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【崩落のステージ】Another-C_9【 後篇 】
[323]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/12/12(月) 18:39:22 ID:??? ――――時は少し遡る。 三杉が頭を悩ませつつ控え室へと到着したのと同じ頃、カンピオーネの選手達も控え室へと戻ってきていた。 フィッツウォルタは試合中の急な指示変更について、アルシオンに問い質す心積もりでいた。 控え室に戻って、取り敢えず一息ついた後に・・・。 ガチャリ フィッツウォルタは控え室の扉を開き、部屋の中を見て・・・思わず二度見返した。 カンピオーネの選手で先頭を歩いていたのはフィッツウォルタで、先程ハーフタイムになったばかり。 即ち控え室には誰も居ない筈なのだが・・・思いもよらぬ先客が中に控えていた。 ジョアン「戻ったか………。」 フィッツウォルタ「こ、コーチ…?」 控え室の先客は、カンピオーネの監督となる人物:ジョアン・ウェンガーだった。 いま現在において正式には監督就任して居らず、厳密にはこの控え室に入ってはならない人間。 しかしその事に対して何かを言おうとする者は居なかった。 フィッツウォルタ(コーチが来た、という事は…) どういうつもりでこの控え室に現れたのかと、直後はその疑問に驚いたが… フィオッウォルタはすぐに事態を把握した。 即ちアルシオンの指示はコーチの物ではなかったのだと。 そして自分が糾弾する必要もなく、今から戦術修正が行われるのだと。
[324]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/12/12(月) 18:40:30 ID:??? ジョアンはアルシオンの方を見ていた。 彼は目を伏せ、どこかとも判らぬ方へ顔を向けてこちらを見ようともしない。 アルシオンに何があったのかジョアンには想像もつかず、取り敢えず目の前の修正を急いだ。 ジョアン「私の指示は『パスのみでボール運びをする』だ…。 以前伝えた時と何も変わっていない。 前半終盤の事を問うつもりはない、後半を期待している。」 それだけ口にして、ジョアンは控え室の入口へ歩き出す。 自分の希望する事は以上であり、それに対して言葉は他に必要ないと思ったのだ。 ジョアンは提供された観戦室に戻り、後半が開始されるのを待つ…そのつもりだった。 それ以外の事は全て予想外だった。 アルシオン「…いいえ、ダメです監督。」 ピタッ 思いもかけぬ言葉、思いもかけぬ人物から発せられた言葉。 ジョアンはピタリと足を止め、声の出た方を振り向く。 勘違いや聞き違いであると思いたかった事だろう。 しかしアルシオンは今…先程とは違いジョアンの方を真っ直ぐに見据えていた。 アルシオン「それでは奴らを叩き潰せません。」 ジョアン「アルシオン…私はこの試合、相手を叩き潰すのが目的と言った覚えが無いが?」 『アルシオンは何を言っているのだろうか?』という思いが頭の八割を占めていた。 何が起こっているのか、何を言うべきなのか、彼が何を考えているのかジョアンは考える事が出来ず… ただ数日前にアルシオンに伝えた内容、その事実を確認するようにジョアンは問うたのだ。
[325]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/12/12(月) 18:42:37 ID:??? それに対するアルシオンの回答は辛辣だった・・・ 少なくともジョアンにとって、それは耳を疑い、塞ぎたくなるような現実だった。 アルシオン「ジョアン監督、貴方は間違っています・・・・・・・・・二つの意味で。」 ジョアン「…どういうことだ、アルシオン?」 アルシオン「闘いとは敵を倒す事が目的…そしてフィオレンティーナは間違う事なき敵です。 しかもい今敵というだけじゃあない、奴等はWトーナメントでも敵になる相手… 勝ち続ける事が目的ならば、奴等は今日この場で完膚なきまでに叩くべきだ。 カンピオーネと二度闘いたくないと思わせるくらいに……それが一つ。」 ジョアン「・・・・・・もう一つは・・・?」 アルシオン「もう一つは・・・このチームにパス戦術など必要ない、という事ですよ。」 ジョアン「・・・・・・・・・・・・そう・・・か。」 何も言えなかった…ジョアンは何も言えなかった。 いつも素直に隣に座っていた、九年間以上連れ添った少年… 孫のように思いやり、時に厳しくサッカーを教えてきた特別な存在。 いつか何処かで擦れ違っていたのか、ボタンを掛け違えていたのか… それだけが頭をグルグルと廻り、ジョアンは言うべき事を見失っていた。
