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異邦人モリサキ
[358]傍観者 ◆YtAW.M29KM :2012/06/14(木) 18:46:22 ID:??? A 男と女がもめていたら「女ぁ!」と動くものだと怪盗さんが言ってました。 ……というのは、ともかく。こういう時に聞いてほしくない人は口に出さないでしょう。 わざわざ言うってことは(深層心理でも)聞いて欲しい、愚痴りたい、と思ってるもんです。 ただ、愚痴る以上のことを望んでいるかどうかは慎重に応対する必要がありますけど。 (喋りたい、吐き出したい、しかし踏み込んできては欲しくない、というケースも珍しくない)
[359]◆9OlIjdgJmY :2012/06/14(木) 20:59:08 ID:??? A 苦学生にお礼をしてもらうわけにはいかないから事情を聞かねばと考えて。
[360]テトラ ◆yfCGLLZSBA :2012/06/14(木) 20:59:29 ID:??? B 森崎の方が厳しい経験もしているだろうし あまり真っ当な生き方でもないのでこちらから口出しはしない。 それに会って日が浅いのに家庭の事情を聞くのははどうかと思ったので
[361]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:54:18 ID:??? 皆様、ご回答ありがとうございます。 それでは早速ですが、>>351の選択については…… >>358 傍観者 ◆YtAW.M29KM様の回答を採用させていただきます! ソフィアの機微を綺麗に拾い、またその一歩先までを見通された回答、お見事です。 ほとんど初対面だからこそ言えるような愚痴、なんていうのもありますよね。 CP3を進呈いたします。 また同様にソフィアの側からの視点を提示していただいた>>356 源氏 ◆rLDAH8Hy8Y様、 >>357 ◆W1prVEUMOs様にもそれぞれCP1を進呈いたします。
[362]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:55:25 ID:??? >>352 表面上の解決、とは実に鋭いご指摘です。 現実でもそうですが、根の深い問題はやはり一朝一夕に解決することはできません。 それが各々の心や、あるいは文化、社会に根ざした影に起因する問題であれば尚更ですね。 傍から見てどれほど素晴らしい解決策であっても、それを簡単に受容することができない場合も多いでしょう。 >>353 今の森崎はかなり積極的に目の前の事情に飛び込んでいきますね。 痛い目にあう可能性もありますが、その分リターンも大きいでしょう。 >>359 確かにそのために話題を逸らそうとしていましたが、相手が苦学生だから……というのは 面白い視点ですね。 >>360 率直に言って、そのようなご回答が多いことを想定していたので今の状況はかなり意外です。 もちろん多数決というわけではありませんが、皆様かなり鋭く切り込んだご回答を用意されていて、 すっかり感服している次第です。 今の森崎が真っ当な人に物を言えた柄か、というのは確かにその通りで、相手によっては評価値が低い内は まったく聞く耳を持ってもらえないどころか逆効果になることもあるでしょう。 ご回答いただいた皆様にそれぞれEP1を進呈いたします。
[363]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:56:28 ID:??? *** A 「家庭の事情……?」 首を突っ込む。 ソフィアの口をついて出た言葉は、そしてその表情に落ちる翳りは、 何かを聞いてほしいという密かな要求であっただろうか。 それは、あるいは森崎でなくても構わなかったのかもしれない。 気のおけない友人や信頼できる恩師に話をした方が、より具体的な相談ができたかもしれない。 それでも今、この夕闇の迫る路地で、森崎に向けて発せられた言葉の中にそれがあったのなら、 聞き逃したフリはできなかった。 「家庭の事情……?」 様子を窺うように呟いた森崎に、ソフィアがはっと目を見開くと、そのまま俯いてしまう。 「……え、っと」 「あ、いや、話しづらいこと聞いちまったかな。すまん」 「いえ、いいえ!」 慌てて言う森崎に、ソフィアが首を振る。 ふるふると、長い髪が揺れた。 栗色の髪は夕闇に紛れて黒く、まるで足元の影が這い上ってソフィア自身に絡み付いているようでもあった。 「その……、大したことじゃ、ないんです……」 「……」 やがて訥々と話し始めた少女を、森崎は黙ってじっと見つめる。 ソフィアはといえば、ずっと俯いたままだった。 「弟が……少し体が、弱くて。線が、細いんです。……癇癪を起こすことも、多くて」 言葉を紡ぐソフィアの、表情は見えない。
[364]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:57:37 ID:??? 「それで、母は……どうしても、その、弟にかかりっきりで……。 仕方ないんです、弟は手のかかる子ですから、それは」 「……」 「母はそれで、いつも疲れてて、だから……家のことや、父の世話は、私が」 ぽろぽろと漏れる言葉は、しかし奇妙に歯切れが悪い。 何か一つの原因に帰結する問題ではないのだろうと、森崎は思う。 様々な要因が絡み合い、もつれ合って、家族という狭い関係の中で行き詰まっている。 それはきっと、湖の底に溜まる泥や、古い家のきいきいと立て付けの悪い扉と似たようなものなのだ。 軋んだ歯車を、それでも回し続けなければならいことなど、世にはありふれている。 だがありふれているからといって、澱んだ泥水を飲み干せるわけでも、開かない扉に耐えられるわけではない。 どこかで油を注さなければ、人という歯車は壊れてしまうのだ。 「いいんです。父のことも、家のこと、ご飯を作るのも、お買い物やお掃除や繕い物やお洗濯、 好きなんです。好きでやってるって、思ってます。 だけど、だから、どうしても学校は、お休みしなければならないときもあって……」 人によって、それは酒であり、快楽であり、あるいは愛情や、友情や、職務や目標であったり、 果ては空想や幻想にその役割を求めることもあるだろう。 少女にとっての油は、きっと今、この時間。 誰とも知らぬ男にぶつける、このとりとめのない愚痴なのだ。 そんな風に考えて、森崎は話を回すつもりで口を開く。 「世話……って、親父さんも、どっか悪いのか」 「……父は、戦場で足を傷めました」 しかし、それはどうやら少女にとってはナイーブな問題であったらしい。 そう言ったきり、今度こそ口を噤んでしまう。
