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【崩落のステージ】Another-C_9【 後篇 】
[754]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/13(金) 15:59:51 ID:??? 呆気ない程の完璧さでブンナークキャリバーはキャッチされた。 しかも着地もスタっと綺麗に決めたサビチェビッチの表情は、何事もなかった様に平然だった。 フィオレティーナの選手達にとって、その光景は絶句に値する物だった。 サビチェビッチ「………」 バシュッ! 三杉「ハッ! しまった、みんな戻れ!」 三杉らが立ち尽くした瞬間、サビチェビッチは素早くボールを前線に蹴っていた。 慌てて守備に戻るフィオレンティーナフィールダーだが、それも遅かった。 ピャタコーフはこれをトラップすると、直ぐ様ドリブルで攻め上がり… かろうじてチェックに行けたレントゥルスを、ダブルタッチならぬクワドロブルタッチで突破。 高いクロスを上げ、シニョーリのバイシクルシュートでのゴールをアシストして見せたのだった。 攻撃と守備の切り替えの大切さを、一瞬でも失念したフィオレンティーナのミスである。 > ダイジェスト判定:ブンナークの活躍 → JOKER ( 5 + 1 ) > JOKERによる大覚醒で、一次限界未達能力の上昇と新技取得。 > タックル技[ムエタイアタック(+3)]及びドリブル技[強引なドリブル(+2)]発動率上昇。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 必殺のファストブレイクを破られ、逆に3失点目を奪われたフィオレンティーナ… 士気は当然ながら大きく下がり、通常のプレイも機能し辛くなり始める。
[755]森崎名無しさん:2012/01/13(金) 16:00:08 ID:??? ここはまぁラスボスGKサビチェビッチの見せ場だよね
[756]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/13(金) 16:00:59 ID:??? マルコのパスもバンビーノのドリブルも、普段の輝きが遠い物となった。 また新田もリズムを崩し、スピードだけが空回りするようになる… そのような追い込まれた状況であったが、フィオレンティーナが直ぐに失点を重ねる事はなかった。 ブンナークがここに至り、追いこまれた獣のような闘いの本能を爆発させたのである。 ブンナーク「ボールか首を置いてきやがれっ!」 ドガガァッ! ナムリス「ボゲゲェッ!」 ブンナーク「どけよっ!」 ガガッ レビタン「ぬぅっ!?」 奪われても直ぐに奪い返し、また直後のドリブルでも相手を吹き飛ばした。 体力の限界が間近であったため、彼自身がシュートに至る事が無かったのは無念であっただろう。 結局フィオレンティーナの残りのシュート場面は1度だけとなった。 もう一人のストライカー、新田が後半29分に1対1を仕掛けた場面である。 新田(今のオレのシュートではゴールネットに届かない…けれど、ゴールを奪う方法はある!) 彼はこの試合の前に編み出した時間差シュートでゴールを狙った。 しかしそれもカンピオーネゴールを割るには至らなかった。 長い手足を伸ばしてゴールマウスに仁王立ちする、サビチェビッチの姿にミスを誘発させられたのだ。 観る者が見れば、サビチェビッチの姿は祖父の異名である黒蜘蛛≠彷彿させた筈だ。 新田自身も、まるで巨大な蜘蛛がゴールを隠している錯覚を覚えたのは偶然ではないだろう。
[757]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/13(金) 16:02:22 ID:??? ブンナークの体力が尽きた30分以降、フィオレンティーナは防戦一方に晒された。 反撃する為の守備ではなく守る為の守備が増えた彼等に、もはや流れは存在しなかった。 後半34分、オルミーガが35mの位置から放ったシュートを中山が何とか弾くが… こぼれた浮き球をピャタコーフが連続回転しながらのボレーでねじ込んで4点目を決められた。 0−4…屈辱的とも言えるスコアを突き付けられ、遂にフィオレンティーナの戦意は口を閉ざす。 ジョアンはその光景を死んだような目で見下ろす事になった。 この観客のいない試合…選手達はまさしく必死に戦った。 カンピオーネは勿論、間違いなくフィオレンティーナも高いパフォーマンスを魅せた試合だった。 しかし、かつてブラジル不動のCF:ロベルト本郷の師だった男の心は空虚だった。 