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異邦人モリサキ
[2]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:34:19 ID:??? ◆注意事項◆【最重要】 本作は二次・三次創作であり、原作の設定等とは大きく異なる描写があります。 本作では展開次第では主人公以外の登場人物全員に「死亡する可能性」があります。 また主人公を含めた登場人物全員に「極めて悲惨な境遇に陥る可能性」があります。 ヒロインや仲間も含めて例外や救済措置はありませんし、またその可能性は決して低くありません。 キャラクターの死や不幸を扱う作品が苦手な方は充分にご注意下さい。 また本作では世界観上、サッカーを行いません。 本作には特殊なローカルルールが多数存在します。 テンプレートをよくお読みになった上でご参加下さい。 特に【最重要】【重要】と書かれた項目には必ず目を通し、概要をご理解いただいた上で ご参加下さいますようお願いいたします。 それではまず、開幕の物語を御覧下さいませ。 ******
[3]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:35:22 ID:??? 鳴り響く鐘は、港への到着を告げるものである。 ゆっくりと近づいてくる波止場には荷下ろしの人夫たちが忙しなく行き来している。 どこの港も変わらぬその光景の背後、高台に広がる街並みは白を基調とした家々の壁や屋根が 黄昏に染め上げられて、さながらゆらゆらと透き通る炎に包まれているかのようであった。 マルタギニア海の玄関口と呼ばれる城塞都市、ドルファンである。 長い旅路の果て、この豊かで美しい街を見た者は、これから己を待つ富や幸運を信じて疑わぬだろう。 水先案内に引かれて進む船の舳先に立ち、次第に近づいてくる黄金色の街並みを見上げる男もまた、 その一人である。 ドルファン歴デュラン二十六年、四月一日。 一人の東洋人がドルファンに到着した。 ―――傭兵として。 ***
[4]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:36:25 ID:??? 「本船は、只今ドルファン港に到着致しました。下船の際には―――」 案内人の声を背に、傍らに置いた頭陀袋を背負って歩き出したのは、薄汚れた外套を纏った男である。 埃にまみれた頭巾を目深に被ったその男、歳の頃は三十路のいくらか手前だろうか。 細身にも見えるが、外套の下から覗く日に焼けた腕はまるで鋼線を束ねたようで、実のところは 一切の無駄なく鍛え上げられた身体つきであることがわかる。 旅路を往く者に特有の履き込まれた武骨な革のブーツと、何よりベルトから下げられた 飾り気のない長剣の柄が、男が何者であるのかを雄弁に語っている。 いくさ場を流れ歩き、人の生き血を啜り生業を立てる、それは流浪の戦士であった。 「……」 真一文字に口を引き結んだまま、はしけに歩を進めようとした男の背に、もぞりと動くものがあった。 『もごもご……』 「……」 『もがもが……ぷはーっ!!』 外套の下から勢い良く飛び出してきたのは、奇妙な影である。 人の姿に、似てはいた。 似てはいたがしかし、それは決して人ではあり得なかった。 『やっとドルファンに着いたね!』 何となれば、人は空を飛ばぬ。 人は掌に乗るほどの背丈で立ち、笑わぬ。 それは伝承に現れる、妖精を思わせる何かであった。
[5]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:37:27 ID:??? 『……ん? どうしたの?』 艶やかな金色の巻き髪に、あどけない童女の顔。 道化師の着るように奇抜な意匠を施された萌黄色のチュニックを纏うその背には、 儚く透き通る二対四枚の翅が生え、はたはたと揺れている。 足元を彩るのは腿丈まである黒革のロングブーツだった。 『ちょっと、何をぼーっとしてるのさ、キミ!』 「……誰だ、お前」 男がぼそりと漏らした声は、眼前にふわふわと浮かぶ妖精の如き影に向けられていた。 その言葉に、あどけない顔立ちが怪訝な表情を浮かべる。 『……え?』 「……」 蜻蛉を思わせる翅が羽ばたき、影が中空を滑るように男へと近づく。 小さな手が、男の鼻筋をぴたぴたと叩いた。 『もしもーし、本気で言ってる?』 「……」 それでも無言を貫く男に、幼い顔がぴくりと片眉を上げる。 翅が感情を表すようにふるりと強く震えると、影の声が大きくなった。 『あのね! 十年来の相棒に、誰だ、はないんじゃない!?』 「相棒……?」 男がぼんやりと鸚鵡返しをするのに、影の表情が変わった。 呆れと憤りの綯い交ぜになったような顔のまま羽ばたくと、男が見上げるような高さにまで舞い上がる。
