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【行く者】キャプテンEDIT36【残る者】
[825]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:33:01 ID:??? 西尾(も、もうやるしかない! 合図だスナイパー! ……『Do It!(やれっ!)』) その合図を送ってしまった。 … … … /三三三三三三三三三三三三三三ヾi /三三三/  ̄ "''=ニ 三三三>ヘ三| 三三三} -‐= -、 i , -、 Y 三三三〉 .. -=、__ l ー' _,、 iニ! / /⌒∨三/ ィ'´ ⌒ヽ:::::::::::`ヽj 〉;r‐::::::::ソヽ,|ニ! ー‐' ヽ|三/ ニニzッ三 く' ' ゞ三rッ_ニ' !ニ! 〈 ノ ソ|三| / ヽ ト |ニ! \ ,  ̄ - |三| / l l`ヽ lニ! \ ( ソ_|三| / ,, l | ヽ lニl ) ` ─ 、 ヽー'}三! _ , | lニ! _ ノ ___ ノ ト人/∧ ト '′ jレ' ( rー' イl ヘ ____ ,-、,--z__ / ソ ∧! ヘ\  ̄ ̄ ̄ "''=≡ニニニニニヨ ∧\ ヘ \ / l ヽ 仆 、 ________ ∧::::\ヘ \ i /:::::|/∧ / / /∧:::::::>-... _ ‐- __ /:::::::|//∧=/ / ////\::::::::::::::::::::≧z...., __//::::::::////// / 謎のスナイパー「合図……来たか」 静岡県大会決勝が行われているグラウンドから、500m程離れた建設途中のビル。その上層階に、男はいた。 スコープで確認した西尾の合図。それを受けてからの動きは迅速である。 瞬く間に愛銃を構え直して南葛ゴール前に照準を合わせ、標的の森崎を捉える。 後は中山との交錯の瞬間に、トリガーを絞ればそれでいい。
[826]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:34:12 ID:??? 謎のスナイパー「…………」 ライフルに装填されている弾頭は、毒入りの特殊弾。 人体に掠めれば傷口から侵入し、運動神経を瞬く間に麻痺させるという代物である。 スポーツの競技中に人知れず標的を妨害し、事故に見せかけて選手生命を断つには、打ってつけの弾だった。 500m離れた運動中の人間を、殺すことなく射抜く狙撃の腕があれば、の話だが。 謎のスナイパー「……問題は、無い」 男は自分の腕前に全幅の信頼を寄せていた。 己であれば、レース中のサラブレッドの馬具を狙撃し、事故に見せかけて葬る、といった所業も可能であると信じていた。 絶対的な自信。 だが、それが男の瑕疵となる。 男と容姿が瓜二つの同業者曰く。この家業に必要なのは、臆病さと運。腕前と言う者は二の次に過ぎない。 ……それを知らないまま、男は運命の引き金を引いた。
[827]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:35:20 ID:??? … … … 森崎「……もらったァ!!」 中山「なにィっ!?」 中山がボディフェイントで森崎を惑わし、抜き去ろうとした瞬間、間一髪で森崎の両手がボールを押さえていた。 十人中九人が、中山が右を行くと判断する所で左に行く。 見事なフェイントであったが、不幸にもそれに掛からない十人目が、彼の敵手だったのである。 森崎「じゃあ宣言通りこのボールは……大友のゴールへお返しだぜ!」 中山「しまっ……だが――」 まだ試合は終わっていない。自分と森崎の勝負は、この一度だけではない。 その一念で森崎を追う中山。 だが、その瞬間、 ――ドキューン……っ。 何かが、中山の首筋を掠めた。
[828]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:41:22 ID:??? … … … 撃った瞬間、男は自らの失敗を悟った。 スコープの中には、グラウンドに倒れ伏す中山の姿。 標的の森崎では、ない。 中山がフェイントを掛けた瞬間、男は見事にそれに釣られ、森崎が反応するだろう方角へと狙撃 していた。 だが、実際には中山と森崎の動いた方角は逆。 不幸にも中山は、森崎という敵ではなく狙撃手という仲間(?)を欺いてしまっていたのだった。 謎のスナイパー「……あの弾丸、1発しかないんだよな……」 そう呟くと、男はそそくさと帰り支度を始めた。 その姿に、彼とよく似た同業者が持つ職業意識や責任感は、欠片も見られなかった。
