※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
キャプテンブライト9
[101]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:22:23 ID:dNxKCxxY 運転手「本来、イストお譲ちゃんの捜索届けは、出されてもなかなか上に上がらないようになってたんだが。 お前の友人か仕事仲間の誰かが、別口で『お前の』捜索届けをも出したらしい。 必然的にイストお譲ちゃんの捜索届けも、上に上がって。このままじゃ俺たちの誘拐事件が世間に流れる」 ティアナ「…どういうこと!? どうなるって言うの!?」 運転手「それはボスが今、各方面と交渉中。まあこれくらいの想定外なら予想もつくけどな」 その時、静かにドアが開いて。品格のある中年男性が部屋に入ってきた。 運転手「あ、ボス。交渉はどうです?」 ボス「妥当なところで落ち着くよ。しかしお前も手荒すぎるぞ」 運転手「すんません…。でもこの女が一緒に車に乗ってきたんだから、しょうがないでしょ」 ボス「確かに、今日のタイミングを外したら全く意味がなくなるしな…」 運転手「この女は?」 ボス「あと2時間」 運転手「…だとさ」 こちらを見られるが、まるで意味がわからない。きょとんとしていると、彼は優しく付け足してくれた。 運転手「お前の命の、残り時間だよ」 ティアナ「え…」 運転手「正確には2時間以内に、死体に多少の細工をしなきゃ俺が怒られる。だからお前の命はあと1時間半くらい」
[102]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:25:26 ID:dNxKCxxY そう言われても…ピンと来ない。 理不尽なことなら散々受けてきたし。 もし突然殺されても、なんだかその延長のようなものだと思ってしまう。 運転手さんは楽しそうに笑っていたが。私が何の反応も示さないことに驚いたらしい。 運転手「おいおい、あんた自分の立場わかってるの? もう、死んじゃう一歩手前なんだよ?」 ティアナ「…イストちゃんは?」 運転手「ん?」 ティアナ「私が死ぬとして、イストちゃんはどうなるの?」 ボス「あぁ、安心していい。あのお譲ちゃんに死なれたら俺たちの商売にならないからね」 ティアナ「良かった…」 運転手「そんな心配をしてたのか? へんなやつ」 ボス「いやいや、魂は天国に行けるかもしれないよ…。ん? おい、お前!?」 ボスと呼ばれていた男の声色が、突然、変わった。 ティアナ「え…?」 ボス「名前は何だ?」 ティアナ「え? 名前? ティアナです。ティアナ・ランスター…」 ボス「身分証は!?」 ティアナ「右のポケットの、お財布の中です」 ボスと呼ばれた男は慌しく私のポケットを探り、お財布を抜き出し。 身分証の顔写真と私の顔を見比べて。…天を仰いだ。 運転手「どうしたんです、ボス?」 ボス「ティアナだ、こいつティアナだよ」
[103]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:27:16 ID:dNxKCxxY 運転手「知り合いですか?」 ボス「ニュースくらい見てろ。一ヶ月くらい前、あっち関係で派手に捕まったヤツがいるだろ」 運転手「ああ!! ティアナって、あのティアナ!!」 どうやら私は。私の知らない所で、結構な有名人になっているようだ。 運転手「でもティアナってクスリ方面でしょ。ぶっ転がしても、ウチらと競合しないんじゃ」 ボス「情報に疎いと早死にするぞ。…ティアナは『ホワイトデビル』の手駒、という噂がある」 運転手「『ホワイトデビル』の手駒!? ボス、まずいじゃないですか。そんなヤツぶっ転がしたら…」 ボス「だから困ってるんだろ! まずいぞ…」 え? 何? 