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【新章】キャプテン森崎30【新天地】
[171]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 14:19:48 ID:??? 2009-01-02-13-27-44 パルメイラス修行編:2年目4月その9 さしのべられるのか?→ スペード5 スペード・クラブ→そうそう差し伸べられる訳も無かった… ----------------------------------------------------------------------------- 差し伸べられる筈も無く、結局新入生達を含む南葛高校サッカー部員全員で校長に直談判し やる気と人数の多さをアピールしようと言う事になった。 校長も全国大会常連のクラブが廃部になるのはイヤだったので、数日後に退職間際の 老教師を強引に顧問に取り付けてくれた。こうして一応事務処理だけは心配せずに済む様になった 南葛高校サッカー部だったが、オフサイドの概念も理解できない老教師は本当に”居るだけ” だったので練習メニューの組み立て、チーム内の規律統率、予算確保などに苦労は尽きなかった。
[172]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 14:20:25 ID:??? ここで場面を日本からイタリアのミラノ市に変えよう。 ここにはイタリアを代表する世界クラスの超強豪サッカークラブが二つ市内にある。 一つは昨年イタリアのプロサッカーリーグ、レガ・カルチョのセリエAを制したACミラン。 そしてもう一つはそのACミランの自他共に認めるライバルクラブのインテル。 この日、ミラノ市郊外にあるインテルのクラブハウスには一人の珍客が訪れていた。 ブロロロロロロ… 葵「えっ…お、おじさん!?どういう事だよ、ちょっと待ってくれよォ!」 日本から来た少年、葵新伍がインテルの役員…を騙った男に大金をせしめられたのである。 彼はミラノ市内のインテル本部で門前払いを喰らっていた所、親切そうに話しかけてきた 自称インテル役員に大金を渡し彼の運転する車でミラノ市から40km離れたクラブハウスに 連れられてきた。しかし彼が話しかけた用具係にインテルはこの日入団テストなど行っていない 事を知らされた葵が次の瞬間見た物は、彼を置いて遠ざかっていく車の後姿だった。
[173]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 14:20:47 ID:??? 葵「そ…そんな…俺の200万リラ返せーーーっ!!」 用具係「お、お前…アフリカや南米のガキがこう言う詐欺にひっかかるのは たまにあるが、日本人がかかったケースは聞いた事無いぞ…プククッ…」 葵「わ、笑うなよーっ!1年間必死にバイトして貯めた当面の生活費なのにーっ!!」 用具係「200万リラじゃ精々数ヶ月しか持たないだろ…まあイタリアに来れる位の日本人なんだ、 家族から金を送ってもらえるだろう?もし入団テストを受けても受かる訳無いし、日本に帰れ、な?」 葵「なにィ!?」 用具係の男は純粋な親切心から葵を諭す。だがそれは葵にとっては侮辱も同然だった。 葵「フザけんなよ!やってみなきゃ分からないじゃないか!」 用具係「やってみなくても分かるって。日本はワールドカップに出た事もプロリーグも無いじゃないか」 葵「うぐっ…へ、へへーんだ!その日本に1−4で負けたJrユースは何処の国のチームでしたっけ?」 用具係「…なんだと」 葵「(うげっ、やっちまったか!?やばい怒ってる怒ってる!)」 イタリアサッカー界の記憶に新しい汚点を突かれ、友好的に接してきた男の表情が固くなる。 葵は今更ながらいきり立つまま売り言葉に買い言葉で応酬した事を後悔したが、 この時通りがかった少年二人に救われた。
