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【読み合い競り合い】Another-C_3【騙しあい】
[162]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 13:39:59 ID:??? ナディア『知ったような事を言わないで下さい!!!』 三杉(バカ野郎…! なにを言っているんだ! シャンとしろ、三杉淳!) 三杉は自らを叱咤する。 平静な演技をしてはいても、こんな失言をするほど今の自分は悲しいのだ。 だが今の三杉はこれを通すしかない。 三杉「無責任な事を言って済まない……そうであれば、やはりキミか他の誰かに託すしかない。」 ナディア『言われなくったって私が伝えます! 彼女が泣いたら一緒に泣いてあげるんからっ!! 今からモニカを振ろうって人が、中途半端に彼女の事を考えないで下さい!!!』 本来は他人から疎まれる事も恨まれる事も意に介さない三杉だが、今は違っていた。 刺さるような言葉を受けながら、必死に三杉は平静を装い続けた。 口から出す言葉が震えないよう、精神を最後まで奮い立たせた。 そして… 受話器の向こう側からツーーー、ツーーーと機械音が鳴り始めたのが判った。 ようやく訪れた安堵…とは決して言えないこの時、三杉の涙腺は崩壊を迎えた。 三杉「(……クゥっ…)」 声を押し殺して三杉は泣いた。 初めて知った恋、そして初めて知った失恋。 そこに居たのは貴公子でもガラスのエースでもない、不器用な1人の少年だった。
[163]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 13:41:19 ID:??? 生まれついたハンデと、努力と才能によって得た力は三杉に打算と傲慢を与えてきた。 だがイタリアでの挑戦の日々は、そんな三杉の内面を緩やかに変えてゆき… そして最後に彼は献身を手に入れ…その意味を知った。 それはピエタと呼ぶべき物だったかも知れない。 今だからこそ、三杉は弥生の献身を真実に理解できた。 そんな献身を捧げてくれていた弥生を三杉は裏切る事は出来なかった。 感情と理性…そして感情と、その正反対の感情が未だ頭の中を駆け廻るまま… 三杉はタキシードを脱ぎすて、シャワー室に飛び込み、そして頭からシャワーを被った。 垢も涙も感情も、その全てを洗い流したかった。 三杉(明日も朝から練習がある……切り替えて寝なくちゃいけない。) シャワーを止め、わざと丁寧に身体から水を切り…そしてローブに身を包んだ。 時計を見ると、その針は23時30分を示している。 三杉「・・・・・・」 その視線を、先程まで自分が握っていた受話器に向け… そして頭を振って、三杉はベッドに潜り込んだ。 長い一日がようやく終わったのだ……今この瞬間だけは彼は何もかもから自由になれたのだった。
[164]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 13:43:09 ID:??? 一旦ここまでです。 花粉つれぇーーっすね。
[165]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 17:38:17 ID:??? パチリ 三杉(……朝…か。) 目を開くと、窓からは既に柔らかな太陽の光が入りこんでおり、今が朝である事を告げていた。 あれから三杉は深い眠りに落ち、夢の一つも見る事なく今の時間を迎えていた。 ベッドから身体を起こし、三杉は洗面台へ顔を洗いに行った。 三杉(痛っ……) ほんの少し頭が痛んだが、冷たい水の心地良い感触がすぐにそれを消してくれた。 8割がた覚醒した三杉は再びベッドに戻って、腰かけた。 そして昨夜の事を思い出し……自嘲した。 三杉(失恋……ね。 普通は順番が逆なんだろうなぁ…。) モニカとの出来事、ナディアとの会話を思い出してみる。 一晩が経ち、三杉もある程度は冷静を取り戻していた。 まだ胸も痛むし、モニカの事を考えればモヤモヤもするが…それでも大丈夫だった。 モニカは未完成の今の時点であれだけの魅力を持っているし、辛い時一緒に泣いてくれる親友が居る。 自分の選択は正しかったのだと、三杉は改めて頷いた。 三杉は今一度受話器を見つめ…そして時計へ視線を移す。 その針は7時00分を指していた。 三杉「だいたい8時間……ってとこか…。」 誰へともなく三杉は口に出して呟いた。
[166]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 17:39:47 ID:??? <日本・東京都武蔵野市> 弥生「…っと…………あ、あった。」 弥生は探していた雑誌を見付けて嬉しそうに手を取った。 それは月刊のサッカー雑誌…三杉と離れてからも時々買っている品物だった。 高校サッカーの情報や、日本の実業団の情報にはとんと興味がないが、 たまに一昔前の名選手の特集や海外の特集が組まれており、その時だけ彼女は買うようにしていた。 三杉と再会した時、少しでも彼の話の趣向に着いていけるようにと願って… そして、もしかしたら何処かに三杉の名が載っているのではないかと儚い夢を見て。 7月の上旬から中旬へと移ろうという今の時分、弥生の通う高校では今日までが期末試験だった。 一番最後に残った苦手な物理の試験を終え、ようやく彼女は一息つける筈だが…。 夏のインターハイ出場を逃したサッカー部も今日は休養日…と言う事は弥生にとっては憂鬱の種である。 お陰で弥生は試験終了と共に素早く教室を後にし…そしてゆっくり遠回りして帰る羽目になっていた。 弥生(はぁ……電車を使わないで、バスも遠回りして… 私の時間って、どれだけ無駄になっているんだろう?) 雑誌を持ってレジに並び、偶然目に入ってしまった時計が弥生を落ち込ませた。 普通に帰っていれば12時には家でゆっくり出来ただろうに、すでに14時を大きく回っている。 中沢早苗から借りた“ダイヤモンドサッカー”のビデオも少しは続きを見れただろうに。 思わず溜息が出てしまうが、それでもあの男と同じ空気を吸うよりはマシと思っていた。
