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キャプテン森崎外伝スレ10
[285]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/07/06(金) 12:54:42 ID:??? 「亀に負けたの?歩いてでも亀なんて抜けるんじゃないの」 「まあ普通の勝負とは違うんだけどね。さすがに普通の競争だと勝負にならないから、 スタート地点は亀のほうがアキレスよりゴールに近くなっているわ。 スタートして亀が歩いた1秒目には、アキレスは亀のスタート地点まで到達している。 2秒目に亀は1秒目の半分の距離を歩いて、アキレスは1秒目の亀の地点にいる。 3秒目に亀は2秒目の半分の距離を歩いて、アキレスは2秒目の亀の地点にいる。 …こんな調子で競争を続けていくのよ」 「アキレスは1秒前の亀の位置まで走って、亀はその半分の距離を進む、ってことか。 …あれ、アキレスの方が速いのに、これじゃあいつまでたってもおいつけないじゃん」 「その通り、といいたいところだけど、ハズレね。計算を無限に続けた結果がいつも 無限とは限らないから、適当なところまで走ったところで、ちゃんとアキレスは亀に追いつけるわ」 「…分かるようで分かんないや。無限って難しいんだね」 「そう。無限は難しくて、つかみ所が見えにくくて、そのくせ重要なところで立ちはだかってくる、 私達にとっての強敵よ。ブラックホールやビッグバンや素粒子…並み居る科学者達の前に突如として 無限が現れ、それまでの理論を否定させてしまう。でもその無限を解決できるようになれば、これまでと 違った新しい世界にたどりつけるようになるのよ」 「へええ、無限って難しいだけじゃなくて、凄いんだね。どうして無限ってそんなに凄いの?」 「それは無限の持つ性質が普通の数とは違うからよ。足し算引き算掛け算割り算で考えれば分かりやすいわ。 ほとんどの数はそれら計算によって自身が変化するんだけど、無限は違う。無限に何を足しても無限、 無限に何を引いても無限、何を掛けても何を割っても、答えは無限になるの。無限は相手の影響、ひいては 相手を0にしてしまうのよ」
[286]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/07/27(金) 12:50:32 ID:??? ここで一旦話を切り、荒いため息を一息吐いた。衰弱した体から残り少ない生気が抜けていきそうだが、 これから話さねばならない翼くんの問題の事で、頭がいっぱいであった。呼吸を整え、 目の前の相手の目をしっかりと見据えた後、口を開いた。 「今話した無限の特徴は、翼くんにもあてはまるのよ」 「僕が?そういえば少し前に、博士が僕は「無限の象徴」だって言ってたけど」 「そう。翼くんは頑張れば頑張るほど伸びていく、限界がなくどこまでも成長していけるって、 以前話したわね。「無限の性質」を取り入れているからそういった事ができるけど、この性質は 他人との関係においては破滅的な影響をもたらしかねないのよ」 「えっ」唐突にとんでもないことを聞かされて戸惑う翼。いきなり自らに相手を滅ぼす力があると告げられて、 困惑しない人間はいないだろう。 「どういうこと?僕はみんなに悪さなんかしないよ」 「……」 「なんで黙ってるの?僕はそんなひどい人間になっちゃうの!?ねえねえねえっ!」 じっと口を重たく閉ざしたまま答えようとしない私に、翼くんが身を寄せて問いかけた。 声は切迫している。問いに恐怖の色が深まらないうちに、私は目の前の子の頭を撫で、覚悟を固めて答え始めた。
[287]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/07/27(金) 12:51:48 ID:??? 「翼くんが悪い人間になることはないわ。ただ、手を離せば握っていたものが落ちるように、 動物園のライオンが飼い主の人間を撫でようとして大怪我を負わせるように、本人の意思に 関わらず本人の状況によって、周りへの影響の方向を決定付けてしまう事がありうるの。 …よく聴いて」 「関心、嗜好、思想、情念、そしてそれらを含んだ一人一人の性質の具体的な量としての能力… 全ての人間はそれぞれこういったものから成る『枠』があって、その枠によってその人の人間性が 成り立っているの。この枠は自らの行動や思索によって変化させる事ができるし、 他者との交流がきっかけで変化をもたらされる事もあるわ。…この交流というところで、翼くんの持つ 『無限』が厄介になるのよ。交流というのは交互に相手に影響を及ぼすものなのだけれど、 翼くんが相手と交流を行った場合は、翼くんが相手に無限の影響を及ぼしてしまうのよ。 普通の人の枠は有限だから、翼くんの影響によって相手の人間性を全ての枠が崩壊してしまうわ」 「僕が周りの人を必ず駄目にしちゃうの!?『無限の影響』なんてものを出さないように、気をつければ…」 「翼くん、さっき言った無限の持つ性質を覚えてるかな」 「む、無限の性質というと…あっ」 「無限に何を引いても無限。例え他の人との交流で他人への影響を気遣ったとしても、結果は変わらないわ」 「……博士、枠が壊れたら、その人はどうなるの」 「一言で言えば、その人自身の持つ特有の特徴のほとんどを失ってしまうわ。残るのは無限の力を有する翼くんに 対する崇拝、依存しか残らなくなってしまうのよ」 「嘘だッ!!」翼は叫んだ。「嘘だ嘘だ嘘だッ!僕がそんなことをしてしまうなんて嘘だッ!」
