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【混迷からの】Another-CU_3【脱出】
[861]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/04(水) 23:00:26 ID:??? カンピオーネの主要なメンバーが帰国し、事実上活動が停止してからと言うもの、 宇佐美蓮子のマネージャーとしての仕事はほとんど無くなっていた。 その間も彼女は時間を無駄にするつもりはなく、資料室に籠もって世界の民話や伝説について 片っ端から調べ上げ、似た逸話を見つければ時代背景や地理的背景などを紡ぎ合わせていた。 突如として消え失せた、親友マエリベリー・ハーンの行く先を推理する材料集めとしてである。 しかし糸口となるような切っ掛けは今のところ見つけられていない。 更に言えば、物理的に彼女を捜索しているナムリス・ユブンタイからも色好い報告が無かった。 つまり蓮子の胸に鬱屈が溜まっているのは当然と言うべき経緯なのである。 蓮子(ったく、気分転換にサッカー関連の本を読んでみても知らない単語ばかりでサッパリだし…) ブツブツと胸に詰まったロマn…じゃない、鬱憤を誰に聞かせるでもなく呟きながら… 蓮子はスタスタと早足で、とにかく早足で施設内を歩き回っていた。 ガコ――ン ガコ――ン 蓮子(ん…?) そんな時、蓮子の耳に微かに入って来た響音が、彼女の意識を呼びとめた。 金属が鈍く響くような異音…蓮子は何となく気になり、その異音の発信地を求めて歩き出した。
[862]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/04(水) 23:01:51 ID:??? 音のする方を辿って行くと、意外にもすぐに原因を発見する事が出来た。 ガコォォォォォォン!! 蓮子(なーんだ…。) 異音の正体はサッカーボールがゴールバーを叩いた時の衝撃音だった。 彼女にとってはなんとも面白味のない正体であった。 蓮子(でも、ボールを蹴ってるアイツの事は少し気にならないでもない。) 音への関心はすっかり失せたが、替わりに人間の方へ興味を移し… 蓮子はゴールの裏側へヒョコヒョコと歩いて行った。 ガコォォォォォォン!! ガコォォォォォォン!! ボールの蹴り主…アルシオンと呼ばれている少年は、先程からボール一個で異音を出し続けている。 ゴールまで2〜30m程度の位置からボールを勢いよく蹴り出し、バーへと当て続けているのだ。
[863]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/04(水) 23:03:24 ID:??? 蓮子(むむ、これはキックコントロールの練習か、はたまたFKを想定してか? ……どっちにしろ、なんだか調子悪そうだね。) 蓮子はサッカーに関して大して知識を仕入れていないが、何となくそれっぽい推察をしていた。 しかし実際にサッカーを知る者からすれば、これは驚くべき光景に違いなかった。 アルシオンはボール一つに対し、かなりのハードショットを連発している訳である。 それを先程から一度の例外もなくゴールバーへと当て続けているのだ。 そのキックコントロールに驚嘆を覚え、自信喪失してもおかしくはない所だろう。 だが…蓮子がこのアルシオンの練習を見て感じる所は違っていた。 『アルシオンはバーを当てる事など意図していない…』蓮子はそう思っていたのだ。 ガコォォォォン!! 蓮子(またズレた…。 なんかどんどん悪くなってってる?) バーではなく、バーの一点…数センチのズレも許さない位置をアルシオンは狙っている。 何故だかそう確信している蓮子は、遠くからアルシオンの表情に目をやってみた。 だが生憎、距離がありすぎてよく窺えやしない。 しかし遠くからでもアルシオンの苛立ちを蓮子は何となく感じ取れていた。
[864]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/04(水) 23:04:50 ID:??? ガコォォォォン!! …何度目かになる(蓮子の思う所の)ミスキックの後、アルシオンの動きがパタリと止まった。 ボールが足元まで戻って来ても、俯いたまま動こうとしない… 蓮子(…………) 蓮子はその様子をジッと見ていたが、ある瞬間に空気が弾け跳ぶような感覚を覚える。 それはアルシオンを中心として、まさに大気が震える衝撃だったと記憶された。 アルシオン「 砕 け 散 れ ぇ っ ! ! 