン!

マーガス「よし!拾ってくれ!」

シェスター「オーケーだ!」

381 :代理です。:2014/01/27(月) 18:51:47.76 ID:rHi1mXlV
ディウセウ「(畜生〜、あそこまで下がられると間に合わないぜ)」

マーガスはボールを奪われそうになった時の緊急避難先として機能し。




カルツ「どけっ!今のワシに近寄るんじゃねえ!」

ガガガガガッ!
ドガアッ!

ザガロ「ぐああああああっ!!」

カルロス「がはぁあああああっ!!」

カルツは中央で何度も暴れ周り。



フライハイト「そこだ」

シェスター「右、来ているぞ!」

クランケ「走れ走れ!」

ヨハンセン「ここまで来て負けて堪るか!」

バコッ!バシーン!
ポーン!ダダダダダッ!

その他の選手達も主に中継地点となる事で上記4人が過不足無く動ける様走り回っていた。

382 :代理です。:2014/01/27(月) 18:52:49.14 ID:rHi1mXlV
ポブルセン「(ちっ、まだかよ…早くブラジルの奴らを血祭りに上げてえのに…)」

シュナイダー「(神経が削られる思いだ…だが俺が迷いを見せる訳にはいかない。
チームメイトを信じるのもキャプテンの仕事だ。耐えろ、耐えるんだカール・ハインツ・シュナイダー!)」

消耗の激しいポブルセンとシュナイダーはDFラインを脅かしつつ休んでいた。
目先のキープ率を優先すれば3点目を奪う力が無くなってしまうが故の苛立ちと戦いながらの休憩である。
彼らの神経戦が功をなしたか、ドイツは未だブラジルにボールを奪われずに済んでいた。



カルロス「(見事だドイツ!お前達は強かった。それも予想以上に!だがそろそろ終わりだ。
この期に及んでここまでキープされ続けたのは屈辱だが、所詮時間稼ぎは時間稼ぎでしかない。
いずれは攻撃パターンが読まれる物なんだ。後ほんの少し…後ほんの少しだ!)」

ズズッ…

カルロス「(くっ…足が重くなり始めたか。だがまだだ!まだ俺は戦える!)」

カルロスがもうすぐボールを奪えると自信を得たのと、彼が足を引きずり始めたのはほぼ同時だった。

383 :代理です。:2014/01/30(木) 12:37:37.86 ID:734SOkaz
この持久戦の終焉はメッツァのトップスピンパスからだった。

放送「後半33分!ドイツが懸命にボールキープしながらじりじりと戦線をブラジル側に
押し上げています!次の3点目が恐らく決勝点となるのは間違いない所、
両チーム共意地を張り合う踏ん張り所ですが、まだこれと言った動きは見られません!」

観客「何やってんだ、まだ奪えないのか!」「折角ミューラーがヘバッているのに!今がチャンスなんだぞ!」
「運動量落ちてるぞ!根性見せろ!」「いかん、前半から攻めまくっていたツケが来ている…」

ルディ「(よしっ!このまま40分くらいまで粘れれば…!)」

ロベルト「(あわわわわ…まだか?まだ奪えないのか?)」

放送「ここでメッツァくんにボールが渡った!彼のパスはこの試合中何度もブラジルの選手達を
良い様に翻弄しています!今回もマーカー達が振り切られてしまうのか?」

メッツァ「(あ〜もうまた僕!?さっさと逃げちゃえ!)」

グワアッ…
バシュルルルルル!

ネイ「(くそーーーっ、またか!)」

トニーニョ「(ええい、このままでは本当にこっちの体力が…!)」

シュタタタタッ!
バッ!グルンッ!

カルロス「ここだああっ!」

バチィッ!

384 :代理です。:2014/01/30(木) 12:38:27.74 ID:734SOkaz
メッツァ「あああーーーっ!?」

ヒューーーーーーン…

放送「あーーーっと、ここでカルロスくんのムーンサルトパスカット!メッツァくんの
トップスピンパスの軌道があらぬ方向に変わりました!このこぼれ球の行方は!?行方はどうなる!?」

カペロマン「や、やばいっ!」

ダダダダダッ!

カペロマン「よ、よし…」

ジェトーリオ「はい、毎度有難う御座います!」

グイッ!
バシッ!

