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異邦人モリサキ
[513]傍観者 ◆YtAW.M29KM :2012/06/28(木) 01:02:15 ID:??? EPやCPをつぎ込む気まんまんだったけど…お見事と言わざるをえない。
[514]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 01:22:25 ID:??? >>512 重要なポイントでの素晴らしい引き、ありがとうございました! 通常のEP1に加え、CP3を進呈いたします! *** わりと厳しい条件に設定したはずの5月イベントの成功が概ね確定! といったところで、本日の更新はこれまでとさせていただきます。 夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。 それではまた、次回更新にて。
[515]源氏 ◆rLDAH8Hy8Y :2012/06/28(木) 01:38:34 ID:??? お疲れ様でした。 我ながら凄い引きだった。
[516]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 22:22:07 ID:??? *** ・127〜80: 「……はい!」 森崎の応援に、ソフィアがしっかりと応える! 森崎の声は、一筋の矢であった。 寸分の狂いもなく飛んだ矢は、過たずにその目指す的を射抜いていた。 貫かれて真っ二つに割れたのは、ソフィアを縛る心の枷である。 す、と顔を上げた少女の表情に、もはや怯懦の色はない。 「……皆さん、はじめまして。ソフィア・ロベリンゲと申します」 千の群衆、二千の視線を前に口を開いたソフィアが、深々と一礼する。 向き直るその手に握られたブーケも震えを収め、その純白を静かに午後の日差しに晒している。 「今日は、急にこんな舞台に立てることになって、すごく……すごく緊張しています。 ……でも」 一拍を置くソフィア。 ほんの僅か動かした視線の先に、森崎がいる。 「こんな私を、ここに立たせてくれた人がいました。それを、思い出せました」 絡み合うのは一瞬。 すぐに、その目は千の観客へと戻された。 「だから、私は私にできること、私のしたいと思うこと、しようと思います」
[517]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 22:23:28 ID:??? そこまでを言い切ったソフィアが、ちらりと司会を見やる。 原色の黄色を纏った男が、はっとしたようにソフィアを見、観衆へと気をやり、 それから我に返ったように大袈裟な身振りを取り戻して喋り出した。 「……っとぉ! 俺っちとしたことが、思わず雰囲気に飲まれちまったぜっ! こんな殊勝な娘、最近そうはいやしねえ! 会場の野郎ども、温かく見守ってやってくんな! それではソフィア嬢、アピールタイム、どうぞっ!」 司会が大仰に手を振って促すのへ、ソフィアが頷く。 観客席に向き直り、再びの礼。 ざわめきの静まるのを待って、言う。 「これが、私にできること……聞いてください」 背を伸ばし、胸を張って。 息を、吸う。そして、 ―――西風 快天と共に帰りて――― 流れ出したのは、透き通るソプラノだった。 西風 快天と共に帰りて 花や草 その家族と燕たち 小夜啼鳥の声と 白く朱い春を告げる それは他愛もない、誰もが知っている一昔前の流行歌である。 春の訪れの喜びをうたう歌。 巡り来る温もりと恵みとに感謝を捧げる歌であった。
[518]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 22:24:32 ID:??? 澄み渡る空 緑なす牧場 天帝 愛し子に微笑み 時折声を震わせ、また息遣いを乱しながら、しかし歌は続く。 懸命に、真っ直ぐに、ただ歌をうたう、そのことだけを見つめるような、声音。 空気も水も 大地もまた愛に満ちる すべての獣たちは 再び愛に目覚める 最後の一節を歌い終えると、すう、と音が消える。 風の音も、街の喧騒も、千の観衆の身じろぎすら歌声に吸い込まれたかのような、一瞬の静寂。 「―――」 ぱち、ぱち、と。 その張り詰めたような静けさを崩したのは、拍手である。 最初の音は、森崎の手から放たれていた。 そのことに気付いた隣席の男が負けじと両手を打ち合わせ、それが前後に伝わり左右に伝播して、 すぐに会場全体を覆っていく。 万雷の拍手が、舞台の上の少女へと降り注いでいた。 「……ありがとう、ございました……っ」
