キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【挑戦者】キャプテン岬U【岬】

1 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2023/11/05(日) 17:25:14 ID:nqbBmTrs



―――――――――――――――――――――――――――――
壁の向こうの戦士たちを前に サッカー世界一の夢をかけ

岬たち西欧同志連合は 東側共産圏最大のサッカー大会

スパルタキアーダへの挑戦を はじめようとしていた
―――――――――――――――――――――――――――――


          キャプテン森崎 外伝
            
     「キャプテン岬U もう1つのジュニアユース」





56 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/02/18(日) 17:08:38 ID:smiBSF32
?????「いきなり飛び出してどうしたかと思ったら、ひとにらみでデカブツを黙らせるなんてよ!
    さすがこのオレが見込んだだけあるぜ!オレたちイベリジュモ(※1)コンビがいればスパルタキアーダ、いただいたも同じよお!」

アルゴスという少年を追いかける形で、もう一人の少年が現れた。今度の少年はアルゴスやリブタはおろか、
僕と比べても小さいように思われた。

岬「(イガグリのように丸い顔と刈り上げた頭…南葛にいた頃の、石崎に似てるな)」

ボッシ「イベリスモ、それにスパルタキアーダ……もしかして君達も」
シャラーナ「その通り!オレはポルトガル代表、SLベンフィカ(※2)所属のサンシュ・シャラーナ!
      そんであの大男がスペインのサルバドール・アルゴスだ」


メラン「アルゴス!彼がアルゴスか!」


アルゴスという名を聞いて、監督が目を丸くして尋ねた。


57 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/02/18(日) 17:11:00 ID:smiBSF32
シャラーナ「へえ、監督のおっちゃんも知ってんの?」
メラン「スペインから送られた資料からな。
    なんでも二千年前に中国で誕生した、一子相伝の暗殺拳の流れをくむ拳法を修練していると……
    シルクロードを通じてヨーロッパに伝来し、今では末裔が
    ピレネー山脈に隠れ住みながら、拳法の修行に明け暮れている。
    ……書類を見ても信じられなかったが、実在していたとは」

シャラーナ「へええ、マジで?そりゃあ強いワケだ、そうか……ハハハ」

驚きを隠せない監督とは対照的に、シャラーナは思い出し笑いをはじめた。不思議に思い尋ねてみる。

岬「どうしたの、そんな面白そうな表情で」
シャラーナ「いや聞いてくれよこれがケッサクなんだ。オレ達ポルトガルの代表団が飛行機のトラブルで
      バルサに降ろされて、空港のロビーで長時間待たされたと思いねえ。
      その待ち時間中にアルゴスがフラリと現れ、オレ達の目の前でバタリと倒れちまった。
      水を与えてワケをきいたら『バルセロナには食料になる動物がいなかった』だとよぐへっ!?」

喜々として暴露話をするシャラーナの左右のこめかみに、指が鋭く突き刺さる。
突き刺されたシャラーナはポカンとした顔つきになり、反応を示さなくなってしまった。


58 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/02/18(日) 17:14:03 ID:smiBSF32
岬「い…いったい、何を?」
アルゴス「ズセツという秘…ツボを押した。正気に戻った後も、今の一瞬の記憶は消えている」



アルゴス「西ベルリンにはどれ位で着く」
スチュワーデス「西ベルリンのテーゲル空港までの飛行時間は1時間50分を予定しております」
アルゴス「そうか。頼みがあるんだが、連れを起こさないであげてくれ、死ぬほど疲れている」

アルゴスは窓際の座席に押し込まれたように座るシャラーナを指して、スチュワーデスに言づけた。

僕達は飛行機に乗り込み、陸の孤島西ベルリンに向かいパリを飛び立とうとしていた。
通路側の座席に僕が座り、アルゴス、ギャロス、ボッシ、シャラーナの順に並んでいる。

ギャロス「だ、大丈夫なのかアレ?ピクリとも動かねえが」
アルゴス「心配するな、着陸前には目を覚ます」
ボッシ「少しやりすぎじゃないか?確かにおしゃべりだったとはいえ」
アルゴス「俺達の道場の掟に『我らが拳法と門徒を誹り、辱めた者には報いを与えよ』とある。
     事と次第によっては命で贖うべきもの、加減を試みる暇はない」


59 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/02/18(日) 17:17:46 ID:smiBSF32
岬「(これはまた色々と規格外な……僕も何か話しかけるべきだろうか?)」