カペロマン「うわっ!?き、貴様―っ!」

それはメッツァに頼り過ぎた弊害か、それともカルロスを褒めるべきか。ドイツユースが仕掛けた持久戦は
約10分続いた後にカルロスが弾いたボールをカペロマンが奪われる事で終わってしまった。

放送「カペロマンくんがフォロー!しかしジェトーリオくんがすぐさま奪い取った!
とうとう待望のブラジルボールになりましたァ!!」

ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

観客「よっしゃーーー!良くやった!」「待ってましたァ!」「そのまま3点目を決めるんだーっ!!」

385 :代理です。:2014/01/30(木) 12:39:06.62 ID:734SOkaz
シュナイダー「くそっ!やらせん!」

ダダダダッ!

この時シュナイダーはメッツァのパスが弾かれたのを見た瞬間に走り出していた。
このタイミングでボールを失ったらピンチになる事が分かりきっていた為、
何としてでもボール争いに参加しなくてはならないと瞬時の判断の賜物だった。

ジェトーリオ「おー怖い怖い、炎の皇帝様が来ちゃったよ。でもね…」

グワアアッ!
バシュルルルルル!

シュナイダー「なっ!?これは、ドライブパス…!」

ジェトーリオ「残念!サンタマリアが教えてくれたよ、君パスカット下手だってね♪」

しかしここに到ってジェトーリオも今まで見せなかったドライブパスを披露し、
シュナイダーの好判断を無に帰した。そしてボールは無事トニーニョに渡る。

トニーニョ「よし!ネイ!」

ネイ「何時でもいいぜ、相棒!」

パンッ!ダダッ!パンッ!ダダッ!

放送「ジェトーリオくんここでドライブパス!魅せます美技!そしてこれを受け取った
トニーニョくんが…出たーーーっ!!トニーニョくんとネイくんのゴールデンコンビ!
遂に奪えたボールを早速ゴールチャンスに変えるべく速攻をしかけます!」

386 :代理です。:2014/01/30(木) 12:39:48.83 ID:734SOkaz
ボールを奪えたブラジルは当然の如く速攻を仕掛けた。ミューラーが回復しきらない内に
シュートを撃ち3点目を奪ってしまいたい彼らに遅攻は百害あって一利無しだからだ。

パンッ!ダダッ!

フライハイト「し、しまった!」

フライハイトがあっと言う間に抜かれ。

パンッ!ダダッ!

カルツ「畜生ぉおおっ!」

カルツも為す術も無く抜かれ。

シェスター「くっ!ニンポー・ホウセンカ!」

ビチッ!

トニーニョ「むっ。粘ったな」

ネイ「だが、無駄な足掻きだぜ!」

カルロス「良くやったネイ、トニーニョ。後は任せろ」

ドイツメンバー「あーーーーっ!?」「よりにもよってカルロスにー!?」

シェスターは辛うじて足先にかすらせ連続ワンツーを終わらせたが、そのこぼれ球はあっさりカルロスに拾われてしまった。

387 :代理です。:2014/01/30(木) 12:40:20.93 ID:734SOkaz
放送「速攻!速攻!これは…上手くいった!カルロスくんが良い位置でボールを持ったぞーっ!」

クランケ「くそっ、まだだ!まだ俺達が居る!」

ヨハンセン「ここを通して堪るかァ!」

カルロス「…お前たちでは俺を止められない!」

ブゥウウウウウウン…
シュパアッ!

クランケ「な、なにィ!」

ヨハンセン「そんなァ!」

放送「そしてカルロスくんあっさりドリブル突破しPA内に突入!ミューラーくんと一対一だァーーーッ!!」

ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

観客「決まれーっ!」「行けーっ!!」「カルロス頼むぞ!」「ここだ!ここで逆転だ!」

全日本メンバー「き、決まるのか!?」「天国と地獄の分かれ目だ…!」

森崎「……………」ゴクリ

後半38分、ついに試合の分岐点が来た。

388 :代理です。:2014/01/30(木) 12:41:28.60 ID:734SOkaz
シュナイダー「(大丈夫だ!)」

この時シュナイダーは必死に己に言い聞かせた。チームメイト達と共に自陣に向かって走りながら
焦りと諦めと戦い、自分を奮い立たせる材料を探した。

シュナイダー「(カルロスのスピードが僅かだが落ちている!もうファントムシュートを撃てる状態じゃない!)」

カルロス「(くっ…やはりファントムシュートを撃つには体力が足りないか…)」

そこで目をつけたのはカルロスがこぼれ球を拾った時、既にPA少し外と言うシュートを撃つのに適した位置に
居たのにも関わらずファントムシュートを撃たず、分身ドリブルでPA内に切り込んだと言う事実だった。
今の息切れしたミューラー相手ならファントムシュートを撃てば決まる確率は高い。

