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【崩落のステージ】Another-C_8【 前篇 】
[241]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/10/12(水) 20:04:15 ID:??? もう一つの世界でのアルシオンは、どうやら今の彼よりも幾分か年上のようだった。 しかしそれでもアルシオンと同じようにサッカーを愛し、同じようにネズミのアニメーションを愛していた。 アルシオン「オレは…」 そこでの彼は順風満々の少年〜青年時代を過ごしていた。 彼のサッカーの上手さは街の内外に知られ、国内最大のクラブチームがスカウトに来るほど… 地元、国内、世界とそのステージを順調に登っていったが、躓く事は皆無。 彼は若くして世界に認められ、フランスのビッグクラブに入団…その才能は国境を越える事に成功したのだ。 また結婚も早く、苦しい時は妻が支えてくれていた。 アルシオンは今の今まで自分が不幸だなどと思った事はなかった。 しかし、もう一人の自分の姿は余りに眩しく映るほど幸福であった…あの時までは。 クロアチアの独立、突如始まった戦争。 アルシオンが先日ラジオで耳にして情報を求めた内戦は、もう一人の自分も体験していた。 それまで隣人だった人間同士が、その日を境に殺し合いを始めたのである。 フランスで故郷の惨状に絶望する彼の気持ちが、アルシオンにも実感として入り込んで来ていた。 続いて、上から押し潰してくる様なスポーツ制裁が彼(ら)の身に降って湧いた…。 サッカーをする自由を・・・権利を踏み躙られ、国外退去を強いられながらも空港に閉じ込められていた。 誇りと夢と希望をいっぺんに奪われ、苦しみに地に臥す彼。 アルシオンの中に入り込んできたのはそこまでである。
[242]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/10/12(水) 20:05:15 ID:??? アルシオン「オレは・・・」 もう一度彼は同じように呟いた。 その顔を注意深く見れば、頬に薄く涙が流れているのが判ったであろう。 ジョアンと旅を始めてからの9年間、どんな時であっても彼が涙を流す事はなかったのに。 アルシオン「父さん、母さん・・・。」 失われた記憶・・・思い出せなかった顔。 入ってきたイメージの中に、今まで懐かしいと感じる事も出来なかった両親の姿があった。 それは当然記憶にない顔だったが…しかし自分の両親だと一瞬で理解する事ができた。 何となくしか感じられなかった心の欠乏が埋まり・・・同時に失くしていた本来の記憶も戻った。 楽しみにしていた試合・・・レッドスターvs地元ラドニツキ・ニシュ。 その試合中に突然起こった乱闘。 自分を連れて出口へと急ぐ両親・・・しかし父は誰かに肩を掴まれ、倒されて殴られていた。 何度も何度も殴られ、棒で叩かれ、声を発する事も微動だにする事も無くなってしまった。 絶叫する母と自分。 その瞬間にショックで気を失った事まで明確に思い出せた。
[243]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/10/12(水) 20:06:18 ID:??? アルシオン「うっ・・・クッ・・・・・・ウアアアァァァァァッ!!!!」 絶叫と共にアルシオンは地に臥した。 四つん這いになって、何度も何度も拳を地面に叩きつける。 涙と鼻水が混ざった液体を土の上にボタボタ垂らし、彼は泣き叫ぶ。 アルシオン「これが人か! これが世界か・・・!」 幸せであると信じ続けた9年間は、幸せでも何でもなかった。 それを壊した煮えくり返るような不幸の後に残った、砂粒程の希望でしかなかった。 そしてもう一つの世界に見た幸せも、勝手な人間達の起こした争いによって叩き壊されていた。 それは今この瞬間も、故郷の地では人が殺されていると言う事実も伝えていた。 これらを一度に受け止めきれる器をアルシオンは持っていなかった。 ジョアンと歩いた夜の道だけが『世界』であったアルシオンには、余りに大きすぎる体験だった。 絶望と一口に言ってしまうのも生温い絶望が・・・アルシオンの感情を掻き毟(むし)り、血だらけにした。
[244]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/10/12(水) 20:07:31 ID:??? アルシオン「こんな物が世界と言うならば・・・!!!」 その結果、アルシオンの中で何かが弾け飛んだ。 アルシオン「砕 け 散 れ ぇ っ ! !」 アルシオンは側にあった巨大岩を蹴り飛ばしていた。 普通の人間ならば脳がリミッターをかけ、“自分の足が砕け散らないように”力をセーブする筈だが・・・ 今のアルシオンには、そんなブレーキがかかる事はなかった。 そして次の瞬間・・・ B a k k o o o o o o o o o o o o o o m ! ! 巨大岩が粉々になって飛散する光景が描かれたのだった。 アルシオンの絶叫と巨大岩の破壊音は、暫しのあいだ夜のアレッツォの空に響き続けた。 その夜空には、夏の間は姿を消している筈の星・・・Alcyoneが強く悲しく光っていたのだった。
[245]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/10/12(水) 20:09:50 ID:??? 今日はこれだけです。 次回(早ければ明日)は三杉の視点に戻って話が再開します。 それでは退屈な幕間が続いておりますが、次回もまた宜しくお願い致します。
[246]森崎名無しさん:2011/10/12(水) 20:10:52 ID:??? ラ・オツデシタ
[247]森崎名無しさん:2011/10/12(水) 20:35:57 ID:??? ラ・オツデシター!
