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銀河シュナイダー伝説9 〜出帆篇〜
[207]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:02:46 ID:cVrr7pfk アルテミュラー「控えよボルツ!……では、兄上はわたくしが信用できないと?」 恩もあるクライストであれば冷静沈着である彼も、血を分けた従兄弟にまで同じように接する必要はない。 僅かに口調を硬質なものに変え、まるで追窮するかのように言葉を紡ぐ。 パウル「…っく。この、不肖な弟が!父上、今見たように、彼には反骨の相が見えております。 どうか私にも同じ権限を戴きたく存じ上げます」 隠そうともしない殺気でアルテミュラーを貫くが、そんなことで動じる彼ではない。それを確認した パウルはそれがさも叛旗の印であるが如くのたまい、実の父に曲解させる。 クライスト「………よかろう。では1500づつ天頂と天下に別れ防衛の任に…」 パウル「それには及びません。既に私の判断で、王宮の回り及び都市部には配下を置いております。 弟殿にはそれ以外の場所を守っていただきましょう」 まるでその言葉を予言していたかのように蛇のような瞳でそういい含める。
[208]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:03:55 ID:cVrr7pfk エマーリンク「なんだと!?では、マティアス様には極点を守れといわれるのか!」 この惑星『リグリア』はテラ・フォーミングをされているとはいえ非常に寒い土地である。 人の住める場所はこの氷の宮殿が建立されている首都と赤道付近に作られた幾つかの町だけであり、 それ以外は極点と呼ばれ、人が住むにはあまりにも厳しい気候となっている。 アルテミュラー「……わかりました。では、私たちは極点の治安維持に努めましょう」 ここではいくら反抗しても無駄であると判断する。なにしろ自分たちは5年ぶりの土地、 それに比べこの義兄はその間にいくらでも武官文官を言い含める時間があったのだ。 ここで大切なのは自身の能力でも口の立つ弁舌でもない。ただ、時間の有無が勝敗を分ける。 無駄な争いは、自身を追い詰めるだけだと知るアルテミュラーは、黙って引く事で傷を最小限度に 押さえることにするのであった。
[209]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:04:55 ID:cVrr7pfk ファーナ(アルテミュラー様…よろしいのですか?首都と町がそのまま何万もの人質になったような ものですよ) 無言で宮殿の中を去るアルテミュラーの背後に許婚であり、得がたい副官であるファーナがそう 声をかけてくる。 アルテミュラー(わかっている。だが、父上の病状も危うい。私がここで叛乱者として処罰されれば 誰があの兄上から民を救うというのだ。今はまだ我慢の時だ。パウルが暴走しないように 見張るものは必要だろう) ぎゅうっと握り締められた拳は血の色を失っている。ある程度予想していたとはいえ、 アルテミュラーの将来は幾多もの困難が待ち受けているのだと、改めて思い知らされるのだった。 〜〜〜
[210]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:05:55 ID:cVrr7pfk 〜〜〜 D.ルルーシュ・ランペルージの謎。 ルルーシュ・ランペルージ。この名前は偽名である。 彼の本当の名はルルーシュ・フォン・ゴールデンバウム。 現皇帝、フリードリヒ4世の兄である当時の皇太子リヒャルトは帝国暦452年に死を賜った。 罪状は父帝オフリート5世の弑逆(しいぎゃく)未遂。今から30年近く昔の話である。 だがそれは彼の弟、クレメンツ一派が冤罪をきせたのだと証明され、後にその罪は許される。しかし、 死んだ人間とは許されたからといって生き返るわけでもなく、本来、より直系に近いリヒャルトの 家系はそこで費えてしまう。……そのはずだった。 ナナリー「お帰りなさい。お兄様」 優しい声がルルーシュの鼓膜を震わせる。彼にとってそんなことはどうでも良いことで、 今はただこの愛らしい妹と何事も無く平穏に過ごしていく事こそ理想であった。
