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【井の中の虎】キャプテン森崎34【大海を知らず】
[77]2 ◆vD5srW.8hU :2009/12/01(火) 20:07:21 ID:bMhN2DVd 東邦が優勝してしまった事で観客席はブーイングや野次に包まれていた。 それはどちらかと言えば東邦の強引さやあくどさを責める物が多かったが、 南葛の不甲斐無さを責める声も決して少なくなかった。 しかしベンチに引き上げる南葛の選手達にとっては観客の声よりも、己の良心の呵責の方が何倍も辛かった。 利き脚に痛々しく包帯を巻いた岬の姿に涙せずには居られなかったのだ。 石崎「すまねえ…岬!お前がくれたゴール、無駄にしちまった!」 最初に耐えられなくなり口火を切ったのは石崎だった。彼にとって岬はある意味翼以上に縁が深い相手であり、 翼より遥かに献身的なプレイスタイルと言動を持つ岬の期待を裏切った事は彼を凄まじく苦しめていた。 中山「……………」 中山は何も言えずにただ腕章を外し震える手で差し出しただけだった。 彼の項垂れた顔とそこから零れ落ちる雫が全てを語っていた。 他の選手達も項垂れ、涙を流し、時折謝りの言葉を耐えかねた様に漏らす。 己の不甲斐無さ、三年間が無駄になった後悔、東邦に負けた悔しさ。 それが岬の負った負傷に象徴され、目の前で彼らを糾弾していた。 丁度岬の望んだ通りに。 岬「皆、謝らないでよ」 ビクッ。 聞きようによっては拒絶する様な台詞に誰もが背筋を震わせる。 すかさず岬は皆と気持ちは一緒ばかりだと言わんばかりに自嘲を滲ませた声を漏らし遠くを見つめる。 岬「そんな事を言ったら、僕は森崎と翼くんに何回謝れば良いんだ?」
[78]2 ◆vD5srW.8hU :2009/12/01(火) 20:07:40 ID:bMhN2DVd 石崎「み、岬…」 岬「何より…無駄だなんて言ったら、この3年間僕達を応援し続けてくれた人たち。 特に今控え室で僕達を待っていてくれているマネージャー達の気持ちまで無駄にしてしまう…」 共感だけでは現実は否定できない。正論だけでは後悔は解消できない。 それなら感情で相手の傷を癒しつつ理屈で相手の良心の逃げ道を作れば良い。 こうすれば偽善や奇麗事だと反発される事無く相手に”良い人”と無意識のレベルで刷り込まれる。 岬太郎の決して口には出せない持論の一つである。 井沢「そう…だな。準優勝じゃ意味がないなんて言っちゃ、他のチームの存在を否定しちゃうもんな」 滝「結果は残念だったけど、俺達は全力でやった。それだけは確かなんだ」 来生「ここは日向に華を持たせてやるが、全日本ユースでは俺がエースストライカーだぜ!」 高杉「胸を張ってとは行かないけど、頭をしっかり上げて帰るか!」 新田「(そうだ…俺は若島津さんからゴールを奪ったじゃないか!俺のやってきた事は無駄じゃなかったんだ!)」 山森「(すごいなあ岬さん。本当は本人が一番悔しいだろうに、皆をあっと言う間に慰めちゃった)」 誰もが重苦しい雰囲気を拭いたかった。だから誰もが岬が示した空元気に同調した。 中山「………(確かに南葛としてはそれでいいかも知れない。でも、俺は…)」 唯一中山だけは項垂れたまま言葉を発せられなかったが。
[79]2 ◆vD5srW.8hU :2009/12/01(火) 20:07:59 ID:bMhN2DVd 岬「(中山には後で個別のフォローをしておかないとね)さあ皆、そろそろ帰り支度を始めよう」 石崎「そうだな。東邦の表彰式なんて見たくねえしな」 こうして岬は観客からもチームメイトからも敗者としてなじられず、悲劇の英雄として実績を残す事に成功した。 だが人間関係とは非常に複雑な物で、人の頭脳で完全に制御する事は難しい。 岬の様な慎重で計算高いタイプでも見込み違いをする事はある。 ワーワー!ギャーギャー! 長野「あれ?何だ?」 岸田「なんか騒がしいな」 控え室の前では押し問答が起きていた。マネージャーの3人と山岡美子が別の少女と怒鳴りあってたのだ。 少女「とにかく!岬くんと会わせなさいよ!」 早苗「ダメだって言ってるでしょ!岬くんに会いたがるファンなんて沢山居るのよ!」 美子「そもそも貴女誰ですか!岬様に馴れ馴れしい!」 少女「それはこっちのセリフよ!この泥棒猫っ!」 岬「あ、あずみちゃん…?」