ジョアン「私の理想となるチーム…今日、この日から完成する筈だった。 ここまでの長い道のり、しかしこれが新しい始まりになると私は疑わなかった…」 彼は自問自答を繰り返していた。 自分は何の為に今日まで走り続けて来たのだろうかと。 ジョアン(アルシオンに太陽の下を歩かせる為、そう信じている……信じていた。) しかしハーフタイムにてアルシオンから放たれた言葉が、その思い込みズタズタに切り裂いた。 ロベルトへの贖罪の為、自分の目的の為にアルシオンを利用しようとしたのだと… 考えもしなかった事だが、ジョアンは目の前の現実を見て、その事を否定出来なくなった。 そして今、彼の教え子:カンピオーネは、もう一人の教え子:フィオレンティーナを駆逐している… 彼が全く望まぬ形で駆逐しているのだ。 ジョアン(だが…見届けなければならない。 それが再び過ちを犯した私の今出来る事…) 無意識に伏せていた視線を上げ、ジョアンはフィールドを見据えた。 その視線の先、日本人選手にボールが渡った。
[758]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/13(金) 16:04:02 ID:??? ジョアン(見ているかアンザーニ、あやつはまだ諦めていないぞ…) ジュン・ミスギ…心臓病によって才能を押し潰されていた過去を持つ少年。 ジョアンの予想を超える姿に成長した選手の一人だった。 三杉(この試合、もう勝つ事は出来ないだろう…。 だが最後まで諦めてたまるか、このプレイでもう一度流れを変えるっ!) 得点の手段はほぼ断ち切られたと言って良い。 だが彼は再び戦意を燃やし、攻撃の途へと就いた。 ドリブルでの中央突破を計り、芸術的とも言えるドリブルで一人抜き…二人抜き… そして望みを賭けた新田へのスルーパスに狙いをつけた。 クスタ「流石…だがそこまでですっ!」 三杉(なにっ!?) ズザザァァァァッ! 激しく、それでいてフェアなタックルの横槍が入った。 ゴール前に鎮座していると思われたクスタによる意外なタックルである。 三杉「クソッ、やられたっ・・・!」 寸での所でボールを奪われた三杉は、悔しさを隠す事すら出来なくなっていた。 流れを引き戻す試みはまたも失敗に終わってしまったのだ。
[759]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/13(金) 16:05:47 ID:??? ジョアン「それでいい、クスタ…。 お前のDFはまさしく芸術品だ…そして…」 視線を移した先に、ジョアンが最も長く連れ立った少年の姿。 アルシオン「オレに持って来い、クスタ!」 クスタ「なにっ…? パスでボール運びはしないのではないのですか!?」 アルシオン「ああ、故にそれがラストパスとなる…お前にアシストをくれてやると言っている!」 クスタ「(そう言う事か…)いいでしょう、魅せてみろアルシオン!」 バシュッと確かな軌道のフィードが縦を切り裂いた。 それはアルシオンと呼ばれ続け…本当の名を失ったニシュの少年へと渡った。 あの日の事をジョアンは今でも思い出し…そして無意識に呟いていた。 ジョアン「お前は私の最高傑作だ、アルシオン。」 それを口にした瞬間、彼は自らがアルシオンを芸術品…即ち物≠ニして扱っていた事を自覚した。 自己嫌悪と後悔の波が押し寄せ、彼は目眩と共にその場に倒れ込んだ。 フィールドではアルシオンが脚を雄大に振りかざしている姿が見られた。 後半開始直後、膠着していた状況を一瞬で破壊し、先制点を奪ったあのシュート≠フ構えだ。 時計は後半40分に達しており、ラムカーネの状態は完全に底を尽いている。 つまり撃たれれば失点は必至である。
[760]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/13(金) 16:07:17 ID:??? 三杉「ダメだ…この時間帯、彼に撃たせたら・・・!」 縋るような絶叫がグラウンドに響き渡る。 しかし彼の望みを叶える者は居ない…砕き散らす者しか居なかった。 アルシオン「く だ け ち れ ぇ っ ! ! !」 ド ッ ゴ オ ォ ッ ッ ッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! ラムカーネ「ゴフッ………戦闘レベル…通常では阻止不可能と判断する。 …これで何もかも終わりだ、シャドゥシールドを使う…。」 限界を迎えたGK、ラムカーネはそれでも限界の先を絞り出した。 前半に比べるべくもないが、その反応は異常に素早く、影の残像を残してボールに立ちはだかる… しかしスターバーストは、そんなラムカーネの最後の気力をも粉々に粉砕した。 彼の小柄な身体を宙に舞わせ、更にネットをも突き破るゴールとなったのだ。 ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!! 0−5 転がるボールを三杉は呆然としながら見ていた。 三杉はイタリアに渡ってから培ってきた自信、プライドを打ち砕かれた思いだった。