A:「拳法家の君がなぜサッカーを?」
B:「すごい拳法だね、昔の戦場での活躍は凄かっただろうね」
C:「サッカーで役立ちそうなツボってある?」
D:「サッカーで役立ちそうな技ってある?」
E:「(下手に刺激させてもマズいし、黙ってよう)」
F:その他、自由回答(要2票)

原則、先に1票入った選択肢で進行します。

60 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/02/18(日) 17:27:32 ID:smiBSF32
色々悶着ありましたが、どうにか西ベルリンに向けて旅立とうとしている、
というところで、本日はこれまでといたします。


なお、>>56 での注釈は以下の通り。

※1:スペイン語でイベリスモ。スペイン・ポルトガル両国の統一を目指す運動・思想。
  ここではポルトガルのシャラーナとスペインのアルゴスとのコンビを強調している言葉。
  なおコンビだと語っているのはシャラーナのみであり、アルゴス自身はシャラーナとの間に
  特別な絆があるとは思っていない。

※2:ポルトガル・リスボンに本拠地を置くプロサッカークラブ。
   1982-83シーズン(この物語は1985年)に国内リーグ2冠、UEFAカップで準優勝を達成するなど
   当時のヨーロッパでの強豪クラブだった。

61 :森崎名無しさん:2024/02/18(日) 17:30:19 ID:???
A

62 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/02/25(日) 17:19:04 ID:BxffVU8s
A:「拳法家の君がなぜサッカーを?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アルゴス「事の起こりは半世紀も前、スペインを血と暴力で覆った、内戦時代からはじまった……
     当時の我が先人達はフランコ将軍率いる国民戦線軍と拳を交えていた。
     3年もの間奮戦するも時利あらず、国の実権を握り独裁者となったフランコによって、
     先人の多くがイベリアの土へ還ってしまった……
     まだ幼き師父も命からがら難を逃れ、ピレネーの高峰を師とし身を隠す木々を友とした。
     幾度となく迫り来る追手を避け、長じてからは敵を圧し、我らが拳法と道場の復興に
     尽力しておられた……その師父が、まだ拳の修行を許されたばかりの
     私を召し出し、こう告げられた……」

師父『アルゴスよ、本日より手に拳法を、足に球術を共に修めるがよい』

師匠の言葉をよどみなく語った後、アルゴスはポケットに手を伸ばし白黒の布切れを取り出した。
砂や土ですすけたようになってはいたが、きれいに折りたたまれている。

師父『国王陛下ファン・カルロス1世が発布した自由選挙が、不正なく執り行わられたと連絡があった。
   フランコの徒党は未だ要職を占めているとはいえ、もはや風の前の麦殻。遠からず散るであろう。
   我々の恩赦も近いうちになされるとのことだ。
   しかし、塗りつけられた泥は、いまだぬぐわれたとは言えぬ』


63 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/02/25(日) 17:21:20 ID:BxffVU8s
アルゴス「そう言って師父は懐から古ぼけた紙を取り出し、私の前に見せた。
     紙は一枚の貼り紙、そこには……!」



             注意!そして通報せよ!

拳を我らの血で彩る赤旗の尖兵、今なお潜伏す!
  奴らは人を人とも思わぬ人面獣である!


男A「ん⁉まちがったかな…」


奴らは人間を玩具にする。好奇心のままに我らを殺す。
恥じず、ためらわず、飽くを知らず!


男J「そんなガキの1人や2人、なんだというのだ!」


けがれなき子も、奴らには殺戮への誘惑をかき立てるスパイスにしかならない。

その人面獣が今もなお、街や野山に潜んでいる。彼らの居場所を知る者は、
最寄りの治安裁判所へ通報せよ!



アルゴス「老いた病人を苦しませては悦び、泣き叫ぶ子を喜々として刺し貫く……
     我々は人の皮をかぶった悪魔とさせられたのだ!」


64 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/02/25(日) 17:23:19 ID:BxffVU8s
そう言ってギュッと目をつぶり、絶句した。殺戮と言われなき中傷を受け
何も言い返せず逃げ隠れるしかなかった無念が、我が事として胸の内で
荒れ狂っているようだ。

