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【もっと高く】キャプテンEDIT28【そして遠くへ】
[343]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 00:59:12 ID:??? やす子「全員集合っ!」 雪村「えっ? な、何ですか?」 落田「なになに? 再開の前になんかあんの?」 柿原(むう……これは穏やかならざる事態になりそうだな) 早瀬(……俺がトチらなきゃもう少し長く――いや、時間の問題か) 大前(? 早瀬さん?) 唐突にグラウンド中央に部員たちを集める飯地に、選手たちの大半は訝しみ、何人かは納得と落胆の入り混じった色を見せる。 続いて飯地が切り出したのは、 やす子「……前半も数分残っている内に、この大差。加えて怪我人の多発……これ以上、紅白戦を続ける意義は無いわ。 よって! 現時刻を持って試合終了とします!」 紅白戦の、打ちきりである。 納得のいかないのは、キャプテン選挙の逆転が掛かっていた雪村派の面々である。 首魁である雪村を皮切りに、次々と反対の声が上がった。 雪村「ええーっ!? そんなのって無いですよ! こっちは一本しかシュートに行けてないんですよ!?」 宇津木「しゅ、終了にはどちかというと大反対だな。前半は確かにこっちが押してたけれどそれは運で英語で言うとラッキー。 後半戦こそ白組の隠された力を発揮する披露宴となるのは確定的に明らか!」 末松「そもそも、俺なんて一度もボールタッチしてないですよ〜! これでどうやって実力を測るんですか〜!?」 やす子「…………」 それらの反駁を、飯地は黙って聞いていたが、
[344]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 01:00:16 ID:??? 雪村「なんとか言って下さいよ! 監と――」 やす子「 黙 ら っ し ゃ い ! ! 」 雪村「――うわあっ!?」 大前「か、監督っ!?」 怒声一喝。細身の女性から発したとは思えない大音声が辺りにこだまする。 腹の腑にズシリとくる空気の振えに、大前ら紅組の面子も竦み上がるものを感じてしまう。 その様をいつになく鋭い目つきでジロリと見渡してから、飯地監督は口火を切った。 やす子「さっきから聞いていれば、どこをどう突けば出てくるかも分からない言い逃ればっかり囀ってるんじゃないわよ! 一本しかシュートを撃てなかった? 紅組は5バックの上3ボランチでドンビキだったのよ? その相手に、4点も取られるほど攻められてりゃあそうもなるってーのっ!」 雪村「そ、それは……」 やす子「後半戦こそ? こんな状況になるまでマトモな修正できず、体力の消耗も嵩んでるじゃない! そんなイレブンがどう頑張ったって、それこそ奇跡を起こせたって、返せて2点止まりよ! そんな試合運びの後半で、前半までに着いた評価の差は覆せないわ!」 宇津木「くっ……」 やす子「末松くん! あんたは味方にボールに触らせても貰えなかった理由を考えなさい! ドリブルは駄目、フリーになってもミドルからは点が取れない、相手ボールの時に前で奪えもしない! そんなFWがどうやってボールに触るってのよ!? せめてボールを受けられる的になる動きをして、楔の役割くらいこなせ! パワー一つでサッカーが出来るんなら、ウチは去年、とっくに全国大会の優勝旗持って帰ってきてるわよ!」 末松「ひぃい〜っ!?」
[345]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 01:01:23 ID:??? やす子「とにかく、白組は全然サッカーが出来ていない! 全国準優勝時の三年に加えて高校生まで揃えていながら、やっていたことは個人技だのみのカスみたいな攻めばっかり! 中盤に5人も割いたんなら、細かいパスの繋ぎでも見せてみなさい! それが出来ていれば、瀬川くんの活かし方ももっとあったでしょ! なのに対策として置かれた長池くんに、何度も真っ向からぶつけてどうするの!? しかもあろうことか、その戦法をカウンター重視のはずの紅組に逆に決められる始末……呆れてものも言えないわね」 白組メンバー「そ、そこまで言いますか……?」