[761]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/13(金) 16:08:40 ID:??? 心臓病を完治させ、ガラスのエースの名を返上した。 技術を磨き、最新の戦術を勉強して、確固たるチームの強さという物を知った。 三杉(強い選手を11人集めても、そのチームが勝つとは限らない・・・ どんなに強力な個が相手でも、チーム戦術が機能すれば負けない・・・) 本当の強さとは何なのか…個人技や突出した一人に頼る物ではないと、彼は大きな信念を得たのだ。 しかしそこに掲げられたスコアは、目の前に広がる光景は・・・それが砂上の楼閣≠セったと告げている。 口にして呟いた自身の信念は、空虚な音で彩られていた。 そして三杉は膝を折った。 その場にへたりこんでしまった。 三杉(イタリアに渡ってから・・・いや、リハビリを含めたこの3年間・・・この諦めを知る為にあったのか? 片桐さんに啖呵を切り、全日本ユースに宣戦布告して・・・これからの為にと選んだ結果がこれか? 結局のところ僕は全日本ユースにとって、いや日本サッカー界にとって裏切者にしか成れない・・・?) 失意の波がグルグルと彼を取り囲み、そして打ちのめした。 三杉はこの時点から試合終了までの5分弱をほとんど覚えていない。 彼は無意識にボールを追って走りながら、3年の年月を邂逅しようとしていた。 フランス国際Jrユースで世界一を飾った後、闇の源と言える心臓病を完治させてからの日々を。 しかしその道程も、深い霧がかかっている様に薄ボンヤリとし、上手く思い出す事が出来なかった。 彼は18年間生きてきた中で、初めて本当の意味での諦めを知った。 それは絶望ではなかった。 絶望よりも下に存在する物・・・即ち無気力であった。
[762]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/13(金) 16:09:41 ID:??? 一旦ここまでです。
[763]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/13(金) 20:40:16 ID:??? ピッピッピィィィィィィィィィッッ!!! 試合終了の笛が鳴った。 最終スコアは0−5、カンピオーネの勝利という結果だ。 フィッツウォルタやクスタらにとって、形としては雪辱を果たした事になるが・・・ しかし表情や態度に喜色を湛える者は、カンピオーネの中には居なかった。 フィオレンティーナの選手については茫然自失という表現が相応しかった。 立ち尽くす者すら居ない・・・蹲ったり芝に身体を横たえる者ばかりである。 両者の様子を見れば、この試合で何かを得た人間は一人も居ない事が判る。 失う物ばかりの多い、悲惨なテストマッチと断ずるべきだろうか・・・? ・・・否。 ナジーブ「クックック・・・・・・はぁっはっは! 素晴らしい、最強のチームだぞカンピオーネ! いやはや確信したぞ、お前達ならば欧州や南米の不遜な奴等を追い落とす事が出来る・・・!」 ただ一人、カンピオーネのオーナーであるナジーブ・ユブンタイは完全な満足を示していた。 今日までの投資は彼にとってすら小さくなかったが・・・それに見合うリターンも確かにあったようだ。 ナジーブ(アルシオンはパーフェクトな選手であり、その活躍は痛快だった。 フィッツウォルタもあらゆるシーンで活躍出来る逸材・・・ クスタの守備は堅牢、シニョーリも危なっかしいが面白い。 そして何より、あのラシンの孫の素晴らしさが実戦で証明された。) 『いま挙げた全てが自分の物』という思いが彼を愉悦に浸らせた。 彼の大好きなサッカーというスポーツで、最強チームのオーナーとなる。 そして采配にも自分の好きなように口を出し、しかも圧倒的に勝つ。 アラブの石油王という肩書きを持つビジネスプロフェッショナル・・・ その皮を剥いてみると、現れたのは下卑たゲームを楽しむ子供の不浄な姿だった。
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0ch BBS 2007-01-24