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【魔王の足音】幻想のポイズン55【天才の意地】
[572]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 01:59:19 ID:??? クローデル「や、やらせるか!」 バージェス「好きにはさせん!」 ボッシ「(ここを抜いて……シュートだ!)」 シュバババッ シュバッ クローデル「え……?」 バージェス「な、なにを……?」 スタタタタタッ! ボッシ「……よし!」 最後に、ボッシはDF2人を鮮やかなドリブルで抜き去った。 三杉「……素晴らしいドリブルだ。 まさか、フランスでピエール以外にあのレベルのドリブルが出来る者がいたとは」 来生「え? 何? なんかすごかったのか、あのドリブル?」 橙「スピードも無い、ふつうのドリブルに見えましたけど……」 藍「……芸術的と言って過言ではないドリブルだったよ。 派手さはないが、素晴らしい」 それはフランスのキャプテン、エル=シド=ピエールの見せるドリブル――「芸術的なドリブル」……を目指したテクニカルドリブル。 到底ピエールには敵わないまでも、ボッシは懸命に練習を重ね、そのドリブルを完成させた。 ピエールのそれのように派手さは無い……しかし、ある意味鮮麗されたシンプルな機能美というものがそこにはあった。 高速でのフェイント、またぎを織り交ぜ緩急をつけたそのドリブルは、 見る者によっては解釈がわかれるだろうが芸術的なドリブルと言って間違いのない代物だった。
[573]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:00:21 ID:??? ボッシ「(よし……シュートレンジだ! ここしかない……時間が経つ程固くなるキーパーから点を奪うには、ここしかない!!)」 グワアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!! ジョン「ああああああああああああああっとぉ!? これは凄い、ボッシ選手、DF達をするすると抜き去り……。 PA内に入ったァ! そして、右足を大きく振りかぶるゥ!! これは入るか、ネオサーブルノワール!!」 観客「ボッシ! ボッシ! ボッシ!!」「いけー、ネオサーブルノワールだ!!」 萃香「ういぃ〜、酔いも適度に回ってきたよぅ〜……っと」 ボッシ「これが俺の……ネオサーブルノワールだァァァァアアアアアアアアアアアアッ!!!」 バコッ……ドカァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!! 観客たちの声援を背に、さとりの――仲間たちの期待を胸に、ボッシは大きく振りかぶった右足を強く打ち下ろした。 瞬間、ボールは鈍い音を立てながら射出され小さく弧を描きながらゴールへと突き進んでゆく。 ボッシ「(か、会心の当たりだ! これなら……!!)」 ここまで見事に突破をしてきたボッシは波に乗っていたのか、この時のネオサーブルノワールは会心のインパクトで撃てた。 スピードも破壊力も、ナポレオンのハイメガキャノンシュートにはまるで敵わない。 だが、それでも自分に持てる最大限の力で撃てたこのシュート。 これならばきっと入る、これが入らなければきっとこの試合何をやっても自分はゴール出来ない。 そう思う程に、ボッシはこの一撃に自信を持っていた。 ピエール「(決まった……!)」 こいし「(やった! これで1点リード! 後は守り切れば私たちの勝ちだ!!)」 それは周囲の者たちも同じだった。 しかし、結果は違った。
[574]森崎名無しさん:2011/11/26(土) 02:00:41 ID:??? ハットトリックなら間違いなくいける
[575]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:01:54 ID:??? 萃香「鬼を……舐めるんじゃァないッ!!」 ブォンッ! ドガバチィイイイイイイイイイイイインッ!! ボッシ「な……」 その小さな腕を振りかざしながら、ボールに向けて飛びかかった萃香。 渾身の力を持って振るうその右腕は適格にボールを射抜き。 鬼の一撃を受けたボールは轟音を立てながら、大きく弾き飛ばされたのだった。 ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! ジョン「あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!? だ、駄目です! やはり駄目だぁ、フランス、点を決める事が出来ないィィイイイッ!! ボッシ選手のネオサーブルノワールは決まらずッ! 萃香選手、その右腕一本で強引に弾き返したァ!! 流石は幻想郷が誇る鋼鉄の小さな巨人、伊吹萃香! 凄まじいセービングですッ!!」 観客「畜生、なんであれが入らないんだ!」「もう……ゴールしてもいいよね……」 この結果を見て、観客席からは一斉にため息が漏れる。 ここしかないという決定機で、ボッシは持てる力の全てを出しきり、シュートを放った。 しかし、そのシュートは阻まれた――伊吹萃香というGKは、それでも超える事は出来ない程巨大な存在だった。 これを見てため息を出すなという方が無理な話であり……フランス贔屓の観客たちが項垂れる一方。 フィールドではウルグアイJrユースメンバーが一気に士気を盛り返しカウンターを仕掛ける。 ビクトリーノ「よし、いくぞ皆! スイカの堅守に応える為にも1点取ろうぜ!」 ピエール「くっ……ま、まずい! 皆、戻れ!」 ボッシ「(だ……だ、駄目なのか……? 俺じゃ……やっぱり駄目なのか……? どう足掻いても、ナポレオンみたいに点は取れないのか……?)」 萃香「(ふん、反町やレミリア、魔理沙や霊夢みたいな強い奴にならともかく。 へなちょこFWなんかに点を決められてたまるかってんだ)」
[576]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:03:17 ID:??? 強い者に憧れ、並び立ちたいと願ったFWと、強い者以外には興味の無いGK。 両者の勝負は後者に軍配が上がり……それと同時に試合は一気に勝者側の方へと傾く。 タタタタタタタタタッ ドゴール「ムガーッ!」 ビクトリーノ「やらせるかよ、っと。 それっ!」 ポーンッ 文「はーい、ナイスパスですキャプテンさん!」 こいし「あんたは私が……!」 文「(こいつをかわすのは骨ですからねぇ……危ない勝負はしないが吉)はいどうぞ」 こいし「あーっ、逃げた!」 ビルト「いい判断だ、アヤさん!」 フランスの攻撃失敗からカウンターを仕掛けたウルグアイは、ビクトリーノ・文のスピードを生かして速攻で攻め上がる。 タックルの上手いドゴールをパスでかわし、優秀なボランチのこいしは相手にせず。 そのまま横にフォローに来ていた味方へとパスを繋げ、一気に攻め立てる。 ジョン「ああ〜っとぉ! これはフランス、一転してピンチ! 攻めていた穴を突かれ、逆にカウンターを食らったァ! ウルグアイ、素早いカウンターで一気に攻め上がり……これはシュートまで持って行けるか!?」 反町「さっきの萃香さんのセーブで一気に流れが傾いたな……」 にとり「フランスFWのシュートも良かったけど……それ以上に萃香様が凄かった。 ありゃ抜けなくても仕方ないよ……」 魔理沙「だけどフランスの希望はアレしかなかったからな。 見てみろ、あのFW……まだゴール前で立ち止まってやがる。 完全にオフサイドの位置だってのに」 美鈴「それだけショックだったんでしょうねぇ……」
[577]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:04:23 ID:??? ビルト「(よし、なんとかセンタリングを上げられる位置までこれたが……)」 文「ビルトさん、ハイボールを!」 ビルト「(ん? アヤが自分でボールを要求するのは珍しいな……やらせてみるか)それっ!」 その後、ウルグアイ右ボランチ――ビルトはボールを持ったまま右サイドを駆け上がり、ボールを要求する文へとセンタリングを出す。 自らがゴールを奪う事には興味があまり無く、人を立てるアシストを好む文にしては珍しいこの事に。 何か策があるのかとビルトが見守る中、文はセンタリングに合わせて高く飛翔。 天狗の力を使ったその驚異のジャンプ力でボールにあわせ……フランスもここは守って見せると気合を見せてクリアーに向かう。 ルスト「こーいつでとどめだー! スクランダークリアー!!」 ベルジェル「ここでクリアーしてキャラを立ててやる!」 文「(どいつもこいつもおバカさんですねぇ。 覚り妖怪相手に私がPA内からシュートする筈無いでしょう)」 さとり「(!? これは……)いけません、皆さん、下がって……!!」 文「遅い遅い、指示が一歩スローリィです!」 スカッ ベルジェル「なにィ!?」 ルスト「やーりゃがったなコンチクショー!!」 しかし、文はこのボールをスルーした。 さとりセービングを掻い潜って自らがゴール出来る筈は無いと文は自覚をしていたのだ。 さとりは心を読む事でこの事に素早く気づき、転倒をするような事はなく少しバランスを崩すだけで済む。 だが、フランスDFのルストとベルジェルは一杯かわされた形となり、ボールはそのまま左サイドへと流れ……。
