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【祐一の】もうひとつの物語2【憂鬱】
[987]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:49:28 ID:??? 特にないようなので、適当に埋めネタ投下したいと思います。 このお話は、県大会準決勝前日。 祐一がみなとと練習したその後の出来事である。 コッ…コッ…コッ… ガチャッ みなと「ただいまー…」 真っ暗な部屋に、自分の声だけが響き渡る。 時刻は夜の7時を回った頃。 どさっとまず自分の荷物をそこらに放り投げ、電気をつける。 リビングに行くと、机の上にメモ書きが置いてある。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 今日もお仕事遅くなります。先に休んでてください 澪 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 みなと「姉さん…今日も遅くなるんだ…」 少し寂しそうな目をするみなと。
[988]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:50:56 ID:??? みなとは今、姉の澪と二人暮らしをしている。 みなとが物心ついた時には父親の姿形は無かった。 みなとから見た母の印象は大切に育てられた鑑賞花といった感じで、 どこか気品を感じさせる性格だった。 そんな母は二人の子を育てるために必死に働いたが、 子供心ながらにこの人は働くのに向いていないと思っていた。 慣れない仕事で心身を徐々に衰弱させていったのだろう。 母は私が小学生に上がる頃に倒れ、そのまま亡くなってしまった。 私と姉は病院で初めて出会った、母の両親。 つまり、私たちの祖母に引き取られることになった。 私たちの予想していたとおり母はさる令嬢の一人娘であり、 家出同様の形で今まで一人で暮らしていたようだ。
[989]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:52:00 ID:??? 私たちはそれから祖父母の元で母と同じように可愛がられて育った。 最初は私も姉も、今までとは違うお姫様のような待遇に胸を踊らせていた。 だが、そのような感情も数年間だけだった。 大きい屋敷で大切に、丁寧に育てられる。 不自由など何も無かった。 だが、そこには自由というものも無かった。 怪我をさせてはいけないので…という理由で私たちは授業の体育ですら受けさせてはくれなかった。 友達と遊ぶのだって、何やらこちらの機嫌を伺うような視線を常に感じていた。 送り迎えは常に車に乗せられて通っていたため、私たちは今までの日常と隔離されたような感覚すらあったのだ。
[990]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:53:01 ID:??? 私達に転機が訪れたのはそれからさらに数年後の話だ。 若林財閥というところのご子息と会うことになり、私たちはその屋敷まで向かった。 いつものように丁寧に私たちは出迎えを受ける。 品性を感じるような年上の男の方二人に出迎えを受け、屋敷に案内されていた時だ。 ふと、窓から外を覗くと帽子を被った男の子が大人の人に怒鳴りつけられていた。 後から聞いた話だが、その人達は三上というお抱えのサッカーコーチとその若林の三男坊だった。 私は息を呑み、その光景を窓からじっと見つめていた。
[991]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:54:06 ID:??? 三上「どうした、源三!その程度で音をあげていたら日本一にはなれんぞ!」 源三「コーチ…その日本一ってことにどれだけの価値があるっていうんですか?」 三上「どれだけの価値…?源三、何を言っているんだ?」 源三「例え日本一になったとして…その先に何があるんですか? 大っきいアニキが親父の後を継ぎ…ちっちゃいアニキと俺はそれのサポート。 日本一になったところで、未来は変わらないじゃないですか!」 三上「…源三。お前は自分の未来が決まっているのが嫌だ、というのか?」 源三「当たり前じゃないですか…! それに、日本じゃまだプロリーグだって無いんですよ…」 三上「なら、なぜ自分がそのプロリーグの最先端を突き進むと言えない!」 源三「それなら…!日本代表として活躍した、三上さんだって、 どうしてこんなところで燻っているんですか!? 自分がやればいいでしょう!?」