[174]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 14:21:22 ID:??? ヘルナンデス「騒々しいですね。何の騒ぎですか?」 ゲルティス「………」 一人は葵より遥かにがっしりした体格の金髪の少年。彼こそがインテルの ユニオーレス(15〜17歳部門)のキャプテンであり、2年前の国際フランスJrユース大会で イタリアJrユースも率いた通称パーフェクトゴールキーパー、ジノ・ヘルナンデスである。 ヘルナンデスの隣に立つもう一人は長身の黒人の少年だった。長い髪も肌も大理石の様に 美しい黒色で、ジャガーの様な凛々しい顔と相まって野性的な美男子と言えるだろう。 彼は「キーパーマシン」の異名を取るブラジル人GKであり、エウゾ・ゲルティスと言う。 用具係「あー、すまん。この日本人のガキがいきなりやってきて入団テストを受けさせろって…」 葵「あーっ!イタリアJrユースGKのジノ・ヘルナンデス!そうか、インテルにいたのか!」 用具係「あっ、こら!少しはだま…」 葵「よーし、勝負しようぜ勝負!お前からゴールを奪えば俺だって評価される筈だァ!」 用具係「………こいつ、正気か…」 知っている選手に出会った葵はこれ幸いとばかりにいきなり挑戦状をたたきつける。 あまりにも勝手な物言いに用具係は頭を抱えたが、意外にもここでゲルティスが口を挟んできた。
[175]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 14:22:15 ID:??? ゲルティス「やらせてみれば良い」 ヘルナンデス「!」 ゲルティス「使えるなら良し、さもなければさっさと追い出せば良い」 用具係「…ゲルティス。お前はインテルを裏切りよりにもよってミランなんかに 行く身分だ。部外者がインテル内の事に口を挟むな」 葵「(誰だろ、このゲルティスって?)」 用具係の男はすこぶる機嫌悪そうにゲルティスに悪態をつく。しかしゲルティスは蚊に 刺された程の反応も示さず、視線だけヘルナンデスの方に向けた。
[176]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 14:27:49 ID:??? ゲルティス「どうするんだ?」 ヘルナンデス「………分かった。監督に頼んで練習に参加させてもらおう」 用具係「ジノ!?」 ヘルナンデス「俺はもう2度と日本人を侮りたくない…ただそれだけです」 用具係「………そうか」 淡々と話すヘルナンデスに感じ入る所があったのか、用具係の男もそれ以上は何も言わなかった。 一方葵の方は決して歓迎されていない事もなんのその、飛び上がって喜びだす。 葵「イヤッホオーッ!話が分かるじゃん、ジノ!あ、俺葵新伍!シンゴって呼んでいいぜ!」 ヘルナンデス「…ああ(なんて馴れ馴れしい奴だ)」 ゲルティス「(シンゴ・アオイ。日本人選手。ポジション不明だが体格、外見上から考察するに スピードとスタミナに優れると判断、よってMFかFWかと思われる。その他備考…バカである)」
[177]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 17:06:57 ID:??? 2009-01-02-15-54-31 パルメイラス修行編:2年目4月その10 こうして詐欺に会った上門前払いを食らいかけた葵新伍だったが、その不運を埋め合わせるかの様に 幸運に恵まれインテルの練習に参加できた。更に彼にとってラッキーだったのが、 この日の練習が持久力強化を兼ねた障害物レース形式のドリブル練習だった事である。 ヘルナンデスの頼みと言う事で渋々葵を参加させた監督がさっさとバテさせて追い返そうと この練習を選んだのだったが、彼は知らなかった。葵がスタミナとスピード自慢だと言う事を。 ダダーッ!スイスイスイ… インテルメンバー「な…なにィ!?」「は、速いじゃないかあいつ!」「しかも上手い!」 フィールダー達の誰よりも速く障害物をかわしていく葵。特に時間の経過と共に 注目を集めたのが最初から飛ばしていたのにも関わらず何時まで経っても 動きが衰えない事だった。インテルの選手達が徐々にバテていくのに対し 葵は最初からトップを走り続けているのに実に楽しそうにますます差を広げていく。 葵「へっへー!ノンストップだー!青信号は止まらないぜ!」 GKとして個人練習をしていたヘルナンデスとゲルティスは休憩の間にそんな葵を眺めていた。 ヘルナンデス「(自分を戒めるつもりで参加させたが、まさかこんな奴が現れるとは…)」 ゲルティス「(パワー:C。テクニック:B。スピード:A。スタミナ:SS…いや、Sで十分か)」 ヘルナンデス「(攻撃力不足のウチに新しいコマが出来たのだから、素直に喜んでおくか)」 ゲルティス「(ドリブルスタイルはスピード重視の傾向。フェイントのバリエーションその物は少なめ)」
