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異邦人モリサキ
[274]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:55:39 ID:??? >>267 そうですね。 見ている人は見ている(こともある)、ということを忘れてはいけません。 厄介事を呼び込む場合も、中にはありますが……。 >>269 はい、前述の通り、今回の人物称号変化でその傾向は強くなるでしょう。 礼法値次第でまた変わってくる部分でもありますが。 >>270 原則として……というより、例外なく「見えていない」ですからねw とはいえまあ、傭兵として生きる限りはそう心配はないでしょう。 殺伐とした生活に心が病んでいる人の多い職種なので……。 >>271 そうですね。 ただ、モラルが上がりすぎると平時でなくても利他的な行動を取る場合がありますし、 方便のための嘘や、大のために小を切るような選択ができなくなりますので、 その点には覚悟か注意が必要になってくるかも知れません。 とはいえ、礼法・モラル共に中央値から離れるほど上がり/下がりづらくなりますので あまり普段から過敏になることもありませんが。
[275]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:57:04 ID:??? A 「どうした、爺さん」 介抱してやる。 声をかけたのは、果たして純粋な義侠心や親切心からだったのか、 森崎自身にもそれはわからない。 先ほどの幻想の余韻が、訓練漬けの殺伐とした心を和らげていたのかもしれない。 或いはあの食堂で見た光景やその後の砂のような食事の味や、そういう森崎の中に燻っていたものたちが 今になって背中を押したのかもしれなかった。 (―――この国は、俺の調子を狂わせる) 蹲る人影に向けて踏み出しながら、そんなことを考える。 二歩目、そんな自分も悪くないと思えて、苦笑し、小さく首を振る。 悪いも悪くないも、ない。 いつであれ、どこであれ、見る景色、聞く言葉、それによって紡がれる感情や衝動や、 湧き上がる気持ちや発する声や、そういうものが自分だ。 そういう小さなもの、見えないもの、或いは大きなものや目を逸らせないものの集合が 森崎有三という男なのだと、森崎は考えている。 そうして三歩目を踏み出す前には、そんな風に考えていたことも、綺麗に忘れてしまっていた。 「おい、具合でも悪いのか?」 駆け寄った森崎が声をかけると、老爺は微かに顔を上げた。 白髪に長い白鬚を蓄えた老爺は、見れば身なりも整っている。 シャツの仕立てを間近で見れば、浮浪者や酔漢の類ではないことはすぐに分かった。
[276]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:58:07 ID:??? 「……、……っ、……!」 荒い呼吸に血の気の引いた顔色。 蒼白に近い額にはじっとりとした汗が珠になっている。 震える手が、胸の辺りの生地を破り裂かんばかりに握り締めていた。 (と、すると……癪か、心の臓か) 一目、そう判断を下す森崎。 とはいうものの、医術の心得などあるはずもない。 胸を押さえる病人はそのどちらかであろうと見当をつけただけである。 そんな森崎をほとんど視線だけで見上げた老爺が、不安定な呼吸の中、もごもごと口髭を震わせた。 「……す、り、……」 「え? 何だって、爺さん」 老爺を抱きかかえるようにして耳を寄せた森崎が、その身体の軽さに驚きながら聞き返す。 薄い絹の生地越しに、べったりとした老爺の汗が掌に貼りついていた。 「く、くす、り……を、」 「薬!? 薬持ってんのか、爺さん! どこだ!」 耳元で怒鳴るような森崎の声に、老爺が震える手で指さしたのは胸元に下げられた小さなロケットである。 桃の種ほどの銀細工は、どうやら中が空洞になっている。 脇の留め金を開けると、中からは茶色い丸薬が一粒、転がり出てきた。 「っと……! こいつだな、水はなくても大丈夫か!?」
[277]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:59:31 ID:??? 指先で摘めるほどの丸薬を落とさないように慎重に受け止めた森崎の問いに、 老爺が荒い息をつきながら首肯する。 痙攣と見紛わんばかりであったが、ともあれ森崎は丸薬を老爺の口元へと運ぶと、 薄く開いた唇の隙間へと指先で詰めるように押し込んだ。 呼吸、一つ。 「……、……っ……、……」 二つ、三つ、四つ。 十を超える頃、目に見えて老爺の息が整っていくのがわかった。 青ざめていた頬にも僅かに赤みが差し始める。 『ど、どう……?』 「ああ……とりあえずは、良さそうだ」 いつの間にか舞い降りて、髪を掴んでいたピコに向けて声をかける森崎。 と、その声をどう取ったのか、老爺が薄く目を開ける。 「ぉ、おお……。どこの……どなたかは、知らんが……、済まんかったの……」 「おい爺さん、無理すんな。しばらく寝てろよ」 止めようとする森崎を手で制して、眉間に皺を寄せた老爺が再び目を閉じるときっかり三つ、深呼吸する。 ゆっくりと上体を起こすと、もう一度大きく息をついた。 「いや……もう、大丈夫……。少し休めば、良くなる……」 「そうか? なら、いいけどよ……」 と、なおも心配げに老爺を見守る森崎の耳に、飛び込んでくる声があった。
[278]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:00:33 ID:??? 「だ・ん・な・さ・ま〜!」 遠くの方で、誰かが大声で叫んでいる。 「おぉ〜い、旦那様ぁ〜! どちらにいらっしゃるんですかぁ〜!」 どうやら人を捜しているようだった。 その声を聞いた老爺が、真っ白な片眉を上げると口を開いた。 「おお、儂を捜しに来た者のようじゃ……」 「そうなのか?」 「散歩の途中で、はぐれてしまっての。済まんがお主、ちと呼んできてもらえぬか」 「そりゃ構わねえが……一人にして大丈夫か?」 気遣う森崎に、老爺が皺だらけの大きな手を振る。 「ああ、ようやく落ち着いてきたわい……もう、心配要らん。 それにしてもお主、最近の若衆にしては珍しく、気のいい男じゃのう」 「気のいい、って……いや、それほどのことはしてねえよ」 言われた森崎は、照れたように鼻の頭を掻くばかりであった。 ***