師父『かつてはスペイン全土でこうした政治宣伝が繰り広げられ、
   幾多の朋友が狩り立てられていった。今は世に光が戻ったが、
   かつての偏見は未だにぬぐわれていない。早く我らの無実を
   あまねく伝えねばならん。さもなくば郷里を再び見ることなく
   世を去る者、未来に光を閉ざす者が出てきてしまう。
   ……そのため今後、お前には球技を取得してもらいたい。古今東西老若男女、
   いわゆるスポーツと呼ばれるものには、多くの人間の心をつかむ力がある。
   お前がこの球を通じて外の世界で活躍するようになれば、
   我らにとっての救世主(サルバトーレ)となるだろう』

アルゴス「そう言って師父は、右も左も知らぬ幼い私に頭を下げた。人は己の責務を
     年端もいかぬ幼子に押し付けたというだろう。だが違う!
     もはや老いた身では一門の無念を晴らせぬと嘆き悩みぬいたが、
     私にその可能性を見出してくれたのだ!」

機内であることは頭の片隅にも残っていまい。アルゴスの決然とした表情がそう語っている。
彼は取り出した布を右手人差し指に当てた。するとみるみるうちに空気を入れずして
布が球となり、サッカーボールへと化していく。


アルゴス「先人の無念を晴らし未来に光を抱くは、この球にかかっている…!」




65 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/02/25(日) 17:50:27 ID:BxffVU8s
アルゴスがサッカーをする動機を語ってくれたところで、本日はこれまでといたします。
あと残り3人のチームメイト紹介とダイジェスト紅白戦を交えての選手能力紹介……

それらが終わり次第、岬君達も本格的に試合がはじまります。
…アニメ終了までにたどりつかないと……

66 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/03(日) 16:47:34 ID:Wqomk6Bc
第4話 なぜ空はこれほど青い?


リブタ「いやあ、大きい体はこういう時大変ですねえ」

あふれんばかりの肉を座席と座席の間に押し込みながら、ひとり苦笑する。

リブタ「席も2人分取らせてもらうことになるとは。狭苦しいですが、どうかご容赦を」

相席する隣人に声をかける。だが相手は声が届いていないのかテーブルに広げた
手の平より少し大きいノートを見入っては熱心に書き込んでいる。
ただそれも十数文字程度書き込んでは止まり、また書き進めてはすぐ止まるを繰り返し
時折品を失わぬ程度に幸せそうな顔を浮かべ、窓へ顔を向け空の彼方へ視線をやりながら、
小声で何かをつぶやいているのだった。

何に夢中となっているか、むくむくとリブタの中に興味が湧きだしてきたようだ。
意識が彼方に向いているのを幸い、体をむりむり傾けて、ノートの中をのぞき見る。



この空を見ているだけでうれしい
あなたと見れたらどんなにうれしいだろう
Do you know why the sky is blue?





67 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/03(日) 16:49:14 ID:Wqomk6Bc
リブタ「(これは……詩ですね。大切な人を…)」
????「…カレン」

スッと澄んだ声が、フッと隣人から発せられる。そしてようやく
リブタの視線に気づいたらしく、ピクリとまばたきしてから向き直った。

????「これは失礼、考え事をしていたもので。何かご用事でも?」
リブタ「いえいえこちらこそ勝手にのぞき見を。えっと、あなたも私と同じく、
    西欧メンバーの一員ですよね?」
????「はい」
リブタ「よければもう一度、お名前を教えてもらえないかと。物覚えが悪いもので…
    私はオランダから来た、アルフレット・リブタです」
レヴィン「私はステファン・レヴィン、スウェーデン代表です。よろしく」

握手を交わした後、改めてレヴィンという少年の顔を見る。よく整った顔立ち、
自信を宿した顔つき、そして右目まで届かんばかりに大きく円弧を描いた髪が
特徴として目に入る。

リブタ「(まるで死神の鎌のような…ええい縁起でもない)も、もしよければ
     今お書きの詩について、うかがっても」
レヴィン「詩…ああ、カレンに宛てる手紙の下書きのことですか」
リブタ「カレン…ご姉妹ですか」
レヴィン「いえ、僕の……大切な人です。何と、いいますか」

レヴィンは再び遠い目をして、再び窓を向いて空の彼方へと目線を投じた。


68 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/03(日) 16:52:01 ID:Wqomk6Bc
レヴィン「不思議なものです。恋をするまでは、恋をするとその人のことしか目に入らなくなると思っていたのですが……
     いざそうなると目に映る全ての景色、世界が輝くというか、あざやかになるというのか。
     その不思議と喜びを思うままに、つらつらと」
リブタ「そうでしたか……どうかカレンさんと、共に過ごすお時間を大切になさってください。
    後悔することが無いように、一瞬一瞬、全力で」


