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【全国が】キャプテンEDIT・10【待っている】
[473]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 22:57:13 ID:??? >>472 どうもご心配をおかけしてすみません。では、今回の投下です ---------------------------------------------------------------------------------------------------- ――中部東海地方・静岡県 全国屈指のサッカーどころであり、前年度全国王者も輩出している静岡県の予選は、もっとも注目度の高い大会であった。 会場には、中学サッカーの枠を超えて、テレビや雑誌の取材陣が詰めかける。 彼らの目的はもちろん、昨年の覇者・南葛中。その雄姿を全国大会に先駆けて、いち早く一目見ようとしたのだった。 実況「静岡県大会決勝戦、南葛中VS川根中! 両チーム、0-0で同点のまま中盤での白熱した攻防が続きます!」 山岸「……くっ! 流石は王者南葛、そして大空翼か! なかなか攻め込ませてくれないな。ボールを前に運べん……っ!」 翼「川根中のキャプテン・山岸か……(俺には及ばないけど)凄い選手だ。けど、そうそう中盤は支配させないよ!」 両軍の10番同士が、火花を散らす。 山岸「コイツとまともにやり合うのは分が悪いか……浜井!」 ボールを後ろに戻し、中盤の底からゲームを組み立てさせる。 浜井「任された! ……走れっ、大和っ!」 大和「おうっ!」 FWたちをゴール前に走らせて長いパスを送ろうとする浜井。 井沢「こっちには俺がいるのを忘れて貰っちゃ困るぜ! 翼を抜くのは無理でも、俺が相手なら通るなんて思っているのか?」 浜井「井沢か……腕を上げたようだが、まだ視野が狭いな! 南葛の中盤を相手に、無理を通す俺ではない!」 前線へのラストパスを防ごうと前を塞ぎに来たところを、横に流す。ボールはサイドハーフの小沢が受け取った。
[474]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 22:58:13 ID:??? 井沢「なっ! 勝負から逃げるのか!?」 憤慨する井沢に、浜井はニヤリと笑い、 浜井「サッカーはテクニックの優劣だけではないぞ? 二年生くん。今はお前と戦う場面じゃないからな!」 小沢「そういうこった! それじゃあ、俺がこのボールを!」 南葛三年生A「大和へ通そうってか? させるもん――」 小沢「自分で運ぶぜ!」 南葛三年生A「――なにィ!?」 小沢は無理なパス出しはせず、ドリブル突破で局面を打開する。またもや、ラストパスを遮断しに行ったところを裏を掻かれる南葛守備陣。 実況「小沢くん、南葛の左サイドバックを抜いた! 川根中、派手さは無くとも全員が平均して高い技量の持ち主です! 前評判は低かったものの、この層の厚い静岡県大会を決勝まで勝ち残ってきたチーム、ただのダークホースではない!」 記者A「む。南葛が押されている!?」 記者B「も、もしかして、今年は南葛の負けってことも――」 思わぬ展開に慌てだす観客席の取材陣。それを横目に、観戦に慣れた地元の客が鼻で笑う。 観客「やれやれ、東京の人は分かっていないな」「まったくだぜ。南葛ゴールは誰が守ってると思ってるんだか……」 記者A「な、なにィ」
[475]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 22:59:27 ID:??? 石崎「うへェ……池上先輩たちが卒業してからこっち、先輩方はホント頼りにならないぜ……」 高杉「グフフ。だがその分、俺たちの見せ場が増えるってもんさ(そして見せ場を確実にモノにすれば、やがて森崎の発言力を削ぎ――)」 小沢「それっ! 大和!」 大和「ナイスパス、小沢! ……ところで、そこの糸目。今が誰の見せ場だって? あァん!?」 シュート体勢に入りながら、大和が吼える。 高杉「――勿論、俺たち南葛『DF』のだ!」 石崎「そうだぜ! 去年は無得点だったFWなんか、怖くねェぞ!」 大和「ほお〜っ? 自信のほどは認めなくはないが、テメェら、年上に対する口のきき方がなってねェな? 俺が先輩への畏敬ってヤツを――身体に刻んでやるぜェ!! ホークショットォ!!」 実況「川根中FW大和くん、パスを受けて強烈なシュートォ!!」 空気を裂いて飛ぶ、高速の一撃。不意に放たれたそれは、途上に立ちはだかる二枚の壁を苦も無く貫いていく。 石崎「ぐわああっ!?(顔面に当たりさえすればこぼれ球なのにィ!!)」 実況「石崎くん、吹っ飛んだ!」 高杉「ぎゃぼおっ!?(同じ技がある俺が言えたことじゃないけど、普通に止めようぜ!?)」 実況「高杉くん、吹っ飛んだ!」 宙を舞うCB二人。それを見て、ゴールマウスを守る森崎は忌々しげに舌を打つ。