[578]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:05:57 ID:??? ビクトリーノ「でかした、アヤ! 決めてやるぜェッ!!」 グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! ジョン「あ、ああああああああああああああっ!? これはまずい、フランス! なんとFWのビクトリーノ選手が、左サイドまで流れています! 完全にフリーだァ!! そしてビクトリーノ選手、ボールを持った瞬間、素早くミドルシュートの体勢を取る!」 この一連の流れは、ハーフタイム中にビクトリーノと文の間で交わされた作戦である。 同点のうちは本気を出さぬ勇儀に、鉄壁の守備力を持つ萃香。 このままでは負ける事はなくても勝つ事もなく――それでは決勝へと上がる事も出来ないのが現状のウルグアイ。 どうにかして勇儀抜きで1点を取る事は出来ぬか、と考えに考えた末の作戦がこれなのだ。 ビクトリーノ「(俺のダッシュ力を生かしたボレーはPA内からのシュート――あのキーパーにゃ悔しいが通用しない。 なら俺のパンサーファングを使うしかねぇが、こいつも普通に撃ったんじゃ弾かれるのがオチだ! ……でも、フリーのこの状態からなら……バランス崩してる今なら、入るだろ!?)」 さとり「くっ……」 ビクトリーノ「いっ……けェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」 パシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!! 願いを込めた渾身のシュートは、鋭い音を立てながらゴールを襲った。 フリーの状態から全力で打ち抜いたパンサーファングの威力は、決して油断のならないものである。 さとりは体勢の整わぬままに拳を握りしめながらパンチングへと向かい、横っ飛びにダイビングをする……。 サッ ブラボー「おお、ブラボー……」 さとり「!!」 ビクトリーノ「げっ!?」 しかし、そのシュートコースに割って入る者がいた――フランスDF、CBのブラボーである。
[579]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:07:20 ID:??? ビクトリーノ「(構うもんか! いくらなんだってあんな無茶な姿勢で止められる訳ねぇ!!)」 その光景を見て、ビクトリーノはそう判断をした。 実際、慌ててブロックに飛んできたように見えるブラボーの体勢はバラバラ。 辛うじて足を突きだすような形でボールに触ろうとしており、最悪オウンゴールになりそうなブロックだったのだ。 故に、彼はこの後、自らの身に降りかかる災難をこの時はまるで予期できていなかった。 ブンッ!! 勇儀「? なんのつもりだい?」 こいし「キャプテン!」 迫りくるシュートを前に、ブラボーは何故かその右足を大きく振りかぶりボレーシュートの姿勢を取った。 そのフォームを見て勇儀は首を傾げ、こいしはブラボーを鼓舞するように名を呼んだ。 魔理沙「……あいつも使いやがるのか」 霊夢「こりゃまた……厄介」 映姫「ふむ……中々の美しいフォームです」 観客席のその"技"を知る者は、そのフォームを見た瞬間にブラボーの狙いを理解した。 そして、次の瞬間――――。 フィールドに立つ選手、観客席の観客、実況席の実況は――唖然とした。
[580]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:08:42 ID:??? ブラボー「シルバースキンッ!」 ガチィッ…… ブラボー「……リバースッ!!!!!!」 ブォッ……グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!! 勇儀「な……!?」 文「にィ!?」 ブラボーはビクトリーノのパンサーファングを、そのまま綺麗に"打ち返した"。 ブロックにかけて非凡な才を持つブラボーの奥の手――「シルバースキン・リバース」。 それは俗に言うカウンターシュートと呼ばれるもので――。 しかし、まさか彼がそのような大技を使えると思っていないウルグアイの面々は呆気に取られながらそのボールを視線で追う。 