にも拘わらずわざわざDF二人を抜き去り一対一を挑みに行ったのは、ファントムシュートを撃てないからだ。
そうシュナイダーは判断し、実際にその判断は当たっていた。
カルロスも自分の体力の残量を計算し、今ファントムシュートを撃っても失敗するだろうと結論付けていた。

だがそこから先に描いた二人の想像図は大きく違っていた。

シュナイダー「(ここでミューラーが分身ドリブルを止めてくれれば、失点は阻止される!
そこから残り時間全てを総攻撃に費やせば、俺達の勝ちが見えてくる!)」

ミューラー「(来る…分身ドリブルが!止めてみせる!疲労がなんだ、師匠の地獄のしごきに比べれば屁でもない!)」

カルロス「(止むを得ん…出し惜しんだ末の敗北と、実力を見せつけての勝利!どちらが良いか、考えるまでもない…!)」

シュナイダー、そしてミューラーはカルロスが分身ドリブルで抜きにかかると思っていた。
カルロスが今まで見せた事がない一対一用の新必殺シュートを隠し持っているかも知れない。
その可能性をドイツの二人が考えなかったのは、無意識に考えたくないと言う感情のせいだったのか
それとも心身ともに限界でそこまで警戒する余裕がなかったせいなのか。

389 :代理です。:2014/01/30(木) 12:42:13.16 ID:734SOkaz
ブゥウウウウウウウウウウン!!

ミューラー「(来たっ!だが見切れる…!体は動く!間に合う!)」

ヒュンッ!

いずれにせよ、カルロスが分身ドリブル特有の緩急自在の横の動きを開始し
それを阻止すべく腰を落として距離を詰めたミューラーが。

ミューラー「なっ!!?」

ガクン!

シュナイダー「(な、なんだ!?どうしたミューラー!)」

急に体勢を崩し、何もない所に所に手を伸ばした時、シュナイダーには何が起きたのか最初は分からなかった。

パスッ…
コロコロコロ…

カルロス「…俺のもう一つの切り札、ステルスシュートだ。覚えておけ」

ミューラー「………!!!」

シュナイダー「そん、な…」

ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

カルロスは分身ドリブルの動作中に何時の間にかボールをゴールに蹴り込んでいた。
ミューラーはそれを阻止しようとし、間に合わなかった為に何もない所に手を伸ばす羽目になった。
シュナイダーがそれを理解できたのはゴールの笛を聞いてからだった。

390 :代理です。:2014/01/30(木) 12:43:11.43 ID:734SOkaz
.


ブラジル 3−2 ドイツ



大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
10ゴール カルロス、シュナイダー、ストラット
9ゴール 日向
8ゴール ディアス
7ゴール ザガロ
5ゴール 火野、ビクトリーノ
4ゴール 翼、カペロマン、森崎、ランピオン、カマーチョ
3ゴール ポブルセン、ナポレオン、ピエール、チャンドラー、ロリマー、ミハエル、サトルステギ
2ゴール トニーニョ、マーガス、李邦内、李邦坤、アルシオン、イスラス、レンセンブリンク、三杉
1ゴール ルーク、肖、岬、山森、フライハイト、ネイ、ロペス、ガルシア、クライフォート、
     カイザー、マッハー、クリスマン、政夫、ディウセウ、マウリシオ



大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト アルシオン
5アシスト サンタマリア
4アシスト 岬
3アシスト カルロス、マーガス、翼、ダ・シルバ、ネイ、チャンドラー、火野、パスカル、ランピオン、
2アシスト カペロマン、バンビーノ、カルツ、ピエール、王、森崎、トニーニョ
1アシスト フライハイト、カルツ、メッツァ、テイラー、飛、山森、早田、ビクトリーノ、エスパダス、クリスマン、イスラス、
      シェスター、バビントン、クライフォート、カイザー、和夫、ジェトーリオ