[167]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 17:40:54 ID:??? 〜〜〜〜♪ 弥生(あれ? この歌……。) レジの順番を待っている間に、店内を流れる曲が変わった。 弥生の耳にも馴染みがあるイントロであり、その曲の事はすぐ分かった。 とある人気ロックバンド…いやビジュアルバンドの歌うバラードだ。 今年の春に発売されてから既に大ヒットを記録している曲だが…最初、弥生はこの曲が大嫌いだった。 曲の1番を聴いている間に辛い気持ちにさせられ、最後まで聞いていられない程だったからである。 弥生(でも…今は好きな曲なんだよね…。) 曲を最後まで聴いて、弥生はこの曲に勇気を貰っていた。 自分の姿をこの曲に重ね合わせ、時に涙しながら元気を取り戻していた。 …会計を終え、ようやく弥生は遠回りでない家路に着けた。 ごく近所の本屋であり、あと5分くらいで家には帰れる。 弥生はさっきの曲を思い出し、すれ違う人に聞かれぬような小さな小さな声で。 その歌を口ずさんだ。 ※参考URL(ttp://www.youtube.com/watch?v=kESVdHJOaJs&feature=related)
[168]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 17:42:00 ID:??? 何処に行けばいい? 貴方と離れて… 今は過ぎ去った 刻に問いかけて 長すぎた夜に 旅立ちを夢見た 異国の空見つめて 孤独を抱きしめた 流れる涙を 時の風に重ねて 終わらない貴方の 吐息を感じて Dry your tears with love Dry your tears with love この一番を聞くと、今でも彼女は胸が張り裂けそうになる。 あの日、空港で別れてからどれくらいの夜を越えたかも判らない。 どこか遠い異国の三杉を想い、彼女は自分の孤独と向き合い続けて来た。 そして歌は二番へと繋がる…
[169]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 17:44:15 ID:??? Loneliness , Your silent whisper (哀しかった……貴方の声を忘れかけてると気付いた時) Fill a river of tears through the night (一晩中泣いて、何度枕に川をつくったか判らない) Memory , You never let me cry (今思えば…貴方の傍に居て哀しかった時は一度もなかった) And you , you never said good-bye (そして、私は貴方にサヨナラと言われたわけじゃない) Sometimes our tears blinded the love (哀しすぎて自分の気持ちが判らなくなった時もある) We lost the dream along the way (待つのが辛くて貴方との未来を想像できなくなった夜もある) But I never thought you'd trade your soul to the fates (そんな時でも…貴方があの日言ってくれた言葉だけは疑わなかった) Never thougt you'd leave me alone (私……置き去りになんてされてないんだよね…? 淳…) 放置プレイと言って自分の前から姿を消した三杉。 今、この隣には確かに三杉は居ない。 けれども彼は弥生に約束を残してくれており…そして弥生も約束を交わした。 弥生「私…待ってるからね…。 ご主人様からなんの連絡がなくったって、私はずっと待ってる…」 三杉「……よく出来ました。 …次に会った時は、キミの本当のご主人様になってあげるよ。」 その言葉を思い出し、その時 三杉が最後に振り返った姿を思い出し。 弥生は今も自身の心を支えている。
[170]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 17:45:34 ID:??? Time throug the rain has set me free (降る雨のように季節は流れ……もう私は苦しくないよ) Sands of time will keep your memory (貴方の言葉は絶対に忘れないって、今は自信持って言えるから) Love ever losting fade away… (貴方が好き、この気持ちが消える事は絶対に無いって言えるから) …離れてから二年以上の時が経過し、弥生の心に迷いはなかった。 むしろ心の中の紆余曲折を経て、それは既に強い信念へと成長していた。 彼女にとって三杉淳はいつまでも変わらない、意地悪なヒーローだった。 …二番の歌詞がサビへと入り、曲が最高潮を迎える時に弥生は家に到着した。 prrrrrrrr… 弥生「(alive wit……)」 電話が鳴っていた。 家には誰も居ないらしく、受話器を取る者は誰もいない。 弥生は慌てて靴を脱ぎ、電話の元へと急いだ。
[171]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/02/27(日) 17:46:35 ID:??? 受話器を手に取る直前、一ノ瀬からの嫌がらせだったらどうしようかと不安になったが… 結局彼女はそれを手に取った。 弥生「もしもし、青葉です……。」 ??『………』 テンプレ通りの言葉に対して相手は何も返してこなかった。 嫌がらせの類と判断し、電話を切ろうと受話器を耳から離した弥生だったが… ??『こんにちは…の、時間帯だったかな?』 弥生「!!!?」 聞き覚えのある声、ずっとずっとずぅっと聞きたかった声が受話器からは聞こえてきたのだ。 受話器を耳へと戻し、震える声で弥生は相手に尋ねた。 弥生「じゅ………御主人…様…?」
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0ch BBS 2007-01-24