[476]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 23:00:38 ID:??? 森崎「(なーにが先輩方は頼りない、だ。お前らだってよっぽどだぜ!)やらせるかよ!」 そして、一声吼えると下肢に溜めた力を爆発させるように飛び、 森崎「 ぬ お り ゃ あ っ ! ! 」 掌を叩きつけるようにして威力を相殺。そのままボールを掴み取った。 大和「わ、ワンハンドキャッチだと!?」 実況「止めたーっ! 森崎くん、全身の瞬発力を活かしたセービングで、人が吹き飛ぶほどの強烈なシュートを難なくキャッチィ! さすが伸び盛りの二年生! 昨年、全国の猛攻を前に南葛ゴールを守り続けて優勝に導いた守備力は、今年に入っても衰えない! いや、むしろますます進化しているのかァ!?」 森崎「けっ、当たり前だろ(とはいえ、『南葛を優勝に導いた守備力』っていうフレーズは良いな。 無理解な凡人どもも、ようやく俺の力を分かってきたか)」 翼「むっ……(南葛は俺の攻撃力と中盤を構成する力さえあれば、キーパーなんかザルでも構わないのに……。 これだから素人の評価は困るよ)」 称賛の声に、森崎は悪態を吐きつつも相好を緩め、翼は見るからに不機嫌な表情を露わにした。 観客「な? 森崎がいる限り南葛ゴールは安泰だろ!」「俺たちは去年からそれを知ってるのさ!」「もっりさき! もっりさき!」 記者A「あ、ああ……凄いゴールキーパーだ……」 記者B(それにしてもサッカーって、シュートで人が飛ぶスポーツだったんだ……俺、サッカーの担当今年からだから知らなかった……) 称賛と感嘆の声が引っ切り無しに上がる観客席。森崎は、それを更なるものへ変えようと一計を案じる。 森崎「さーて、折角ボールが手元にあることだし……それじゃあ、俺の進化がセービングに留まらないところ見せてやるか!」
[477]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 23:01:41 ID:??? 実況「ああっ!? 森崎くん、手を離したボールを蹴り出さない! 足元にキープしたまま攻め上がっていく! 前半が終わりかけても互いに無得点の状況に業を煮やしたかーっ!?」 記者A「な、なんだこれ!?」 観客「げえっ!? やりやがった!」「お前、それで何回失点してると思っているんだー!?」「これさえなけりゃあ、なあ?」 記者B(良く分からないけれど、サッカーって凄い……) ゴールを空にして攻め上がる暴挙に、森崎に信を置く地元の観客たちも流石に悲鳴を上げる。 ……だが、彼らでさえ見誤っていた。森崎のオーバーラップが、以前のような奇策に留まらないことを。 井沢「も、森崎!? おま――」 南葛キャプテン「やめろーっ! 今からでもゴールへ戻れーっ!」 滝(だ、大丈夫かな……多分、何とかなると思うけど) 佐々木「馬鹿かお前! 折角の好セーブを無にする気か!?」 森崎「言ってろ、凡人! 俺のオーバーラップはただのヤケクソとは違うんだよ!」 佐々木「ゴールキーパーが何を言ってやがる! 並の相手なら動揺して隙も出来るだろうが、サイド攻撃の相手はお手の物な俺に――」 バババッ! 佐々木「――なにィ!?」 森崎「思いっきり通用したみたいだな!」
[478]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 23:02:54 ID:??? 実況「抜いたァ! 森崎くん、佐々木くんを抜きました! しかも、このボール捌きはかなりのものです! こ、これは県内――いや、全国でもトップクラスのドリブル技術です!」 山岸「……オーバーラップを単なる奇策ではなく、必殺の武器にまで昇華したか! 見事だ森崎! こうなっては俺が相手だ!」 佐々木を抜いた森崎に、山岸が自ら突っ掛ける。 森崎「(川根中のキャプテン・山岸か。一学年上とはいえ、井沢と互角か一枚上手の選手だっけか)こっちこそ相手に不足は無ェ!」 燃える功名心と揺るぎない自信が、森崎をこのマッチアップに駆り立てる。 山岸「(よし、やはり性格上対戦は避けないか!)行くぞ森崎っ!」 鋭く伸びる山岸の右足が、森崎の足元からボールを刈りに行く。 森崎「……甘い!」 森崎はボールごと飛び上がってこれを回避。だが、それこそが山岸の狙いだった。 山岸「甘いのはそちらだァ!!」 ピッチに手の爪を立てた強引の制動。その結果として山岸の身体は逆方向に転換。二度目のタックルが森崎を襲う。 観客「なんだありゃ!?」「あんな曲芸じみたタックル、有りか!?」「誰かの技だ!」「誰かって誰!?」 実況「山岸くん、強引に方向転換し二度目のタックルに行くっ! これは言うなれば時間差タックル! 一方森崎くんは軸足が地面に付いたところ。これでは大勢的に回避は難しい! 南葛中森崎くん、ここでボールを失――」