[6]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:38:53 ID:??? 『むぅ……あたしをお忘れなら、思い出させてあげるよ! えいっ』 言葉と共に急降下。 勢いのついたその身体が真っ直ぐに男の顔めがけて飛ぶと、ブーツに包まれた小枝のような脚が 唸りを上げて繰り出された。 綺麗な回し蹴りが、男の鼻を直撃する。 男の頭が、衝撃と共に跳ね上げられた。 その拍子に頭巾が落ちて、男の顔が顕になる。 まず現れたのは、黒い髪である。 南欧の港には珍しい、夜の海のような漆黒。 髪の下には、やはり黒い、切れ長の瞳が輝いていた。 紛うことなき、東洋人である。 その東洋人が、蹴られた鼻を反射的に押さえながら口を開く。 「痛ぇっ! 何すんだ、ピコ!」 『ピコ、って……わかってるじゃない! もう!』 東洋人がピコと呼んだ妖精の如き影が、憤懣やるかたない様子で腰に手を当てる。 その仕草を見て、男がにやりと口の端を上げて笑った。 年格好に不相応な、悪戯っぽい笑み。 「はいはい、俺の頼りになる相棒のピコさん……だったっけ?」 『……まだ足りない?』 「おっと、これ以上蹴られたら男前が台無しだぜ」 冷たく言って足を振り上げたピコに、男が慌てて顔を引く。 『さ、いつまでもおバカなことやってないで、船を降りよ。 日が暮れる前に色々しなきゃいけないんでしょ?』 「そうだな―――と」 荷物を手に振り返った男の目の前に、一人の女性が立っていた。
[7]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:40:06 ID:??? 「……恐れ入ります。出入国管理局の者ですが……」 理知的で、いかにも効率的に仕事をこなしそうな顔立ちの女性が、しかし困惑したように言葉を濁す。 男に声をかけてよいものか、迷っていたようだった。 『……困ってるね』 「困ってるな」 『キミの一人芝居を見せられたら、そりゃ困るよね』 「一人芝居ってな……」 『だって、あたしはキミ以外に見えないんだよ?』 「まあ、そうだが……」 ピコの言葉に、男が渋面を作る。 してみれば、この女性は男が突然立ち止まり、ぶつぶつと宙に向かって独り言を呟くや 唐突に鼻っ柱を押さえて苦悶している様をずっと見ていたのかもしれない。 『……恥ずかしいね』 「……」 「……」 奇妙な沈黙が、降りた。 「……うぇっほん」 「……失礼致しました」 振り払うように、男が咳払いを一つ。 それを合図にしたように、女性が表情から困惑の色を消し、業務上の微笑を作る。 職務に忠実な人物であるようだった。
[8]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:41:13 ID:??? 「で、ええと……入国審査だったか」 「はい。それでは、こちらの書類に必要事項の記入をお願いいたします」 言われて渡された書面には、氏名や出身地、生年月日や血液型などを記入する欄がある。 「大体のところは軍の方から回ってきてるんだろ?」 「はい。傭兵徴募に応じて下さった皆様の査証審査は既に完了しておりますので、 こちらの書類は照合のための形式的なものになります」 「へいへい……っと。これでいいか?」 繋留されながらも微かに揺れる船の上で器用にペンを滑らせた男が、書面を女性に渡す。 「お名前は……モリサキ・ユーゾー様、でしょうか」 「森崎が姓、有三が名だ。見ての通り、東洋圏の出でね」 「承りました」 森崎と名乗った男が気取った様子で黒髪をかき上げてみせるのへ、女性は事務的に頷きを返す。 アピールは空振りに終わったようだった。 『ちょっとカッコ悪いよ、キミ』 「……う、うるせえ!」 微かに頬を赤らめながら小声で言い返す森崎に、女性が確認を続ける。 「三月十二日生まれ、A型……あら」 「……? 何か間違ってたか?」 小さく驚きの声を上げた女性に、森崎が聞き返す。