ありがとうございます。ほほえみを添えてチームメイトにそう返事した後、再び窓に広がる青空を眺める。


どこまでも空は青い。


どれほど見渡しても一筋の暗雲も、湧き上がってきそうになかった。


69 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/03(日) 17:00:08 ID:Wqomk6Bc
短いですが残り3人のチームメイト1人が、レヴィンくんと分かったところで今日はここまでといたします。

なおレヴィンくんが作中で記していた詩は、以下の動画(5:30あたり)からお借りしております。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm29525809

物語での利用許可をくださりました、ねこ号さんにこの場を借りて御礼申し上げます。

ねこ号さんX(Twitter)アドレス
https://twitter.com/nekogoing

70 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:41:19 ID:ZxMHRW6U
         第5話 西ベルリン、そして最後の2人


リチャード「お前らが西ヨーロッパ代表かい。
      ワシがリバプールのリチャード・デンバーじゃ。
      よろしくたのむぞ」

西ベルリンのテーゲル空港に到着すると、これから僕達のチームメイトになるはずの男、
炎に石炭をまぶしたような黒みがかった赤毛の長髪イングランド人が待ち構えていた。

ギャロス「よ、よろしくっ」
リチャード「よろしくのう」

一番近くにいたギャロスは彼を見て、明らかにひるんで見えた。ギャロスには悪いが
他人には恐れおののいたチンピラが、組の頭と応対しているといった光景にしか見えない。

丸太に筋肉を覆ったような隆々とした両腕を組み、遠慮など欠片も感じさせない
不敵な表情は、一目で強者だと感じずにはいられない。

平静を保っているのは大男のリブタや拳法家のアルゴス、あとはレヴィンと監督くらいか。
後の面々は大人も含めて、硬い表情を浮かべてしまっている。

もっともみんなが赤毛のイングランド人を恐れ、警戒しているのは傲然とした風貌ばかりではなかった。

「先例」がある。


71 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:42:27 ID:ZxMHRW6U
あれは今から2か月前、1985年5月29日のことだ。

僕はテレビで父さんと一緒に、サッカーの試合を見ていた。
それもただの試合じゃない。ヨーロッパナンバーワンのクラブチームを
決める大会の決勝戦だ。イングランドの強豪リバプールFCと、
イタリアの帝王ユベントスFCとの試合。フランスでも多くの注目を集めていた。

僕達の学校も例外ではない。学校でも連日話題のタネとなっていて、
サッカー部の練習は昨日見た名プレーの真似事に費やされていた。

僕だって、日本にいた頃には夢でも見られないようなプレーが見れるとあって、
父さんに頼み込んでテレビを借り受け、試合が始まると釘付けになって
テレビに見入っていた。

そうして待ちに待った決勝戦。僕はその前座としてはじまっている、スタジアムの
地元ベルギーの少年サッカーチームの試合を観戦していた。今日のような大試合を
時間まで黙って待ち続けることができず、少しでも血を抑えようと僕よりも幼い
子供たちの試合を眺め続けることにしていた。



その試合が後半戦に入ってしばらくした後、「それ」が起こった。





72 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:43:55 ID:ZxMHRW6U
子供たちの試合が後半戦に入った頃、リバプール側のサポーター達が
金網のフェンスを破壊し、ユベントスのサポーターへ襲いかかってきた!

振るわれる鉄パイプ、飛び交うレンガ。テレビカメラごしの荒い画面から、
怒号と悲鳴が鳴り響く。

壁が崩れる。暴徒に襲われたサポーターたちが壁に寄り固まりすぎ、
重量に壁が耐え切れなくなったためだ。

崩壊と圧迫の勢いで後ろの観客が雪崩を打ち、前の人間を飲み込み押しつぶしていく。
将棋倒しとなったユベントス側を目の当たりにして、リバプール側は更に勢いづき、
かけつけた大勢の警官隊にまで突撃して、フィールドを血にまみれされた。



これまでのサッカーで、いや人生で想像さえしなかった展開だった。



何が起こっているか目で見ても頭が感じず、あれだけ待ち望んでいたはずの
決勝戦が(こんな状況下で)はじまっても上の空、試合結果まで後から
テレビで目にするまで思い出せなかったくらいだった。