[178]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 17:07:44 ID:??? ヘルナンデスとゲルティスが各々の思考に耽る中、葵以外の全員がバテてしまったので ドリブル練習が終わる。まだまだ元気そうな葵に向けられる視線は数十分前とはまるで違っていた。 ヘルナンデス「終わったか…有難うゲルティス。お前のお陰で有望な人材が増えそうだ」 ゲルティス「恩返しだ」 ヘルナンデス「恩…?俺がお前に何かした事があったか?」 ゲルティス「俺はお前のお陰でセリエA挑戦の足がかりを得た。インテルから金を貰い、 そして更に今ミランから金を貰う事が出来る。外国人選手としてこれ程有難い事は無い」 ヘルナンデス「………そうか。やはりお前は俺の事をそういう風に思っていたんだな」 淡々と語るゲルティスと大きくため息をつくヘルナンデス。そこに葵が飛び跳ねながらやってきた。 葵「やったー、やったよー!監督が明日から来て良いって!」 ヘルナンデス「そうか。まああのドリブルなら入団させない方がおかしいからな」 葵「これもジノとゲルティスが頼んでくれたお陰だよ!有難う、有難う!」
[179]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 17:09:18 ID:??? 大はしゃぎで喜ぶ葵に釣られ、ヘルナンデスも苦笑気味に微笑んだ。 一方ゲルティスは冷静な表情を崩さず、シンプルに首を振るだった。 ゲルティス「礼は要らん。頼んだのはヘルナンデスだ」 ヘルナンデス「俺にも礼を言う必要は無いさ。即戦力になる選手なら大歓迎だ。 改めて自己紹介しよう、キャプテンのジノ・ヘルナンデスだ。分からない事があったら聞いてくれ」 葵「うん!ゲルティスもよろしくな!」 ゲルティス「その必要も無い。俺は来週ミランに移籍する」 葵「えっ、そうなの?それじゃ対戦出来る時を楽しみにしてるよ!」 ゲルティス「(シンゴ・アオイ相手の失点率…一対一の接近戦:約20%。空中戦:約15%。 対シュート:現時点ではデータ不足だが、脚力を考慮すれば推定10%未満)」 葵「あの…だから、楽しみにしているって…」 ゲルティス「………」 ザッ、ザッ、ザッ。 葵「あ…」 握手を求める葵を他所にゲルティスは脳内で葵のデータを整理し分析しながら立ち去っていく。 その場には空しく手を伸ばした葵と腕を組みながら見送るヘルナンデスが残された。
[180]マロン名無しさん:2009/01/02(金) 17:09:40 ID:??? ヘルナンデス「気を悪くしないでくれ。ゲルティスは誰に対してもああなんだ」 葵「う、うん。俺なんか怒らせちゃったのかと思ったよ…」 ヘルナンデス「決して悪い奴ではないのだが、決して良い奴でもない。しかも無口で冷静でドライ。 そんなあいつは畏怖と反感両方を込められて”キーパーマシン”と呼ばれているんだ」 葵「ふぇー…なるほど。あ、でも腕はジノの方が上なんでしょ?移籍しちゃうんだから」 ヘルナンデス「!………さあな。実戦で戦ってみないと分からないだろう」 葵「ふーん。それもそっか」 こうして葵新伍は念願叶ってイタリアのプロ予備軍になれた。 やがて彼が日本代表の一員になるのはもう少し後の話である。 *葵のヘルナンデスに対する感情が「親友」になりました。 *ヘルナンデスのゲルティスに対する感情「ライバル」が発覚しました。
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0ch BBS 2007-01-24