[9]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:42:14 ID:??? 「失礼致しました。ご自分の血液型がお分かりになるのですね」 「……書かせたのはそっちだろ?」 「申し訳ございません。外国の方ですと、そもそも血液型とは何かをお尋ねになる方が多いもので」 頭を下げた女性の釈明に、森崎が得心した様子で頷く。 「まあ、普通はそうかもな。だが俺は流れの傭兵だ。スィーズランドにも長くいたことがあるんでね」 「左様でしたか。我がドルファンの医療技術も、かの国に学んだものです。 公立の病院も備えたこの首都の医療は、南欧圏でも随一と自負しておりますわ」 欧州最先端の文化を誇る国の名に、女性が感心したように相槌を打つ。 『血液型は大事だよね! ……前みたいに、戦場でバッサリいかれた時なんかに』 「……うるさいな」 「は?」 「いや、何でもねえ」 欧州全土でも一部の国でしか行われていない輸血技術を思い出して、森崎が反射的に胸に手をやる。 着込んだ服の下には、数年前に負った刀傷の痕が生々しく残っているはずだった。 験の悪い記憶を遠ざけるように、森崎が女性に向き直る。 「……で、軍からの書類は?」 「こちらになります」 受け取った書面の束を一枚づつめくって、森崎が契約事項を確認していく。
[10]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:43:16 ID:??? 「兵役義務は三年間、以降の更新は双方の合意に基づく……。 契約不履行には違約金が請求される、負傷除隊は認められるが除隊後の保障は一切行われない……と」 「ご不審な点でも?」 「いや、まあこの辺はどこも同じだよ。払えるはずもねえ、ばかっ高い違約金で縛られるのもな」 「……」 皮肉げな物言いに鼻白む女性に、あんたに言ってるわけじゃねえさと手を振って、森崎が続きに目を通す。 「契約満了時の報酬はスィーズ金貨……だな。 ま、銀は西洋圏から山ほど運ばれてきて年々価値が落ちてるからな。金じゃなけりゃ話にならん」 「毎月の給与支払いはデュラン銀貨となりますが」 補足を入れる女性に、森崎が苦笑する。 「そこは仕方ねえだろ。金貨で飯だ酒だってわけにはいかねえんだし」 『迷惑だろうねえ』 「他に、ご質問はありますか」 ピコの合いの手に頷く森崎。 その仕草をどう捉えたか、女性が問うのへ向き直った森崎が、言う。 「おっと、最後に一番大事なことを確認しておくぜ」 「はい」 「この国では、傭兵でも戦功次第で騎士叙勲が認められるんだよな?」 その言葉を聞いた女性は一瞬眉を上げ、すぐに典雅な笑みを作りなおした。 幾度となく繰り返されてきた演目をこなす女優のような、揺らぎのない表情で女性が告げる。 「はい。それがドルファン王国軍の、他国とは一線を画すしきたりです。 現在の軍上層部にも、ゲルタニア戦役やボルキア戦役で傭兵として活躍された方々がいらっしゃいます。 彼らは皆、ドルファン王国の騎士として叙勲され貴族位を得ています」
[11]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:44:28 ID:??? すらすらと述べられた説明に、森崎が口の端を上げる。 「よし、それを聞きゃあ充分だ。やくざな稼業ともようやくおさらばできそうだぜ」 『活躍できればの話だけどね』 「するさ。俺を誰だと思ってる?」 茶化すピコを睨む森崎の姿は、女性からは宙を見つめて独り言を呟くようにしか見えない。 僅かな間を置いて、女性が口を開く。 「……では、書類の写しを軍部事務局へ回しておきます。 モリサキ様、貴方にご武運がありますよう、お祈り申し上げますわ」 「そりゃどうも。美人の祝福は何よりいくさ場で効くんだ」 森崎の軽口に女性が微笑を返す。 その表情に事務的な仮面の下の、素の女性が垣間見えるように感じたのは森崎の気のせいだっただろうか。 女性はすぐに業務用の顔に戻ると、咳払いをひとつ。 すう、と息を吸って、艶やかに花開くような、完璧な笑みとともに、告げる。 「―――ようこそ、ドルファンへ」
[12]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:46:30 ID:??? ****** 開幕の物語はここまで。 以下はルールの説明となります。 本ルールは以下のURLからもご覧いただけます。 また本ルールに記載のない一切の事項はGMが都度裁定を行い、必要であると認めた場合は 適宜ルールの追加・改訂を行います。 ttp://www39.atpages.jp/msaki/rule.htm
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0ch BBS 2007-01-24