手駒? ホワイトデビル? ボス「『ホワイトデビル』に対して、俺たちが敵対してないことを示さねばならん」 運転手「どうするんです?」 ボス「状況が変わった。ティアナを絶対に傷つけるわけにはいかなくなった…。その前提でもう一度交渉してくる」 ボスは慌しく部屋を出て行った。運転手は椅子に座りなおし、それでも落ち着かない。 何度も深呼吸しては、汗を拭っている。 逆に私は危機感とか恐怖感とかがマヒしているのかもしれない。特に恐くもなかった。 ただ、親友の妹イストちゃん。彼女だけが気がかり。 隣で拘束されて眠っているイストちゃんに囁いた。大丈夫だよ、って。
[104]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:29:38 ID:dNxKCxxY …随分と時間が経ったような気もするけど、実際はそんなに経っていない。 これは警察に捕まっていた時に学習していた。実時間は、おそらく30分ぐらい。 ボスと呼ばれた人がカバンを手に部屋に入ってきて…。運転手と小声で何かを言い合って、頷いて。 ティアナ「ねえ…どうしたの?」 ボス「ティアナ・ランスター。我らは悪意を持って貴方を拘束していたわけではない。それは承知してくれ」 ティアナ「え、ええ…」 ボス「『ホワイトデビル』にも、どうかそのように頼む」 ティアナ「ホワイトデビル? そんな人、知らないわ!?」 ボス「『人』!? 『ホワイトデビル』というコードは、『集団名』ではなく『人』一人なのか!?」 ティアナ「だから、そんな人知りません!!」 ボス「と、ともかく我々は『ホワイトデビル』と敵対しない。貴方を解放する。今回は、互いに運が悪かった…」 ティアナ「え!? え!? じゃ、じゃあイストちゃんは!?」 ボス「……」 ボスはカバンから注射器を取り出し、手馴れた仕草で針を私の腕に刺してきた。 ティアナ「や!! いやっ! なに!? なんなの!?」 ボス「ただの睡眠薬です。『ホワイトデビル』にご伝言を。私たちは今後、どんな協力をも惜しまないと」 ティアナ「やめて!! やだっ!! イストちゃんは!? ねえ、答えて!!」 ズキッとアタマが痛む。 お願い、答えて。何か喋って。イストちゃんは今後どうなるの!? アタマの痛みが、薄らいでいく…。ダメだ。このままだと、寝ちゃうから。 もっと痛いままじゃないと、寝ちゃうから。 なんで痛みって、思い通りにならないんだろう。
[105]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:31:24 ID:dNxKCxxY 朦朧とした意識の中で。多分、夜中。多分、外のどこか。 後で聞いたところによると、私は警察署の敷地をフラフラ徘徊していたらしい。 まあ一番安全な場所かもしれないけど、私にとっては良い思い出がないトコでもある。 警察に保護されて、すぐに救急車で運ばれて。 注射された睡眠薬のせいで記憶は曖昧だけど、外傷なんかはなかったらしく。 私は次の日の夕方頃になって、なんとか起き上がれるほどに意識を取り戻した。 近くの看護婦さんがすぐにそれに気づいて、私を寝かそうとしてくる。 最初は私も起き上がろうと抵抗したけど、名案に気づいた。 何か言っている看護婦さんに頷いて、目を閉じて。薄目で彼女の姿を追う。 …報告のため、看護婦さんが私から離れて、部屋から出て行った! 私は起き上がる。…何のためかよくわからないけど、とにかく、どこかへ行かなきゃ。誰かに会わなきゃ。 不思議な使命感を持って、個室の病室ドアを開ける。 廊下は人もいたが、平穏な雰囲気。大丈夫、このまま外へ抜け出せる! あれ? 外へ行ってどうするんだっけ? …そうだ、イストちゃんだ! 私は解放されたけど、イストちゃんはどうなったんだろう!? 捜しにいかなきゃ。何のアテもないけど。私が行かなきゃ!
