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【弟くんの】キャプテンEDIT31【初陣】
[750]746:2011/05/07(土) 01:52:09 ID:??? すまない、良くない発言だった。
[751]森崎名無しさん:2011/05/07(土) 04:55:47 ID:??? う〜限界だぁ……寝る
[752]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/05/07(土) 05:23:49 ID:??? >>751 お待たせして申し訳ありません お目覚めの後にご覧になられる内容が、ご期待に添えているものであることを祈りますです(汗) ★???→ JOKER =★ ダイヤのK・JOKER → ??? --------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 菱野「…………」 大前に尋ねかけたままで、菱野は不自然に言葉を切った。 大前「? 菱野さん?」 菱野「……あ、あの」 大前「うん、何だい?」 足を止めて、大前は言葉の続きを待つ。 菱野(すぅー……はぁーっ……) 菱野は強張りを解すようにして息を整え、意を決したように向き直った。 菱野「……大前さん。聞いて頂きたいことがあるんです」 大前「う、うん」 菱野「私、不安なんです。その、これからのことが――」
[753]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/05/07(土) 05:25:21 ID:??? 大前「え?」 出し抜けに切り出された言葉に、大前は目を瞬いた。 菱野「――不安、と一口に言っても、これからの大会で勝ち進めるか、ということではないんです。 むしろその逆のことが怖いんです。大前さんは、この三年間で物凄く強くなられました。 それこそ、初めてお会いした頃からに比べると、まるで別人になられたみたいに」 菱野が初めて出会った頃の大前は、熱意だけでサッカーに取り組んでいるような少年だった。 技術は無い。体格を活かせるほど当たりにも強くない。それこそごく平凡な選手だった。 それが早瀬の下で全国を目指し、飯地に鍛えられるうちに、どんどん様変わりしていった。 菱野「今の大前さんなら、それこそ全国でも敵無しなんじゃないか、って。そう思いさえしてしまいます。 ですが、そんなお姿を見ていると、マネージャーとしては誇らしい気持ちになる半面……不安にもなってしまうんです」 大前「……どうして?」 菱野「だって……こんなにもお強くなられたら、私を置いてどこか遠くへ行ってしまわれるんじゃないか、って! もし日本一になって敵がいなくなってしまったら、もっと広い世界に行ってしまうんじゃないかって! いつからか、そんなことを考えてしまうようになってしまって……怖いんですっ!」 大前「ひ、広い……世界?」 その言葉に、頭をガーンと殴りつけられたような衝撃を受けてしまう。 ただただ、掲げた目標――鳴紋中での全国制覇のために、日々走り続けてきていた。 それが叶った後のことなど、一顧だにしていなかった。だが――それはいつまでも考えないままでいていいのだろうか? 少なくとも来月。全国大会が終わった後には、その問いが有無を言わせずに圧し掛かってくるのだ。 大前良という人間は、これからの人生をどう歩んで行くのか? と。
[754]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/05/07(土) 05:26:42 ID:??? 大前(日本一になった後のこと? ……考えていたことは、漠然としたことだけだった。 このまま卒業して、高校に行って……それでまた早瀬さんや長池さんととサッカーをやるんだろうな、ってくらいで。 でも、今菱野さんが不安に思っているのは、そう言うことじゃない気がする。 中学を卒業して、高校も出て、その後。俺はどう生きていく気なんだ?) サッカーを辞める、などという選択肢は無い。 今ではサッカー抜きの人生など考えられないし、それが一番得意なことでもある。 だが現在、日本のサッカー事情は暗い。 プロリーグは無く、この道で食べて行こうとすれば、どこかの企業のサッカー部に加わるか、それこそ海外にでもいくしかない。 大前(海外? ま、まさかっ。何を途方も無いことを考えているんだ、俺は……) だが、その言葉の響きに、抗いがたい魅力を感じてしまうのは否定しようがなかった。 全国に出場して活躍すれば、協会の目にも止まり世代別代表への道も開ける。 そして更に代表でも活躍を重ねれば……海外のプロチームの門戸を叩くのも不可能ではない。 菱野「……お気づきになられましたか、大前さん? ご自身がお持ちになっている可能性に」 大前「…………」 何を馬鹿な、と。そう一笑に伏すことは出来なかった。それは今までのサッカー人生への冒涜ですらある。 今まで倒してきた敵に、これから倒すべき敵に敬意を抱くのならば。 そして、それを為してきた、為しに行く自分に自負を抱くのならば。 ……それだけは決してしてはいけないことだった。 大前「……ああ、分かったよ。もっと遠く、広い世界でのプレイ、か。想像したこともなかったなァ。 いや、サッカーを始めたばかりの昔には少し考えたけど……そう、いつの間にか忘れていたんだ」 菱野「大前さん……」