ビクトリーノ「う……う、うそだろぉ!?」 リラダン「あ、ああ……」 バージェス「な、なんで……」 破壊力は無い、が……驚異的なスピードでウルグアイゴールへと戻されるボール。 これを止める事はウルグアイJrユースDF陣には出来ず、見送ってしまい……。 萃香「ば、馬鹿にすんじゃないよォッ!! そんなザコの撃ったシュートが……決まるかァァァアアアアアアアアアッ!!」 ゴバチィッ!! それでも萃香が意地を見せて辛うじてパンチングに成功をした。 彼女にとって幸いだったのは、ブラボーがゴール前からカウンターシュートをした事。 そして、シュートの元となったビクトリーノのパンサーファングが、然程強力なシュートと言えなかった事であろう。
[581]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:09:58 ID:??? だが、まだウルグアイのピンチは続いていた。 萃香が辛うじてゴールを守ったものの、それは本当に辛うじて――ボールは遠くに弾く事も出来ず、零れ球となったのだ。 それでも、本来ならばピンチではない。 低く守っていたフランスがこのボールをフォロー出来る筈もなかったのだから、DFがフォローしてクリアーすればいいだけの話だった。 ……本来ならば。 テンテンテン…… コロッ ボッシ「………………え?」 萃香「!?!?!???」 ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!! ジョン「あ、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああっ!? なっ、なんという事でしょう!? ウ、ウルグアイ! 得点チャンスかと思われましたが……。 しかし、しかし! DFのブラボー選手がカウンターシュートでビクトリーノ選手のパンサーファングを跳ね返したァッ!! 萃香選手、懸命に弾きますが……尚もボールは1人ゴール前に残ったボッシ選手がフォロー!! まずい、まずいぞウルグアイ! ボッシ選手と萃香選手、一対一だァァァアアアッ!!!!」 そう、このボールをフォローしたのはフランスFWのボッシ。 点を決められなかった事で茫然とし、立ち尽くしていた男である。 そして、この試合、ここしかないという決定機を逃し続けた男でもある。 そんな彼に――この試合、最大のチャンスが舞い降りたのだ。 ドクンッ ドクンッ ボッシ「あ……あ……(お、俺にボールが……!? ど、どうしたら……!?)」 ピエール「ボッシ、打てェ!! 相手は体勢を崩している!! 今なら入る!!」 さとり「(いけない……まるでこちらの声が聞こえていない……)」 先ほどのシュートの失敗で、ボッシは既に平常心を失っていた。 もう自分にはゴールを決める事など出来ないと、マイナス方向で確信を抱いてしまっていた。
[582]幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2011/11/26(土) 02:11:19 ID:??? 萃香「くっ……ボールを……返してもらうぞ!」 ダッ!! これを見て、萃香は素早く飛び出した。 体勢を崩しながらもボッシに襲い掛かり、両手を伸ばしてボールを奪いに向かったのである。 ドクンッ ドクンッ ドクンッ ボッシ「(ま、マズイ! ボールを奪われる! やばい、やばい、やばい……!!)」 心拍数が上がり、呼吸が荒くなり、ボッシは思わず視線を萃香から外した。 それ程までに迫りくる萃香の迫力は恐ろしく……そして、己にかかるプレッシャーに耐えられなくなったのだ。 このままでは萃香にボールを奪われる。抜くなり、シュートを撃つなり、何かをしなければ駄目なのは明白。 それでもボッシは動けなかった。 ボッシ「(……あ?)」 その時、ボッシは不意に観客席に見覚えのある人物を見つけた。 特徴的な髪形に、怒りの形相――こちらに向けて大声で何かを言っている、その人物。 それが誰だか悟った瞬間、ボッシは目を丸くした。 ボッシ「(ナポレオン!?)」 よもやナポレオンが試合を観戦に来ていたとは知らなかったボッシはそれを見て思わず驚く。 だが、その驚きは次の瞬間に消え失せた。ナポレオンが何を言っているか、大歓声の中でもしっかりと聞き取れたからだ。 ナポレオン「撃てェ、ボッシ!! テメェはストライカーだろうが!!!」 ボッシ「……!!」
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0ch BBS 2007-01-24