「けど、これだけやられりゃなあ」「せめてGKが渡会だったらなあ……」 怒鳴りつけられた白組の面々は、一様に叱責の鋭さに眉を顰めども、具体的に反駁することは無かった。 出来なかった、と言った方が正確だろうか? 白組の面子は全国大会で全試合得点の前キャプテン・早瀬に、秋季地区大会のMVPのアシスト王・本多。 かつてはチームきってのドリブラーだった瀬川に、キーパーを差し置いて守護神と呼ばれるセンターバック・輝林。 これだけの選手を自他共に認める10番雪村が率いたにしては、この結果はお粗末過ぎた。 国岡(けけっ! 大前の働きが大なのはちと気に入らねえが、エース気取りどもが怒鳴られてるのを見るのは気分が良い――) 陰でそっとほくそ笑む国岡。 だが、飯地の舌鋒は次いで紅組の面子にも向けられる やす子「紅組も人のこと言えないわよ!? 存在感を示せたのは前にいる5人だけであとは後ろに引き籠っているだけ! 貴方たちが攻撃に参加させられたり、もっと前掛かりな布陣を取らせて貰えなかった意味、ちょっとは考えなさい! はっきり言ってね、数揃えてドン引きにでもしてなきゃ守れる気しないし、攻撃には絶対に使えないからよ! たまたま攻撃のタレントが豊富で、前でも積極的に守備してくれたから良かったものの、おまけにそれが成功してたから良かったものの! もしアンタらが白組だったら、立場は逆だったって理解ときなさい!」 国岡「――なにィ!?」
[346]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 01:02:29 ID:??? 水守(ぼ、僕もまだまだスタメンの中ではその他大勢……か) 浅村(ううっ、良い返す言葉が無いっス……大前さんと比良山さん、それに長池さん。 この三人の誰かが欠けていれば、もっと競った試合になっていたかもしれないんスから……全員居なかった場合のことは考えたくないっス) やす子「それと渡会くん、最後のジャンピングボレー撃たれる時、反応が遅れてたのは見逃してないんだからね? ……早瀬くんの反則で止まるか、ゴール前に大前くんがいなかったら、また失点してたわよ! 江東の江戸くんの時といい、南葛戦の来生くんのときといい、秋の清栄戦といい、ボレーに苦手意識でも出来ているんじゃないの!? 悪い癖はきっちりと直しておきなさい!」 渡会「(す、鋭い……)しょ、精進しますっ!」 説教の種が尽きたか、それとも一気呵成に怒鳴り過ぎたて間を置きたくなったか。 飯地は一旦、一呼吸を置いてから打って変わって静かに語り出した。 やす子「選手個人に言いたいことはまだまだあるけど、後は今度の練習の時にでも個別に言っていくことにするわ……。 最後に一つだけ、どうしても貴方たち全員に聞きたいことがあるんだけど――」 だが、その言葉がもたらす衝撃は、ひょっとしたら怒鳴りつけられるより大きいものだった。 やす子「――アンタら、今年の全国で勝つ気があるの?」 鳴紋中メンバー一同「「!!?」」 サッカー選手としてのプライド、闘争心、競争意識。それらをひっくるめて疑問視する言葉に、選手たちは凍りつく。
[347]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 01:03:30 ID:??? だが、その中でも真っ先に反論の口火を切るものが二人いた。 大前「当たり前です! それ以外、何を考えろって言うんですか!?」 今日もっとも際立って良い動きをしていた大前と、 落田「そうだぜ、監督! 天才であるこの俺の潜在能力が全開になるのは、全国大会の大舞台以外に無いぜ!」 ……なんというか、相変わらずな落田だった。 やす子「あー、うん。貴方たちの言いたいことは分かってる。これは他の面々に言ってることだから。 まあ、落ち着いて下がってなさい(大前くんは現時点で予想以上だし、……落田くんは言っても無駄だし)」 大前「は、はァ……」 落田「ふっ……分かっているじゃないですか、監督」 比良山(落田は相変わらずだなあ……) 不承不承下がる大前と、満足げに列に戻る落田。 ……閑話休題。