391 :代理です。:2014/02/05(水) 07:29:50.85 ID:ckgZB5C+
ォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

観客「やったーーーーッ!!」「ゴールだ!ゴールだ!逆転だァ!!」「イヤッホォオオオオオオオオオ!!」
「やっとか!待たせやがって!」「散々気をもませやがって!どうしてやろうかと思ってたぞ!」
「素晴らしいタイミングでの逆転だ!」「見たかドイツ!これがサッカー王国・ブラジルの力だ!」
「今の見たか!?」「見た見た!分身ドリブルの最中にシュートしてた!」「くそっ、見逃しちまった!」
「カルロス!」「カルロス!」「カルロス!」「カルロス!」「カルロス!」「カルロス!」「カルロス!」「カルロス!」

放送「ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールッッッ!!!!
マイクの力を借りて叫んでも尚かき消されかねない程の大歓声によってブラジルの逆転ゴールが
たった今、後半38分に祝福されています!決めたのは勿論この人、ブラジルユースの
キャプテンにしてエースストライカーのカルロス・サンターナ!本日2点目のゴールで
一時期は絶望的とすら思えた試合を見事引っくり返してみせた英雄に嵐の如く拍手と歓声が降り注ぎます!

そしてゴールの仕方も極めてスタイリッシュで映える物でした!ムーンサルトパスカットで
相手のパスワークを断ち切り、そのまま速攻に参加し、こぼれ球を拾ってゴール前に切り込み、
そして分身ドリブルかと見せかけて目にも止まらぬ早業でボールをドイツゴールに蹴り込んだのです!
前半の1点目とこの3点目が合わさればまさに獅子奮迅にして一騎当千の活躍ぶり!
最早英雄と言う言葉すら物足りなく感じてしまいます!これがカルロス・サンターナなのです!!」

ロベルト「(よっしゃ!よかったー、結局コインブラ抜きでも勝てそうだ。いやーヒヤヒヤした)」

放送「ピッチレポーターによると今までにじっと見守るだけだったロベルト監督も
ここに来てやっとガッツポーズをしたそうです。前半で2点リードされると言う大ピンチに陥りながらも
自分の選手達と戦術を信じ続け戦い続けたその好判断と精神力は賞賛に値する名将ぶりと言えるでしょう!」

ロベルト「(おっといかんいかん、名監督は勝利を確信してもニヤニヤしたりしない。監督らしいクールな無表情っと)」

392 :代理です。:2014/02/05(水) 07:30:23.97 ID:ckgZB5C+
サンタマリア「ナイスゴールだ、カルロス!」

カルロス「ああ、決まってホッとしたよ。ケチらずにステルスシュートを使って良かった」

ジェトーリオ「ま、君が本気になればこんなもんだよね」

カルロス「そうとも限らない。ミューラーが疲弊していなかったらあるいはな」

ザガロ「チッ。ゴールを決めた直後に謙遜なんぞしやがって…」

ディウセウ「怒んなよザガロ。世の中おめえみたいな意地っ張りばっかじゃねえんだって」

ネイ「くそっ、また見切れなかった。一体何時撃ったんだよ…」

トニーニョ「タネが分かっていても尚タイミングが分からない。恐ろしい技だ」

マウリシオ「それは置いとくとして、そろそろドイツも諦めてくれますかね?」

アマラウ「そいつは油断大敵って奴だ。こうなった以上形振り構わず攻めてくるだろうからな」

ドトール「ただしもう気力も冷静さも残っていないだろう。流石にダメージは深い筈だ」

カルロス「その通りだ。丁寧にボールを奪ってからキープに努めればそれで終わりだ。後もう一踏ん張り頑張るぞ!」

ブラジルメンバー『おう!!!』

393 :代理です。:2014/02/05(水) 07:31:46.98 ID:ckgZB5C+
試合を引っくり返す逆転ゴールを後半終盤に決めると言う最高の展開を迎えたブラジルユースと
その味方は言うまでも無い程喜んでいた。あれ程苦しみながらも最初のプラン通りに
攻撃権を支配し、ミューラーを疲弊させ、大量得点に成功したのだから愉快でない訳がない。
こうなってしまえば2失点と言う苦難と恐怖も勝利の美酒を引き立てるスパイスに成り下がると言う物である。