73 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:45:19 ID:ZxMHRW6U
岬「(『ヘイゼルの悲劇』と呼ばれるようになったあの事件。30人以上が死んで、
   400人以上の重軽傷者を出した大惨事。
   イギリスの車が破壊された、イギリス人が襲われた、
   そんなニュースがよく流れていたっけ。結局、リバプールだけでなく
   イングランド中の全サッカークラブが、国際試合無期限禁止となった……)」」

悲劇からたったの2か月。他のチームメイト達にも色濃く記憶が残っているはず。
そうした周囲の空気などどこ吹く風というばかりに、リバプール人は監督へと近づき、尋ねる。

リチャード「人数は揃うたか」
メラン「人数、とは」
リチャード「決まっとる、このチームのメンバーのことじゃ」
メラン「ああ、まだ西ベルリン代表が一名、合流していない。
    現地の合宿所で合流すると、向こうから」
リチャード「なんじゃ、ノフウド(※)なヤツじゃの。まあええ、
      他の顔ぶれにアイサツさせるとするかの」

※:生意気な。大きな態度。

そう言って返事も待たずに、クルリと踵を返して外へ向かっていく。
監督の制止も聞かず、走って前を遮る勇気のあるスタッフもいない。
やむなく全員でリチャードの後を追いかけ、空港の外にまで出る。その瞬間。



PAPPAPAPAPAPAPAPPPAPPPPAAAAPPPAPAPAPAPAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!



天をつんざくクラクションが、テーゲル空港へまき散らされた。

74 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:46:32 ID:ZxMHRW6U
リッタークラスはありそうなゴテゴテとした何十両もの大型バイクと、
モヒカン入れ墨肩パット、どう見ても堅気には見えない荒くれ達が、
二列に整然と並びながら、口々に親分へと「挨拶」した。

モヒカンA「ヒャアアアアアアアッハアアアアアアアーーーーッ!!!」
モヒカンB「やってきましたぜええええリチャードのアニキイイイイイイイ!!」
モヒカンC「どんな手を使ってでも、必ずモスクワで応援しますぜェーーーーッ!!」
リチャード「オウ来たなスピーディ、左目のビリー、マッド・ドナルド!
      ここにいるのが、これからワシと同じメシを食うファーマー(※)
      じゃけえの、仲ような」


※:ここでは仲間、ただし応援団という意味が強いスラング。


獣のような喚声が湧き上がる。話の内容などどうでもよく、ただリチャードから
声をかけられただけで、歓喜を爆発させているようだった。

モヒカンD「どうぞあちらへ!迎えのバスは来ております!」
モヒカンE「おいお前ら!リチャード様がご出立なさるぞ、合唱しろ!」
モヒカンF・G・H……「アイアイサー!!!KOP!KOP!KOP!KOP!KOP!KOP!」

合唱とは名ばかりの轟音に包まれながら、バスへ流されるように歩む僕達。
このままどこかのマフィアへと、鉄砲玉にさせられるのではないかと
今更にして不安を感じ始めたときだった。


75 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:49:23 ID:ZxMHRW6U
モヒカンA「うえ?」

モヒカンの肩に、1つのボールが飛び跳ねる。そしてそのまま、
モヒカンの頭や肩を介して、行列の方向へと進んでいく。

モヒカンB「うおっ?」
モヒカンD「こ、これぼっ」
モヒカンG「ボールだわべっ!」
モヒカンK「どんどん速く…どわ!」

進むたびにスピードが増し、最前列のリチャードに向かう頃には矢のような速さだ。
リチャードはそれを振り向きもせずに、後ろ手で受け止める。

何者かとリチャードで振り向くと、穴あきのジーパンに継ぎはぎのジャンパーをきた、
1人の少年がおどけた様子で、告げた。



メッツァ「ようこそ自由な西ベルリンへ、または
     壁とヘロインとスリルの街、西ベルリンへ!」



彼こそ西欧同志連合最後のメンバーにして西ベルリン代表、
ヒュー・メッツァだった。

76 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:52:32 ID:ZxMHRW6U
という訳で最後のメンバー2人、
リチャードくんとメッツァくんが加入したところで、
今日のキャプテン岬はここまでといたします。

ようやくにして全員出揃いました。
メンバー紹介だけで何か月もかかるとはとお思いでしょうが、
何とか次回こそダイズを振る展開に持っていきたいと思います。

77 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/31(日) 16:40:33 ID:DI0H60Ug
        第6話 めざせモスクワ

