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【崩落のステージ】Another-C_9【 後篇 】
[871]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/18(水) 18:03:03 ID:??? 2−1)The Greatful Dead ガシャーーンッ!! シャトー・ディケム・・・パリ万国博覧会で、唯一の特別1級を与えられた世界最高峰の貴腐ワイン。 そのヴィンテージを並々注いだワイングラスが、床に叩きつけられて粉砕した。 ・・・と同時に、ボトリティス・シネレアによる甘く芳醇な貴腐香が部屋に漂う。 この香りは数多の人間に幸福な気分をもたらして来たのだが、今は例外のようである。 ナジーブ「あの若造めっ! オレの予定をどこまで掻き回すつもりだっ!」 ナムリス「・・・・・・。」 ヒステリックに悪態をついたのは、カンピオーネのオーナーであるナジーブ・ユブンタイである。 彼の怒りの矛先は、ヴィットーリオ・トレイゼ・チェッキ・ゴーリに向けられていた。 そしてトレイゼが一体何をしたのかと言えば…歴史ある都市フィレンツェから、 プロサッカーチームが失われる事態の阻止に走ったという…つまりは前述の通りである。 ナジーブ「ルイコスにドルト…フィオレンティーナ主戦力の2人を売却させる為に口を利き、 パッショーネを使って仕手戦を仕掛けてやったのだぞ? それでフィオレンティーナはゴーリ諸共に消滅…キャッシュも人材も失い、 再起も新規立ち上げも回らずに霧散するのが筋であろう!? それを…!」 ナムリス「まさか、あのような方法でプロチームの芽を残すとは。 愚かな父親と違い、優れた手腕の持ち主のようですね。」 ナジーブ「貴様に言っているんだぞ、ナムリス! 奴は油断ならぬ故、殺せと命じた筈だ! 貴様が無能なお陰で……見ろッ、ジョアンの弟子共がまだ一ヶ所に集まっておるわ!」 ナムリス「申し訳ありません。 …ですが、随分と彼等を恐れておいでですね、父君? 落ちこぼれ、当て馬と、散々に蔑んできたようにはとても見えません。」
[872]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/18(水) 18:04:04 ID:??? ナジーブは本音を見抜かれた気がして、少々ドキリとした。 腐ってもジョアンの弟子、そしてアンザーニの弟子でもあるフィオレンティーナの元プリマ達… 奴等は既にカンピオーネを体験しており、そしてWトーナメントまで、まだ1年の期間がある。 今は取るに足らない存在に違いないが、いずれ足下を掬うまでの存在にならないとも限らない。 フィオレンティーナを叩くのは、投資の回収も意味していたが、 不安の種を完全に刈り取っておく…それこそがナジーブの本当の狙いであった。 ナジーブ「同じ輩に二度噛みつかれるのが我慢ならぬだけだっ!」 だが臆病な本心を口に出すのはプライドが許さぬらしい。 彼は傲慢な言葉でそれを被い隠した。 ナジーブ「クソッ・・・」 興奮のせいか、それとも大声で捲くし立てたせいなのか・・・ ナジーブは妙に喉が渇いているのを自覚した。 グラスは床に叩きつけてしまったので、ビンを手にとってグイッと一口。 高貴な甘さが口に広がり、生命の活力が身体に注がれる錯覚を覚える。 ・・・だが、それも僅かな時間だった。 喉の渇きは不思議と消えず、更に催してくる。 ナジーブ「クッ、まあいい・・・いずれにせよ脆弱な蟻の巣が残ったに過ぎないのだからな。 改めて奴等を表舞台から弾き飛ばせば済む事だ。」 苛立ちは拭えぬ物の、彼は次に動くべき事を考えようとした。 彼にとってはあくまで予定が一つ停滞しただけ、これを決着に持っていく事は可能だ・・・と。 それを口にしなければ、或いは今夜、彼は美酒を気持ちよく飲みきる事が出来たかも知れない。 だが彼はここで予想もしない事態に直面する。
[873]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/18(水) 18:05:23 ID:??? ナムリス「・・・それは困る。」 ナジーブ「・・・・・・・・・なに・・・?」 そう言って彼は、息子であり手足の一つであるナムリスの言葉を聞き返した。 振り向く際に肩と腰の鈍痛が気になったが、それを無視した。 ナムリス「奴等には是非とも大舞台にまで登ってきて貰わなくては困る・・・そう言っているのですよ。 恥を掻かされた借りもありますし、何より・・・」 ナジーブ「貴様・・・」 ナムリス「そう、金は確かに目的を達成するまでの手段に成り得る。 しかし、本当に止めを刺す時に自らの手で・・・そうでなくてはウソだ。 でなければ、恐怖と歓喜の火のような日々は得られない。」 手足に過ぎない者が大仰な言葉を・・・しかも自分の意にそぐわぬ言葉を吐いている・・・ ナジーブが激しい怒りに駆られたのは当然の成り行きだった。 彼は既に言葉による叱責をするつもりはなく、鍛錬を欠かしていない自らの拳骨で知らしめようとした。 ・・・だが、飛びかかろうとした脚に力が入らなかった。