[992]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:55:06 ID:??? 男の子はそう必死に反論した。 その言葉を聞いて、三上という男の人はサングラスで眼の奥の表情までは読み取れなかったが、 私にはその目が笑っていた気がした。 三上「ああ、源三の言うとおりだ…私たちは負けてしまったのだ。 稀代のエースストライカー片桐。 全日本の壁、賀茂。 アジアの…いや、世界の壁は私たちの想像以上に高かった」 源三「…」 三上「だが、その壁を易々と超えられる。 その素質があると信じている。 そんな子に出会えたから、私は今こうしてコーチを務めているのだよ」 源三「…!?」 三上「約束しよう、源三。 君が日本一になった暁には君のいう強いられている人生… そこから開放してあげる、と。 全ては、君の努力次第だ。 お前の未来は何一つとしてまだ決まっていないのだ。 ねだるな、勝ち取れ。それだけが、自分の臨んだ未来を手に入れられるはずだ」 源三「コーチ…!」
[993]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:56:07 ID:??? まだ幼かった私にはその言葉の意味が良く理解できなかった。 だが私達の母がなぜあの家を飛び出して、あの不毛な鬱々とした日々を。 それでも幸せそうな顔をして私達を育ててくれたのか。 なんとなく、わかったような気がした。 それからさらに数年。 姉は高校を卒業後、祖父母の反対を押し切って民間企業のいちOLとして働くことを決めた。 そして荷物をまとめ屋敷を出る際に私にこう言ってくれた。 澪「わたし、今ならお母さんの気持ちがわかるような気がする。 与えられた人生じゃなくて、自分の気持ちに素直に生きていきたい。 例えそれが困難で苦しい道だったとしても… 息苦しいまま枯れて死ぬよりはゴメンだわ。 みなと…。あなたも一緒に来る? わたしはわたしの道を探すことができたわ。 姉として…あなたにしか出来ない事があるのなら、それを支えてあげたいの」 私は溢れ出る涙を拭うこともせず、姉に抱きついた。 凛として咲く花の如く佇むその顔に、優しかった母の面影を見たからだ。
[994]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:57:08 ID:??? 姉と共に屋敷を出、今まで通っていたお嬢様学校ではなく。 ごくごく普通の県立、南葛小に通うことになった。 はじめはクラスの皆は遠巻きに私を見ていただけだったが、 少しづつではあるが、徐々にクラスに溶け込んでいった。 南葛小には、修哲小とクラブ対抗試合が毎年行われる。 私もクラスの女の子たちとともに遠巻きからクラブの試合を応援していた。 この年の対抗戦はもつれにもつれ同勝同敗のまま、サッカー部の試合を残すこととなった。 当初の下馬評では南葛のサッカー部が負けるという予想が大多数だった。 ここ数年、天才ゴールキーパー若林源三が率いる修哲小が勝ち越していたからだ。 遠くから見た若林くんはあの頃の面影を残しつつも、何かに対して苛立っているような気がした。 今思えば「勝つことが当たり前」となってしまった現状に、 昔の自分が悩んでいた「決められている未来」とやらを重ねていたのだろう。
[995]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:58:38 ID:??? だが私達の南葛小サッカー部には、そう。 後に有名になるサッカーの申し子大空 翼と。 ゴールデンコンビとまで言われるようになったパートナー、岬 太郎がいた。 あの時の南葛と修哲の試合は未だに私の脳裏に深く刻み込まれている。 圧倒的な不利を覆す翼先輩に私は憧れに似た、ほのかな恋心すら抱いたくらいなのだから。 その後、南葛小サッカー部は南葛SCに吸収されたような形となったが… その試合以来、私は確かにサッカーに魅了されたのだ。
[996]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 17:59:42 ID:??? フィールド上では身分も何も無く。 ただただひたすらボールを追いかけ、相手のゴールを目指す。 そこには決められた道など何もない。 かつて、若林くんがそのスポーツをしようとした理由がなんとなく、理解できたような気がした。 …そして月日は流れ、私は小学校を卒業し、中学校に上がった。 小学校の頃は、ただの憧れだったサッカー。 今度は、私もその輪の中に… 憧れていた、翼先輩とともに…。 期待で胸を弾ませていた時。 そう。そんな時。 現日本一のゴールキーパー、森崎 有三に。 かつて翼先輩が若林くんに勝負を挑んた時のように、挑んだ男の人がいたのだ。 その人の名は…
[997]もうひとつの物語 ◆Etq65eJh4c :2012/04/14(土) 18:00:42 ID:??? 澪「みなと、ただいまー…って。 あらあら、こんなところで寝ちゃって。よっぽど今日は疲れたのかしら? ふふふ…本当に、今幸せっていうような顔で寝ているわね… それにしても…まさか、あなたまでサッカーをやることになるとはまったく思ってもいなかったわよ… ねぇ、母さん… お父さんの血筋ってやつかしら…」 よいしょっと気合を入れ、みなとを担ぐ澪。 澪「いつのまにか、こんなに大きくなったのね… みなと、一生懸命頑張りなさい。あなたが納得するまで、ね。 姉さん…あなたのこと、応援してるから…」 みなと「(姉さん…)」
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0ch BBS 2007-01-24