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キャプテン森崎外伝スレ3
[369]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:49:43 ID:Zomp8b5Q 「おいっ!聞こえたか?」 鋭い声が無線を通して減圧室に響く。 それは彼らの上司の声であった。 「リフティングを止めてマスクを装着しろ」 それは先ほどの注意のような言い方ではなく、いうなれば有無を言わせない命令であった。 少年は溜息を吐き出すと、無言でマスクをかぶり始めた。
[370]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:50:05 ID:Zomp8b5Q 「降下6分前、後部ハッチ開きます。」 重厚な機械音を響かせながら重い扉が開くと、雲の海の遥か向こうに神々しい光の波が広がっている。 「日の出です。」 その感動的な風景に興味はないとばかりに、事務的に伝える音が無線から聞こえてくる。 「外気温度 摂氏マイナス46度」 「降下2分前・・・スタンドアップ。」 少年はおもむろに立ち上がるとハッチの先端部に向けて一歩づつ踏み出していく。 「これが記録に残る世界初のサッカー選手によるHALO降下になる・・・」 無線からは独り言とも受け取れる上司の声が漏れてくる。
[371]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:50:37 ID:Zomp8b5Q 「降下10秒前・・・スタンバイ」 「全て正常 オールグリーン!」 「降下準備・・・」 「カウント・・・5、4、3 2、1―」 遂に少年は機内と大空の境界線へとやってきた。 目の前には一面の白い絨毯が広がっている。 もっとも飛び込んだところで、受け止めてくれるはずもない。 「隼になってこい!幸運を祈る!」 今度ははっきりと少年に語りかけるように無線から上司の激励が飛ぶ。 少年はその声に一瞬機内を振り返るが、すぐに向きを正し前方に倒れこむように大空へと飛び込んでいった。 空中で頭を下に向ける体制を取り、一気に雲の中に突っ込んでいく。
[372]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:51:26 ID:??? よく飛び降り自殺を図った人間は自分の人生を走馬灯のように見るという。 これと同じ原理かどうかはわからないが、少年の脳裏にはこのたび高度3000フィートから飛び降りるまでの経緯が浮かび上がっていた。 「瞬、よく聞いてくれ。遂に日本サッカー協会会長からバーチャスミッションの許可が出た。」 「バーチャンスミッション? ゴールバーに当ててオーバーヘッドをする的な意味か?」 あまりの突然の報告に瞬と呼ばれた少年はうまく反応できない。 「我々SOX舞台の存在意義をかけたバーチャス(貞淑な)ミッションだ。」 瞬少年の間違いを軽く指摘し、上司は続ける。 「これが成功すれば正式に部隊として編成される」 「貞淑なミッション?忠誠を誓う儀式みたいなものだな」 「気を抜くんじゃない あくまでも実戦だ」 瞬少年の軽視的な発言に上司がすかさず注意する
[373]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:52:12 ID:??? 「分かっている。で、その記念すべき任務の内容は?」 「・・・うむ」 上司は本題に入る前に背筋を正し、語り始めた。 「・・・3年前、ブラジルのある元代表選手が日本への逃亡を申し出た。我々の潜伏工作員を通じてな ロベルト・本郷 元ブラジル代表の10番であり、ブラジルの日系人サッカー選手の草分け的存在だ」 「ロベルトというとあのドライブシュートで有名な?」 瞬少年が己の記憶と照らし合わせ、該当した人物像を挙げる。 「そう、そのロベルトだ。」 上司は知っているのなら話は早いとばかりに話を進める。 「1970年、ブラジルは3回目のワールドカップ制覇を成し遂げた。」 「ブラジル代表は最強だった、だがジュール・リメ杯は無くなった」 瞬少年が合いの手を入れると上司は軽くうなづき更に続ける。
[374]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:52:39 ID:??? 「そのブラジル代表を優勝に導いたのがペレ、通称サッカーの神様だ ロベルトはそのペレを支えたチームメイトの中で最も功績のあった人物とされている そして現役引退後、ロベルトはサンパウロJrユースのコーチになった」 「日系人がサンパウロのコーチに? 大した出世じゃないか、なぜ辞任を?」 「日本人にダイヤモンドの原石をみつけた、とのことだ」 「原石を見つけた?」 「日系人セレソンの罪の呵責だよ」 「その為に地位も名誉も捨て、来日を?」 「ああ、そして協会が手廻しをして入国ビザを発行させ来日させることに成功した その来日作戦の指揮を取ったのがこの私だった」 「まだ入国審査が甘かった頃だ。それで?」 瞬少年の疑問に一つ一つ答えながら上司は淡々と言葉を発する。 「ロベルト来日からわずか3ヶ月後だ、あの一大事件が起こったのは」 「極東危機か・・・」 瞬少年は苦虫をつぶしたように呟く。
