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【混迷からの】Another-CU_3【脱出】
[875]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:38:05 ID:??? > 今回のラストシーン→ クラブJ > 《その他》 状況と会話のみ ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― アルシオン「なあ………本当にこんなので良かったのか?」 蓮子「うん。 日本人の夏はこれなんだよ、ワトソンくん。」 アルシオンと蓮子は自由に使えるテラスの一席でアイスを食べていた。 もちろんこのアイスは蓮子の策略にはまったアルシオンの奢りである。 既に夕暮れで暑さのピークは過ぎているが、それでも十分にジンメリと蒸す中…。 二人が食べていたのは『ガリガリくん』であった。 アルシオン「いや、でも……リッチって書いてあるのもあったぞ? せめてそっちの方が良かったんじゃないか?」 蓮子「あれは邪道、『ガリガリくん』は氷菓であってこその『ガリガリくん』なの。」 シャクシャク アルシオン「ああ、そうですか。」 シャク 暫しの間、二人は無言で冷たいキャンデーを貪っていた。 (オアシスが間近とは言え)中東の夏である。 荒れ狂う太陽によって空気は焼かれ、結果として身体にも熱はこもる。 その火照った体に対してアイスがもたらす冷気は実に優しかった。
[876]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:39:36 ID:??? 蓮子「アルシオン、ソーダ味おいしい?」 シャク アルシオン「えっ? ああ、思ったよりもかなり美味くて驚いてる。」 シャクシャク 蓮子「そっか…梨はイマイチだ。」 シャク アルシオン「………」シャク そうして再び沈黙となり、やがてアイスの棒だった物は只の棒と成り果てた。 …夕暮れが過ぎ、日もどうやら没っしたようである。 間もなく長い夜がやってくるであろう。 アルシオン「満足したか?」 蓮子「うん、ご馳走さま。 ………………。」 アルシオン「どうした、遠くを見て?」 蓮子「うん。 ほら、マジックアワーだ。 久し振りに見た。」 アルシオン「マジックアワー?」
[877]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:40:43 ID:??? アルシオンは蓮子の言葉を聞き返しつつ、彼女の指差している方向を見た。 西の空には何とも言えぬ不思議な色が広がっていた。 蓮子「空が紫色をしているでしょう? 日没の直後と夜明けの直前、ほんの少しの時間だけ見れる事がある空の色。」 アルシオン「…それをマジックアワーと言うのか。」 蓮子「うん。 空は紫にはならないんだよ、本当はね。 オゾンとか、波長とか色々あって… でも限られた条件が揃うと、こんなに普通じゃない…魔法みたいな風景を見せてくれるんだ。」 アルシオン「そうか…」 蓮子「不思議船地球号だよ、全く。」 そう呟く蓮子はどこか遠い目をしていた。 アルシオンはただ相槌を打つだけだった。
[878]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:41:43 ID:??? 蓮子「アルシオン、空はなんで青いんだと思う?」 アルシオン「えっ…? ああ…生憎オレはまともに学校へ行った事がない、自然の原理など知らない。」 蓮子「ふふ、そんな原理とか小難しく考えなくてもいいんだけどな。」 アルシオン「…何が言いたい?」 蓮子「前にさ、出会って間もない親友に同じ事を聞いてみたんだよね。 私的にはちょっと天文学について話したいと思っただけだったんだけど…。」 アルシオン「…………。」 蓮子「でもね、そしたらその子は結構凄い事を抜かすわけよ。 『空が青い理由? そんなの海が青いからに決まってるじゃない』って。」 アルシオン「海が青いから…か。」 蓮子「めちゃくちゃなんだけど、でも凄く納得して頷いちゃったんだよね。 この子は私が見たいと思っている物を見ているんだって、すぐに思った。」 アルシオン「マ…………」 何かを呟きかけてアルシオンはとどまった。 無意味な詮索であり、しかも野暮極まりないと察したのだろう。 アルシオンはそのまま黙りこんで、西の空を見詰めている蓮子の横顔へ目を向けた。 やがてその視線が少しずつ上の方へとズレていった事に彼の意志があったかは分からない。
[879]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:42:56 ID:??? 蓮子「マジックアワーも終わっちゃったか…。 って、あれ? 何? 私の髪に何か付いてる?」 アルシオン「えっ……あ、いや…そうじゃない。」 蓮子「へー、じゃあなに? 私の横顔に見惚れてたとか?」 アルシオン「ふぅ……」 蓮子「アハハ、溜め息吐くなし。」 アルシオン「それは済まない…ちなみにレンコは何歳だ?」 蓮子「あら、女性に年齢を聞くとはイイ心臓してるじゃない? まあ別に隠す程の物じゃないからいいけどね…20歳よ。」 アルシオン「…一応、年上なわけか。」 蓮子「一応って………随分ね? そりゃ欧米人から見たら日本人はベビーフェイスだけど…」 アルシオン「いや、そうじゃなくて……つまりオレの女性の趣味が年上限定だからさ。」 蓮子「あら、じゃあお姉さんのこと好きになっちゃった?」 アルシオン「…なるものか…。 …そうさ、女性はもっとウンと年上が好い。」 蓮子「ヘイヘイ、そうですか。」
