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異邦人モリサキ
[364]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:57:37 ID:??? 「それで、母は……どうしても、その、弟にかかりっきりで……。 仕方ないんです、弟は手のかかる子ですから、それは」 「……」 「母はそれで、いつも疲れてて、だから……家のことや、父の世話は、私が」 ぽろぽろと漏れる言葉は、しかし奇妙に歯切れが悪い。 何か一つの原因に帰結する問題ではないのだろうと、森崎は思う。 様々な要因が絡み合い、もつれ合って、家族という狭い関係の中で行き詰まっている。 それはきっと、湖の底に溜まる泥や、古い家のきいきいと立て付けの悪い扉と似たようなものなのだ。 軋んだ歯車を、それでも回し続けなければならいことなど、世にはありふれている。 だがありふれているからといって、澱んだ泥水を飲み干せるわけでも、開かない扉に耐えられるわけではない。 どこかで油を注さなければ、人という歯車は壊れてしまうのだ。 「いいんです。父のことも、家のこと、ご飯を作るのも、お買い物やお掃除や繕い物やお洗濯、 好きなんです。好きでやってるって、思ってます。 だけど、だから、どうしても学校は、お休みしなければならないときもあって……」 人によって、それは酒であり、快楽であり、あるいは愛情や、友情や、職務や目標であったり、 果ては空想や幻想にその役割を求めることもあるだろう。 少女にとっての油は、きっと今、この時間。 誰とも知らぬ男にぶつける、このとりとめのない愚痴なのだ。 そんな風に考えて、森崎は話を回すつもりで口を開く。 「世話……って、親父さんも、どっか悪いのか」 「……父は、戦場で足を傷めました」 しかし、それはどうやら少女にとってはナイーブな問題であったらしい。 そう言ったきり、今度こそ口を噤んでしまう。
[365]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:58:40 ID:??? 「……」 「……」 『……キミ、今のはちょっと無神経』 いつの間にか森崎の側に浮かんでいたピコの声は、ソフィアには聞こえない。 聞こえないはずだったが、まるでその声に促されたかのように口を開いた。 「あの、すみません。変な話をしちゃって……」 「いや、聞いたのは俺だぜ。こっちこそ悪いな」 顔を上げたソフィアは、困ったように笑みの形を作る。 森崎もまた、同じように笑うふりをするより他になかった。 「……で、今日は学校だったんだよな?」 「あ、はい」 話題を変える森崎。 ほっとしたように、ソフィアが頷く。 「あの、それで、ちょっと勉強が遅れがちだったので、先生が特別にお休みの日に 授業をしてくれることに……」 「へえ。いい先生じゃねえか」 「はい! オルガ先生って仰って、とっても綺麗で優しい、素敵な方なんですよ。 落ちこぼれの私なんかにも、すごく良くしてくれるんです」 教師のことを語るソフィアの顔には心からの憧憬が浮かんでいる。 つい今しがたまでの影は消え去っていた。
[366]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:59:41 ID:??? 「綺麗で優しい女教師……か」 『拙者にも一手、御指南願いたく候』 「お前、次言ったら翅引っこ抜くからな」 『きゃあ! 妖精ごろし!』 叫ぶや森崎の肩から飛び上がるピコ。 その姿に目をやってため息をつく森崎を、ソフィアが不思議そうに見つめている。 「……?」 「……何でもない」 「そうですか……。あの、それで、私のことはいいんです。それより、お礼……なんですが」 「結局そこに戻るんだな……」 胸の前で手を組んだソフィアが、森崎に向かって一歩踏み出す。 雑談はむしろ、壁を取り払う役目を担ってしまったらしい。 「あの、もし良かったら今度―――」 何かを言いかけたソフィアが、その瞬間、凍りついた。 名を呼ばれたときのはにかむような笑顔も、教師を語るときの憧憬溢れる瞳も、そこにはない。 儚さも、頑固さも、森崎の見てきた少女の一切が、そこからは失われていた。 代わりに少女を満たしていたのは、恐怖と嫌悪、そして絶望の色である。 何かに打ちのめされてきた者だけが浮かべる光を湛えたその瞳が見つめるのは、森崎の背後。 辺りから既に夕陽の彩りは消えている。 宵闇の向こうから、それはやってきた。 「―――捜したよ、ソフィア」
[367]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 02:00:43 ID:??? 底冷えのするような声音を紡いだのは、男である。 深紫のシルクシャツに、漆黒のベストとスラックス。 腰から提げているのは細身の長剣、レイピアだった。 精緻な細工を施された金の柄が、ベルトの黒に映えて静かな威圧感を放っている。 一目で最高級の仕立てと分かる装束を身に纏う、その容姿は端正にして怜悧。 永久凍土の氷を砕いて嵌め込んだような薄青色の瞳が、射貫くようにソフィアを見つめている。 長い金髪が、ゆらりと闇を掻き混ぜるように揺れた。 夜を率いて歩くような、それは男であった。 「……ジョアン」 射竦められたソフィアの漏らした、それが男の名であるようだった。 ジョアンと呼ばれた男が、口の端だけを上げた微笑を浮かべる。 「言っただろう、僕の目の届かないところに行かないでおくれと。 外出するならきちんと家族に報告すべきではないかな、ソフィア」 「……」 俯き、唇を噛み締めて黙り込むソフィア。 吹き抜ける嵐をじっと耐えるような、姿だった。 「父上も心配しておられた。……さあ、言うべきことはあるかな」 「……」 「……」 「……めん、……さい」 暫しの沈黙の後、掠れた声が薄闇の通りを僅かに揺らす。 その声に、ジョアンが一歩を踏み出した。 革靴の底が立てる、かつりという音に、ソフィアがびくりと肩を震わせる。
