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【楽な戦い】Another-C_4【なんて無い】
[907]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/09(月) 21:33:17 ID:??? ナジーブ「当て馬達は穴を埋められそうか?」 ジョアン「成長次第・・・というところだな。 珍しいな、貴様がそんな後の事を気にするとは。」 ナジーブ「まあな、伝統が朽ちてゆく姿はあまり見たくない。」 ジョアン「なるほど・・・」 『伝統を破壊したがっている人間がよく言う』とジョアンは内心思ったが、これを口に出すのは控えた。 ことサッカーに関しては、あまりに直線的で純粋・・・子供の駄々のような行動原理を持つ相手だ。 そういう人物だからこそ、ある程度は言葉を選ばなければならなかった。 ナジーブ「それからもう一つ・・・どちらかと言えばこっちが本題だ。 アルシオンはどうした? 来ていないのか?」 ジョアン「あ奴は先にホテルへ帰っている。 我々の話に必要であるまい?」 ナジーブ「ふむ・・・迂闊だなジョアン、そういう事ではない。」 ジョアン「・・・言うと?」 ナジーブ「ユーゴの情勢が不安定になっているのを知らん訳ではあるまい?」 ジョアン「ああ・・・その事か。」
[908]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/09(月) 21:34:43 ID:??? 数日前にクロアチアとスロベニアがユーゴからの独立を宣言した事件を言っていた。 セルビアは主体とするユーゴ政府は当初軍隊の出動を議決したが、その後の動きは無い。 独裁色の強い現大統領が何を考えているのか不明だが・・・問題はそこではなかった。 ジョアン「確かにアルシオンはここ数日ナーバスになっているようだ。 記憶が失われているとは言え、奴の母国は彼の国だからな・・・」 ナジーブ「ふむ、ナーバスか・・・・・・まあ仕方のない事だ。 まあ立ち話も程ほどにするとしよう、恥ずかしながら空腹でな。」 ジョアン「そうだな・・・では馴染みのリストランテに案内しよう。 カツレツは食べられるのか?」 ナジーブ「全く問題ない、ここは郷里(くに)ではないからな。 今日は羽根を伸ばさせて貰うぞ。」 先導するジョアンの話に相槌を打ちながら歩くナジーブ。 だが彼は会話とは全く関係のない事を考えていた。 ナジーブ(驚いたな・・・ジョアンともあろう者がアルシオンの事は何も知らぬか。 老いか、それとも過信か・・・いずれにせよ、私にとって都合の良い誤算だ。) 彼は腹の中で満面の笑みを湛えていた。 自分の思い描く通りに事を進めるに当り、最後に邪魔となるのはジョアンその人だと彼は考えていた。 そのジョアンを思うように動かす術はないかと密かに頭を痛めていたのだが・・・ それが、考えていたよりも遥かに容易に行える可能性が見えたのだ。 ナジーブ(ふふ・・・老人は長い間見続けてきた夢に溺れているといい。 そしてこれならばきっと奴が上手くやるだろう・・・クックッ。)
[909]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/09(月) 21:35:46 ID:??? <再び ミラノ市・ブレラ地区> アルシオン(焦げ臭い・・・鉄の匂いだ。) アルシオンは音と匂いに薄っすらと既視感を刺激されていたが、それが何なのか判らずにいた。 それよりも、銃声が響いたにも拘らず自分の身体の何処にも痛みがない事に安堵していた。 アルシオンはようやく、銃声とほぼ同時に大人の男の呻き声が彼の耳に入ってきた事を思い出す。 アルシオン(オレは撃たれず五体満足という事か・・・・・・・・・。) 『良かった・・・』と一応の現状把握に満足し、アルシオンは恐る恐る後方を振り返った。 そこには身なりの汚い暴漢が肩を押さえ、悲痛な表情で唸っている姿があった。 そして直後、複数の人間の気配にアルシオンは慌てて視線を上げる。 ??「おうおう、その場で蹲(うずくま)るのかよ。 そこは猛然と走って逃げるとこだろ? こりゃあ何にも知らない素人の雇われもんかねぇ〜。」 見るからに屈強そうな男達の中で一人、自分と歳が同じくらいに思える肌の黒い少年がおり・・・ その少年が、おそらく今しがたアルシオンを撃とうとしていた暴漢を見て独り言のように呟いていた。 少年は暴漢からアルシオンへと視線を移し、片手をサッと上げた。 すると屈強な男達が少年の合図に従うかのように、暴漢を取り押さえて連れて行った。 アルシオンにとってはTVの中の事のように現実感のない風景だった。