[348]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 01:04:38 ID:??? やす子「今日の試合の中で、現役組で私が満足出来たクオリティを見せたのは、大前くんと比良山くんくらい。 他は全国じゃ十把一絡げのレベルよ。とても去年の準優勝校、今年の優勝候補の対抗馬とは思えないわ。 受験のブランクのあった三年と比べて、良い線行ってどっこいかそれ以下のプレイばっかり。 これじゃあ県内はともかく、全国の強豪校と当たったらツートップ頼みの弱小チームよ。 ……まあ、それでも準決勝くらいまではイケるかもね。FW二人のオマケとして」 雪村「ぼ、僕が……お、オマケ? お、大前くんと比良山くんの……?」 やす子「今のペースでちんたらとしていると、高確率でそうなるわね。 私の見立てでは、南葛の大空や森崎が夏までに付けてくる力は、大前くんと同等かそれ以上。 このままじゃ立ち向かえるのは本当にツートップの二人だけになる。 ……いい? 去年に決勝まで進んだ以上、鳴紋中はもう一昔前の長野県だけの王者とは見られていないの。 今年の夏には日本中から優勝候補の一角として扱われるわ。それは絶対に避けられないことよ」 早瀬(その通りだ……俺はそれを望んで、実際鳴紋はそうなったんだ。だが、そうあり続けることが出来るかが問題なんだ) やす子「貴方たちがそれを余計なものだと感じて、昔通りの県内の強豪どまりで満足するって言うなら、私からはもう何も言えない。 けど、これからの練習は本格的に全国を見据えた、厳しくて激しいものにはしていくつもりよ。 狭い世界のちょっとした実力者で充分……そう考えている子にはキツイ部活になるから、覚悟だけはしておくように。 私からは以上。次からはビシバシ指導していくから、怪我している子はキッチリ直して、それ以外の子も体調を整えておくように。 ……解散っ!」 鳴紋中メンバー「「は、はいっ! ありがとうございましたっ!」」 やす子「…………それと早瀬くんは、高校では決定機に今日みたいなことやらかさないように」 早瀬「わ、分かってるよ!」 最後に一言言い含めてから、飯地はのしのしと不機嫌な肉食獣の足取りで去っていく。 後に残された選手は、気まずい沈黙の中に身を置かれてしまう。
[349]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 01:05:56 ID:??? それを破ったのは、バツの悪そうな顔の早瀬だった。 早瀬「……悪ィな、大前。始める前はガチでやり合うのを楽しみにしてたみてェなのに、盛大に肩透かしを喰らわせたみたいでよ」 大前「そ、そんな。俺の方こそ、生意気なことを――」 瀬川「あははっ。いいっていいって♪ 俺も含めて、長池以外は全然良いところ見せられなかったんだしさ。 余計な気遣いよりも、ふんぞり返って『俺は先輩を超えたんだー!』くらい言ってもいいんじゃない? しっかし、大前くんもドリブル上手くなったねー。特にダブルヒールの出来は、教えた俺もビックリだよ。 こういうのをなんて言うのかな? 『時間よ止まれ』?」 大前「なんでいきなり、そこでゲーテが出てくるんですか……」 長池「もしかして『出藍の誉れ』って言いたいのか?」 瀬川「そうそうっ! それそれ!」 嬉しそうに手を叩く瀬川。 瀬川「ま、俺らも高校では一から出直して腕を磨き直すからさ。次に一緒にやる時は失望させないよう頑張るよ」 大前「はい。その時を楽しみにしておきます」 早瀬「だいぶ水を空けられちまったが、俺も鳴紋のストライカーの看板を下ろす気は無ェ。 瀬川がドリブルにこだわるのと同じく、な。……それはともかく、お前はこれからが大変だぜ? 自分のことだけじゃなく、周りの面子の成長も考えなきゃならねえからな。 在学中から世話になりっぱなしで気が引けるが、これからも鳴紋中を頼む」 大前「勿論です。早瀬さんの叶えられなかった全国制覇の夢。今度こそ俺が実現してみせますから!」 早瀬「ははっ、出来た後輩を持てて俺は幸せだよ。じゃ、俺らはこの辺でな。 さーって、あのバ監督に言われっ放しで終わらないように、自分を鍛え直さなきゃだな!」