[519]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 22:25:37 ID:??? 二千の手から響く、豪雨のような音の嵐に、ソフィアが戸惑ったように立ち尽くしながら、言う。 それだけを口にするのが、精一杯のようだった。 ともすればそのまま崩れ落ちそうな危うさで立つ少女に、司会の男が慌てたように喋り出した。 「す、す、素ン晴らしいぃぃ! まさに、まさに驚異の新星ッ! ソフィア・ロベリンゲ嬢でした!! 皆様、どうぞ改めて拍手をお願いいたしますッッ!」 絶叫を演じながら、袖に目線で合図を送る男。 飛び出してきた裏方たちが少女へと駆け寄ると同時、その淡い黄色のドレスがふらりと揺れる。 「……!?」 『ちょ、ソフィア……大丈夫なの?』 森崎と、そして観衆が息を呑む前で、しかし少女は倒れる寸前、自らの足で立ち直った。 「ありがとう、ございました……!」 割れんばかりの歓声を前に、最後にもう一度だけ深く礼をすると、ソフィアは支えようとする裏方を 手で制しながら、ゆっくりと舞台から去っていく。 その背には、いつまでも鳴り止まぬ拍手と歓声が贈られていた。 ***
[520]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 22:26:39 ID:??? 「……純白のブーケ賞、か。『五月の花嫁』には届かなくて、残念だったな」 「い、いえ! とんでもないです!」 ぶんぶんと首を振る、少女の手には小さな硝子細工が輝いている。 繊細な花々の束とそれを包む紙を模した硝子に、木製の台座が据え付けられた置物。 サウスドルファン駅前を紅く染め上げる夕焼けに照らされたそれは、コンテストの入賞者に贈られる ささやかな賞品であった。 「本当に私なんかがこんなに素敵なもの、いただいてしまっていいのかって思うくらいですから……」 「な〜に言ってんだ」 帰り道、少女が身につけているのは既に淡い黄色のドレスではない。 元の通り、若葉色のブラウスと薄桃のショール、紅色のスカートという姿に着替えている。 戸惑ったような表情を浮かべるソフィアに、森崎がおどけて言った。 「あのとき、あの歌は掛け値なしに俺に響いた。いや、俺だけじゃねえ。あの会場にいた全員に、 そいつは伝わったんだ。観客席のど真ん中にいた俺が保証する」 「そんな……」 「だからソフィア、そりゃ君に与えられた正当な評価の印だ。素直に受け取っときな」 「……はい」 森崎の言葉に、夕日に照らされた頬を更に赤くしたソフィアが、手にした硝子細工を 抱き締めるようにしながら、足を止める。 どうした、と振り返る森崎を、ソフィアの真っ直ぐな視線が捉えていた。
[521]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 22:27:40 ID:??? 「今日は……すごく。すごく、楽しかったです。ううん、それだけじゃなくて……」 言葉を探すように。 「なんて言ったらいいんでしょう。その……私でも、ちゃんとできるんだ、って……。 やりたいこと、やりたいって言うの、楽しい……って。変な言い方ですけど、その」 小さく頷いて。 「歩ける、って。私でも、前に歩いていけるんだって。そういう風に、思えたんです、今日。 だから、私……今日のこと、忘れません。きっと、ずっと」 そう、言った。 夕陽の朱を従えて、それはとても清らかで、触れればたちまちに砕けてしまいそうに繊細な、一瞬。 「―――」 手を伸ばしたいという衝動と、その一瞬を崩してはならぬという情動と。 その二つが森崎を板挟みにして、あらゆる行動を封じる。 「……って、あ、あの!」 言葉を失った森崎の、その表情をどう受け取ったものか。 ソフィアが慌てたように手を振って、口を開く。 揺れる硝子細工が夕陽に煌めいた。 「す、すみません、今日はこの街をご案内させていただくって、お誘いしたんですよね。 なのに私、自分のことばっかりで……! こんなんじゃ、その!」 「いいや」 わたわたと表情を変える少女に、森崎が苦笑しながら言葉を遮る。
[522]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 22:28:44 ID:??? 「いや、俺も楽しかった。そいつは間違いないぜ」 「そう、ですか……?」 「ああ、君のおかげだ」 頷いてみせる森崎。 なら良かった、と文字通りに胸を撫で下ろしたソフィアが、ふと表情を変えて口を開いた。 赤い頬と、どこか真剣な瞳。 「あの、モリサキさん。宜しければ、途中まで……」 言いかけた、そのときである。 「―――おい、そこのお前ぇ!」 ひび割れたダミ声が、少女の言葉を街の喧騒ごと断ち切るように響いていた。 反射的に振り返った森崎の目に映ったのは、声に違わぬ姿である。 だらしなく着崩されたシャツに無精髭、緩められたベルト。 無造作に乱れた髪の下から覗く澱んだ目は、夕暮れにも明らかなほど赤く充血している。 酒焼けした鼻を擦りながら森崎を睨みつけるその姿は、どこからどう見ても薄汚い酔いどれである。 「聞ぃ〜てんのかぁ!? お前だぁ、黒髪野郎ぉ」 呂律の回らない口調で何事かを呟きながら歩を踏み出す、そのたびに左の半身だけが沈む。 右の足を傷めているのか、左足だけに重心が偏っている証だった。 そんな酔いどれを前に、森崎は―――
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0ch BBS 2007-01-24