[829]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:42:28 ID:??? … … … 実況「防いだーっ! 森崎くん、中山くんとの1対1を制しました! そして、奪ったボールでオーバーラップ開始ィ! お返しだと言わんばかりに、大友中を攻め立てる気です! 点差は既に圧倒的! 失敗のリスクを理由に躊躇することも無い!」 南葛応援団「うおーっ! 今のは危なかったぜー!」「防いだ褒美だ! オーバーラップ、許す!」「こうなったらとことんやれー!」 「もっりさきっ! もっりさきっ!」「ゴールtoゴールだ! やれーっ!」「もっりさきっ! もっりさきっ!」 実況「そしてこの攻撃を失敗した中山くん! ん? どうしたことでしょう、倒れています。この交錯でどこか痛めたのでしょうか?」 大前(TV観戦中)「……やられたか、中山。大丈夫だろうか。深い怪我じゃないといいんだが」 菱野(TV観戦中)「え、ええ。捻った様な倒れ方でもありませんでしたし、大丈夫だとは思いますが」 中山「くっ……岸田、西尾! おまえらが最後の砦だ、何としても森崎を止めろ!!!」 実況「あ、中山くん、起き上って後方へと指示を飛ばします! どうやら大事は無い模様です!」 比良山(TV観戦中)「そうか……ひとまずは良かった」 水守(TV観戦中)「でも、妙にふらついているような……」 水守のとおりだった。オーバーラップを開始した森崎を追う様に立ち上がった中山は、先程までと比較して異様に足取りが重い。 まるで熱病に魘される様な覚束ない足取りで、森崎との勝負に欠ける執念のみで走っている。 そんなことを思わせる姿だった。
[830]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:43:49 ID:??? 中山「ハァハァ……森崎を……森崎を止めなければ……。 いや、待て……直前でシュートと見せかけてパスに切り替える可能性もあるぞ……。 サイドに駆け込む選手もチェックしなければ……。 右サイドには翼が開いていて……左サイドには……中里がオーバーラップしているな…… うう……駄目だ。ついに目も霞んできやがった……中里が二人に見える……」 中里(な、中山……? 何故拙者のことをそんな顔で見るのでゴザルか?) 小田「な、中里!? お前、今二人いなかったか!?」 中里「なにィ!? ……き、気の所為でゴザルよ!(危ない、ついいつもの癖が出ていたか!)」 中山「そうだよな、気の所為だよな……こうなったら、サイドの選手は考えずに俺は森崎を止めることだけに専念しよう……。 それが限界だ……。 なんとしても……俺の意地にかけても、森崎だけは……森崎だけは止める……!!」 平岡と只見はまるで相手にならない。 浦辺と新田はスタミナが切れて足が止まっている。 なんとか岸田と西尾が時間を稼いだ隙に追いすがり、森崎を止める。 それだけを決めて中山はゴール前に走る。 中山「森、崎……は、早いな……お前、いつの間に足までそんなに早く……」 ……遠い。 僅か80m。味方ゴール前までの距離が、信じられないほど遠い。 復帰の為に走り込んだ距離の、それこそ何百分の一かの距離を、のろのろと詰めていく。 何とかのパラドックスの様に、前を行く相手を捉えられる気がしない。 あまりにも時間が掛かり過ぎて、自分が何のために走っているのかも忘れそうだった。 その度に、焦がれ続けた相手の背中に、目的を思い出す。
[831]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:44:52 ID:??? 中山「森崎……そうだ、俺はお前と勝負するために……!」 そして辿り着いたゴール前。岸田と西尾も為す術も無くあしらわれていく。 一条が、泣きそうな顔で森崎との1対1に備えているのが見えた。 間に合わなかったのか? 否、 森崎「これでゴ――」 中山「……森崎ィイイイイィィっっっ!!」 腹の底から声を出して、自分を忘れかけていた相手の注意を引きもどす。 まだだ。まだ俺はここにいる。その一念を叩きつけながら、タックル。 森崎「――な、中や……しまっ!?」 最後の気力を振り絞ったバーニングタックルが、森崎の足元からボールを弾き出す。 ……勝った。最後の最後で、森崎に勝った。試合はどうなっていたんだっけ? スコアは何対何だったっけ? ……全てがどうでもいい。ただ、森崎が見せた悔しい様な、それでもどこか誇らしい様な表情が今は全てだった。 中山が森崎に、会心の笑みを見せようとした、その瞬間、 翼「 … … イ ヤ ッ ホ ー っ ! ! 」 奇天烈な歓声を上げながら、翼がこぼれ球をオーバーヘッドで押しこんでいた。
[832]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:46:28 ID:??? 実況「あああ──ッ!? や、やはり最後はこの人だった!!! 南葛中の攻撃の要、大空翼くんが最後の最後でボールをゴールに押し込みましたァ!!!!」 石崎「やったな!翼!!!」 翼「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」 自陣からセレブレーションに駆けつけた石崎と共に、翼はくるくる回って喜びを表現する。 チーム内のライバル森崎に、対戦相手の最重要選手中山。その二人を出し抜いてのゴールは格別の喜びなのだろう。 森崎「ギギギ……や、野郎ーっ! 最後の最後でおいしいところを掻っ攫いやがってーっ!!」 そしてそれとは対照的に、悔しさを慢心で表現する森崎。 実況「そしてここで試合終了! 8−1! 南葛中の勝利です! 前半こそ先制され、あわやといったところでしたが、 終わってみればこの点差です! 特に10番を背負う翼くんはこの試合4ゴールの大活躍でした! 強い! 全国V2中の王者・南葛、やはりV3に死角は無いのか! 見事な勝利で県大会優勝を飾り、三度目の全国制覇にまた一歩前進です!」 森崎「ちっくしょーっ!!」 そして地団太を踏むようにして憤懣を露わにする。 ……その姿に、中山は不安になる。 チームは8−1の大敗。自分は全身全霊を尽くした上で、この結果。 果たして、自分は――
