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異邦人モリサキ
[340]源氏 ◆rLDAH8Hy8Y :2012/06/14(木) 01:06:10 ID:??? 目標値【17】 → 11
[341]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/14(木) 01:07:35 ID:??? 失敗→ パンチが直撃! ガッツ減少。 「俺を誰だと思ってんだよ、……っとお!?」 ひょい、と体を入れ替えようとした森崎の動きが、止まる。 「誰だ、こんなトコに椅子出しっぱなしにしてるヤツは……って!」 『危ない!』 ピコが叫んだときには、既に遅い。 石塊のような男の拳が、森崎の顔面を直撃していた。 「ぶべらっ!」 奇妙な悲鳴を上げながら飛んだ森崎が、食べかけの皿が満載されたテーブルに突っ込んで 盛大な音を立てた。 「……」 「……」 一瞬、飯場が静まり返る。 殴った男すら唖然とする中、 「痛ぇ……けど、まあ、これでひとまず気が済んだか?」 歯型の残る鶏肉や魚の切れ端、熱いスープを頭から被って湯気を上げる森崎が立ち上がり、 渋面を作りながら血の混じった唾を吐く。 しまらない姿に、大柄な男も毒気を抜かれた様子で森崎を見つめていた。 ※ガッツが10減少しました。
[342]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/14(木) 01:13:28 ID:??? *** 「……なるほど。つまり、お前はこのキルト人……」 と、頭からコンソメスープの匂いをさせながら大柄な男の話を聞いた森崎が、 腫れ上がった鼻に布切れを詰めていた小男を顎で指す。 小男が、内出血で赤黒く染まった顔をびくりと怯えたように歪めた。 「こいつに、金を貸してたと」 「……そうだ。お袋への急な仕送りが必要だとか言うからよ。けど、この野郎」 「その金をすっかり博打でスッちまったってわけか」 冷たく言い放つ森崎に、小男が立つ瀬のない様子でおどおどと周囲を見回し始める。 無論、逃げ場などない。 森崎を挟んで大柄な男と小男が座る周りには飯場にいた男衆がすっかり人垣を作って 三人のやり取りを見ていた。 「返せと言ってもアテがねえ、取り返してくるからもう幾らか出してくれねえかと、こう来やがった! ふざけやがって、この野郎!」 「わかった、わかったから立ち上がるんじゃねえよ」 口にする内に興奮したのか、男がいきり立つのへ森崎が宥めるように言う。 憤懣やるかたない様子で、それでもどうにか椅子に座り直した男を見やってから、 森崎が小男に向かって口を開く。 「要はお前が悪いんじゃねえか、馬鹿野郎」 「ひっ……」 「そうだろ、わかりゃいいんだ。後はこのクソッタレがミンチになるまで、黙って見ててくんな」 「うわあ!」 「って、待て待て待て! だからすぐにカッカするんじゃねえよ!」
[343]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/14(木) 01:14:29 ID:??? 小男へ向かって手を伸ばしかける大柄な男。 すんでのところで制した森崎が、悲鳴を上げて椅子から転げ落ちた小男もろとも、 強引に二人を席に着かせる。 「こいつをタコにしたって、金が降ってくるわけでもねえだろ。 気は晴れるかも知れねえが、その後は山から追い出されてお前の食い扶持がなくなるだけだ」 「むぅ……」 いかに荒くれ揃いの鉱山とはいえ、衆人環視の殺しとなればただでは済まない。 ましてここは深山幽谷の彼方ではなく首都城塞ドルファンの範疇であり、官憲の目もそれなりに厳しい。 それを思い出したのか、男が唸り声を上げて森崎を睨む。 「じゃ、どうしろってんだ。水に流せってのはナシだぜ」 「言わねえよ、んなこたあ。……お前、結局幾ら貸したんだ?」 「ひの、ふの、み……と、全部で……このっくらいだぜ」 聞けば、街に繰り出して美味い酒と飯が二、三度楽しめる程度の額である。 少し考えた森崎が、鼠のように周囲をちらちらと伺っている小男に声をかけた。 「お前」 「ひゃあ! 許してくれえ!」 「ワビ入れる前に働け」 「え?」 きょとんとした小男に、森崎が続ける。