[326]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/12/12(月) 18:44:13 ID:??? しかしアルシオンはジョアンの様子に構う事なく更に持論を展開させる。 アルシオン「考えても見て下さい、監督に教わったテクニックは素晴らしい物です。 各人は自分のポジションに必要な個人技を十ニ分に備えており… そして必要とあらば、フィールダー全員がチャンスメーク出来る突破力を持つ。 今更ドリブルよりも劣るパスワークだけで攻めるなど非効率…愚の骨頂ではないですか?」 ジョアン「………」 フィッツウォルタ「アルシオン、監督に対して口が余りに過ぎるんじゃないかっ!?」 シニョーリ「いやー、でもそうかもしんなくない? オレもドリブルで抜きまくった方が調ー子出るしさぁ。」 フィッツウォルタ「おっ…!」 クスタ「落ち着け、フィッツウォルタ・・・! それからシニョーリ、お前は少し黙っていろ。」 シニョーリ「むぐ・・・バタンキュー。」 ジョアンが黙って聞いている以上、選手達はその発言を最後まで聞かねばならなかったが・・・ フィッツウォルタは途中で我慢が出来なくなったのだろう、彼は途中で口を挟んだ。 内容について・・・はジョアンの領分というのもあろう、彼はその口の利き方に対して批判した。
[327]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/12/12(月) 18:45:14 ID:??? しかしジョアンは反応せず黙りきった儘、シニョーリなどはアルシオンを是とするような茶々を入れる。 発現がズレているシニョーリにフィッツウォルタが頭を押さえて呆れている内に・・・ 彼の教育係(みたいな役回り)のクスタはシニョーリを畳んでしまう。 そしてアルシオンがその機を縫って再び発言を始め、フィッツウォルタはそれを止められない。 アルシオン「それにコーチ、彼等の中にオレを満足させるパスを出せる者… そしてオレの本気のパスに合わせられる者は一人も居ませんよ。 そんな関係でパスを交わし合うなど無意味です…オレは他者を信じない、期待しない。」 ジョアン「アルシオン…」 カルバリョ「ああんっ!?」 イスラス「…貴様……!」 グッ ディッテンベルガ「カルバリョ、イスラス! だがアルシオン、お前も何様のつもりだ!!」 いきり立つ選手とそれを止める選手。 当然ながら後者も落ち着いてなどいない。 だがアルシオンは腕のジェスチャーでそれを制し、最後の締めくくりまで一気に言ってのけた。 アルシオン「しかしこのチームは、各人が役割を果たせば最強のチーム。 彼等が自分の得意分野で全力を尽くすならば、オレは一定の信頼を置きますよ。 メンバーの一人一人が、他者に迷惑をかける事なく最強のパフォーマンスを見せる。 そうだ、それは敵がどんな戦術を見せてきてもチーム全員が個人技で叩き潰す… 監督、貴方が授けてくれた芸術的技術で叩き潰す…それがこのチームの正しい姿ですよ。」 全てを言い終えて、アルシオンはジョアンの方を強く見据えた。 カンピオーネ選手達の大半はジョアンの強い言葉を期待し待っていた。 ・・・が、ジョアンはその目を受け止める事が出来なかった。 若者の誤りを叱り、正しい道を示せば好いのに…それが出来なかった。 それほどに目の前の衝撃は大きく、アルシオンの存在がジョアンにとって重く重かった証明であった。
[328]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/12/12(月) 18:47:34 ID:??? ジョアン「アルシオン・・・・・・・・・貴様・・・ わ・・・ワシに 背くと言うのか・・・・・・? アルシオン・・・お前が・・・・・・。」 アルシオン「背く…?」 ジョアンはまるで戯言の様な言葉を弱々しく吐いていた。 ピクリとアルシオンが肩を震わせ、頬も引き攣らせる。 そもそもジョアンが今日まで若く精悍を保ってこれたのは、その決意の強さゆえだった。 それが揺らぎ崩落しかけた今、彼は本来の冷静な思考も言葉遣いも失っていた。 表情も急に老けたようになり、私≠ニいう一人称も年相応にワシ≠ヨと変わったのだ。 だがアルシオンが気付いて反応したのはソコではない。 アルシオン「ふ……ふふ……。 そう…そうですよね貴方からしたら。 貴方は自分の理想とする最強のチームを作りたかっただけ…。 ああ…オレの力を利用して、理想となるチームを作りたかっただけなんだ。 ロベルト本郷への贖罪の為に、行き場のないオレを利用していただけなんだ。」 ジョアン「バ、バカな……そんなバカな事を…。」 そう言いながらも、ジョアンは反射でそれを否定する事が出来なかった。 ロベルトへの贖罪は、カンピオーネというチームを作るに当たって考えていない訳がなかったから…。 一人の個人技に任せるチームでなく、11人全員で闘うチームを作らなければならない。 選手を再起不能にさせる過ちを再び繰り返しはしないとロベルトに示す思い。 だがそれよりも原初に在った筈の、アルシオンに世界の舞台で再びサッカーをやらせたいという思い。 今のジョアンはどちらが先だったのか判らなかった、その思いに自信がなかった。 ジョアンにとってはどちらも非常に重要だった事である。 アルシオンを利用などと考えた事は無かったが、結果的に利用しているのではないかと 思い始めたら、それを切り捨てるように否定が出来なかった。