[910]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/09(月) 21:37:03 ID:??? アルシオン「・・・・・・」 ??「どこにも傷はないか?」 アルシオン「・・・!」 絶句していた所で突然に言葉をかけられ、アルシオンは珍しく慌てた。 だが恐らく目の前の少年は命の恩人と言って良いだろう。 慌てていても最低限の礼くらいはしなければならない。 アルシオン「お陰様で何処にも怪我はありません。 助かった・・・感謝している。」 一言目は一応考えたような文句を言う事が出来たが、二言目は完全に独り言のようになってしまった。 言い直すべきかと一瞬だけ検討したが、すぐに取りやめた。 それよりも先に相手の方が言葉を紡いできたからだ。 そしてその言葉に、アルシオンは警戒と緊張の糸を一瞬で張り巡らせる事となった。 ??「無事なら結構だ・・・お前に怪我をされてはたまらないからな、“アルシオン”。」 アルシオン「!!!」 アルシオンは表舞台に立った事がなかった。 常に暗い夜道を歩いて来た人間だ。 特別な知り合いでもない人物が、そんな自分の名を知っている筈が無いのだ。
[911]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/09(月) 21:38:07 ID:??? それでもアルシオンは思い当たる節を何通りも必死で考えたが・・・ 結局解答は目の前の少年には突き当たらなかった。 アルシオン「お前は誰だ? 何故オレを助けた?」 仕方なく、アルシオンは相手へストレートに問いかけた。 考えて判らない事をいつまでも考えているのは無駄だと観念したからだ。 問われた方の少年は一瞬キョトンとし、直後に笑い出した。 ??「ハハハッ、そうかお前はオレを知らなかったな。 なるほど、その強張った表情も頷ける。 そりゃあお前のような生い立ちの人間が、いきなり自分の名を呼ばれれば警戒もする。」 ヒーッ、ヒーッ、と一頻り笑い終えると改めて少年はアルシオンと向き合った。 ??「オレはユブンタイだ、ナムリス・ユブンタイ・・・」 アルシオン「ユブンタイ! あの男か・・・・・・!」 あまり良い印象を持っていない・・・どちらかと言うと嫌っている人間の名が飛び出し、 アルシオンは安堵すると共に若干顔を顰(しか)めてしまう。 ナムリス「そう、今思い浮かべた奴・・・お前の爺さんのパートナーの息子がオレだ。 そして・・・」 『お前のチームメイトだ』とナムリスと名乗る少年は言葉を続け、手を差し出してきた。 アルシオンはこれまでの人生の中、少なくとも覚えている限りこんな奴は居なかったと思った。 先程の笑いとは違い・・・これほど邪悪で不敵に笑う人間を、彼は今まで見た事がなかった・・・実際に。
[912]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/09(月) 21:43:53 ID:??? 本日はここまででーす。 次回は明日か明後日でしょうか…。 取り敢えずそろそろトンデモ展開にレディーゴーです。
[913]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:18:27 ID:??? ユブンタイの名は彼にとって好意を抱くような物ではない。 ジョアンと遣り取りをするナジーブ・ユブンタイの姿から、その人となりはある程度理解していたからだ。 目的遂行の為には手段を選ばない、金も人も等しく自分の道具であると固く思い込んだ人間であり・・・ アルシオン自身も彼にそのような目で見下ろされている事には気付いている。 その息子であるナムリス・ユブンタイも父と同様に尊敬できない人間性と直感するが・・・ しかしこの場面においてナムリスはアルシオンにとって命の恩人という事になる。 それゆえアルシオンは目の前に差し出された手を一応握り返した。 だが同時に零れた問いはおよそ恩人に対しては出る事のない、懐疑的な物であった。 アルシオン「何故オレを助けた? ・・・いや、何故都合よくオレを助けられたと聞くべきか?」 だが同時に零れた問いはおよそ恩人に対しては出る事のない、懐疑的な物であった。 偶然の出来事としては考えられないようなシーンにアルシオンは置かれている。 それが全て目の前の少年が・・・いや、彼の父が演出した物ではないのかとアルシオンは考えたのだ。 しかしこの問いに対し、相手は表情を何ら崩す事なく平然と返してきた。