[211]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:07:16 ID:cVrr7pfk ルルーシュ「ただいまナナリー。いい子にしていたかい?」 盲目の少女。 歩く事も立つ事も出来ず、ただ暗闇の世界で声を聞き、言葉を発する事しか出来ない憐れな少女。 全てはこの忌まわしい家系ゆえの罪で、そういう意味ではどうでも良いことではなく彼は恨んでいた。 ナナリー「はい。お兄様をお待ちしている間に折り鶴を織っていたのです。よく出来ていますか?」 目の見えない彼女は自分の作ったものを見ることが出来ない。それは『義眼』という技術が発達した今でも 変わらない事実であり、それ故にナナリーの言葉は疑問系が多い。 ルルーシュ「ああ、よく出来ている。不思議なものだな。ただの正方形の紙がこんな綺麗なものを作る。」 恨みも辛みも全ては心の奥底。彼女にとってこの世界は優しいものでなければならず、ルルーシュは 彼女の前ではどこまでも優しい仮面を被っていた。
[212]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:08:17 ID:cVrr7pfk ナナリー「よかったあ。ミレイさんにお願いしたんですけど自分ではよくわからなくって…」 そうはにかむ優しい少女。長い亜麻色の髪がその心を表すかのように優しく揺れている。 ルルーシュ「大丈夫だよ、これからはいつでも一緒だ。」 安心させるように…否、自分を安心させるようにそう言葉を紡ぐ。 と、そんな会話に乱入者が。 ミレイ「ルル、お帰り。」 彼女の名前はミレイ・フォン・アシュフォード。アシュフォード家の一人娘で現在は彼らを保護している 立場にある。…つまり彼女はルルーシュの秘密を知る数少ない理解者でもある。
[213]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:09:19 ID:cVrr7pfk ルルーシュ「会長、お久しぶりです!元気にしていましたか?」 理解者であるが故に心からゆとりを持つゴールデンバウム王朝の隠された後継者。 ミレイ「まあね。今は中尉さんよ、ランペルージ少尉。」 ビッと敬礼をして茶化す。 ルルーシュ「ハ!アシュフォード中尉!」 まるで子供の戯事のように同じく敬礼すると、誰とも無く噴出してしまい、三人仲良く笑いあうのだった。 〜〜〜
[214]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:10:21 ID:cVrr7pfk 〜〜〜 F.ナイトハルト・デューター・ミュラーとフェザーン。 479年度卒業生代表である、ナイトハルト・デューター・ミュラー。 彼は様々な部署からの引き合いの後、どういうわけかフェザーン駐在弁務官事務所の駐在武官補という 待遇でフェザーン回廊唯一の有人惑星、フェザーンに勤務する事になった。 文官「ここからは基本的に武器の携帯は禁止なのでブラスターはお預かりします」 言動と所作は身分に対して過大に恭しいものであったが、そこには有無を言わせぬ強さがあり、 拒否する事は不可能であった。 〜〜〜 彼にとってはつまらない毎日が過ぎる。もちろん行うべきデスクワークは毎日が膨大であり、それに 集中していれば一瞬にして一日が過ぎてしまうのだが、軍人としてそれは不本意であり、本当に 何で自分がここに招聘されたのだろうかと疑問は尽きない。
[215]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:11:22 ID:cVrr7pfk ミュラー「上の考えは自分には理解しがたい事…ということか」 別段失点を犯した覚えも無い。それにこの部署での扱いは中尉としては格段の待遇であり、 まるで接待を受けている気分になる事も一度や二度ではない。 ミュラー(…つまりはそういうことなのか?) ようやくそう思い始めたころ、ようやく事態に変更が起きる。 ???「君がミュラー中尉だね。話には聞いている」 弁務官事務所にやってきたのは色黒の大男。文官にしてはしまった体付きをしているが、その所作や 言動から、彼は武官ではなく文官である事が見て取れる。 ミュラー「…貴方は?」 スキンヘッドのやや鋭い目つきの男に遠慮なく尋ねる。
[216]銀河シュナイダー伝説:2011/10/06(木) 00:12:22 ID:cVrr7pfk ???「失礼した。私の名はルビンスキー。アドリアン・ルビンスキーというものだ。今はしがない 補佐官をしている。」 力強い声は自身の表れなのだろうか?彼は威風堂々ミュラーを直視する。 ミュラー「補佐官殿でしたか。失礼しました。」 補佐官という名前だけでは箔はないのだが、このフェザーンにおいて補佐官というのは フェザーン自治領主の補佐官…つまり実質的なナンバー2であることを示していた。 ミュラー「それで、私に何の御用ですか?」 運命が戸を叩く音がする。恐らくこの数ヶ月間はミュラーがどういった人物かを見定める 期間だったのだろう。どうやら知らぬ間にそれに合格した彼は、ようやく自分の運命が 大きく変わる音を聞くのだった。 〜〜〜
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0ch BBS 2007-01-24