」 ド ッ ゴ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ! ! ! そんな掛け声とともに蹴り出されたボールは、先程までとは違う次元の速度で空を切り裂いた。 そのシュートはゴールネットへ突き刺さり、突き破って尚ベクトルを保つ姿が想像されたが… なんとゴールを捉える事が出来ず、枠外へ逸れる軌道を… そしてあろう事か、蓮子に向かって一直線に空間を貫いて来たのだった。 蓮子「きゃあぁぁぁっ!?」 ドカアァァァッ!! 状況を理解した時には反射による蓮子の絶叫が響き渡り、ほぼ同時に鈍い音が続いた。 蓮子は衝撃的な状況に気を失ったのだが、何故だか痛みを些かも感じる事がなかった。 素早く失神出来て良かった…と冷静に考えている自分の不自然さに気付きもせず、 痛覚が戻ってくる前にと、蓮子は消えゆく意識をポポポポーンと積極的に投げ捨てるのだった。
[865]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/04(水) 23:06:26 ID:??? 一旦ここまでです。 可能であれば日が変わった頃に選択・カードまで進めたいですが、さて…
[866]森崎名無しさん:2012/07/04(水) 23:49:06 ID:??? 蓮子…いつか仇はとってやるぞ
[867]森崎名無しさん:2012/07/05(木) 15:11:35 ID:??? ジョジョアニメ化ゲーム化嫌な予感乙
[868]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/05(木) 22:37:30 ID:??? >>866 ははは……… >>867 やれやれ、乙感謝だぜ。 ============================================ ―――――――――― ――――――― ―――― 蓮子「ンっ………」 パチリ 蓮子は唐突に、両目を気持ち良いほど開きながら目を覚ました。 あれからどれくらいの時間が経っただろう…周囲は薄暗い。 そして目の前に広がる光景は真っ白い天井だった。 蓮子「…知らない天井だ。」 蓮子「………………」 蓮子(うん、言ってみたかっただけ。 なんか判らんけど冴え冴えみたいだわ、私ってば。)
[869]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/05(木) 22:39:26 ID:??? 先程うたた寝から目覚めた時とは異なり爽快と言って良い目覚めであった。 夢なんか絶対に見ていなかったと断言できる程の深い眠りだったと確信している。 そして彼女はこの場所が何処であるかを匂いで察し、自分の身に何が起こったかを逆算しようとしたが… アルシオン「うん……目を覚ましたか?」 蓮子「ふひょっ!? だ、誰!?(ネタ独り言聞かれた!?)」 アルシオン「オレだ、アルシオンだ。」 蓮子「あ、えっと…?」 瞬間に蓮子は経緯を思い出した。 アルシオンの蹴った凶弾がジャストミートし、衝撃で意識を喪失した事を。 蓮子「そっか…私。」 アルシオン「その…さっきは済まなかった。」 蓮子「うん、大丈夫だよ。 あまり痛くな……んんん? あれ、本当に全然痛くない?」
[870]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/05(木) 22:40:45 ID:??? 首、肩、肘、腰…あらゆる関節を動かしてみるも、何の負荷も感じない。 ペタペタと顔、胸、お腹など皮膚を押さえてまわるも、やはり痛みはない。 記憶が確かであれば、相当…という表現とは一線を画すほどの弾丸を身に受けた筈であるが… アルシオン「既に医者が診察して、結果も出ている。 痣ひとつ、擦り傷ひとつ無かったらしい。 ついでに言えば、骨や脳波にも当然異常は全く無いそうだ。」 蓮子「……んじゃ、なんで私は気を失ったんかな?」 アルシオン「寝不足だそうだ。」 蓮子「そか………。(道理で目が覚めて爽快だった筈だわ…) …って、あれ? 私の記憶だと、アルシオンくんは結構凄まじいボールをぶつけてきたと思うんだけど…。」 アルシオン「わざとじゃない。」 蓮子「うん、それは良いんだけど……そんなに強い球を蹴ったわけじゃなかった?」 アルシオン「いや、全力だった。 故にこそコントロールも乱れたのだと思うが…。 正直言ってお前が無傷だったのが信じられないくらいの気持ちだ。」 蓮子「……………」
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0ch BBS 2007-01-24