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【井の中の虎】キャプテン森崎34【大海を知らず】
[65]2 ◆vD5srW.8hU :2009/11/30(月) 16:41:09 ID:pjTM9gq0 日向の残った力全てを込めた2連続ネオタイガーが南葛のDFとGK全員を薙ぎ倒し、 防がれても尚勢いを残していたこぼれ球がゴールラインを割ってから数分後… ピッ、ピッ、ピィイイイイイイイイイイイイイイ!! 観客「ああああああ〜…」「ダメだったか…」「今年こそはって思ったんだけどなあ…」「最後の時に岬が居れば…」 試合終了を告げる笛を待っていたかの様に悲哀交々のため息が観客席で流れ出た。 放送「試合終了〜〜〜!最終スコアは3−2!東邦学園、唯一のライバルであった南葛高校を 激闘の末打ち破り冬の全国選手権の三連覇を達成しました!強い、強すぎる、強すぎた!! 猛虎・日向小次郎くんの無敗天下は遂に崩される事なくフィナーレを飾りました! 逆に打倒・東邦に3年間打ち込んだものの、ほんの僅かの力の差で報われなかった南葛の選手達は 皆打ちひしがれ未だ立ち上がる事が出来ないで居ます…勝敗とはこれ程までに残酷な物なのでしょうか…」 高杉「そ、そんなァ…」 石崎「岬、翼、すまねえ…」 中里「日向小次郎、恐るべし…」 井沢「くそっ!くそっ!くそっ!」 来生「なんでこうなっちゃうんだよーっ!」 滝「俺達の力はこの程度だったのか…」 岩見「結局何も出来なかったか…」 長野「あああ…俺に、俺にもっと力があれば…!」 放送の実況通り南葛の選手達は悔しさに打ちのめされていた。 ある者は無念さに涙を飲み、ある者は後悔に怒鳴り散らし、ある者は己の力不足を嘆く。 中山「何故だ…何故、負けたんだ…今年こそ勝てると思ったのに…」 そして中山は…現実を受け入れられないでいた。 自分はリハビリを終え、かつての力を取り戻せたのではなかったのか? 一体どんな顔をして森崎にこの情け無い結果を報告すれば良いのか?
[66]2 ◆vD5srW.8hU :2009/11/30(月) 16:41:56 ID:pjTM9gq0 日向「バカかてめえは?なんで勝てるなんて思ったんだ?」 中山「なんだと…」 皮肉にも彼の迷いを断ち切りに歩み寄ったのは他の誰でもない日向だった。 疲労に足を震わせては居るが、その堂々とした振る舞いは勝者の物以外の何物でもない。 中山が手と膝を地に着きながら見上げているのとは真に対照的である。 日向「日本一になって森崎に追いつきたい?胸を張ってあいつと共に戦いたい? 要するにてめえは森崎に勝つつもりも無い負け犬なんだろうが。最初からな!」 中山「な…!」 日向「俺は誰かに負けを認める位なら死んだ方がマシだ。日本一? そんなモノは森崎をブッ倒してから世界一になる前の前菜に過ぎねえんだよ」 ガクリ… 日向「何時までもそうやってレベルの低い場所で這いつくばっていろ。 心配しなくて世界一にはなれるだろうよ…俺に敗れた森崎の金魚のフンとしてな! クククク…フフハハ…ハァーーーーーッハッハッハッハッハァ!!」 ザッザッザッザッ… 日向は言いたい放題にしてから立ち去っていった。中山はそれを見上げる事すら出来なかった。 衝撃が、後悔が、葛藤が、そして恐怖が彼の全身から力と言う力全てを奪い取っていた。 首が重く上がらない。口はくっついて開かない。肩と脚はもう自分の物に思えない。 彼は今涙はおろか言葉の一つも吐き出せない、際限なく落ち続ける絶望の暗闇に囚われていた。 中山「(………俺はこの3年間、何をやっていたんだ………)」
[67]2 ◆vD5srW.8hU :2009/11/30(月) 16:42:26 ID:pjTM9gq0 いったんここまで。
[68]創る名無しに見る名無し:2009/11/30(月) 22:27:22 ID:90YKmjFr なんという正統派ヒール むしろ潔い でも普段はメタボなんすよねww
