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【サッカー少年】キャプテンEDIT【奮闘記】
[812]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/02(火) 21:53:34 ID:UqPbtwhE 大前「買い被り過ぎですよ、それは」 早瀬「はっ。ストライカーの嗅覚をなめるんじゃねえっつうの。目の前にいる相手の腕前が果たしてどれだけのものなのか? 一目でとは言わんが、毎日見てりゃ嫌でも気付く。それに――」 言いながら、グッと大前の肩を掴んで力を入れる。 大前「早瀬さん?」 キョトンとして問い返すと、すぐに手を離された。 早瀬「――痛くもねえってツラだな。泣かすつもりで掴んだのによ。成長期の途中だってのに、ま〜た筋肉つけやがって。 あれからまた伸びたな?」 大前「伸びたかどうかは実感が無いですけど……監督に扱かれはしました」 早瀬「へへっ。あの監督、采配やチームの掌握はまだまだだが、選手を見る目はあるな。 大前、お前は叩けば叩くほど伸びるタイプだよ。入部初日はただの雑魚だったのに、今や練習試合のスタメンに選ばれたくらいだ。 ……まあ、肝心の試合はお粗末な結果に終わったけどよ」 大前「う……」 そこは突かれると痛い。 早瀬「そんな情けねえ顔すんなよ。まあ、とにかく俺は、お前を来年以降の――いや、秋の地区大会からの主力と考えている。 だっていうのに、チームの中での信頼はゼロに近ェ。っていうか、むしろマイナスかもな。 それをどうにかしなきゃ、今後の展望はねえんだ。さっき言ったこれからの事ってなあ、そのことさ」 どうよ、聞く気はあるか? と早瀬が言った。 大前「長くなりそうですね……玄関で立ち話っていうのもなんですから、よければ上がっていきますか?」
[813]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/02(火) 21:54:51 ID:UqPbtwhE 早瀬「お、いいのか?」 大前「ええ。丁度、親もいないですし。出せるものといったら、麦茶かカルピスくらいしかないですけど」 早瀬「麦茶か! いいねえ、7月ともなると暑くて敵わねえからなァ」 嬉しそうに言う早瀬。 大前「じゃ、すぐ用意しますので、上がったらすぐそこが茶の間ですから」 早瀬「あいよー」 台所に入り、コップを二つ見繕って盆に載せ、冷蔵庫の扉を開ける。 大前「お? 羊羹がある。お茶うけに出しちゃおうかな?」 先に2票入った選択肢で進みます。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。 A.せっかくだから羊羹も出そう B.なんだか高そうな包みだな……遠慮しよう
[814]森崎名無しさん:2010/03/02(火) 21:56:19 ID:GLgaj3GY A ケチるところではない
[815]森崎名無しさん:2010/03/02(火) 22:03:53 ID:jf9Sv+Ls A
[816]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/02(火) 22:10:08 ID:UqPbtwhE >>A.せっかくだから羊羹も出そう --------------------------------------------- 大前「まあ、羊羹くらい勝手に出しても、後で買い直せばいいしな。せっかく来てくれた早瀬さんにも悪いし、出しちゃおうか」 そう考え、羊羹を適当な大きさに切り分けて更に乗せて運ぶ。 大前「どうも、お待たせしました」 早瀬「気にすんな、勝手に寛いでたから――って、羊羹まで出してくれんのか!?」 大前「(そ、そこまで食いつくのかこの人)まあ、ちょうど冷蔵庫にあったので。お口に合うかどうかは分かりませんが」 早瀬「へへっ。こんなにもてなしてもらって文句付けるほどチンピラじゃねえよ。どれどれ、頂きまーす、っと」 パクリと、まずは一切れ口に入れる早瀬。 先着1名様で以下の文の『!』の後のスペースを消してカードを引いてください。 ★殺伐としたEDITスレに救世主が!→ !card=★ カードの絵柄で結果が変化します ダイヤ→「おおっ!? すごくうめえじゃねえか!」 早瀬がとっても上機嫌に ハート、スペード、クラブ→「うんうん、なかなかイケるぜ」 早瀬が上機嫌に クラブのA→「ブーッ!!」 腐ってやがる、古すぎたんだ! JOKER→「うーまーいーぞー!!」 早瀬が巨大化して大前家が倒壊!?