コインブラ「(…バカな)」

そんな大喜びのブラジルユースの中で、唯一コインブラのみは喜びではなく驚愕に打ちのめされていた。

コインブラ「(ドイツの方が強い…俺はそう見ていた。なのに、これは…)」

彼は昨夜、カルロスとの会話で彼抜きならばブラジルは2−3でドイツに負けると言い放っていた。
売り言葉に買い言葉の状況ではあったが、その予想はその場の感情に任せたいい加減な物ではなく
コインブラの経験・知識・眼力に基づいた自信のある予想だった。

だがスコアは3−2で、勝っているのはブラジルだった。
一時期は0−2と言う絶望的なピンチに陥りながら、彼には見出せなかったミューラーの弱点を突く事で
劇的な逆転を成功させた。これは同時にブラジルユースの選手達が彼の予想を覆した事も意味する。

コインブラ「(サッカーにこんな事が…こんな事が…)」

今まで超越者として絶対の自信を持っていたコインブラがこの時人知れず初めて“敗北”を味わっていた。

394 :代理です。:2014/02/05(水) 07:32:47.72 ID:ckgZB5C+
若林「…なるほど。左右の往復の2回目で撃っていたな。こういうシュートもあるのか」

早田「ゲッ、お前今の何時撃ったか見えていたのか!?得意の洞察力か」

若島津「(ハッタリ…じゃないな。こいつなら見切れるか。今更ながらGKとしての差を感じるな…)」

次藤「(いかん…何が起きたのか解説されるまでいっちょん分からんかったばい…)」

中里「ぬうっ、分身ドリブルにこの様な使い方があったとは…恐るべし!」

赤井「ヤバいッスね、カルロスって。こうすれば止めやすいって手段がないですよ?」

中山「強いて言えばパスはそれほどでもないが…パス力が問われる役割じゃないからな」

葵「凄いな〜。前半2点リードした時はもうこれドイツが勝つだろって思ったのに…」

松山「徹底して攻撃し続けたのが功を為したんだが、なんて精神力だ…」

三杉「多分ミューラーの消耗も最初から計算に入れていただろうね。見事の一言だ」

岬「流石にドイツもこれではダメかな。もう体力も気力も時間も足り無さそうだ」

翼「うん…ブラジルが試合を逆転させた上に流れまで支配した。これは大きすぎるよ」

日向「そもそもリードを守り切れなかった時点でドイツの負けだ。もう奴らに攻める力は残ってねえ」

森崎「…シュナイダー…」

同時にこの場で数少ない中立の立場である全日本ユースの選手達も全員試合の決着を予感していた。
ドイツユースの強さを良く知る彼らも、この窮地を更に覆せるとは到底思えなかったのだった。

395 :代理です。:2014/02/06(木) 13:39:45.89 ID:KWl1HRX2
シュナイダー「(なんて…事だ…!)」

事ここに到ってはドイツユースにもう余裕など欠片もなかったのは言うまでもない。
それはシュナイダーも例外ではなかった。

シュナイダー「(無様…無力!くそっ、何を間違えたんだ…?…違う!
もうミスを嘆いている暇はない、ここからどう挽回するかを考えなくては!
だがどうすればいいんだ…ロスタイムを入れても残り時間は精々10分。
攻撃陣の体力も残り少ない…そしてなにより、皆の精神力が…!)」

ドイツメンバー「う、ううっ…」「くそっ、くそっ!」「……………」

彼自身はまだある程度冷静だった。だがそれを他者に分け与える事は出来なかった。
無論チームメイト達も全員焦りと絶望に抗うのに忙しく、これではいくら彼が
キャプテンシーを持って味方を鼓舞そうとしても大した意味はない。

