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キャプテンブライト9
[93]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:06:50 ID:dNxKCxxY ウェス「…ティアナ、大丈夫?」 ティアナ「う、うん…」 ウェス「私のほうで、お医者様、探そうか?」 ティアナ「平気よ。だいたい、医者は役に立たないもん。時空管理局の医者だけじゃなく他でも診てもらったけど。 そういうトコで処方されるクスリって全然ダメ。気休めにもならないわ。やっぱり、なのはさんのクスリが一番」 ウェス「ならいいけど…。でも心配なの。ティアナって最近、妙なテンションの時があるし。 そういう時、凄く楽しそうなのはいいんだけど、呂律が回ってないし…」 ティアナ「やーねー。セリフを『噛 む』ことなんて、私の小さい時からのクセじゃない」 ウェス「うん…。大丈夫なら、いいの。ちょっと心配になっただけ」 彼女はようやく、笑ってくれた。良かった。彼女が哀しそうな、不安そうな顔をしていることは、私はイヤだ。 彼女が笑顔になれば、私も笑顔になれる。 唯一無二の親友。 私の家族より、私のことを知ってる人。 世界中で。私と彼女だけしか知らない秘密も、いくつかあるほど。
[94]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:08:06 ID:dNxKCxxY ティアナ「そう言えばさ。イストちゃんは元気?」 ウェスの妹のことだ。今は中学生になったあたり。 年齢が離れてるからか、ウェスはイストのことをとても可愛がっている。 イストの性格は姉と逆で、開放的で外交的。すぐに誰とでも仲良くなれる。 ウェス「元気よ。あの事件でティアナのことも随分心配してたわ。 ただお父様の言いつけで、もう、ティアナにあまり会いに行くなって言われてるけど…」 ティアナ「しょうがないわよね。普通の親御さんなら、妙な前歴の女に会わせたくないのもわかるわ」 ウェス「でもイストはティアナのこと、全然ヘンに思ってないわ! 凄く心配してたし、会いたがってた。 あ、ビデオチャットなら大丈夫よね。後でメール送るわよ?」 ティアナ「うん、ありがと」 ウェス「じゃ、私はこれで帰るけど…。やっぱりティアナ。私のほうでもお医者様を探してみるわ」 ティアナ「そんなに気にしなくていいのに」 ウェス「気にするよ! ティアナは、キミキスのアニメ版に絶望した人に刺されるかもしれない立場なのよ!?」 ティアナ「んー。よくわからないけどね。でもありがとう」 ウェス「じゃ、またね」 ティアナ「ばいばーい」
[95]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:09:14 ID:dNxKCxxY 警察から釈放された後、ウェスとは何度も会ったんだ。でもイストとは会ってない。 イストは、私から見ても妹のような感じだった。 小さい頃。ウェスと一緒によく三人で遊んだし。 もう二度と会えない…ということはないだろうけど、ビデオチャットでは味気ない。 そうだ、明日は非番だし。 こっそり、会いにいっちゃおう。 少しはゆっくり話したいし、イストの学校が終わる放課後がいいかな。 ----- 学校の行き帰りには、イストは専属の運転手つきの車で通学している。 ウェスもそうだった。今にして思えば、かなりの資産家だと思う。 昔は、私も一緒に乗って近くまで送ってもらったっけ。 学校の時間が終わる頃。校門の前の目立たないところで待ってみる。 もし彼女が部活とかやっていたら…とも思ったが、門の近くに見慣れた車が駐車していたので、楽観的だった。 それはイストの送り迎えの車。私も小さい頃に乗せてもらった車。 その車がもう待っているということは、つまり下校時間が近いということだ。 ふと。学校の校舎のほうから、何人かの友達に囲まれたイストの姿が見えた。 …声をかけるのに、躊躇してしまう。 おそらく人気者であろうイストと。警察に逮捕されてた私と。釣り合わないような気がして。 だが逆にイストのほうが、私に声をかけてくれた。 周囲の友達に何か言った後、こちらに走ってくる。