[833]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:47:53 ID:??? 中山「森崎……」 森崎「あああっ!? 誰だ!! 今、俺は気分が最高潮に悪いんだ! つまらねえ用事で声をかける野郎は、誰であろうとぶっ殺すぞ!!」 中山「ハハハ……やったな森崎。やっぱりおまえたちには敵わないや……」 森崎「な、中山……」 振り向いた途端に大声でどなったかと思えば、今度は中山を認めるや目を丸くして驚く森崎。 その様子が気になったが、中山はそれよりもまず問わねばならないことを優先した。 中山「俺達も、努力に努力を重ねてきたつもりだったけど……やっぱりお前と翼には敵わなかったよ……。 お前たちだけじゃない……井沢たちも……小学校時代は目立たなかった長野や岩見も……本当に強くなった……」 森崎「おい、どうしたんだ? 中山! 顔色が真っ白だぞ?」 らしくもなく、心底から心配げな声。今の自分がそんな声を掛けられるにあたうとは思えなかったが、少しだけ嬉しい。 くしゃりと口元を笑みに歪めながら、最後に一つ。 中山「……森崎、俺は……俺はおまえにとって、強敵(とも)と呼べる存在だったか?」 森崎「あ、ああ……この試合、唯一俺から点を取ったのも、おまえのシュートあっての得点だったしな……。 だけど、なんでいまそんな話を――」 良かった。その言葉が聞けて本当に良かった。そう思ったとたん、中山の意識は白く溶け始めていく。
[834]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:50:28 ID:??? 中山「……そ、そうか。よかったよ。負けはしたけど、俺の人生において意味のある試合にできて……本当に……良かった……。 さ、最後に……握手をしてくれないか?」 森崎「あ、ああ別に構わないが……」 珍しく、どこか照れたような森崎の表情。……それを認識するのが限界だった。 差し出された手に気付く前に、中山の身体はゆっくりと傾ぎ、 森崎「お、おい……どうしたんだ? 中山! おいっ!」 どさりと、地面に倒れ込んだ。 中山(森崎……俺たちに勝ったんだ、最後まで勝てよ……ただ、今年の全国は……今までより……しんどい……かも――) … … … 実況「こ、これはどうしたことでしょうか!? 選手が誰か、倒れています! これは……な、中山くんだ!」 審判「……ん!?おい!どうしたんだ君っ! ……これは大変だ!! おーい!! 救護班、救護班を呼んでくれ!!」 観客「ひ、人が倒れてるぞー!?」「な、中山だ!」「大丈夫か、おい!?」「み、見ろ! 肌の色が真っ白だ!」 大前(TV観戦中)「……………………え?」 やす子(TV観戦中)「何よこれ……どうなっているって言うの!?」 菱野(TV観戦中)「さ、酸欠? 脱水症状? い、いえ、そんなものとはどこか違う様な――」 試合後の選手が卒倒するという衝撃的な映像に、鳴紋中の部室が凍りつく。 ましてや相手は二か月前に試合をしたばかり。それも印象に残るプレイヤーだっただけに、衝撃の程は深かった。
[835]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2012/06/08(金) 02:51:57 ID:??? 輝林(TV観戦中)「……冷静に。とにかく、続報を聞き逃さないよう――」 テレビのテロップ「不適切な映像が流れたため、番組の内容を変更してお送りしております」 渡会(TV観戦中)「って、なんかボートの映像が流れ始めたぞ!?」 本多(TV観戦中)「ええい、マスコミめ! ちゃんと仕事せんか! 静岡で何が起こっている!?」 映像を切り替えたブラウン管に、本多が怒鳴る声が遠く聞こえる。 大前「一体……何が起こったって言うんだ……?」 ひとり呟く大前に、答えるものは誰もいなかった。答えを持ち合わせている者は、誰もいなかった。 〜二日後〜 大前「『都大会決勝、東邦学園10−0で疑惑の圧勝〜対戦相手の武蔵中、試合後に選手全員が入院〜』……。 そうか、武蔵負けたのか。……それはそうとして、中山のことについての記事が無いな」 読み終えた新聞を机の上に放って、大前は嘆息した。 菱野「こちらの方は……あら? ふらの中はまた大差で圧勝なさったのですね。中山選手についての続報は……やはりありません」 新聞、テレビ、ラジオ。いずれのメディアでも、試合後に倒れた中山がどうなったかを報せるニュースは無かった。 全国放送中に倒れた選手の安否情報。これほど大衆の耳目を集めるのに、打ってつけの話題は無いというのに、である。 大前(想像したくはないが、報道出来ない様な事態に――命にかかわる事態になったのか?) 菱野「大前さん……」
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0ch BBS 2007-01-24