[69]2 ◆vD5srW.8hU :2009/11/30(月) 23:00:12 ID:pjTM9gq0 一方その頃観客席では。 松山「終わったな…って三杉、お前の彼女なんかおかしいぞ!?」 弥生「はっ、はっ、はっ…」 弥生が赤ら顔で瞳を潤ませ、荒い息をつきながら目に見える程ぶるぶる震えていたのだ。 三杉「これは…さっきの日向のゴールの時上げた絶叫で呼吸を乱した時 冷たい風を吸い込んでしまったのが原因だね。ここよりは暖かい通路で休ませるよ。お先に失礼」 松山「あ、ああ…(冷気を吸い込んだだけでああなるのか…?)」 すかさず三杉が弥生を抱き支え、足元がおぼつかない彼女を半ば抱える様にして 競技場内の通路に連れて行く。そしてそのまま売店の前を通り過ぎ、 自動販売機と壁の窪みによって作られた影に彼女を連れ込み壁に背を預けさせた。 弥生が相変わらず妖しい表情をしているのを見て三杉は満足気な微笑を浮かべ、 二人にしか聞こえない程度の音量でささやき始める。 三杉「やっぱり楽しんでいたじゃないか。可愛いね、僕の弥生は」 弥生「はあ…はあ…ご、ご主人様、あんまりです。何時松山くんにバレるかと…」 三杉「それがいいんじゃないか。大丈夫、彼の性格なら気付いても絶対に口に出来ないよ」 弥生「ひ、ひどいです…さっき、破きましたよね?」 三杉「うん。この通りビリビリにしてあげたよ」
[70]2 ◆vD5srW.8hU :2009/11/30(月) 23:00:28 ID:pjTM9gq0 三杉はみせつける様にゆっくりとポケットに手を出し入れし、中から破れた二枚の紙を取り出した。 そして弥生の瞳がますます潤むのをじっくりと鑑賞しつつ広げたそれに書かれていたのは以下の文字だった。 『すしおだ 特上一人前(15000円)すし券 〜静岡一の若手職人が握ります!〜』 弥生「ああああ〜…バイトして、頑張って、買ったのに…」 三杉「うん、それはとても嬉しいんだ。こうやって大事な物を踏みにじられる弥生の可愛い顔も見れるしね」 弥生「ひぅうう…」 何処か恍惚とした目つきになり、頬を染め、膝が笑い始める弥生。 すかさず三杉は彼女の腰を手で支えゆっくりと顔を近づけていった。 三杉「でもね、弥生…一人前が三万円以下の寿司なんて、寿司とは言わないんだよ?」 弥生「はうっ…!」 三杉「落ちぶれたとは言え、僕もそれなりの家柄の者だ。それが分かっていながら 買ってきたのはワザとだろう?弥生は僕にお仕置きされたかったんだろう…?」 弥生「あ、あ、あ、あ………」 そして二人の唇が後少しで重なりそうになった時… ボトッ。 三杉の後ろで何かが落ちる音が響いた。
[71]2 ◆vD5srW.8hU :2009/11/30(月) 23:00:43 ID:pjTM9gq0 松山「あ…あの、す、すまん!」 三杉「………」 弥生「………」 松山「いや、だからその…暖かい飲み物を買ってきて…」 三杉「………」 弥生「………」 松山「ジャマするつもりはなかったんだ!本当だ!」 三杉「………」 弥生「………」 松山「えーと…その…二人とも…」 三杉「………」 弥生「………」 松山「ご、ごめんなさい!全面的に俺が悪いです!許して下さ…」 三杉・弥生『反省しているのならさっさと立ち去ったらどう だい/なの !!』
[72]2 ◆vD5srW.8hU :2009/11/30(月) 23:01:00 ID:pjTM9gq0 いったんここまで。
[73]創る名無しに見る名無し:2009/11/30(月) 23:14:36 ID:HBPuXhbX 小田は頑張って寿司職人になったようだな 森崎との再開はあると思いたい
[74]創る名無しに見る名無し:2009/12/01(火) 12:25:22 ID:Oxmtt/VP 三杉と弥生の関係なんて、こんな描写一度すれば充分だと思うのだが ここまで執拗に繰り返すのは何か意図しての事なのかな
[75]創る名無しに見る名無し:2009/12/01(火) 12:34:38 ID:IQTqPdP8 "../test/read.cgi/morosaki/1259449815/74" >>74 最後のオチに繋げるための布石だろ。 別の(今回はエロ鬼畜)方に思考を誘導させて最後にドーンと落とす。たまにある手法でしょ。 俺も見事に引っ掛かったが。
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0ch BBS 2007-01-24