[80]2 ◆vD5srW.8hU :2009/12/01(火) 20:08:38 ID:bMhN2DVd あずみ「岬くん!誰なのこの乳臭い小娘は!」 美子「岬様!このアバズレは誰ですか!」 早川あずみ。岬のフランスで過ごした中学生時代の同級生であり、金儲けに置けるパートナーである。 岬はその人望とサッカーの腕前を使い、彼女は汚れ仕事を引き受け岬の資産を運用する事で 二人は理想的なビジネス関係を築いていた。この二人に泣かされ金を取られたフランス人の数は千人を超える。 岬「ど、どうして日本に…(怒っている?なんで?)」 あずみ「去年から日本に戻ってたのよ!それよりこの山岡とか言う女は何なの!」 美子「岬様!岬様ったら!」 岬「あ、ああごめん美子。彼女は早川あずみ、フランスで住んでいた頃の同級生で…」 あずみ「ただの同級生じゃないわ、パートナーよ!」 美子「な…な、なんですってぇえええええええっ!!」 岬「(えっ!?あずみちゃん何を言っているんだ、僕は君のお金儲けに置けるパートナーであって… 確かにボーイフレンドとガールフレンドの様な関係に偽装していたけど…あ、そうか、そういう事か! 僕が美子をそういうパートナーにしたと勘違いして怒っているのか!…ハッ)」 しら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ… 必死に頭脳を働かせながらも周りの観察を怠らないのは岬太郎の長所の一つである。 しかしそれ故に分かってしまう事もある。先ほどまで彼に罪悪感混じりの敬意と好意を向けていた 彼らのチームメイト達の視線が打って変わって白くなっていた事。マネージャー達の視線は更に白い事。 そしてこの状況を円満に解決に持っていく手段が存在しない事。
[81]2 ◆vD5srW.8hU :2009/12/01(火) 20:08:57 ID:bMhN2DVd 岬「(案その1。あずみちゃんはお金儲けのパートナーであって恋人ではない事を説明。論外。 案その2。美子とはそういう関係じゃないと言い張る。南葛の皆に心底軽蔑されてゲームオーバー。 案その3。美子を庇いあずみちゃんを追い払う。僕の暗部が暴露される恐れがあるので却下。 案その4。あずみちゃんの気持ちを知らなかった事にする。これならなんとか言い張れるかも? タイミングを逃した感もあるが、上手く持っていけば美子と離れるキッカケにも…)」 石崎「あ、あのさ?岬」 岬「あ…うん、な、何?」 石崎「いや、俺、お前の事ホントに良い奴だと思ってるんだよ。お前に比べたら自分の心は なんて汚いんだろうって落ち込んだ事もある。だけど…これはダメだろ?」 早苗「そうよ岬くん。きっと誰も傷つけたくなかったからこうしていたんでしょうけど… 女に対してはそれじゃダメよ?優しくするのは本命の娘だけにしなくちゃ。 フランスから離れてもう会う事も無いだろうって思っていたとしても、こうして… 早川さんだったかしら?彼女は会いに来てくれたんだから…待たされる女って、辛いのよ?」 岬「うっ…(皆僕があずみちゃんの気持ちを知っていたって前提で話してる…)」 なまじ”気配りの上手い良い人”として人望があるが故に鈍感男としての逃げ道は断たれた。 ましてや翼を3年間待ち続けている早苗に対して下手な言い訳をしたら一発でアウトである。 岬太郎18歳、彼は今ドキドキする程大ピンチだった。 その後間も無く岬の様子がおかしい事に気付き、次いで美子がどう考えてもお金儲けのパートナーには 出来そうにないタイプだと見抜いたあずみが「ごめんなさい、私の勝手な片思いだったのね。 もう2度と会う事は無いとお互いに思っていたし…」と言う論調で岬の味方に回った。 しかし岬についた”優しすぎて女にだらしない”と言うレッテルはもう引き剥がせなかった。 岬「(折角築いた人望が…今までの苦労が…)」 *南葛高の選手達とマネージャーの岬に対する感情が「二股野郎」になりました。 *美子とあずみの関係が「恋敵」になりました。