[106]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:33:06 ID:dNxKCxxY ふらつく足取りで、ちょっとしたホールまでやってきた。 スクリーンにTVが映っている。ニュースをやっていた。 …聞き覚えのある単語が出てきたので、そのニュースに注目する。 アナウンサー『…繰り返します。誘拐されたイストさんですが、遺体で発見されました。 今回の誘拐事件では、機動六課の課員 ティアナ・ランスター さんが関わっていたとされています。 警察発表では、保護されたティアナさんのほうだけは命に別状はないとのこと。 また、同事件との関連を調べる方針とのことです。 …繰り返します。誘拐されたイストさんですが、遺体で発見されました…』
[107]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:34:39 ID:dNxKCxxY 遺体? 遺体ってなんだっけ? 遺体ってどういうことだっけ? 起き抜けだし、まだ少し朦朧としているし。あまり難しい言葉はわからない。 ぼんやりと、それでいてテレビから目が離せないでいた時だった。 悲鳴のような声で、私の名前を呼ばれた。 私も、病院内の周囲の人たちも、何事かと声の人物を見る。 あ。 ウェスちゃんだ。 私の親友。そしてイストちゃんの姉。私は彼女に、何か伝えなきゃいけないような気がする。 でも、何をどうやって伝えればいいのか、よくわからない。 それにしても。彼女とは長い付き合いだけど、あんなに怒って興奮しているウェスちゃんの姿は見たことがない。 ウェスちゃんは私のほうに走ってきて…私の服の胸元あたりを掴んだ。 ウェス「ティアナ、ティアナ!? あなた、無事なの!?」 ティアナ「え、ええ…そう、みたい…」 それからの親友の言葉は。今の、朦朧としている私には、よく理解できなかった。 でも、どれもが心に突き刺さってくる。
[108]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:36:11 ID:dNxKCxxY 「どうしてあなた だ け 無事なの!?」 「一緒に捕まっていたんでしょ!?」 「イストは殺されたわ。…ええ、私もイストの遺体の確認に行ったんだから!!」 「あれは遺体なんてキレイな言葉じゃないわ!! イストは、あんなにズタズタになってたのよ!?」 「でも、なんであなた だ け 無事なの!?」 「捜索届けだって、あなたのも一緒に出したのよ!?」 「ねえ、聞いてる!? どうしてあなた だ け 無事なの!?」 「一緒だったんじゃないの!? 助けてあげなかったの!?」 「それともティアナは、自分が助かるためにイストを売ったの!?」 よくわからない。アタマが痛いし。まだクスリが抜け切ってなくて朦朧としてるんだ。 でも。これだけは伝えなきゃ。イストちゃんを助けられなくて… ティアナ「… ご め ん な さ い 」
[109]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:40:33 ID:dNxKCxxY その後の親友の錯乱ぶりは、見ていて痛々しい程だった。 身体の大きな警察の人が、なんとか彼女を押しとどめているが、あの体格差でも手こずるほど。 そして彼女が私に投げてくる罵詈雑言。 もう言葉じゃないかもしれない。剥き出しの、悪意とか敵意、殺意のようなもの。 私は。アタマが痛くて。ズキズキ痛くて。痛みが収まらなくて。 そのせいか動けないでいると。警官が何人か集まってきた。もともと、入院した私についていた警官なのだろう。 彼らに手錠をかけられた。別に抵抗するつもりなんてないのに。 警官「ティアナ・ランスター。イスト誘拐殺害事件の参考人として任意の事情聴取を行うのでご同行願います。 …手錠は、公共の場での不適切な言動。精神障害の可能性を鑑みての、一時隔離のためです」 ティアナ「…?」 警官「とにかく来てくれ。君がいると、イストさんのお姉さんが興奮するから」 ティアナ「はい…」 両脇を抱えられて連行される最中。私の右隣の警官が吐き捨てた。 右隣の警官「……。俺も色んな犯罪者を見てきたが。お前ほどブチ殺したくなるヤツもいないな」 ティアナ「…なんのこと?」 左隣の警官「逮捕の際に誤って射殺、という事例が減らないのもわかる」 ティアナ「……?」
[110]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:41:58 ID:dNxKCxxY どこかで、テレビかラジオのニュースが流れているのを耳にした。 『内務省直轄の武装組織、機動六課のメンバーがイストさんの誘拐殺害事件に関与していた疑いが出てきました。 機動六課は内務省に編成された国際救助隊として認知されている組織ですが、 かねてより独自の権限による過度の情報収集や武力行使が懸念されていました。 機動六課のメンバーの一人は、以前の麻薬大量押収事件についても関与していた可能性が高いとされています』 私は、また警察に長い間拘留されることになる。
前
次
写
名前
E-mail
0ch BBS 2007-01-24