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異邦人モリサキ
[225]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 00:55:34 ID:??? ご回答いただいた方全員にEP1を進呈いたします。 *** B 他を当たる 「……ま、フツーに考えて商店街に出た方がいいよな、買い物するなら」 『そだね』 「正直、あっち側にも興味はあるんだけどな」 言って森崎が覗き込んだ路地の向こうには、桃色やら紫色やらで彩られた独特の店が並んでいる。 曲がりくねった金文字で飾られた看板には『夜の殿堂・黒ネコ亭』『艶笑楼』『通人喫茶・はいたまま』等々、 いかにも、といった風情の屋号が刻まれていた。 独特の空気感を持つそれらの店をちらりと見やったピコが、わざわざ森崎の顔の前へと降りてきては 路地の奥と森崎の目とを見比べて、小さな肩をすくめてみせる。 『……ふーん』 「な、何だよその目は! その街を知るには、その街の女を知るのが一番手っ取り早いんだよ!」 『何さ、知った風なこと言っちゃって』 「痛ぇっ!」 ふわりと飛んだピコが、森崎の耳を引っ張ったものである。 『さ、フツーに考えて次行くんでしょ、次』 「イテテ、だから離せって、おい!」 こうして森崎は小さな相棒に耳たぶを掴まれたまま引きずられていくのであった。 ***
[226]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 00:56:35 ID:??? 「お城は今日も異常なし、っと」 『ま、尖塔の先っぽしか見えないけどね』 城塞都市ドルファンの中央に壮麗な姿で聳え立つのがドルファン王城である。 周囲を城壁と濠とに囲まれた、その旧トルキア様式を受け継ぐ建築美術の粋が衆目に晒されるのは 年に一度、クリスマスの夜だけだった。 「で、この城の周りが城央、ドルファン地区ってわけだな」 『このキャラウェイ通りも、すっかり見慣れたねえ』 キャラウェイ通りは王城の南東に位置する、この城塞都市一の目抜き通りだった。 両手いっぱいに買い物を抱えて家路につく主婦、緊張の面持ちで商談に向かう商人、 人の多さに目を白黒させる異国の男、お使いに走る小僧、連れの男に服をねだる少女、 巡回する地区警備隊の歩哨から、それを警戒しながらカモを見定めようとする悪党まで、 広い通りはあらゆる種類の人間で溢れている。 『毎日毎日、すごい人の数だよね』 「ま、このドルファンは南欧じゃ一番景気のいい国の一つだからな。人は金に寄ってくるもんだ」 『キミもその一人ってわけだね』 マルタギニア海貿易の中継拠点として栄えるドルファン港の富を象徴するような、それは一大商業地である。 シーエアー地区と隣接する南側には比較的安価な品物を扱う雑貨商や食料品を扱う市場があり、 北側、即ち王城に近づくほど高級な店構えが増えてくる。 「実は俺、この先に何があるのかはよく知らねえんだよ」 『そうなの?』 「普段メシ食いに出てくるのはこの辺までだからな」
[227]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 00:57:39 ID:??? と、森崎が立ち止まったのはキャラウェイ通りの中心よりも南側、庶民的な店や露店が立ち並ぶ一角である。 傭兵用の兵舎には、飲み水を溜めた瓶はあっても三食を提供するサービスなどは存在しない。 必然、外食となる森崎たちの腹を満たすのがこの界隈であった。 「言ってたら腹減ってきたぜ。とりあえず何か食ってこう」 『さんせーい!』 迷いのない足取りで森崎が向かったのは一軒の食堂である。 華美ではないが落ち着いた装飾の看板には『波間のかもめ亭』と流麗な筆記体で刻まれている。 森崎、行きつけの店だった。 扉をくぐると、野太くも威勢のいい声が森崎を出迎える。 「へいらっしゃい! ……お、モリサキじゃねえか。珍しいなこんな時間に」 「今日は休みでね。街をぶらついてるってわけよ」 既に半分以上が埋まった店内を見渡しながら店主と挨拶を交わすと、勝手知ったるといった様子で 空いた席に腰掛ける森崎。 「何にする? って聞くまでもねえか」 「ああ、いつもので頼む」 禿げ上がった頭をつるりと撫でると、恰幅のいい店主は片手を上げて店の奥へと消えて行く。 そのやり取りで通じるほどに、森崎はこの食堂に通っていた。
[228]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 00:58:40 ID:5V+ljkxY *ドロー !と food の間のスペースを消して、「いつもの」メニューを決めて下さい。 「いつもの」って何だっけ? → !food ※まともな食事であればガッツが回復します。 和食であればより大きく回復します。 ゲテモノの場合はガッツは回復しませんが、称号とスキルが手に入ります。
[229]森崎名無しさん:2012/06/07(木) 01:01:30 ID:??? 「いつもの」って何だっけ? → トリュフ