シュナイダー「(やはり…皆もうボロボロだ。このままでは喝を入れても
“やるだけやってみよう”だの“最後まで諦めずに頑張ろう”だのと言った
後ろ向きの闘志しか得られない…それでは駄目なんだ!そんな状態で
ヤケクソの攻撃をしかけても早く終わって欲しい、もうダメだと言う意識がつきまとう!
“まだ勝ち目はある、負けて堪るか”と皆に意識させなければいけないんだ…
だがどうやって?一体何を言えば、何をすればそんなムードを作る事が出来る?)」

ドイツメンバー『シュ、シュナイダー…』

カルツ「(やべえ…シュナイダーですらもうゲキを飛ばせないのか?
だけどこのままじゃ…誰かが何かを言わなくちゃ、俺達は戦わずして負け犬になっちまう…!)」

シュナイダー「(いかん…何か、何か言わなければ…!)」

396 :代理です。:2014/02/06(木) 13:42:03.37 ID:KWl1HRX2
当然彼が悩み黙っていたらそれだけチームの士気も余計に下がり続ける。
黙っていたら状況が悪化するので早く何か言わなくてはいけない。
しかし悪化した状況に対し何を言えばいいか分からないから黙ってしまう。
この負のスパイラルに陥ったシュナイダーは絶望に飲み込まれそうになった。

シュナイダー「(ダメだ…皆を奮い立たせられる材料がない!ただの精神論ではダメなのに
皆に希望を持たせられる材料がない!このままではヤケクソに攻めるだけになってしまう!
だがそんな攻め方でブラジルを倒そうだなんて神頼みとなんら変わらない!
何か…何か無いのか!何か絶望を希望に変えられるキッカケは!?たった一つでいい、
何か小さなキッカケでいい!それだけでヤケクソの攻撃を不屈の覚悟に変えられる!
何か、何か、何かないのかァアアアアアアアアアアアアア!!!?)」

シュナイダーは戦い続けた。もう諦めて単純に“最後まで諦めるな”と空虚な言葉を
発したい誘惑に抗い続け、プレッシャーに潰されずに希望の種を探し続けた。

彼が不撓不屈に努めた甲斐はあった。

フライハイト「!?これは…間違いない!」

ポブルセン「あん?どうしたてめえ、狂ったか?」

フライハイト「皆聞け!天はドイツに勝てと言っている!天は俺達の味方だ!」

カペロマン「おいおい、この期に及んで神頼みかよ…」

シュナイダー「………!?」

それはフライハイトの突拍子もない発言だった。
その内容は彼を知らない者からすればオカルト染みた世迷いごとにしか聞こえなかったが、
バイエルンで彼と組んできたシュナイダーにはその意味が分かった。

シュナイダー「天…天だと?」

397 :代理です。:2014/02/06(木) 13:44:07.53 ID:KWl1HRX2
マーガス「お、おいシュナイダーお前まで…」

メッツァ「ダメじゃんこれ…もう諦めてもいいよね?」

シュナイダーが綺麗に晴れた空を仰いだ時、いよいよドイツユースの士気は再起不能のレベルまで落ちそうになった。
DFラインの要に続いてキャプテンまで困った時の神頼みに走ったのかと思うと彼らの反応も無理はなかった。

ミューラー「…いや、これは…」

最初にフライハイトとシュナイダーが何を言い出したか気付いたのは山暮らしが長いミューラーだった。

ポツッ。

シェスター「ん?」

ポツッ、ポツッ。
ポタポタポタ…

シュナイダー「そうか…こういう事かフライハイト!」

フライハイト「そうだ!正しくこれは干天の慈雨なのだ!!天はドイツに勝てと言っている!」

ドイツメンバー「あ…雨!?」「雨だ!」「マジかよ!」「太陽が出ているのに!」

その後すぐに誰もが気付いた。晴天であるのにも関わらず雨が降り出した事に。
いわゆる“天気雨”の発生にフライハイトがいち早く気付いていた事に。

放送「おおおっ!?たった今雨が降り始めました!降水など有り得ないと思われた晴天でしたが
非常に珍しい天気雨が発生した様です!場内の皆さまは風邪をひかない様ご注意下さい」

観客「うわっ、雨か!?」「なんだよ、こんな時に…」「まあ暑かったから別にいいけどな」

398 :代理です。:2014/02/06(木) 13:46:44.31 ID:KWl1HRX2
観客達はこの天気雨の影響にすぐには気付かなかった。
だが分かる者達は分かっていた。