[248]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/10/13(木) 16:58:54 ID:??? >>246-247 ラ・オツカンシャですらー ============================================= ナムリス(なんとまあ…星をも砕きそうな蹴りだ。) 大岩が砕け散る様は当然ナムリスの目にも入っていた。 ヒドラの肉体と呼ばれる物を得た彼でも、この光景には驚愕を顕わにしていた。 巨大な岩を一蹴りで砕くのは、どうやら今の彼を以ってしても難しいと見える。 アルシオンは今の一撃を振り抜いた後、ヨロヨロとバランスを崩し始めた。 ナムリスは慌ててアルシオンに駈け寄り、その身体を支えた。 ナムリス「アルシオン、そんなフラフラで大丈夫か?」 アルシオン「うるさい…」 ゼェ…ゼェ… ナムリス「(ふむ…今は気を荒だてさせてはマズイのだろうな…。) 判った、取り敢えず座って息を落ち着かせろ。」 息を荒く答えるアルシオンの態度には、明らかに拒絶の意が見られた。 先程の体験の中で相当の物を見てしまったのだと予想はつくが、具体的には何も判らない。 個人的な理由からアルシオンの事を失いたくないナムリスは、 今の所は何も言わず、彼を岩畳に座らせ息を落ち着かせる事にした。
[249]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/10/13(木) 17:01:49 ID:??? ナムリス(さて、これからどうする…。 マエリベリーを探すのは当然…これは数と時間を使うしかあるまい。 …となると、オレの身体は暫くはアルシオンと共に在るべきだろうな…。 懸念は2つ……ミラルパと青き衣の奴の存在。 奴らがオレと同じように、 あの世界の知識と記憶を得ていたとしたら…きっと面倒な事になるからな。) 同じように岩畳に腰を掛け、ナムリスは2人の人物の顔を脳裏に思い浮かべた。 入って来た記憶にある世界で自身の弟であった、超常の力を持つ皇弟ミラルパと・・・ そして弟が恐れた存在…土鬼の土着宗教にて『世界を救う救世主』とされた青き衣の者。 後者については伝承の類に過ぎない筈だったが、その具現と思しき女を向こうのナムリスは見ている。 いずれの人物も、向こうのナムリスにとっては忌々しく邪魔な存在であった。 ナムリス「どうやら向こうのオレは歓迎していたようだが・・・ こちらの世界では決して遭いたくないところだな。」 そう呟いて夜空を見上げたナムリス・ユブンタイ。 目的の知れぬ狂気を宿した目は、今だけは星々の美しさの中を泳いでいた。 …同じ時間、遥か遠く離れた地において、ナムリスと同じ星を見ている少年が居た。 砂の海が広がる大地と、星の海が瞬く空。 この両者の境界の少し上を、大きな屋敷のベランダから見つめながら…少年は呟いた。 ???「宇宙の心……? 泣き叫ぶような声が聞こえる気がする…」
[250]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/10/13(木) 17:02:52 ID:??? ≪ロシア大陸・上空≫ 三杉「…ん………」 パシュパシュ 小さく目を瞬かせ、三杉は目を覚ました。 暗い天井、ややゆったりとしたシート。 『ゴォォォォ…』と唸りを上げるエンジン音も遠くから聞こえてくる。 片桐「起きたのか?」 三杉「片桐さん……ああ、そうか…」 隣から声をかけてきたサングラスの男を見て、三杉はシッカリと現状を把握した。 今はイタリアへと戻るフライトのさなか… 話がしたいと言う事で、片桐の隣席(ビジネス)の誘いを受けて自分は此処に居る。 三杉「どれくらい眠っていましたか…?」 片桐「もうすぐ6時間って所だな。 それで体調はどうだ?」
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0ch BBS 2007-01-24