[874]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/18(水) 18:06:51 ID:??? ナジーブ「なん・・・だ・・・?」 ナムリス「ヒドラ≠ニいう人造生物が、黄昏の世には存在している。 人智を超えた筋力を持ち、疲れを知る事はなく・・・頑強な皮膚と長いテロメアを持つ。 簡単に言えば、限りなく不老不死に近い生物兵器という事だ。」 ナジーブ「何を言っている・・・・・・・・・」 ナムリス「同じように老化を促されても、オレにとっては何の負担にもならない。 ・・・100年、200年程度では鼻で笑う程度だろうな。」 意味の解らぬ呪文のようにナムリスは唱え続ける。 そう思っている間にも、どんどん思考が鈍っていく気がした。 そして・・・いま自分が何を考えているのかも判らなくなった時、ナジーブは人生最後の音を聞いた。 ナムリス「お疲れ様でした、プロシュートさん。」 ******** いったんここまで
[875]森崎名無しさん:2012/01/18(水) 18:57:15 ID:??? フィオレンティーナを略して「フィオ」と呼んではいたけど フロレンティア・ヴィオラを略すなら風呂なのかー?
[876]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/18(水) 19:15:02 ID:??? 2−2)Captured Grim Reaper 数時間後、傷ひとつないナジーブ・ユブンタイの老衰死体が発見される事になるホテル・ミネルヴァ。 このホテルに人知れず忍び込もうとする小さな影があった。 ???(しっかし・・・今更になってこんな任務を寄越される事になるかねぇ。 オレとしてはサッカーだけして平和に暮らしていくつもりだったってのに・・・) 彼はサッカーのプロ予備軍の一人として知られていた。 しかし、それとは別にもう一つの身分を持たされていた。 有り体に言えば、旧西ドイツの軍属に所属する諜報員・・・エージェントである。 彼の名をトーマス・ヘルマーと云った。 ローマに所属するOMFとして知られる少年だ。 ヘルマー(拉致とか冗談じゃねえっての! ・・・と、言いたい所だが・・・仕方ねえのかなあ。 東の511シェルタードスクールの出資者で、しかも石油王って・・・。 そりゃあ、何をするにしても大っぴらに出来ねえのかもなあ・・・。) 内心で溜息を吐くヘルマー。 そうは思いつつも、音もなく目標が居る筈のホテルへと近付いていく。 潜入工作は彼にとって最も得意な分野であった。 ヘルマー(あそこか・・・) ある一室を見据えて目を細めた・・・あの部屋にナジーブ・ユブンタイが居るのは判っている。 音も無く、影もなく、形跡を残さず・・・彼を眠らせて連れ去り、協力者引き渡せば任務は完了だ。 彼はそう考えるが先か、素早く動き出していた。
[877]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/18(水) 19:21:05 ID:??? ヘルマーはホテルの外壁を登り、対象となる部屋の窓に到達する。 そして細い糸と工具のような物を取り出すと、内側にかけられた鍵に何やら細工をし・・・ ヘルマー(悪いなぁ、バレないように忍び込むのは得意技なんでね。) 大した時間もかからずに窓の鍵は解除された。 音を立てぬよう注意し、窓を開いて部屋へと侵入する。 何事もなく無事に任務を終わらせられたら、ビステッカ(ステーキ)でも食べたいと・・・ そんな事を一瞬考えたが、それは直ぐに霧散した。 ヘルマー(なんだ・・・? なんか妙な雰囲気・・・) ナジーブと思しき人影が椅子に座っているのが視界に入った。 しかし呼吸音が聞こえない・・・耳を澄ませて注意を払っても、全く聞こえないのだ。 ガシッ ヘルマー(グッ!!!) 突然背後から首根っこを掴まれた。 力を込め、暴れて振り払おうとしたが、掴んでいる腕はビクとも動かない。 徐々に呼吸が苦しくなり、脳を行き渡る血量が減っていく。 所謂おちる♀エ覚を覚えた時、部屋の扉が開かれた。 ヘルマー(まじぃ・・・・・・・・・)