[279]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:02:05 ID:??? ※モラルの上昇により、人物称号が『気のいい』に変わりました。 全回答と判定に影響を及ぼします。 現在の称号は『気のいい慎重派』です。 ***
[280]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:03:13 ID:??? 『……あの人、でいいんだよね……?』 「ああ、多分な……」 不安げに言うピコと目を見交わした森崎が視線を戻した先。 ぴょこぴょこと跳ねるように辺りを見回しているのは、一人の女性である。 春の陽気にも肌の露出を極力抑えるような黒の長袖にロングスカート。 ヒールの低い編み上げの革靴を履いた足は忙しげにあちらこちらへと歩を運んでいる。 布を巻いた頭の後ろからは一本にまとめた長い髪の束が覗いており、女性がその向きを 変えるたびに馬の尾のように揺れていた。 「旦那様ぁ〜! ……んもう、どーこ行っちゃったのかなー、あのおジイちゃんってば! ちょっと水を汲みに行ったらいなくなるんだもん。とうとうボケちゃったかな?」 主を呼ぶ声とほとんど変わらぬ大声で雑言を漏らしたその表情には、 遠目にも不安が浮かんでいるようには見えない。 「……本当にアレだよな?」 『あ、行っちゃうよ!』 声をかけそびれていると、女性は他の場所を探そうというのか、森崎の方から遠ざかっていこうとする。 慌てて呼びかける森崎。 「おい、あんた!」 「ひゃあ!? な、何!?」 それほど大きな声を出したつもりはない。 特に奇抜なことを口走ったわけでもない。 しかし突然背後から声をかけられた女性は大層驚いた様子で、文字通り飛び上がっていた。
[281]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:04:14 ID:??? 「うお……」 『なんか、スゴい反応だったけど……』 女性は振り返って辺りを見回し、周囲には森崎しかいないと確認するや、血相を変えて猛然と駆けてくる。 思わず逃げ出しそうになる森崎だったが、何のために声をかけたのかを思い出し、 かろうじて自制した。 「ちょっと、そこのアンタ! もう! イタズラなら―――」 「ああ、驚かせちまったんならすまない。ひとつ確認したいんだが……」 眦を決して迫ってくる女性を手振りで制し、用件を伝えようとした森崎だったが、 女性の口から次に飛び出す一言に絶句することになる。 「―――イタズラなら、わたしも混ぜてよね!」 「え? ……混ぜ?」 「で! 次は何やるの!? 落とし穴? 看板の書き換え? トレンツの泉の小銭拾って 塔みたいに積み上げて、ネコババしようとするヤツを脅かす遊びは先月もやったばっかりだから あんまりオススメできないけど、あ、でも逆に……」 女性の目に宿る意気込みは、本気だった。 本気で森崎が自分を驚かせたのだと思い、本気でそれが悪戯だと信じ、そしてまた、 本気で次の悪戯に自分も参加せんとする、それは瞳だった。 『やっぱり、人違いじゃないかな……。何だか、あんまり関わっちゃいけないニオイがするよ……』 「……。や、そうじゃなくてよ」 ピコの囁きに同意しかけた森崎が、一人迎えを待つ老爺の姿を思い出して小さく首を振る。 大きな瞳をキラキラと期待に輝かせる女性に向かって、意を決したように言った。
[282]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:05:39 ID:??? 「なあ、あんたが捜してるのって、こんな髭生やした爺さんか?」 「え? なんで知ってるの? ……まさか! 誘拐犯!? 身代金目的!?」 「違ぇよ!」 放っておけば際限なく膨らみそうな妄想を一刀のもとに斬って捨てた森崎の言葉に 女性は一瞬だけきょとんとした表情を浮かべると、すぐに真剣な顔つきになり、 そしてすぐに照れたように笑って手を振る。 「じゃあ、まさか! ……新手のナンパ!? やだもう、それならそうと言ってよー! うーん……外国人かあ、どうしよっかなあ……ね、じゃあご飯、おごってくれる? わたし、キャラウェイ通りに言ってみたいお店があってさ、この間お姉ちゃんが 友だちと行ってすっごい良かったとか言ってて、」 「爺さんの話はどこ行ったんだよ! ていうか人の話聞けよ!」 一言、二言で済む説明に要した時間は、ゆうに数分を超えたという。 ***
[283]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:06:40 ID:??? 「あ、いたいた! もう、えっらい捜したよ、旦那様〜! 旦那様に何かあったら大奥様にも家令さんにも、大目玉じゃ済まないんですから〜!」 隙あらば無駄に喋り倒し、何かを見つけては駆け出して余計なことをしようとした挙句、 最後にはほとんど森崎に引きずられるようにしてきた女性が老爺を見つけるや言ったものである。 「おお、キャロル……面倒をかけたな」 「本当にもう、ダメですよ〜。子供じゃないんですから、あっちこっち出歩いちゃ」 「……」 『疲れてるね……』 もはや何を言う気力もない、といった体で首を振った森崎が、しかし女性の言葉に ふと老爺を見やる。 「旦那様、大奥様に家令……って、そういや爺さん、あんた何者だ? やっぱこの近くに住んでる貴族か何かか?」 「おお、そうか。名乗りが遅れたの。儂は……」 老爺が告げた、己の正体とは―――
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0ch BBS 2007-01-24