[82]2 ◆vD5srW.8hU :2009/12/01(火) 20:09:42 ID:bMhN2DVd いったんここまで。
[83]2 ◆vD5srW.8hU :2009/12/01(火) 22:52:30 ID:bMhN2DVd ほぼ同時刻、場内は先ほどより更に酷い喧騒に包まれていた。 優勝旗を受け取った日向がブーイングを絶やさない観客に高笑いしながら中指を立てたのだ。 観客『!#!%%@&%$@$!#!$!#*(*#!#$!#%*%$@^$%!#!@##$!^@^@%$!@』 放送「お客様に申し上げます!フィールドに物を投げ込まないで下さい!危険ですから フィールドに物を投げ込まないで下さい!繰り返します、フィールドに物を投げ込まないで下さい!」 たちまち観客は更にいきり立ち、放送の訴えも虚しくフィールドにジュースの缶を主としたゴミを投げつけ始める。 場慣れしている陽子と見上はさっさと退散を決め込み一足先に競技場から出た。 陽子「海外の暴徒に比べればまだ大人しいと言った所でしょうか?」 見上「日本にプロリーグを作るのならこういう光景もやがて例外ではなくなる。 だがそれだけ観客が熱狂すればサッカーの質も上がる。必要悪と言う奴だ」 陽子「マナーの向上に四苦八苦する程観客が多いリーグを作りたい物でしたね。 それはまだの先の話として…今日の試合の感想はどうですか?見上さん」 見上「うむ…概ね私の予想通りだったよ。今後の予定は変わらない」 陽子「では…?」 見上「お、丁度良い所に自販機があるな。タバコを吸っても良いかね陽子くん?」 陽子「私に缶ビールを買ってくれるのなら」 見上「…一本だけだぞ」
[84]2 ◆vD5srW.8hU :2009/12/01(火) 22:52:48 ID:bMhN2DVd チャリン。チャリン。ポトッ。 チャリン。チャリン。ゴトッ。 ボッ…モクモク。 プシュー…ゴクゴク。 見上は煙草を指でゆっくりと回し、隣で缶ビールを吸う陽子を横目で見てからポツリと呟いた。 見上「あいつらにはジャパンカップ、そしてアジア予選で地獄を見てもらう」 陽子「ジャパンカップはともかく、アジア予選でもですか?」 見上「賀茂から情報が入ったのだ。韓国、サウジアラビア、中国などが政府のバックアップの下 ユースチームを集中して鍛え上げているらしい。簡単な予選にはならないだろう」 陽子「政府ですか!羨ましいですね、こっちは切る自腹も野球と奪い合わないといけないのに」 見上「3年前国際Jrユースを制した事でアジアサッカーに置ける日本の発言力は劇的に上がった。 アジアサッカー連盟を今まで仕切ってきた国々からすれば面白く無い事だ。 国際Jrユースに日本が参加できたのは政治上の問題が少なかった事と金があったからなのも事実だ。 この上全日本ユースが初のアジア予選突破を果たしたらアジアサッカーの勢力均衡はかなり変わるだろう」 陽子「それをさせない為に全日本ユースを破れる様な強力なチーム作りですか。仕事熱心ですね」 見上「…どの道私達の仕事は変わらんさ。アジアを獲れん様では到底世界は獲れん」 以上が日本の高校サッカー界で後の伝説の一戦となる東邦対南葛の結末である。
[85]2 ◆vD5srW.8hU :2009/12/01(火) 22:53:41 ID:bMhN2DVd いったんここまで。
[86]創る名無しに見る名無し:2009/12/02(水) 00:07:51 ID:BWD87WrS 岬もげたwwwwwwwww
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0ch BBS 2007-01-24