全日本メンバー「雨!?」「おい、雨と言えば…!」「ドイツのあいつが…!」

カルロス「なにィ!?よりにもよってこんなタイミングで雨だと…!」

サンタマリア「…まずい!これは…!」

ゲルティス「…ドイツの士気回復を確認。警戒が必要と認」

この雨が死にかけていたドイツを生き返らせてしまう事を。

カルツ「シュナイダー!」

シュナイダー「ああ」

カルツに促されたシュナイダーは力強く頷き、ワンテンポ置いてからチームメイト達に言い放った。

シュナイダー「全員攻撃!残る力を全て注ぎ込み同点弾を叩き込む!そして延長に逆転だ!
ブラジルがやっとの思いで掴み取った逆転を幻の塵にしてゲルマン民族の誇りと強さを見せつけろ!!」

ドイツメンバー『ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!』



                 TO BE CONTINUED IN THE NEXT THREAD…


.

399 :代理です:2014/02/06(木) 13:48:55.09 ID:KWl1HRX2
キリが良い所なのでこのスレはここで終わらせ、
430レスまで次スレのサブタイトルを募集します。



このスレは、ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。

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次スレもよろしくお願いします。

400 :創る名無しに見る名無し:2014/02/06(木) 13:52:31.54 ID:KWl1HRX2
【スーパー】キャプテン森崎46【ストライカー】
【決戦の時】キャプテン森崎46【来る】
【俺が】キャプテン森崎46【No.1だ】
【森崎】キャプテン森崎46【革命軍】
【優勝するのは】キャプテン森崎46【俺達だ】

401 :創る名無しに見る名無し:2014/02/06(木) 15:01:31.43 ID:yflYT8xE
【天は勝てと】キャプテン森崎46【言っている】

402 :創る名無しに見る名無し:2014/02/06(木) 17:30:46.41 ID:KWl1HRX2
【打倒】キャプテン森崎46【ブラジル】
【世界一の】キャプテン森崎46【座をかけて】
【MVPは】キャプテン森崎46【俺のもの】

403 :創る名無しに見る名無し:2014/02/06(木) 18:50:14.83 ID:XcCsCHzJ
【スーパー頑張り】キャプテン森崎46【ゴールキーパー】

404 :創る名無しに見る名無し:2014/02/06(木) 22:56:03.93 ID:LjOz1eXg
シュナイダーにはまだあれがあるから同点になるな〜
ここでコインブラでてこないとベストのブラジルにもならないし
残り10分、いや延長戦楽しみだな〜

405 :創る名無しに見る名無し:2014/02/07(金) 01:23:42.44 ID:Zz6GaSx3
【世界の】キャプテン森崎46【果てへ】
【最後の】キャプテン森崎46【戦い】

406 :創る名無しに見る名無し:2014/02/07(金) 03:42:10.41 ID:KdCgIlQR
【神様と】キャプテン森崎46【フットボール】
【サッカーの】キャプテン森崎46【殿堂】
【悪夢】キャプテン森崎46【スーパーストライカー】
【絶対的ストライカーの】キャプテン森崎46【絶対的存在】

407 :創る名無しに見る名無し:2014/02/07(金) 07:25:56.46 ID:LuCsYtyX
【俺がゴールを】キャプテン森崎46【守って奪う】

408 :創る名無しに見る名無し:2014/02/07(金) 16:57:54.63 ID:R+xBN2iA
【皇帝】キャプテン森崎46【無惨】

409 :創る名無しに見る名無し:2014/02/07(金) 19:04:00.64 ID:XgAmfyR3
【サッカー小僧達の】キャプテン森崎46【激突】
【吠えろ!】キャプテン森崎46【森崎有三】

410 :創る名無しに見る名無し:2014/02/07(金) 22:30:54.38 ID:UIBh9B5w
【WY編】キャプテン森崎46【最終決戦】
【コインブラ】キャプテン森崎46【出陣】
【ブラジル】キャプテン森崎46【最強の男】

411 :創る名無しに見る名無し:2014/02/08(土) 02:03:34.31 ID:iEwkClhA
【思えば遠くへ】キャプテン森崎46【来たもんだ】
【ぼくらの】キャプテン森崎46【決戦前夜】
【世界を】キャプテン森崎46【この手に】