[230]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/07(木) 01:03:40 ID:??? 「いつもの」って何だっけ? → 京風懐石
[231]森崎名無しさん:2012/06/07(木) 01:15:49 ID:??? 特に何も書かれていない判定でもコテ必要だから 230の料理が選ばれるんだよな? かなり良いのが出たなあ
[232]森崎名無しさん:2012/06/07(木) 01:17:37 ID:??? 庶民的な店が出す料理じゃないな。
[233]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 01:20:39 ID:??? >>230 お見事です。 通常のEPに加え、CP1を進呈いたします。 *** 「へいお待ち!」 しばらくの後、店主が大きな盆に幾つもの小皿を乗せて運んでくる。 ことりと静かな音を立てて木製のテーブルに置かれたのは、 ドルファン近辺ではまず見かけない朱塗りの漆器である。 小さな皿の一つ一つには、一口大の野菜や魚が色鮮やかに盛りつけられていた。 「うひょー、これこれ! こいつを食わなきゃ始まらねえ!」 森崎が嬉々として言う。 それもそのはず、森崎の目の前に並んでいたのは他でもない、 彼の遠い故郷の料理だったのである。 手にしている食器もフォークやナイフではない、一膳の塗り箸であった。 「まさか海の向こうで、これほど繊細な都の味わいに会えるとは夢にも思わなかったぜ。 これを食えただけでも、この国に来た甲斐があったってもんだ。 給料全部はたいたって惜しくねえ味だぜ、こりゃあ」 「嬉しいことを言ってくれるねえ。ゆっくりしてってくんな」 「いっただっきまーす!」 『……ねえ、キミ』 早速先附の蒸し海老にかぶりつこうとした森崎の鼻先に、 ピコがふわりと舞い降りる。
[234]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 01:22:53 ID:??? 「んあ? 何だよ」 『買い物のこと、このおじさんに聞いてみたら?』 「あ、ああ……そうだったな」 『キミ、自分が何しに出てきたか完全に忘れてたでしょ』 「んなことねえよ……なあ、オヤジ」 いかにも残念そうに口に運びかけた箸を置くと、森崎が 既に踵を返していた店主を呼び止める。 「ん? どうした、モリサキ。本場の車海老と違うのは勘弁してくれよ」 「いや、そうじゃなくてよ。あんた、この店は長いんだよな」 「おう、ヤマシロでの修行から戻って、もう十年近くになるぜ」 胸を張って答える店主。 「そいつぁ頼もしい。俺ぁこの街、慣れてねえからさ。ちっと買い出しのことで聞きてえんだが」 「へへっ、この界隈のことなら酒屋のジャンの不倫相手だって知ってるぜ」 「……いやそれはいいけどよ、この辺で安くて質のいい下着と、……」 と、森崎が言いかけた、瞬間である。 店主の顔色が、変わった。 いかにも人のいい、豪快な笑顔は何かの間違いであったかのように掻き消えていた。 代わりにそこに浮かんでいたのは、憤怒と侮蔑に満ちた形相である。 それは嫌悪よりも妥協なく、憎悪よりも湿度の高い、どろりと濁り異臭を放つ感情を、形にしたものであった。 「……!?」 一瞬ぎょっとした森崎だったが、すぐにその視線が自分に向けられたものではないことに気づく。 その黒く粘つく表情が向けられているのは、その後ろ。店の入口である。 そこに一つの、小さな影があった。
[235]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 01:24:16 ID:??? 「テメェ……!! 二度と近寄んなって身体に教えてやっただろうが! まだ足りねえか!?」 つい今しがたまで愛想のいい言葉を紡いでいた口から吐き出されるのは、怒号である。 店中の客が何事かと店主の方に目をやり、それからその怒号の行き先に目をやって、 納得したように視線を戻す。 中には店主と同じ種類の表情を浮かべて店の入口に立つ影を睨みつける者もいた。 そこに立っていたのは、子供である。 薄汚れた襤褸を纏う、物乞いのような姿。 物乞いと違うのは、片手に銅貨らしきものを掴んで差し出しているところであった。 何かを訴えかけようとするその子供の、襤褸の隙間から溢れるくすんだ赤髪と浅黒い肌を見て 森崎が小さく呟く。 「ジタン……か」 『ジタン、って……あの、決まったところに住まずに旅を続けるっていう?』 「……ま、そういう意味じゃ俺らと似たようなもんだがよ」 ぼそりと言った森崎の言葉は、幸いにして店内の誰にも届かない。 絶え間なく響く店主の怒号と罵声に掻き消されていた。 と、ジタンの子供が小銭を片手に店内へと一歩を踏み入れる。 「……ッ!!」 「おかね、あります……。たべもの、売っ……」 子供が、その願いを言い切ることはできなかった。 店主の躊躇ない蹴りが、その腹の辺りへとめり込んでいた。 小さな影が、ひとたまりもなく店外へと飛んだ。
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0ch BBS 2007-01-24