[817]森崎名無しさん:2010/03/02(火) 22:10:33 ID:??? ★殺伐としたEDITスレに救世主が!→ クラブ5 =★
[818]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/02(火) 22:15:41 ID:UqPbtwhE ★殺伐としたEDITスレに救世主が!→ クラブ5 =★ ハート、スペード、クラブ→「うんうん、なかなかイケるぜ」 早瀬が上機嫌に ---------------------------------------------------------------------------- 早瀬「うんうん、なかなかイケるぜ」 大前「お口に合ったようで、ホッとしましたよ」 早瀬「大袈裟だなあ。いきなり押しかけたってのに羊羹まで頂いたんだ、味がどうこうなんてケチ付けるもんかよ」 言いながら、今度は麦茶のコップに手を伸ばす。 グビリと喉を鳴らして冷たい麦茶を飲む早瀬。 早瀬「かーっ! やっぱ夏はキンキンに冷えた麦茶だよなー! 五臓六腑に染み渡るぜ!」 大前「お粗末さまです」 早瀬「へへっ。これだけのもてなしを受けちゃあ、張り切らねえわけにはいかないな。早速、これからの話だけどよ――」 満面の笑みを浮かべながら切り出す早瀬。だが、大前にはその前に聞いておくべきことがあった。 大前「その前に先輩、ちょっといいですか?」 早瀬「――あん? なんだよ、これから本題だっていうのに」 大前「早瀬さん。どうしても今、聞いておきたいんです。答えて下さい。……どうしてここまで、俺に肩入れするんですか?」 早瀬「だから、さっきも言っただろ。選手として見込みが――」
[819]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/02(火) 22:17:05 ID:UqPbtwhE 大前「それだけじゃあ、理由には不足でしょう? 俺が――不遜な例えですけど、どれだけ優秀な選手になれるとしても、 今はチーム内で腫れ物扱い、いえ、はっきり言ってチームの癌として見ているヤツもいます。 この状況を何とかするのに、どれだけの労力が掛るか、早瀬さんが分からないはずはないです。 それに、有望な1年ならそれこそ何人もいる。 俺を庇ったり、引き立てるよりも、チームの力を引き上げるならもっと手っ取り早い道があるはずです。 どうして、そこで俺なんですか?」 早瀬「……後ろ向きなことを、よくもまあそこまで捲し立てれるなあ。逆に感心するぜ」 大前「誤魔化さないでくださいよ、早瀬さん」 早瀬「はいはい。お前にゃ敵わんよ」 お手上げだ、と両手を上げる。 それからしばらく、自分の中にある言葉をまとめるように沈黙して、やがて口を開く。 早瀬「……俺はな、勝ちたいんだよ」 大前「……何に、ですか?」 早瀬「全部に。これから当たる、全部の敵にだ」 大前「それって、つまり――」 早瀬「そうだよ。全国大会で勝ちてえ。優勝したいんだよ」 途方も無く大きな言葉が、突拍子もなく出てきた。 大前「そ、それがどうして俺に関わってくるんですか?」 早瀬「まあ、聞け。ちょっと長くなるからよ。ったく、やっと本題に入れると思ったら前置きを増やしやがって。 案外、面倒くせえ野郎だなお前も」
[820]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/02(火) 22:19:20 ID:UqPbtwhE 大前「はあ」 早瀬「その前に聞くぞ、大前。県外から引っ越してきたてめえが、鳴紋中に入ろうと思ったのはどうしてだ?」 大前「それは……鳴紋中が、県内じゃ一二を争うサッカーの強豪って聞いたからです」 早瀬「『強豪って聞いたからです』、ねぇ……」 訊ねておいて、あからさまに不機嫌になる早瀬。 大前「な、何ですか? 俺、何か間違ったこと言いましたか?」 早瀬「間違ってねえよ。間違ってねえから……腹が立つんだ」 まるで意味が分からなかった。 早瀬「なあ、大前。外から来たお前にとっちゃ、ウチが強豪校だってのは……聞かなきゃわからないことなんだな?」 大前「え」 その一言の意味を一瞬分かりかねて、大前は目と口とを丸くした。 そんな間抜けな顔が可笑しかったのか、それとも別の理由か、早瀬はくつくつと笑いを漏らす。 早瀬「なぁにハトが豆鉄砲食った顔してんだ、大前。意味が分からねえってのか? ……ようするにだ。俺たち鳴紋中が強豪っていう認識はな、この県内でしか通用しねえんだよ」 違うか? とこちらに水を向ける早瀬。 大前「……た、たしかに小学校の頃は、ほとんど聞いた覚えがありませんでした。 小学校時代はあんなに有名だった小豆沢さんがここにいるのも、会うまで知りませんでしたし」