412 :創る名無しに見る名無し:2014/02/08(土) 09:59:38.01 ID:ac/GK6zk
【セレソンの】キャプテン森崎46【10番】
【ジャイロが】キャプテン森崎46【見た景色】

413 :創る名無しに見る名無し:2014/02/08(土) 12:00:54.31 ID:mQQKDH0T
【最強の】キャプテン森崎46【証明】
【若きサッカー王の】キャプテン森崎46【誕生】
【代表と】キャプテン森崎46【いうものは】

414 :創る名無しに見る名無し:2014/02/08(土) 12:47:24.55 ID:NT8GtUpj
【真の】キャプテン森崎46【勝者へ】

415 :創る名無しに見る名無し:2014/02/08(土) 16:47:12.53 ID:NT8GtUpj
【ロベルト】キャプテン森崎46【テンションMAX】

416 :創る名無しに見る名無し:2014/02/08(土) 18:27:52.80 ID:tbjGBP65
【セレソンの伝統】キャプテン森崎46【ヒャッホー!】

417 :創る名無しに見る名無し:2014/02/08(土) 18:29:34.06 ID:AWq+k4Gq
【マラカナンで】キャプテン森崎46【釈迦寝ポーズ】

418 :創る名無しに見る名無し:2014/02/09(日) 08:20:37.70 ID:ramcWYWp
【ロベルトは】キャプテン森崎46【動かない】

419 :創る名無しに見る名無し:2014/02/09(日) 10:21:34.99 ID:8LFqgJDG
【燃えて青春】キャプテン森崎46【駆け抜けろ】

420 :創る名無しに見る名無し:2014/02/09(日) 11:38:17.07 ID:pfLxncs8
【ジャイロ伝説】キャプテン森崎46【再び】
【伝説の再来】キャプテン森崎46【スーパーストライカー】
【伝説の】キャプテン森崎46【勝負請負人A】

421 :創る名無しに見る名無し:2014/02/09(日) 18:47:57.64 ID:2uMAqLXg
【サッカーを知る者と】キャプテン森崎46【楽しむ者】

422 :創る名無しに見る名無し:2014/02/09(日) 19:56:58.90 ID:bE2jfKGn
【最終決戦】キャプテン森崎46【二つの決着】
【スーパーストライカー】キャプテン森崎46【コインブラ】

423 :創る名無しに見る名無し:2014/02/09(日) 22:33:52.93 ID:QUaTwwCG
【夢への】キャプテン森崎46【トビラ】

424 :創る名無しに見る名無し:2014/02/09(日) 23:36:46.49 ID:ramcWYWp
【緑のフィールドでは】キャプテン森崎46【一人じゃないさ】

425 :創る名無しに見る名無し:2014/02/10(月) 08:33:40.47 ID:5r2c55Ar
【ワールドユース1991】キャプテン森崎46 【ファイナル】

426 :創る名無しに見る名無し:2014/02/10(月) 08:48:53.04 ID:TfANi9D3
【恋人】キャプテン森崎46【宣言】
【僕等だけの】キャプテン森崎46【未来】

427 :創る名無しに見る名無し:2014/02/10(月) 09:15:29.91 ID:Q3pJrJjr
【ボスラッシュの末の】キャプテン森崎46【シュートラッシュ】

428 :創る名無しに見る名無し:2014/02/11(火) 00:10:35.89 ID:qBsFfOI8
【ここでまさかの】キャプテン森崎46【サリナス登場】

429 :創る名無しに見る名無し:2014/02/11(火) 11:37:44.98 ID:AbXJgt9a
【ロベルト本郷】キャプテン森崎46【死す】

430 :創る名無しに見る名無し:2014/02/11(火) 15:36:13.05 ID:BvhPz1bM
【最終】キャプテン森崎 46【決戦】
【決戦!】キャプテン森崎 【マラカナンスタジアム】

431 :創る名無しに見る名無し:2014/02/12(水) 21:10:02.60 ID:4qhSMXZF
スレタイワロタw

432 :創る名無しに見る名無し:2014/02/12(水) 22:31:52.26 ID:HCZocbS2
次スレです
【マラカナンで】キャプテン森崎46【釈迦寝ポーズ】
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