[288]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/07/27(金) 12:57:12 ID:??? 「……私は翼くんの、実質的な生みの親なのよ。あなたの事はよく知っている」 「だって!じゃあ博士も僕に依存していたっていうの!?」 「……ある意味そうかもしれないわね。これまでの私の人生は全て科学の発展のために注いできたわ。 それらの研究活動はみなこの研究を完璧にするための準備、つまり翼くんの為に生きてきたようなものね。 ……ともかく、翼くんが抱える問題を解決はできなくても、和らげるために1つアドバイスできる事があるわ。 …よく聞いて。これから見せる写真の子をよく見て覚えて、いえ、脳に刻み込むぐらい記憶を焼き付けておいて。 外へ出たらこの子とは親しく付き合っても大丈夫よ、彼は翼くんの分身、無限の悪影響を消し去ってくれる人よ」 そう言った後、私は上着の内ポケットの中から写真を取出し、翼の眼前に示した。写っている少年は翼と同じ年頃、 翼よりもやや細長い。顔は穏やかで優しげな笑顔を浮かべ、誰から見ても好感を感じられるだろう。 「博士、この子は?」 「以前に話した、もう1人の翼くんであり分身である、太郎って子よ」
[289]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/08/06(月) 22:30:42 ID:??? 「分身…僕が翼太郎から別れた時に生まれたもう1人の僕ってことなの」 「そう。元々同じ人間だったから、翼くんとの親和性は高いわ。そしてそれ以上に、 翼くんにとって朗報になる要素がこの太郎くんには備わっているのよ。 …この子の苗字は何だかわかるかしら」 「えっ」当然、分かるはずはない。無茶振りをされて困惑する翼を見て、ほんの少し、心が和む。 「答えは岬、この子は岬太郎よ。この苗字も翼くんと同じように、自身の特徴から命名されたものよ。 海や湖に突き出した細長い陸地を岬というけれど、見方を変えればその地面を歩いていくごとに 地面の大きさが縮んでいって、最終的にはゼロになる地形。彼は『ゼロの象徴』なのよ」 「ゼロと無限大はよく似ているわ。ゼロに何を掛けてもゼロで、無限に何を掛けても無限。 数をゼロで割ると無限になり、数を無限大で割るとゼロ。 どんな数にゼロを足してもそのままで、無限大に数を足しても無限大は変わらない。 ただしこれについてだけど、(無限を数とみなした場合は)例外があって、無限にゼロをかけた場合は 他の数と同じようにゼロになるの」 「ゼロになる…っていうことはもしかして」 「そう、翼くんの『他人に与える無限の影響力』も岬くんによってかき消されて、相手の人格の 変化を気にする必要がなくなるわけよ」
[290]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/08/06(月) 22:33:48 ID:??? 各部器具の最終点検を行い、作業工程の手順を念入りに確認しなおして、 とうとう最後はカプセルのボタンを押すのみとなった。このボタンを押した後は カプセルは完全にロックされ、中から睡眠誘導ガスが噴出される。そうして翼が 眠りについている間に、記憶の調整等が行われる事になる。 「もうすぐ、なんだね」今まで研究所内で使ってきたサッカーボールを抱えながら、翼はつぶやく。 「そう、新たな世界への旅立ちよ、翼くん。嬉しそうというか、随分ワクワクした顔つきになってきたじゃない」 「うん。さっきまでは自分の生まれとか力とか、そういった事があるのに大丈夫かって不安だったけど、 これから外へ出て行って、どんな人と会えるかとか、どんな出来事がおこるかとか、そういうことを考えているうちに、 これからのことが楽しみになってきたんだ。…外に出ても、このボールを博士だと思って大事にするね」 「………ありがとう。…もっと話をしていたいけれど、もう時間ね、カプセルを閉めるわよ」 「待って博士!」ボタンを押そうとしたところで、翼がばっと急いで手を挙げた。 次いで横たわっていた上体を起こして、私に語りかけた。 「どうしたの?」 