[755]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/05/07(土) 05:28:37 ID:??? 日本一の選手になって、それを足がかりに世界へ。そして、やがては頂点に。 そんな道程を空想し、しかしそれは叶わぬ夢だと諦めたのは、いつだったか。 遠い目をする大前を、菱野は潤んだ瞳で見つめる。 菱野「貴方はきっと、高い目標を目指し続けることでどこまでも強くなれる人なんです。でも――」 微かな嗚咽が、言葉を遮った。 菱野「――もしその為に、貴方が私の手の届かない所に行ってしまったら?」 大前「…………」 菱野「そして、そしてもし、私が我儘を言って……大前さんをここに縛り付けてしまったら? その為に、世界に通用したかもしれない可能性を、奪い取ってしまったら? 最近の大前さんを見ていたら、そんなことばかりを考えてしまって――」 大前がもし、遠く海外に羽ばたいて行ったとしたら、それは二人の別離を意味する。 離れてしまった恋人たちは、不幸であろう。 大前がもし、自分の可能性に背を向けて足踏みし続ければ、それは彼から未来を奪う。 磨き切れなかった才能を抱えた選手は不幸で、その才能を信じていた者もまた不幸だろう。 ……菱野を悩ませるのは、そんな二律背反だった。 菱野「馬鹿げたことだと、思いもしました。途方も無いことだとも思いました。 でも、どうしても頭から離れないのです……! 大前さんが強くなって、強敵を倒していく度に、どんどん怖くなっていくんです!」 ついには、菱野の瞳から涙の粒が零れ落ちた。 菱野「一番大事な時期に、こんなこと戸惑わせるだけなこと言って、マネージャー失格ですわよね? でも……今日みたいに一緒にいて楽しい時間を過ごすほど、貴方が愛おしいほど、そんなことを考えてしまうんですっ! 大前さん、私……もう、どうしていいか分からないですよぉ……」 力無く自分の胸に顔をうずめる菱野を、大前は恐々と抱きしめた。
[756]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/05/07(土) 05:30:04 ID:??? 大前(菱野さん。俺のことで、こんなにも思いつめていたなんて……) そう自戒する大前。 彼女の吐露した不安は、見えない将来に根差したものだ。 それはこれからの人生を大前と共に歩んで行きたいという思いの裏返し。 ならば、それを拭いされるだけの力を持ったものも、自分の未来を懸けた言葉だけだろう。 大前(考えるべき時が来たんだな……菱野さんと、恋人になれて嬉しいってだけじゃなくて。 彼女とどういう道を歩んで、どういう場所に辿り着くか。それをハッキリと明らかにしなきゃいけない) ……長い沈黙が、二人の間に流れた。 黄昏時の道に人影は無い。 いつもの帰り道だったはずが、そこはいつの間にか二人のこれからに向かう道に変わっていた。 菱野「ごめんなさい、急にこんなことを言って……」 大前「菱野さん――」 細い肩を抱く手に、一層の力を込めた。 菱野「は、はいっ!?」 大前「――俺、まだハッキリと将来のことは決められない。自分がどれ程の選手になったのか? その答えが出るのは来月だ。 今ここで、君の不安を全部スッキリさせられるような言葉も言えない。でも、一個だけ分かっていることがあるっ!」 菱野「あ、あの?」 先程とは打って変わって、菱野の方が戸惑いに目を瞬かせる。 大前の言わんとすることが分からない、という表情だった。
[757]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/05/07(土) 05:31:09 ID:??? 大前「お、俺は……俺は君が好きだ! 何があろうと離したくないっ! 去年のクリスマスに誓った通りに、何があろうと絶対にだ!」 無人の道に、大前の声がわんわんと響いた。 菱野「……大前さん」 大前「これから俺が選手として、男として、人間として、どんな道を歩くかは分からない。 だけど……これだけは言うまでも無いことだろ? 俺は、君の恋人だ。そして君も、俺の恋人なんだ。 それだけは、絶対何があっても変わらないし、変える気は毛頭無い」 大前の両腕の中で、菱野は身じろぎひとつせずに大前の言葉を聞いていた。 無言のままに、ポロポロと大前の胸に涙を零す。 菱野「本当……ですか?」 大前「うん」 菱野「もう、取り消しは効きませんわよ?」 大前「構わない」 菱野「……私、大前さんが思っていらっしゃるより、執念深い女ですわよ? お言葉を違えたりしたら、怖いですわよ?」 大前「分かっているさ。なんせ……モノ好きにもこんな朴念仁に、根気よく付き合ってくれているんだから」 菱野「では、最後にもう一つだけ。そのお言葉は……私と将来を誓い合って下さる、という意味ですわね?」