[880]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:44:03 ID:??? 会話が一段落すると、蓮子は再び空を見上げた。 星や月をじっと見つめ、また何事かを考えている様子である。 アルシオンは不思議と席を立たず、そんな蓮子の方を大人しく見ていたが… アルシオン「レンコは今、誰か好きな男とかいないのか? 日本のユニバーシティは折角の夏休みって奴なんだろ? こんな何もない所で…」 蓮子「アルシオンはお化けとか妖怪とか、UFOとか信じてる?」 アルシオン「……えっ?」 蓮子「私は信じてる。 すごく、すっごく信じてる。 …でも見た事はない。 すごく見てみたいんだけどね。」 アルシオン「そうか…。」 蓮子「それから私は、自分が将来誰かと恋して…いつか結婚するんだろうなと漠然と思ってる。 …でも恋する自分とか、夢中になるような男性って見た事がない。」 アルシオン「…………」 蓮子「だから、さっきの質問の答えはノー。 私は今、恋とかしてない。 同年代には大恋愛して、もう色々と経験してる友達がいたけど… 私にとってはその子達の存在も、恋も、お化けも妖怪もUFOも遠いんだ……」 アルシオン「ああ……なるほど、そう言う話の繋がりか。」
[881]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:45:06 ID:??? 蓮子「アルシオンには、今は見えなくて…それでもいつかは見てみたい物ってある?」 アルシオン「見てみたい物?」 蓮子「うん。」 アルシオン「見てみたい物………。」 反芻し、アルシオンは真剣に考え始めた。 そして徐々に俯き、やがて表情も沈鬱になっていく様子が蓮子にも見て取れた。 蓮子「ああ……ごめん、ごめんなさい。 なんか私ちょっと無神経な事を言ったみたい。」 アルシオン「いや、いいさ………オレも随分と無礼な事を言った。」 蓮子「うん。 でも多分、それとはきっと違うでしょ? もっと大きな…」 アルシオン「罪悪感を感じているなら…そうだな、オレの事をアルシオンと呼ばないでくれ。」 蓮子「へっ? じゃあ…アルとか?」 アルシオン「それも御免だ。」 蓮子「そっか…」
[882]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:46:06 ID:??? アルシオン「…アルシオンというのは本当の名前じゃないんだ。」 蓮子「そうなんだ…じゃあ、本当の名前は?」 アルシオン「○○○○……。」 蓮子「その名前で呼べばいいの?」 アルシオン「……………いや。 済まない、今のは忘れてくれ。」 蓮子「そーゆー訳にはいかんばい。 アルシオンって呼ばれるの、理解らないけど苦痛なんでしょ?」 アルシオン「そんな事はない………」 蓮子「嘘だ。 …って、そんな事を論点にしても意味が無いよね…。」 アルシオンの表情にも口調にも強情な感情は見られないが、固く決めた意志は感じられた。 それを察してか、蓮子は話を広げる事をせずに押し黙る。 …が、彼女は突如何かを思いついたようにハッとした表情を見せた。
[883]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:47:09 ID:??? 蓮子「…じゃあ、そうだよ。 私は君の事を私が決めたあだ名で呼ぶ事にする、決めた。」 アルシオン「……はあ。」 アルシオンはこの日何度目かになる呆れ顔を蓮子に曝した。 付き合ってられない感もそろそろ隠しきれなくなっているのが判る程だったが… その顔は数秒後には驚愕に変わっていた。 蓮子「ピクシー…そう、ピクシーがいい。 今日から君はピクシーだ。」 アルシオン「!!」 ガタッ 蓮子「えっ…ど、どうかした?」 アルシオン「何故……ピクシーと呼ぼうと思ったんだ? どうして…」 蓮子「ええっとだねぇ……。 ほら、なんか君ってちょっと人間離れしてるじゃない? ちょっと気付かないうちに居なくなっちゃいそうな雰囲気あるし… …で、私はお化けとか妖怪とか、なんか幻想的な物が凄く好きだし…」 想像だにしなかったであろう、アルシオンの強い剣幕に蓮子はしどろもどろに説明する。 しかし説明をした所でアルシオンの目はその言葉を信じている様ではなかった。
[884]アナカン ◆lphnIgLpHU :2012/07/06(金) 01:48:31 ID:??? 蓮子「う………。 …ってのは全部後付けでさ。 何だか解らないけどビビッと来た。 君はピクシーなんだって、そう呼ぶのが凄くシックリくるように思えたんだ。」 アルシオン「そう…か………。」 恐らく嘘のないであろう蓮子の言葉。 それを聞いてアルシオンは納得したのだろうか? 少なくともショックは依然として彼を包んでいるようであった。 蓮子「…………。 さっきの話じゃないけどさ…ピクシーはいつか見てみたい物はないの?」 アルシオン「オレは………………。」 蓮子「サッカー……楽しんでる?」 アルシオン「!!」 蓮子「もしも…仮に君がサッカーを止めたとして、それでも君は君だよ?」 アルシオン「オレは…オレ?」 蓮子「うん。 そりゃあ上手くて、才能に恵まれているのは素人の私でも判るくらいだけど… だからって、それをやり続ける事を誰かに強要されるとしたら、それは違うと思う。 君の幸せを決めるのは他の誰でもない、君なんだから。」 アルシオン「!」
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0ch BBS 2007-01-24