[96]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:11:00 ID:dNxKCxxY イスト「ティアナおねーちゃん、久しぶりー☆」 ティアナ「イストちゃん。元気だった?」 陽だまりの、いい匂いがする。前に見た時よりも、少しだけ大きくなったかな? 気のせいか。 この前に会ったのだって、せいぜい何ヶ月か前なだけだし。 イスト「…ねえティアナおねーちゃん」 ティアナ「ん?」 イスト「ティアナおねーちゃんは、犯罪者じゃないよね?」 ティアナ「あー、やっぱり世間ではそういうふうに見られるんだ…。何か手違いで捕まっちゃったけど。違うわ。 だから警察も釈放してくれたんだし、機動六課…時空管理局にも戻れるんだし」 イスト「良かった! ウェス姉さんは『違う』って言ってくれたけど。お父様もお母様もハッキリしないんだもん」 ティアナ「まあ、しょうがないわよ。世間体で言えば、色々とね」 イスト「ティアナおねーちゃん、一緒に帰ろう?」 ティアナ「でも。車に乗ってったら怒られちゃうかも…」 イスト「近くで降ろしてあげるから、大丈夫だよ。…あれれ?」 ティアナ「?」 イスト「運転手さん…今朝と違う人…」 ズキッと、アタマが痛んだ。
[97]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:12:35 ID:dNxKCxxY 送迎用の車から降りてきたのは、やや若い、柔和な顔立ちの男の人だった。 運転手「すいません。おやっさんが急に腰を痛めてしまって。私は代理です。詳しくはお母様に聞いてください」 イスト「はい」 なんだろう、またアタマが痛む。 運転手「そちらの方は?」 イスト「私の古くからのお友達です。一緒に乗せていっていいですね?」 運転手「構いませんが…。信頼できる人なんでしょうね? 揉め事はごめんですよ」 イスト「大丈夫ですっ!!」 ちょっと居心地が悪かったが、お言葉に甘えて車に乗ることにした。 車での帰り道。イストは、最近の学校の話や、色々なことを話してくれた。 それはどれも他愛もない話だったが…私はとても嬉しく、楽しかった。…嬉しそうな、彼女の笑顔だけで。 と。急に車が減速した。 ティアナ「どうしたんです?」 運転手「工事中になってます。通行止めになってますね」 運転手さんは、ナビでチェックした。その工事中のデータはナビにない。 迂回路を探すと、渋滞が酷くなっているようだ。 運転手「…ツイてない。裏道を通りますよ」
[98]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:15:04 ID:dNxKCxxY 車は、裏道に入って。少し目的地から外れて。人通りの少ない道へと入って。 次の瞬間、車の後ろで軽い爆発音のような音がした。同時に衝撃。 イスト「な、なに…?」 ティアナ「爆発!?」 運転手「ちょっと見てきます」 運転手さんは車の外に出て、後ろに回りこんでから…戻ってきて運転席のドアを開いた。 運転手「今日は本当にツイてません。パンクです。予備のタイヤに変えるんで、10分くらい待っててください」 再びドアを閉めると、彼は車の後ろに回って…ジャッキやら予備のタイヤやらを取り出しているようだった。 またアタマが痛む。なんだろう、今日は。 ティアナ「あれ? イストちゃん?」 いつのまにか。イストは穏やかな寝息を立てて、眠っていた。その手が、私の服の裾を軽く握っている。 ティアナ「ふふっ。寝ちゃったか…」 その寝顔を見ていると。私もなんだか眠くなってきた。 …でもアタマが痛い。 これだけ痛いと、眠れないのはわかってるんだ。 痛みはどんどん強くなってくる。 そして。 普段なら、痛みで眠れないはずなのに。なんだかとても眠くなってきて…。なんでだろう。 …どうしても眠れない時に飲む睡眠薬のような感じ。 どうして? 車の中!? 空気…!?