[368]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 02:01:44 ID:??? 「ん? 何か言ったかい、ソフィア」 「……ごめんなさい、ジョアン。以後……気をつけ、ます」 ようやくにして絞り出したような、声音。 涙声ではない。震え声でもない。 それはただ、ひび割れた荒れ野を吹く風のような、どこまでも乾いた謝罪だった。 「わかってくれればいいんだ、ソフィア。……さあ、送るよ。馬車を回してある」 「……」 肩に回された手を拒むこともなく、ジョアンと共に歩き出そうとしたソフィアが、 ほんの一瞬だけ足を止める。 ちらりと森崎を見たその瞳は何かを言いたげで、しかし口を開くことが罪であるかのように、 ソフィアは沈黙のまま目を逸らした。 「……」 「そこの、東洋人」 かける言葉もなくその背を見送ろうとした森崎に、ふと足を止めたのはジョアンである。 「……! 違うのジョアン、あの人は何でもないの、ちょっと道を聞かれただけなの、 早く帰りましょう、ね」 表情を強張らせたソフィアが、これまでになく強い口調でまくし立てるのを聞いているのかどうか。 悠然と振り返ったジョアンが、森崎の方へと向き直る。
[369]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 02:03:06 ID:??? 「……ッ!?」 その視線がただ自らの方を向いた、それだけで森崎は全身が総毛立つのを感じる。 じり、と思わず一歩を下がりかけた足を、かろうじて止めた。 そんな森崎に、口元だけを歪ませる笑みを向けてジョアンが言う。 「僕のフィアンセが世話になったようだな。礼金が欲しいのならエリータスを訪ねてくるといい。 貴様の年給程度でよければ包むよう言っておく」 「エリータス……?」 傲然の二文字を具現化したような態度であったが、森崎は常の悪態をつくこともせず、 気を張り詰めたままでそれだけを口にする。 「五家評議会のエリータス家を知らないとは……流石は辺境からの来訪者、というべきかな。 聖騎士ラージン・エリータスが三男、自由騎士ジョアン・エリータスの名、覚えておくがいい。 そしてこのソフィアは、僕の将来の妻となる女性だ」 振り返らぬまま肩を震わせているソフィアの、栗色の髪を嬲るように梳きながら名乗りを上げたジョアンが、 ふと間をとってから、続ける。 「そうだな、大切なことを聞き忘れていた」 すう、と細められた氷青色の瞳が、酷薄な色を浮かべる。 「―――貴様は、ソフィアの、何だ?」 びりびりと、全身が警告を発しているのを森崎は感じていた。 緩んだ休日の日常はすっかりどこかへ吹き飛んでいた。 答えを誤ってはならぬ。今この場にあるのは命のやり取りに他ならない。 そう経験と勘とが告げる中、森崎がゆっくりと口を開く。
[370]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 02:05:18 ID:yuQwwJ+I *選択 A 「恩人……てやつさ。あんたがご丁寧に調べ上げた通りにな」 B 「通りすがりだ。彼女には道を聞いただけでね」 C 「友人……いや、恋人候補ってところかな」 森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。 その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。 期限は『6/16 0:00』です。 ****** 宿敵、登場! といったところで 本日の更新はこれまでとさせていただきます。 夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。 それではまた、次回更新にて。
[371]雑魚モブ ◆.xniaLTHMk :2012/06/15(金) 06:05:53 ID:??? A ソフィアは明らかに助けを求めているし、あんな他人を見下すのがデフォルトのような奴には反発するのが森崎だが 今この場で大人しくしとかないと後でソフィアが何されるか分からないし、ただの傭兵である森崎を消すこと位 簡単だと思うので無難にかつ少しの反抗心を込めて。 本当は「何が自由騎士だ、自分の自称恋人は束縛しまくってるくせに」位の悪態をつきたい
[372]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/15(金) 09:41:16 ID:??? A調査か報告が入ってる以上、通りすがりで道を聞いたってのは信用して貰えない。 ならば実際恩人と言えるのだから、正直に言った方が良いと森崎なら判断すると思います。 個人的にはこの二人と別れた後エリータスの指示で森崎を襲撃してくる可能性が有るので帰り道の警戒は怠って欲しくないですね。
[373]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/15(金) 10:17:36 ID:??? 【ピココール】 この貴族は自分が知ってる事に嘘を言ったりすればプライドを傷付けられたと言って怒るタイプだと思うか? それとも自分の知ってる事に対してトラブルを避けようと見え見えの嘘を言う人間を見て喜ぶタイプかどう思う? 初めて使ってみたけど、こんな感じの質問で良いかな?
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0ch BBS 2007-01-24