[329]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/12/12(月) 18:49:00 ID:??? アルシオン「もうこれ以上は良いでしょう・・・。 オレの言いたい事はそれだけです、監督。 後半はドリブルでフィオレンティーナを攻めます。」 ジョアン「・・・・・・・・・。」 アルシオンの言葉は締め括られた。 それに対してジョアンは何も言い返せなかった。 フィッツウォルタ(ば、バカな・・・・・・こんな・・・) フィッツウォルタは信じられなかった。 目の前の光景が受け入れ難かった。 信頼と心強さの象徴、そして絶対的な返報対象であったコーチの弱々しい姿・・・。 アルシオンの実力は解る、確かに彼は大きな口を叩けるだけの物を持っている。 そして彼の考えるチーム像にも一定の理が無い訳ではない。 フィッツウォルタ(けれど・・・コーチ、貴方の目指すチームは比べ物にならない高みにあるんじゃないのですか? どうしてそれを言う事なく、アイツに好きな様に言わせているんです・・・!) ジョアンから何の否定もない事が、フィッツウォルタにとって最も大きなショックであった。
[330]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/12/12(月) 18:51:06 ID:??? ディッテンベルガ「・・・話にならんな。 アルシオン、オレはお前の指示には従えん。」 イスラス「・・・クック・・・お前だけに格好良い真似させるかよ・・・っと言うべき所か・・・?」 ディッテンベルガ「ま、そうだな。」 アルシオン「ほう・・・?」 クスタ「・・・・・・。」 アルシオンとジョアンの間では、(選手達には理解できないが)話が済んだようである。 けれど選手達が一体となってアルシオンの言葉に従うかと言えば『No』。 戦術について通じているディッテンベルガとイスラスが先ず反対に名乗りを上げた。 そして他の選手に同意を呼びかけようと周囲を見渡すが・・・その機先を制する声が上がる。 ナムリス「ボクはアルシオンと同じ考えですよ。」 ディッテンベルガ「ユブンタイ・・・!」 イスラス「・・・フン・・・やりたければお前だけ付き合え、オレ達はベンチで見ている・・・・。」 ???「構わんよ。」 ディッテンベルガ「なっ?」 後方から声が聞こえ、一斉に振り向くと・・・ガチャリと控え室の扉が開いた。 そこに立っていたのは・・・
[331]アナカン ◆lphnIgLpHU :2011/12/12(月) 18:54:12 ID:??? ナジーブ「フフッ・・・。」 フィッツウォルタ「ミルチビッチ・・・?」 ミルチビッチ「・・・・・・・・・」 そこに立っていたのは・・・フィッツウォルタにとってのASローマのチームメイト:ミルチビッチと、 カンピオーネのオーナーに当たるナジーブ・ユブンタイ、そして彼らの他に初めて目にする選手が2人・・・。 全員で4名がの人物が控え室へと入ってきたのだった。 急な乱入者に戸惑う選手達を他所に、先程の言葉の続きがオーナーの口から流され始めた。 ナジーブ「イスラスにディッテンベルガ、お前達2人は最初から後半の出番は無いからな。」 ディッテンベルガ「・・・どういう意味です?」 ナジーブ「言葉通りの意味だ。 全力を出せない選手、目が不自由な選手はカンピオーネに相応しくない。 何よりキャプテンの指示に従わないような輩はチームの足手まといなのだよ。」 イスラス「・・・・・・!」 ディッテンベルガ「我々2人が居ない方が強いチームになると?」 ナジーブ「当然だ・・・。 ここに居るミルチビッチ、オルミーガとサビチェビッチが居るからな。 判ったらベンチでカンピオーネの勝利を黙って見ている事だ。 ああ、ついでにヤベッチュも交代。 はい、それまーでーよ。」 ヤベッチュ「ええー、そりゃあないですわ! ちょっと待てコールですってw」 サビチェビッチ「フゥ・・・・・・・・。」
[332]森崎名無しさん:2011/12/12(月) 18:56:07 ID:??? さらば矢部ッチュ
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0ch BBS 2007-01-24