[375]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:53:09 ID:??? 「全国小学生サッカー選手権最中、日本を除いたアジア各国に 国内でくすぶっているブラジル人サッカー選手を帰化させるという情報が日本サッカー協会会長の下へと届けられた 会長は帰化計画の撤退を要求し、同時に安易な帰化をさせないためにFIFAに提言すると宣言した だがブラジルはそれに応じず帰化の準備を進めた 選手を乗せた飛行機も依然アジア各国に飛び続けた 日・伯両協会はFIFAでの臨戦態勢に突入 一触即発のにらみ合いの中 FIFAや非公式の接触を通じた必死の交渉が行われた そしてついにブラジルはアジアへの選手の帰化計画の撤回に同意 日本はアジアサッカー界からの脱落の危機を脱した だがブラジルが選手を引き上げさせた裏にはある取引があったんだ」 「日本もプロリーグを作り、ブラジル人選手の招聘を積極的に行うという話か?」 瞬少年がそれなら知っているとばかりに口を挟むが上司の次の言葉はそれの否定であった。 「いや、日本の今の実業団ではサッカーレベルの向上は限界で いずれにせよプロリーグは作られる予定だった 日伯双方にとって政治的な効果はあまり無い プロリーグの件は偽装だ サッカー界の政治的な者達へ流す 囮(カバーストーリー)だったんだよ」 「では本当の条件とは?」 瞬少年が今までの話を聞けば誰もが考える当たり前の疑問を口にする
[376]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:53:46 ID:??? 「ロベルトだ 日本に指導者として来日したロベルトの帰国だ」 「アジアサッカー界全域を巻き込んだ帰化騒動の原因は ロベルト一人を手に入れる為だったと?」 瞬少年は信じられない面持ちで聞き返す。 「そうだ」 当たり前だ、と言わんばかりに頷く上司に向けて瞬少年は更に疑問をぶつける。 「彼は一体、どれほどの指導力があるというんだ?」 「その時の我々は何も分からなかった、タイムリミットは迫っていた ロベルトという一人の指導者か?アジアサッカー界からの孤立か? 選択の余地はなかった 会長はブラジルの要求をのんだ 翌日私はロベルトを決勝戦のスタジアムから連れ出し ブラジル船籍の船に引き渡した ロベルトは翼に会わせてくれと叫び続けていた、見えなくなるまで」 その時の光景を思い出したのか、上司は首を軽く横に振るが すぐに話を続ける。
[377]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:54:17 ID:??? 「そして1ヶ月前、我々の潜伏工作員から再び情報が入った ロベルトはサンパウロに連れ戻され ブラジル協会の監視下である選手の育成をさせられているらしい しかもそれは代表入り直前ということだ」 「で、その選手とは? わざわざ彼に指導させたと言うことは日系の選手なのか?」 「いや、それどころか人間といえるかも微妙なところだ」 「どういうことだ??」 「詳しい詳細は分からんが、サイボーグ技術の粋を集めた改造人間の一種らしい この半年、サンパウロでは頻繁に非公開練習が繰り返されている」 「その選手に関係すると?」 「ブラジル協会があんな無茶なやり方をしてまで取り返したかった 指導者に教わる選手だ」 「そのユースチームに今もロベルトがいる?」 「いや、情報によると郊外のトップチームの合宿場にいるらしい そこでトップの選手を相手に練習してるらしい だがこれは奪還のチャンスともいえる 郊外なので人目に付かん。 ロベルトもこれが最後のチャンスと思って連絡をしてきたのだろう。」
[378]森崎名無しさん:2008/12/07(日) 21:54:43 ID:??? 回想から帰ると、少年の眼前には薄くなった雲の隙間から緑の大地が見え隠れしていた。 身体を大の字に広げ、降下速度を緩める。 「いいか、君の任務はサンパウロ市の郊外、 サンパウロトップチーム合宿所への単独潜入 ロベルトの安全を確保、日本へ奪還する事だ」 無線の奥で上司が一方的に話し続ける。 「例の改造人間が完成する前にロベルトを奪還しなければ サッカー界のバランス、倫理観が崩壊する 残された時間はわずかだ」 上司の通信を聞いている間に もはや雲を抜け、地上までいくらも無くなっていた。 少年はパラシュートを開き着陸に備え始める。
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0ch BBS 2007-01-24