[344]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/14(木) 01:18:21 ID:??? 「ここは日払いだろうが。今日からその賃金の半分、毎晩きっちりこいつに渡せ」 「そ、そんなあ……それじゃメシ食ったらすっかり飛んじまいまさあ……。 オネエちゃんの晩酌がなけりゃ、こんなこの世の地獄に耐えられませんぜ」 心底から困り果てた、とでもいうかのように言ってのける小男に、 森崎の堪忍袋の緒が切れる。 「やかましい、昼間は額に汗して働け、夜はクソしてとっとと寝ろ! キレイな体になるまで酒も女もねえだろが! 借りた金で賭場通いなんざする馬鹿にはちょうどいい薬だ! つうかテメエのせいで俺は飯の食いさしまみれになってんだぞ、わかってんのか!?」 「ひ……!」 食い下がる小男を、森崎が怒鳴りつける。 『ご飯の食べかすだらけなのは自業自得だけどね』 「……」 『あ、耳の後ろ、人参のしっぽついてるよ』 無言のままぎろりと中空の相棒をを睨んだ森崎が、へばりついた野菜くずを乱暴につまみ剥がすと、 口に放り込んでがりがりと噛み砕く。 その様子が恐ろしかったのか、すっかり萎びた小男に鼻を鳴らして、森崎が大柄な男へと向き直った。 「ここらの相場からすりゃ、来週には全額返ってくるだろ。この辺で落とさねえか。 大体、お前が最初ッからこいつの性根を見抜いてりゃ、こんなことにはならなかったんだぜ」 「……」 大柄な男は、なおも渋面である。 眉根を寄せた森崎が、再度小男に顔を向けると、言う。
[345]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/14(木) 01:19:56 ID:??? 「おい、テメェ」 「うひっ!? まだ何か!?」 「さっきの約定、守れるか守れねえか……いま、ここで誓え」 「ま、守ります、守らせていただきやす、はい!」 迫力に押されたか、小男がぶんぶんと首を縦に振りながら口走るのを聞いた森崎が、 周りに人垣を作って立つ男たちを見渡しながら口を開いた。 「聞いての通りだ。これでも話を破るなら……そんときぁ、ここにいる全員が証人さ。 改めてこの馬鹿を吊るし上げろ。俺が許す」 「ひぃぃ……」 周囲にいる男たちが首肯するのを見た小男が、締め上げられたように喉の奥から悲鳴を漏らす。 「もし街にトンズラこいたとしても、とっ捕まえて引っ立ててきてやる。 どうだ、これで。俺の顔、立てちゃくれねえか」 「……」 しばらくの間、沈黙が降りた。 目を閉じ、眉間に皺を寄せて考え込んでいた大柄な男が、やがて大きく息を吐いて言った。 「わーった、わぁーったよ、黒髪の兄ちゃん。今度のこたぁ、それで構わねえ」 「うし、いい男っぷりだぜ、お前」 ニカリと笑った森崎が、ひとつ頷く。 と、おもむろに両手を掲げて言った。
[346]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/14(木) 01:21:27 ID:??? 「じゃ、こいつは俺の故郷の作法でよ。お前ら、ちっと手を出してくれ」 「……?」 森崎が促したのは、大柄な男、そして小男の両方にである。 「手締めつってな。事が片付いたら、言い立てた方も言い立てられた方もこれでお終い、って意味で 一緒に手を打つんだ。そら、合図で行くぜ」 「お、おう……」 「へぃ……」 戸惑う男たちに身振りで手順を示してみせた森崎の、いよぉーお! という掛け声の直後。 シャン、と拍手が鳴り響いた。 ****** 称号『ヒガシの山の仲裁屋』を獲得しました。 効果:揉め事の交渉判定時に+5の修正。 ******