テーゲル空港でチームメイト全員がそろった翌日。
西ベルリンのとある場所に位置する合宿所。ウォーミングアップを終えた僕達を
監督が呼び寄せ、話をはじめる。

メラン「皆、準備はできたようだな。ではまず今後の予定について、もう一度おさらいしておく。
    地図を見るがいい」

監督の後ろにはヨーロッパ全土を記した、広々とした地図が貼られている。
その中でも右端、ヨーロッパ大陸の東部奥深くには、ひときわ大きい赤い五稜星が君臨し、
そこまでに向かう経路には矢印と3つの小さな赤い星が記されている。

メラン「スパルタキアーダが開催されるモスクワまではバスで向かう。それまでの3か所、
    東ドイツの東ベルリン、ポーランドのワルシャワ、ソビエトのキエフに一時滞在する。
    そこでは休憩とトレーニング、全体練習を済ませた後、他のスパルタキアーダ
    参加チームと練習試合をしてもらう」

ほとんどのメンバーは熱心に、監督の話に聞き入っている。僕だけでなく他のヨーロッパの
仲間達も、壁の向こうの別ヨーロッパ世界で試合をしたことはないのだろう。


メラン「東ベルリンでは東ドイツジュニアユース、ワルシャワではポーランドジュニアユース、
    キエフではハンガリージュニアユース代表と試合する。
    どのチームも今回の大会で優勝候補に挙げられている強豪だ。油断するなよ」


78 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/31(日) 16:43:39 ID:DI0H60Ug
対戦相手が判明して、部屋がざわめく。どんな相手か、どんな戦い方をしてくるか。
ワイワイガヤガヤと雑談がはじまったが、誰もかれも全く知識を持ち合わせていないらしく、
これといって実のある情報は出てこない。

マリーニョ「ねえシューマッハ、あっち側について何か知らない?」
シューマッハ「ええっ、なんでデンマーク人のボクに?昨日まで
       西ベルリンが西ドイツの首都だと思ってた人間に尋ねても」
マリーニョ「トリノもゴルバテもバサレロも、あっち側のコトは全然知らないって
      いうから、他の国ならって。レヴィンは何か知ってる?バルト海の向こう側は
      ソ連なんでしょ?」
レヴィン「いや、時々ニュースでソ連から亡命者が来たって放送するくらいしか知らないよ。
     隣国のフィンランドはソ連と犯罪者の引き渡し協定を結んでいて……」

岬「(うーん、ここでお得な新情報を披露できれば、僕の株も上がるんだろうけど……)」


先着で
★岬の発言 ! card★
と書き込んで下さい。スートの結果で分岐します。!とcardの間のスペースは埋めてください。

JOKER⇒聖薇『お母様が一晩で用意してくれました!』
        全東欧ジュニアユースチームの詳細な情報が判明する!
ダイヤ⇒岬「(そういえば、昔読んだ雑誌に、東西ベルリンの親善試合の記事があったな……)」
        数字が大きいほど、話せる情報量が多くなります
それ以外⇒新情報「そんなものはない」 現実は非情である


79 :森崎名無しさん:2024/03/31(日) 16:45:23 ID:???
★岬の発言  クラブ9

80 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/31(日) 16:59:49 ID:DI0H60Ug
岬父「岬太郎の父親、一郎です。太郎の知識を披露する機会が得られなかったところで、
   短いですが今週の投稿はここまでとさせてください。

ここから少しずつスパルタキアーダに向けての準備がはじまりますので、少々の補足をさせていただきます。

まずこの世界は地球上の人間皆、エスペラント語のような世界共通語を話しているという設定になっています。
その関連で「ジュニアユース」など、サッカーまたはキャプテン翼に関連する語句は
私たちの世界で聞きなじんでいる用語に統一されています。

どうかご理解をお願いいたします」


81 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/04/07(日) 17:58:50 ID:zRuB8I0E
突然の申し出となりますが本日は、そして4月中はキャプテン岬の執筆をお休みさせてください。

私事ではありますが、仕事において4月に長期休暇が取れたため、
この期間を転職活動に宛てていきたいと考えております。
ご覧になってくださる方には申し訳ありませんが、どうか
今しばらくお待ちくださるようお願いします。

なお、その期間中に質問等がございましたら、回答できるくらいの
余裕はありますので、どうか遠慮せずにコメントなさってください。

もし順調に進んで執筆できるようになりましたら、連絡を行った後に
再び執筆を再開いたします。

82 :森崎名無しさん:2024/04/07(日) 20:33:42 ID:???
転職活動頑張ってください。それまで待っています

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