[479]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 23:04:04 ID:??? 森崎「いいやっ! 甘いのはやっぱりお前だァ!!」 ダンッ! 山岸「な、なにィ!?」 森崎の挙動に、山岸が目を剥く。 実況「――あああああああっ!? 森崎くん、片足だけでもう一度飛んでかわしたァ!! 時間差タックルに対し、二段ジャンプ! 着地直後の崩れたバランス、片足だけの跳躍、それにもかかわらず力強いジャンプです! 勿論ボールも失っていません!」 森崎が自ら『がんばりセービング・改』と呼びならわす超人的な瞬発力によるセーブ。 その源泉である足腰のバネは、オーバーラップのドリブル時においても力を発揮する。 バランスを崩し片足のみの状態でも、相手がスライディングでくるなら、なんとかかわせるのだ。 そして、恐るべきはそんな曲芸じみた動きを見せながら、ボールを離すことのない上手いタッチである。 山岸(い、一流だ……キーパーとしてだけでなく、ドリブラーとしても……! 信じられん。 どうして中学二年生という年齢でありながら、まったく異なる二つの技術をここまで極められるというんだ……っ!?) 滝(秋以降、翼が一層練習に熱を入れるようになってから、森崎も一段と熱心になったからなあ。 お陰で俺も随分ドリブル練習に付き合わされたし) 驚嘆の余りに、声を失う山岸。 それを見て肝を潰しながらも、川根中ボランチ・浜井がボールを取りに行く。 浜井「そ、そんな常識はずれな動きが何度も続くか!」
[480]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 23:05:53 ID:??? 森崎「何度も曲芸を続ける必要は無いぜっ!」 浜井「うっ!? しまった!」 鋭い切り返しで浜井の横を抜く森崎。 実況「森崎くん、ボールをキープしたまま切り込むぅ! 南葛中得点のチャンスです! だが、キーパーがここまで切り込んでいると、ボールを失えば即失点! まるで諸刃の剣のような攻勢です!」 滝「森崎、持ち過ぎだって!」 来生「早くパスだ! 俺に! 決めるから! 俺が!」 森崎(そうだな……このままゴール・トゥ・ゴールってのも悪くないが、向こうのキーパーも俺ほどじゃないが腕が良い。 連中にエサをやる意味でも、ここいらでパスを出すか!) 素早く打算を巡らせ、ボールをエリア内に蹴り込む体勢を取る。 それを見るや、川根中GK桑田も誰にパスを送るか読みに掛かった。 桑田(センターフォワードの来生か? それとも意表を突いて滝? いや――) 森崎「そらっ! 先輩方に推薦してやった甲斐を見せろ!」 長野「任せろ!」 ボールが上がった先にいたのは、ここ最近台頭してきた二年生FW長野だった。 銚子「確かコイツはヘディングが上手いんだっけか!? 撃たせん!」 桑田「! 違う銚子! そいつの狙いは――っ!」 長野「それっ!」
[481]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 23:06:54 ID:??? ゴールへのシュートコースを塞いだ銚子の眼前で、炸裂する長野のヘッド。 だが、それは自らの得点を目的としたものではなく、 来生「ハッハァ! どんぴしゃだぜ!」 銚子「ぽ、ポストプレイだと!?」 裏を取って走り込む来生への絶妙なアシストだった。 実況「南葛中新戦力の長野くん、相手の意表を突いてポストプレイ! これは上手い! ゴール前で点取り屋来生くんがフリーに!」 来生「よっしゃあ! これで俺が先取点ゲットだーっ!」 バコーン! 勢いよく足元のボールを蹴り込む来生。 桑田「させんっ!」 だが、そのシュートは桑田のパンチングで弾かれる。 来生「俺が南葛の点取り屋、来生哲兵だァーっ……ってアレ?」 滝「決まってないって! 何、ゴールパフォーマンスしているんだよ!?」 来生「なにィ!?」 観客「来生って、相変わらずここぞという勝負に弱いな」「でも、何か決まらなくて逆に安心したぜ」「来生だしな」
[482]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/06/30(水) 23:07:58 ID:??? 井沢「くそっ! なにしているんだよ!? こうなったら、これを押し込んで――」 荒井「やらせるかーっ!」 得意のダイビングヘッドでこぼれ球をねじこみに行った井沢だが、いち早く相手DFがクリアー。 実況「南葛中、波状攻撃も身を結ばず! ボールはクリアーされ中盤に――あっ!?」 森崎「げっ!?」 井沢「ああっ!?」 クリアーされたボールの行方に、森崎と井沢が色を失くす。だが、それはゴールを空けた状態で相手に拾われたからではない。 敵より拾われたくない味方がフォローしたのだ。 翼「ヒャッホー! やっぱり、ここぞっていう時にボールは俺のところに来る! やっぱり、君は俺のトモダチだーっ!」 実況「翼くん、いち早くボールをフォロー! 勝利の女神は、やはりこの天性のサッカー小僧に微笑むのかーっ!?」 森崎「く、くっそー……よりによって、『アレ』を打つのに絶好の位置かよ。またあの野郎が見せ場を浚うのか?」 不倶戴天の相手の好機に、思わず天を仰ぐ。 桑田「翼か……だが、その距離からは決めさせん!」 翼「決める! 見ていろ川根中! これが俺の――」 実況「翼くん、シュートフォームに行く! そこから撃って決まるのか!? 相手は川根中GK桑田くん、県内屈指の名手だぞ!?」 翼(それがどうした! そっちが県内屈指なら、俺は日本一の――そして羽ばたく選手だ! ここから撃って決めてやる!)
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0ch BBS 2007-01-24