[821]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/02(火) 22:21:01 ID:UqPbtwhE 早瀬「だろう? 俺らが強いのはここら一帯だけの話。全国に出りゃあ――十把一絡げのどこにでもあるサッカー部だ。 たとえるなら、そうだな、ファミコンにドラクエってゲームがあるだろ。ちょっと前に、ニュースでやってたよな? あのシリーズ最新作を買うのに行列ができたってヤツ。やったことあるか?」 大前「この前、落田に借りましたよ。……練習試合の後で、やっぱり返せって言われましたけど」 早瀬「そりゃ悪いことを思い出させちまったな。――でな、初心者がアレをやるとな、最初はスイスイ進むんだわ。 序盤は簡単なんだよな。それですごくいい気分になる。自分の分身がスライムだのアリクイだの雑魚を蹴散らして、気分は爽快。 けど、話が進んで次の舞台に行くと――レベルが足りなくて、そこいらの雑魚敵にも勝てなくなる。あんな感じだ」 大前「つまり、ウチのチームは全国で戦えるレベルにない、ってことですか? けど、そんなの信じられませんよ。 小豆沢さんなんか、めちゃめちゃ上手いじゃないですか」 早瀬「まあ、そう言うと思ったよ。そこでまたドラクエのたとえなんだがな」 大前「またですか」 そんなにドラクエが好きなんだろうか。 早瀬「まあ聞け。仮にウチのチームをドラクエのパーティ――主人公一味にたとえるとする。 勇者あずきざわとその愉快な仲間達だ。想像してみろ」 大前「ドラクエじゃ、勇者の名前は四文字までだったような――」 早瀬「細かいな、オイ。たとえなんだから聞き流せ。まあ、本題前の口上だから、結論から言うぞ。 ……ウチのチームはな、言うなれば勇者だけが強いパーティと同じなんだ。 ライデインを憶えてるくらいレベルの高い勇者と、さまようよろいを狩るのが精々なのに『自分は強い』って勘違いしてる連中。 なまじ優秀なリーダーがいて、その上辺りに自分より強い敵がいないから、大部分の連中は自分たちは強いって思い上がってる。 そんな状態さ」 大前「そ、そんな、ことは」
[822]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/02(火) 22:23:06 ID:UqPbtwhE 早瀬「そんなことはないってか? じゃあ、去年の全国大会の話をしてやる。一回戦でボロ負けだったよ。 敗因は、小豆沢さんが徹底してマークされたことだった。 小豆沢さんは当時2年生だったが、やってることは今と変わらない。ゲームメイカーでなおかつ得点源、おまけに中盤の守備の要だ。 そんな重要な選手を封じられちゃ、手も足も出ないよな。 けどな、大前。一人がゲームメイカーと得点源と守備の要を兼ねるチームって、……お前だったらなんて呼ぶ?」 大前「ま、まさか――」 答えには、即座に行きあたった。だが、今はそれを信じたくない。 そんな思いが大前の口を閉ざす。 しかし、早瀬は続けた。 早瀬「そうさ、ウチは小豆沢さんのワンマンチームなのさ。少なくとも、全国レベルの試合ではな」 恐らく、口が腐る思いで言ったのだろう。早瀬はすっかりぬるくなった麦茶を口に含むと、濯ぐようにしてから飲み干した。 早瀬「信じられねえ、っていうツラだな。なら、もう少し詳しく教えてやろう。 あの日戦った相手はな、別に全国屈指の名門とかいう訳じゃなかった。 東京の武蔵や東邦みたいに全国から選手を選りすぐったスポーツ強豪私立でもなく、サッカー王国・静岡の代表でもねえ。 この日本のどこにでもある、どっかの県のどっかの学校のサッカー部さ。もう名前も忘れそうなくらいの、普通のチームだった。 そんなところに小豆沢さんを止められるやつがいるわけがない。あの人は前半に二得点上げて、リードしたまま折り返したよ。 1年だった俺は、あの頃はボンクラでな。ベンチにも入れずに観客席で応援してたっけか。 ……勝てる、と思った。前半が終わったときには、な。問題は後半さ」 そこまで言って、早瀬は無言でコップを掲げた。おかわりの要求である。 すぐさま冷蔵庫から麦茶を詰めた瓶を持ってきて注ぎ直した。 早瀬はもう一度唇を湿らせてから、訥々と語り直す。
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0ch BBS 2007-01-24