[350]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 01:07:05 ID:??? 言い置いて、背を向けて帰り出す早瀬達。長池は大前の肩に手を置きながら深く溜息を吐く。 長池「まったく、早瀬も瀬川も言いたいことばっかり言って……相棒に、俺も良い先輩を持てて幸せです、くらいは言わせてみろ」 大前「それは……まあ、言うまでも無いってことで」 長池「ふっ、その調和を重んじる精神はお前のいいところだ。チームスポーツには完全調和の精神は不可欠だからな。 だが、お前がこれから進む道には、パーフェクトだのハーモニーだの言ってはいられない場面もあるかもしれない。 それを忘れるな……だが俺は、どんな道を選ぼうとお前の兄貴でいるつもりだ」 大前「? どうしたんですか長池さん、急にそんなことを言いだして……」 急に意味深なセリフを言いだした長池に、訝しげに問い返す大前。 それに対して返ってきたのは、 長池「同じ闇を生きて、ともに地べたを這いずりながら光を求めた絆は、生半なことでは切れはしないということだ。 どんなに離れようともな。……いや、いま無理に理解しようとしなくてもいい。 お前がお前の夢を叶えた時、思い出すこともあるだろう……じゃあな」 大前「あ、長池さん……」 そう言って、陰のある背中を見せながら去っていく長池。
[351]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 01:08:09 ID:??? 豊原「やれやれ。後輩に言い残せることがある連中は羨ましいな。俺などサッカーのことも人生のことも、自分のことで手一杯だ」 柿原「お前はサッカーに専念出来るだけいいだろう? 俺はこの後、親父の店の手伝いだ。 丁度いい、豊原。お前、ちょっと俺の家の売り上げに貢献しろ」 豊原「ちょ、柿原さんっ!? た、助けてくれ大前! 俺は今月ピンチなんだ!」 大前「あ、あはは……豊原さんたちもお疲れさまでした……」 豊原「は、薄情者〜っ!? あ、やめてください豊原さん! 引っ張らないで――アーッ!!」 本条「俺らも帰るか……(高校でこそ、早瀬を蹴落としてキャプテンの座を狙うぜ!)」 篠田「ああ(高校に入っても、俺はコイツの傘下なのかなあ……)」 紅白戦に参加した卒業生たちも帰って行き、グラウンドには現役の選手たちだけが残される。 だが、その表情は九割方沈痛なものだった。 その色は、殊にレギュラーの中でも主力視されていた者にこそ濃く表れている。 本多(今日の仕事ぶりはなんだ……俺は、こころのどこかでMVPの地位に慢心していなかったか? あんなもの、選考委員の好みがストライカー嫌いだっただけだったと言うのに……) 輝林(…………今のままでは、駄目だ) 渡会(監督のいう通りだ……いつまでもフィールダー頼りじゃ無失点でも誇れるもんじゃねえ) 比良山(監督から叱責の言葉こそなかったが、攻守の貢献度でまだまだ大前に大きく離されている。 これからも差を詰めるためにも努力せねば。いや、いつか追いつき追い越す気概が無ければ!) 中でも辛うじて強い意志を見せるのは比良山のみ。 逆に最も居た堪れない表情をしていたのは――
[352]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/04/01(金) 01:09:20 ID:??? 雪村「僕は……僕は今まで何を……」 宇津木「雪村さん……?」 雪村「くっ……!」 泣きそうな顔で、いや涙を零しながらグラウンドを駆け去る雪村。 この世代で最も将来を嘱望され、その期待にこたえ続けた彼にとって、今日の敗戦の痛手は如何ほどばかりだったろうか。 競い合うライバルだったはずの大前に負け続け、率いたチームは大敗を喫した。 傷ついたプライドを癒す手立てすら知らず、逃げるようにその場を後にする背に、誰も声を掛けられなかった。 いや、大前がやや遅れてその後を追おうとするが、 大前「ゆ、雪村!?」 宇津木「……今は追いかけないことをオススメする」 水守「宇津木……」 宇津木「普通に血の通った人間なら、大事に育てた実力を凌駕される絶望がどれほどのものかわかると思うんだが。 特に雪村さんの場合は、そこらの一般プレイヤーの雑魚い実力じゃなくて鳴紋で10番の選手。 想像を絶する悲しみが雪村さんを襲った。……今はそっとしておくべきそうするべき」 信者と言っても差し支えないほど雪村に心酔する宇津木でさえ、傷心を慮って傍を離れている。 そこに大前が向かっても、傷口に塩をなすりつける結果にしかならないだろう。 大前「分かった……お前が言うんなら、そうなんだろうな」 この中で誰よりも雪村との付き合いが長いだろう宇津木の言葉に、大前も黙って従う他なかった。
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0ch BBS 2007-01-24