[99]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:17:45 ID:dNxKCxxY 目を覚ました時は、薄暗い部屋の一室だった。 思い出したくもないけれど、両手首に懐かしい感覚がする。 見なくてもわかる。手錠だ。それも、魔力ごと封じ込める手錠。 並みの魔法使い…少なくとも今の私では、これをつけられたら魔法はほとんど使えない。 ティアナ「ッ!」 起き上がろうとして、首のあたりが突っ張った。 …手錠は、警察の取調べで慣れている。でも。 警察でも。いや、警察だからこそ。人間の首を鎖で繋ぐような扱いはしない。 ティアナ「(こ、ここは…イストちゃんは!?)」 薄暗いが、部屋には電気が燈っている。イストちゃんは、私のすぐ横にいた。 眠っているが、私と同じように手錠をされて。そして首輪で鎖で繋がれてるのは…おそらく私も同じ。 部屋の中には、もう一人いた。椅子に座って不機嫌そうにこちらを見ている若い男。 運転手さんだ。 ただ、さっきまでの優しそうな笑顔はない。澱んだ瞳でこちらを見ている。 ティアナ「運転手さん? これ、どういうことなの!?」 運転手「アンタ、もう起きられるのか!? クスリが効きにくいのかな? しかし今日は本当にツイてない…」 ティアナ「え?」 運転手「あんたにも簡単にわかるように言うと。俺たちはそこのイストお譲ちゃんを誘拐したわけ」 ティアナ「誘拐!? できるわけないわ。あなた、この近くに、どれだけの魔法使いがいるかわかってるの!? いいえ、数だけじゃないわ。Aランク以上の魔法使いの数…」
[100]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:20:00 ID:dNxKCxxY 運転手「警察は俺たちを 全 力 で 探さない。動いても形だけ。そういう『取り決め』だったんだ」 ティアナ「取り決め?」 運転手「ある種の紳士協定があってな。お巡りさんの中にも悪い人がいるし、俺らの中にもマシなのもいる。 今日はそういうヤツらの小さな集会でね。俺たちがイストお嬢ちゃんの身柄を確保して、 代わりに俺たちのパトロンが何かを確保するとか、そういう話」 ティアナ「『何か』って?」 睡眠薬らしきものがカラダの中に残っていて。朦朧として、よくわからない。 運転手「そんなの知らないし、俺たちはどうでもいい。公共案件をどっちが入札したって俺たちには関係ない。 最低落札価格や入札順、どっかの会社の株価とか、何かのレートとか。どうでもいい。 ただ、そういうことに興味を示す人種がいて、彼らがカネを出すとなれば別だ。俺たちが動く」 ティアナ「何を言ってるのか、よくわからないわ」 運転手「俺もよくわからないからな。ただ喧嘩とか戦争のようなもので。これは『威嚇』なんだ。 ここまでするぞ、という威嚇。それに対してイストお譲ちゃんのパパがどんな判断をするか…。 いや…まあ実際は。それすらも決着がついてた出来レースだったんだ。 本来『イストお譲ちゃんは誘拐されるが、無事に解放される』っていうストーリーのはずが、邪魔なモノができた」 ティアナ「邪魔なモノ?」 運転手「お前の存在」 ズキッと、頭が痛んだ。
[101]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:22:23 ID:dNxKCxxY 運転手「本来、イストお譲ちゃんの捜索届けは、出されてもなかなか上に上がらないようになってたんだが。 お前の友人か仕事仲間の誰かが、別口で『お前の』捜索届けをも出したらしい。 必然的にイストお譲ちゃんの捜索届けも、上に上がって。このままじゃ俺たちの誘拐事件が世間に流れる」 ティアナ「…どういうこと!? どうなるって言うの!?」 運転手「それはボスが今、各方面と交渉中。