「ごめんなさい博士、ずっと自分のことばかりで、博士達のことをちっとも考えてなかった、 今絶対に言っておきたいことがあるんだ」 そう言っている翼の顔はこれまで見た事がないほど真剣な面持ちで、誓いを立てるがごとき眼差しで私を見つめていた。 「僕はこの力を、みんなの意志と希望が生かされるようにするために使います。僕のことだから何年も何十年もかかるかもしれないし、 迷って反対方向に行ってしまうこともあるだろうけど、絶対に何度でも立ち直ってみせます」 「……ありがとう、これで私も心残りなく、翼くんを見送っていけるわね」 思わぬ決意表明に感情がこみ上げ、わずかにボタンを押すまいかと戸惑ったが、既に決まっている事、 意を決して翼と永遠の別れとなるボタンを押す。カプセルは少しずつ閉まり、じっと私を見つめる翼に対し、私は最後の言葉を発した。 「さようなら………私の、かわいい息子……」
[291]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/08/06(月) 22:38:56 ID:??? …以上で『大空翼・岬太郎誕生秘話』は終わりです。 まずこの話の投稿において、2回も1か月にわたって勝手に中断して しまった事をお詫び申し上げます。また途中からうまく文章が書けなくなり、 竜頭蛇尾に終わってしまった事につきましても、大変申し訳ありませんでした。 お返事があればこの話に対する余談を書きたいと思いますが、私のせいで新規投稿が 出来なかったという人は、是非私にかまわずに投稿してください。
[292]森崎名無しさん:2012/08/07(火) 00:05:36 ID:??? いやーよかったです。岬と翼の関係・・・面白かったですよ。 最後まで書いてもらえて嬉しかったです。
[293]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/08/07(火) 22:26:32 ID:??? 292さん、御感想ありがとうございます。 本当はもっと無限とゼロの性質に絡めて、翼と岬の特徴と関係を書きたかった のですが、力尽きてしまってどうにもなりませんでした。 この話を書こうと思ったのは、第一の理由としてはキャプテン翼の展開に関する 疑問に理由をつけたかったからです。なぜ話が進むたびにチーム内の翼の地位が 止めどもなく肥大化し、他の仲間は次々と背景化してしまうのか?有象無象とは 異なる翼の活力の源は何か?ワールドユース以降からはサッカーの神様と化すまでに なった原因は単に才能とか努力とか、そういう次元のものではないような気がしていたのです。 このどうしようもない差を見て、何か宗教的ともいうべきか、サッカー以外の要素から翼の 特徴を説明するしかないのではないかと考えるようになりました。 そう考えていた時、私は『異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念』という 本と、『The day of Σ』http://www.nicovideo.jp/watch/sm1487040という動画に出会いました。 数学的なゼロと無限の特徴とその関連性から上記した翼の特徴、そして岬の事について説明が できるのではないかと考えました。後者の動画は人気ゲームシリーズの一つであるロックマンX1の アニメであり、その中でのXと彼の開発者ライト博士とのやり取りから、この話のモチーフとさせて いただきました(翼と『博士』とのやりとりはこの動画を元にしています)。翼にこれほどの力が 備わった以上、その理由づけと使命について重なるところがあると思いました。 無駄に長くなりましたが、私のお話を読んでくださり、ありがとうございました。
[294]きれぼしサッカー大決戦(仮) ◆fM2NOXdVR. :2012/10/02(火) 15:48:39 ID:??? バグゲーム動画などを投稿していたヒテッマン氏が ウイニングイレブン5ファイナルエヴォリューションにて制作した、架空の日本代表チーム 「きれぼしJAPAN」を相手に、全日本ユースが激闘する物語を、 明日より執筆いたしたいと思います。 なお氏は昨日バグ投稿の引退を行い、それにより関連動画の殆どは削除されている ことについて、どうか御了承と御理解をよろしくお願いいたします。 ニコニコ大百科「きれぼしJAPAN」 http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%8D%E3%82%8C%E3%81%BC%E3%81%97japan
[295]森崎名無しさん:2012/10/02(火) 20:24:11 ID:TaQRrD9s 大百科見てきたけどカオスの固まりだな かつてのラブマリーを思い出す 新連載期待しています
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0ch BBS 2007-01-24