[914]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:20:03 ID:??? ナムリス「ふふん、なかなか挑戦的な問いをするんだな、アルシオン。 けれど・・・お前は“何故自分が命を狙われたのか”とは考えないのか?」 アルシオン「なに・・・?」 意外な返答であった。 “自分が命を狙われる”という現象をアルシオンは予想していなかった。 ナムリス「おかしいじゃないか。 お前は子供の頃から夜を歩いて来た。 それは歩かなければいけない理由があったからじゃないのか?」 アルシオン「・・・・・・!」 その言葉はアルシオンにとって返答に窮する物であった。 それはジョアンとの長い旅における基本的な決まり事であった。 何故かと聞いてもジョアンは『昼に歩けるようになったら教える』と優しく言うだけ・・・ ゆえに、アルシオンはこの旅路のスタート地点・・・さらにその前については思考を停めていた。 ジョアンに対する信頼と愛情がそうさせて来たわけだが・・・ こうしてジョアンと自分以外の人間が口にする事で、アルシオンは揺らされてしまった。 そして同時に・・・神聖な領域に土足で踏み込まれたような怒りも覚えた。
[915]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:22:35 ID:??? ナムリス「ふふ、まあそれは良い。 それよりもオレからお前に聞いてみたい事がある。 この問いの先に先程の答えもある・・・だから耳を傾けておけ。」 アルシオン(グッ・・・コイツ・・・・・・!) どうでもいい事の様に話題を変えようとするナムリスの言葉に、アルシオンはいよいよ不快になってきた。 それでもこちらが気に留めるように付け加えられた言葉は、実に効果的にアルシオンの関心を誘う。 アルシオンはその不快感にも拘らず、ナムリスの言葉から耳を背ける事が出来なくなっていた。 アルシオン(クソッ・・・!) こうなればと腹を据え、何が飛び出してくるのかと身構えたが・・・ ナムリスが口にした問いというのは、アルシオンにとって全く意味の解らない物だった。 その問いとは・・・ ナムリス「“ゲンソーキョー”という単語に覚えはあるか?」
[916]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:23:36 ID:??? そう言った後、ナムリスは付け加えるように続ける。 ナムリス「ファンタジーホームでもネバーランドでも良い、そういった類の言葉だ。」 アルシオン「・・・知らんな、聞いた事もない。 いや、ネバーランドは映画か何かで耳にしたかも知れない。」 ナムリス「そうか・・・。」 やや落胆した様子のナムリスに、アルシオンは少なからず不思議に思った。 これまで全て意味有り気にアルシオンの興味を(怒り、嫌悪を買いながらも)誘っていたナムリス・・・ その彼が聞いてみたいと宣言し、わざわざ関心を買うように口添えてまで放った問い。 それが意味不明の単語を知っているか否か・・・なのである。 しかも知らないと答えたその反応には実感が伴なっているように思えた。 ナムリス「まあいい・・さ・・・・・。当然と考えていた事が肯定されただけだ。」 アルシオン「なんだ・・・? その・・・ゲンソーキョーとは・・・」 目の前で見せられた反応のせいで思わずアルシオンはそう口にし・・・そして後悔した。 返ってきたナムリスの答えが輪をかけてバカバカしい物だったからだ。
[917]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/05/10(火) 21:24:51 ID:??? ナムリス「・・・解明出来ないようなオーバーテクノロジーやオーパーツが存在する場所だ・・・多分な。」 アルシオン「・・・・・・何を言っているんだお前は?」 思わず溜め息を吐いてしまった。 失笑すら出ない・・・不快な思いを我慢して相手をしていた自分こそが馬鹿に思えた。 力も抜け、ホテルに戻っていい加減休みたいという気持ちが生まれてくる。 ・・・同時に、この瞬間まで忘れていた数日前からの不安感も再発した。 アルシオン「じゃあな・・・病院は早く行った方がいいぞ。」 ちょっとだけ皮肉を言い捨てて、アルシオンはナムリスに背を向けた。 ナムリス「待てよ・・・。」 アルシオン「悪いがお前の妄想に付き合えるほど元気じゃない。」 ナムリス「数年前、ユブンタイの施設で体力テストをした事は覚えているな?」 アルシオン「・・・・・・」 そのテストについては確かにアルシオンも記憶していた。 確かユブンタイがジョアンに対して破格の出資をする対価の一つとして要求した、データ採取の為の試験だった。
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0ch BBS 2007-01-24