[758]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/05/07(土) 05:32:31 ID:??? 大前「そんなの、当たり前だろう?」 大前「――ていうか、その……それ以外の意味に聞こえたら、俺の面目が立たないっていうか……」 思わず唇を尖らせる大前。 そんな表情に、菱野が安堵したように力を抜いた。 菱野「はぁーっ……今のはその……不意打ちでした。こんなに重大なこと、遊びに行った帰り道で決めてしまう羽目になるなんて」 大前「そ、そっちこそ。そんな重たい悩み事を抱えてるなんて、今日までちっとも洩らさなかったじゃないか。 もっと早くに言ってくれれば、もっとしっかり考えられたのに……」 互いにそんな減らず口を叩き合う二人。 重大な決意を下した反動か、不思議と高揚した気分がそうさせるのだった。 大前(とんでもないことを言っちゃったけど……けど、これで良いんだ。 自分がこれから歩く道はまだ決まっていないけど、少なくともその道を一緒に歩きたい女性は菱野さん以外にいない。 まだまだ分からないことだらけの将来だけど、今はこれで良い) そう思うと、目の前で自分の両腕に包まっている少女への愛おしさが、とめどなく募ってきた。
[759]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/05/07(土) 05:34:00 ID:??? ――ドクン。 瞬間、心臓が一際強く跳ねた。そしてそれに同調するように、熱と疼きがどこかで高まって行く。 大前(あ、マズ――) 若い少年の肉体は、刺激された感情に素直な反応を返した。 昂った血潮の流れこむ先。そこで生じた強張りが、むくむくと自己主張を始める。 当然、変化は正面から抱き合う菱野に直に伝わる訳で、 菱野「? ……っ!?」 当初は何が起こったのか理解しかねていた菱野も、やがて目の前の事象と学校で習ったりたまさか聞きかじったこととを結びつけたらしい。 忽ちの内に、顔を赤らめて一度は解けたはずの硬直状態に逆戻りしてしまう。 ……先程とは違った意味で、気まずい沈黙が二人の間を滞空する。 大前(――な、何でこんな時にこんなことになってしまうんだよー!? 馬鹿っ! 俺の馬鹿っ!) 混乱する頭の中で、ひたすら自分を罵倒する大前。 何故と言われても、可愛らしい恋人と至近距離で向かい合っている以上、起こって当然のことではあるのだが。 大前(や、ヤバい……い、一旦、離れないと……でないと、穏便に収まりがつく気がしない……。 こんなに近くにいると、髪の匂いとか、潤んだ目とか、震える唇とか、シャツ越しに掛かる息とかでどうにかなっちまう……!) だが、既にどうにかなっている身体は、理性の命令を拒絶する。 ……髪からほのかに漂う真水の匂いは、先程までプールで晒されていた水着姿を否が応でも思い起こさせる。 ……今にも瞳から零れ落ちそうな雫は、早く舐め取れと誘うように怪しく輝いている。 ……火照った頬と震える唇は、まるで口付けを乞うているよう。 今にも本能が全てを振り切ろうとする寸前、何とか喉を震わせて言葉を発することに成功する。
[760]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2011/05/07(土) 05:35:52 ID:??? 大前「ひ、菱野さん……」 菱野「は、はひっ!?」 今更正気づいたように、ビクリと跳ね上がる菱野。 大前「俺、菱野さんが好きだ……俺が知っているものの中で、君が一番大事なんだ。 でも、そう思う一方で、何だか……君のことを食べちゃいたいような、滅茶苦茶にしたいような……そんな危うい気分になってしまう」 菱野「そ、それってつまり……」 ますます顔を赤くした菱野が、視線を泳がせる。そんな仕草の所為で、まるで離した途端に逃げ出されてしまいそうに思えてしまう。 菱野を捕える手に、ますます力が籠った。 菱野「い、痛いですわ……お、大前さん……」 大前「ご、ゴメン……」 菱野の声は、咎めるというよりも感じたままのことが口の端から漏れたように聞こえた。 だからこそ、チクリと大前の胸を刺す。 だからこそ、より一層煽られてしまう。 大前「……このままでいると、その――もっと痛くなるようなこと、菱野さんにしたくなってしまうかもしれない。 そうなる前に、俺のこと突き飛ばしてくれ」 ――自分の吐く息がハァハァとうるさい。 ――自分の心音がバクバクとやかましい。 ――視界が真っ赤になってチカチカする。
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0ch BBS 2007-01-24