まあこれくらいの想定外なら予想もつくけどな」 その時、静かにドアが開いて。品格のある中年男性が部屋に入ってきた。 運転手「あ、ボス。交渉はどうです?」 ボス「妥当なところで落ち着くよ。しかしお前も手荒すぎるぞ」 運転手「すんません…。でもこの女が一緒に車に乗ってきたんだから、しょうがないでしょ」 ボス「確かに、今日のタイミングを外したら全く意味がなくなるしな…」 運転手「この女は?」 ボス「あと2時間」 運転手「…だとさ」 こちらを見られるが、まるで意味がわからない。きょとんとしていると、彼は優しく付け足してくれた。 運転手「お前の命の、残り時間だよ」 ティアナ「え…」 運転手「正確には2時間以内に、死体に多少の細工をしなきゃ俺が怒られる。だからお前の命はあと1時間半くらい」
[102]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:25:26 ID:dNxKCxxY そう言われても…ピンと来ない。 理不尽なことなら散々受けてきたし。 もし突然殺されても、なんだかその延長のようなものだと思ってしまう。 運転手さんは楽しそうに笑っていたが。私が何の反応も示さないことに驚いたらしい。 運転手「おいおい、あんた自分の立場わかってるの? もう、死んじゃう一歩手前なんだよ?」 ティアナ「…イストちゃんは?」 運転手「ん?」 ティアナ「私が死ぬとして、イストちゃんはどうなるの?」 ボス「あぁ、安心していい。あのお譲ちゃんに死なれたら俺たちの商売にならないからね」 ティアナ「良かった…」 運転手「そんな心配をしてたのか? へんなやつ」 ボス「いやいや、魂は天国に行けるかもしれないよ…。ん? おい、お前!?」 ボスと呼ばれていた男の声色が、突然、変わった。 ティアナ「え…?」 ボス「名前は何だ?」 ティアナ「え? 名前? ティアナです。ティアナ・ランスター…」 ボス「身分証は!?」 ティアナ「右のポケットの、お財布の中です」 ボスと呼ばれた男は慌しく私のポケットを探り、お財布を抜き出し。 身分証の顔写真と私の顔を見比べて。…天を仰いだ。 運転手「どうしたんです、ボス?」 ボス「ティアナだ、こいつティアナだよ」
[103]キャプテン・ブライト ◆xWA.3pF8tM :2011/09/23(金) 03:27:16 ID:dNxKCxxY 運転手「知り合いですか?」 ボス「ニュースくらい見てろ。一ヶ月くらい前、あっち関係で派手に捕まったヤツがいるだろ」 運転手「ああ!! ティアナって、あのティアナ!!」 どうやら私は。私の知らない所で、結構な有名人になっているようだ。 運転手「でもティアナってクスリ方面でしょ。ぶっ転がしても、ウチらと競合しないんじゃ」 ボス「情報に疎いと早死にするぞ。…ティアナは『ホワイトデビル』の手駒、という噂がある」 運転手「『ホワイトデビル』の手駒!? ボス、まずいじゃないですか。そんなヤツぶっ転がしたら…」 ボス「だから困ってるんだろ! まずいぞ…」 え? 何? 手駒? ホワイトデビル? ボス「『ホワイトデビル』に対して、俺たちが敵対してないことを示さねばならん」 運転手「どうするんです?」 ボス「状況が変わった。ティアナを絶対に傷つけるわけにはいかなくなった…。その前提でもう一度交渉してくる」 ボスは慌しく部屋を出て行った。運転手は椅子に座りなおし、それでも落ち着かない。 何度も深呼吸しては、汗を拭っている。 逆に私は危機感とか恐怖感とかがマヒしているのかもしれない。特に恐くもなかった。 ただ、親友の妹イストちゃん。彼女だけが気がかり。 隣で拘束されて眠っているイストちゃんに囁いた。大丈夫だよ、って。
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0ch BBS 2007-01-24