[878]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/18(水) 19:25:57 ID:??? ナムリス「困るよ。 その死体は傷ひとつない形で発見されなくちゃいけない。 行方不明でなく、他殺でもなく、老衰・・・それが都合いいんだ。」 ヘルマー「てめ・・・」 何かを言い終える前にヘルマーはその意識を失った。 だが死んではいない、所謂おちた¥態である。 ヘルマーの顔を見て、ナムリスは満足そうに笑った。 ナムリス「多少肝を冷やしたけれど・・・結局はとても都合良い事になった。 後はトレイゼ・ゴーリが消えれば完璧だ。 フィオレンティーナの奴等は多少苦労する事になるだろうが・・・」 『それくらいは自分達で乗り越えて欲しい』とナムリスは目を据わらせた。 ここまで舞台を用意するのに要した相応の苦労を考えて。 ・・・彼はこの日、一つの絶頂をその手に掴んだ。 しかし最終的にその全てが裏返る運命を知らない・・・。 絶頂など、そう続く物ではない事を知らないのだった。 ******* >>875 一応ヴィオラと略すのが普通みたいですが、風呂もありかとw フィレンツェ市民はその時代もフィオレンティーナ、フィオと呼び続けたらしいですけどね。 本日はここまでとします。 次の更新でエピローグは完了となります。 それではー
[879]森崎名無しさん:2012/01/18(水) 20:36:23 ID:??? 乙でしたー フィオレンティーナといえばアルゼンチンFWとポルトガル人MF
[880]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/19(木) 14:37:48 ID:??? >>879 その通りですよね。 アルゼンチンとポルトガルのFW選手はまさに象徴だと思います。 ============================================= 3)The prelude of atonement 木の葉が落ちる 落ちる 遠い彼方からのように 天空の楽園が枯れたかのように 木の葉は、否定しながらも落ちる そして、毎夜、重力に満ちた地球が 遥かなる星々の煌めきから 静寂の闇へと落ちる 我々はすべて落ちる この手も 周りを見たまえ 落下はありとあらゆるものにあるのだ けれども、ただひとり この落下を無限の優しさに満ちた両手で 支えようとしている者がいる R・M・リルケ 『秋』 〜AD1902〜
[881]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/01/19(木) 14:38:51 ID:??? 時代は寂寥の闇へと突き進んでいる。 未来を含めたカルチョの長い歴史の中でも、その以前と以後から全く孤立した… 悲しくも苦しい時代を迎えると言わざるを得ない。 それはまるで行き場を失った迷い子のようだと形容できるだろう。 グランデ・トリノがスーペルガの悲劇で突然の終焉を迎えて年以来、半世紀もの間、 我が国の基本的な構図は、ユヴェントス、ミラン、インテルのビッグ3を頂点とし、 その一段下にトリノ、サンプドリア、ボローニャ、フィオレンティーナ、ローマ、ラツィオ、ナポリら… 歴史を持ち、スクデット獲得経験もある中規模都市のクラブが名を連ね、 残るポストを地方都市のクラブが入れ替わり立ち替わり占める物だった。 ある意味で自然の成り行きだったともいえる。 プロクラブにとって最大の収入源は入場料収入であり、クラブの財政(=戦力)が、スタジアムに 足を運んでくれるサポーターの数に依存する割合が大きかったからだ。 そうである以上、都市の規模がクラブの強さに反映するのも当然のことだった。 オーナーがクラブにどれだけ資金を注ぎ込むかも当時から大きな要因のひとつではあったが、 それもやはり都市の産業・経済と無縁ではない。 いってみれば、都市の格≠ニ、都市代表クラブの格≠ヘ、概ね釣り合っていたのである。 私が危機感を抱き始めたのは、人口17万人に過ぎないロマーニャ州の都市を本拠地とするパルマが、 つい先日初めてのセリエA昇格を果たし、一気に中堅クラブの仲間入りを果たした頃からだった。 その背景には、クラブを企業の宣伝媒体として捉え、積極的な投資でチーム補強を図った親会社・・・ 即ちパルマラットの存在があった。
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0ch BBS 2007-01-24