[365]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:58:40 ID:??? 「……」 「……」 『……キミ、今のはちょっと無神経』 いつの間にか森崎の側に浮かんでいたピコの声は、ソフィアには聞こえない。 聞こえないはずだったが、まるでその声に促されたかのように口を開いた。 「あの、すみません。変な話をしちゃって……」 「いや、聞いたのは俺だぜ。こっちこそ悪いな」 顔を上げたソフィアは、困ったように笑みの形を作る。 森崎もまた、同じように笑うふりをするより他になかった。 「……で、今日は学校だったんだよな?」 「あ、はい」 話題を変える森崎。 ほっとしたように、ソフィアが頷く。 「あの、それで、ちょっと勉強が遅れがちだったので、先生が特別にお休みの日に 授業をしてくれることに……」 「へえ。いい先生じゃねえか」 「はい! オルガ先生って仰って、とっても綺麗で優しい、素敵な方なんですよ。 落ちこぼれの私なんかにも、すごく良くしてくれるんです」 教師のことを語るソフィアの顔には心からの憧憬が浮かんでいる。 つい今しがたまでの影は消え去っていた。
[366]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:59:41 ID:??? 「綺麗で優しい女教師……か」 『拙者にも一手、御指南願いたく候』 「お前、次言ったら翅引っこ抜くからな」 『きゃあ! 妖精ごろし!』 叫ぶや森崎の肩から飛び上がるピコ。 その姿に目をやってため息をつく森崎を、ソフィアが不思議そうに見つめている。 「……?」 「……何でもない」 「そうですか……。あの、それで、私のことはいいんです。それより、お礼……なんですが」 「結局そこに戻るんだな……」 胸の前で手を組んだソフィアが、森崎に向かって一歩踏み出す。 雑談はむしろ、壁を取り払う役目を担ってしまったらしい。 「あの、もし良かったら今度―――」 何かを言いかけたソフィアが、その瞬間、凍りついた。 名を呼ばれたときのはにかむような笑顔も、教師を語るときの憧憬溢れる瞳も、そこにはない。 儚さも、頑固さも、森崎の見てきた少女の一切が、そこからは失われていた。 代わりに少女を満たしていたのは、恐怖と嫌悪、そして絶望の色である。 何かに打ちのめされてきた者だけが浮かべる光を湛えたその瞳が見つめるのは、森崎の背後。 辺りから既に夕陽の彩りは消えている。 宵闇の向こうから、それはやってきた。 「―――捜したよ、ソフィア」
[367]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 02:00:43 ID:??? 底冷えのするような声音を紡いだのは、男である。 深紫のシルクシャツに、漆黒のベストとスラックス。 腰から提げているのは細身の長剣、レイピアだった。 精緻な細工を施された金の柄が、ベルトの黒に映えて静かな威圧感を放っている。 一目で最高級の仕立てと分かる装束を身に纏う、その容姿は端正にして怜悧。 永久凍土の氷を砕いて嵌め込んだような薄青色の瞳が、射貫くようにソフィアを見つめている。 長い金髪が、ゆらりと闇を掻き混ぜるように揺れた。 夜を率いて歩くような、それは男であった。 「……ジョアン」 射竦められたソフィアの漏らした、それが男の名であるようだった。 ジョアンと呼ばれた男が、口の端だけを上げた微笑を浮かべる。 「言っただろう、僕の目の届かないところに行かないでおくれと。 外出するならきちんと家族に報告すべきではないかな、ソフィア」 「……」 俯き、唇を噛み締めて黙り込むソフィア。 吹き抜ける嵐をじっと耐えるような、姿だった。 「父上も心配しておられた。……さあ、言うべきことはあるかな」 「……」 「……」 「……めん、……さい」 暫しの沈黙の後、掠れた声が薄闇の通りを僅かに揺らす。 その声に、ジョアンが一歩を踏み出した。 革靴の底が立てる、かつりという音に、ソフィアがびくりと肩を震わせる。
[368]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 02:01:44 ID:??? 「ん? 何か言ったかい、ソフィア」 「……ごめんなさい、ジョアン。以後……気をつけ、ます」 ようやくにして絞り出したような、声音。 涙声ではない。震え声でもない。 それはただ、ひび割れた荒れ野を吹く風のような、どこまでも乾いた謝罪だった。 「わかってくれればいいんだ、ソフィア。……さあ、送るよ。馬車を回してある」 「……」 肩に回された手を拒むこともなく、ジョアンと共に歩き出そうとしたソフィアが、 ほんの一瞬だけ足を止める。 ちらりと森崎を見たその瞳は何かを言いたげで、しかし口を開くことが罪であるかのように、 ソフィアは沈黙のまま目を逸らした。 「……」 「そこの、東洋人」 かける言葉もなくその背を見送ろうとした森崎に、ふと足を止めたのはジョアンである。 「……! 違うのジョアン、あの人は何でもないの、ちょっと道を聞かれただけなの、 早く帰りましょう、ね」 表情を強張らせたソフィアが、これまでになく強い口調でまくし立てるのを聞いているのかどうか。 悠然と振り返ったジョアンが、森崎の方へと向き直る。
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0ch BBS 2007-01-24