[347]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/14(木) 01:23:04 ID:??? 『これでようやく一巡り、っと』 「もうすっかり夕暮れじゃねえか……くそう」 苦々しげに見上げた森崎の視線の先、夕陽は既に高い城壁の向こうである。 長い影に覆われた街並みは城西、フェンネル地区だった。 「毎日訓練所に通ってるんだし、まあ見慣れた景色といやあそうなんだが……。 この辺、北側にはホントに住宅街しかないのな」 『通り道にはシアターとか運動公園なんてのもあるじゃない』 普段の通勤路を思い出したのか、ピコが顎に手を当てながら言うのへ 森崎がため息混じりに答える。 「あれは城に近い方、こっからだと運河の向こうだろ」 『うーん、そだっけ?』 「いい加減なヤツだな……」 『ちょっと地図見せて? へぇ、南に下ると色々とレジャーもできるんだ』 森崎が一日握りしめていたせいですっかり皺だらけになった地図を覗き込むピコ。 追って目線を落とした森崎が、そこに並ぶ文字を見て奇妙な作り声を上げる。 「運河沿いの遊歩道にゴンドラ乗り場……ねえ。恋人たちの定番コースってわけだ」 『ひがみっぽい言い方だね』 「疲れてるんだよ……今日はえらく色々あったからな。 ただでさえ丸一日歩きどおしだったってのに」 ぐったりと肩を落として呟く森崎にピコがひらりと舞い降り、小さな手でぽふぽふとその背を叩く。 『まあまあ、あとはいつもの道を通って帰るだけだし、ね! どっかでちょっといいお酒でも呑んでこ!』 「はあ……そうすっか……」
[348]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/14(木) 01:24:05 ID:??? ぼそりと漏らして歩き出す森崎の視界の端、家々の向こうには高い城壁が聳え立っている。 もう少し南下すれば、そこに大きな門が見えてくるはずだった。 「レッドゲート……か。」 『このドルファンの正門だよね』 「俺らがこの門から出るのは、いくさ場に向かうとき……さて、いつになるのかね。 来週か、来月か、それとも来年か……」 『……』 それきり何となく黙り込んだまま歩き続ける森崎の行く手に、やがて見えてきたのはセリナ運河だった。 ドルファン南部の港湾と北部の山林とを繋ぐ、かつて流通の大動脈として栄えた運河である。 茜色から群青に変わろうとする空を映すそのセリナ運河に架けられた橋を渡って、シーエアー地区と ドルファン地区の境に差し掛かろうかという辺りのこと。 「あの……すみません」 森崎の背にかけられる、か細い声があった。 「んあ?」 「あの……モリサキさん、ですよね?」 間抜けな声を上げながら振り返った森崎の目に映ったのは、夕闇に佇む一人の少女の姿である。 軍服を思わせる、しっかりと型取りされた濃紅色の上着にスコットランド風のチェック柄で織られたスカート。 胸元に咲く大きなリボンが、まだ子供らしさの抜けきらぬ少女を演出している。 フリルのあしらわれた白い肩掛けにかかる、長い栗色の髪がさらりと風になびくのを見て、 森崎がほんの数週間前の記憶を掘り起こす。
[349]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/14(木) 01:25:06 ID:??? 「あー……っと、ソフィア……だったか?」 「はい……!」 森崎が名を呼んだ瞬間、不安げだった少女の表情に笑顔が浮かぶ。 春、雪の下から顔を出す小さな花のような笑みだった。 「ソフィア・ロベリンゲです。その節はお世話になりまして、ありがとうございました」 「いやいや、頭上げてくれよ」 深々と礼をするソフィアに、森崎が慌てたように言う。 その肩にちょこんと腰掛けたピコが、ニヤニヤと笑いながら茶化した。 『こんなとこ、人に見られたら通報されちゃうもんねえ。”傭兵、学生を恐喝!”なーんて』 「頼むから黙ってろ……」 「え!? す、すみません!」 苦虫を噛み潰したような顔で呟いた森崎の声が届いたのか、ソフィアが弾かれたように顔を上げると 更に深々と頭を下げる。 「あ、いや、あんたに言ったんじゃねえんだ。気にしないでくれ」 「は、はい……」 とりなす森崎にようやく向き直ったソフィアだったが、ちらりと森崎の顔を見ると俯いてしまう。 そんなソフィアの様子に、ピコが森崎の耳に向かって囁く。 『怖がられてるんじゃない? 目付きが悪いんだよ、キミは』 「……」
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0ch BBS 2007-01-24