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異邦人モリサキ
[590]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 01:08:11 ID:??? ひゃあ、名前欄に謎の妖精さんが! お恥ずかしい。 *** B 殴り飛ばす 瞬間、森崎が駆け出したことには幾つかの理由がある。 無論のこと、仲間への侮辱を許せぬ気持ちもあった。 反吐の如き言葉を吐き散らす下衆には、相応の報いを受けさせねばならぬ。 確かに傭兵は個人主義者の集まりである。 しかし訓練をこなし、汗を流す内に芽生える連帯とて当然にあった。 同じ釜の飯を食う者が何処の馬の骨とも知れぬ下郎に蔑まれたのを日和見的にやり過ごしては 示しというものがつかない。 潰された面子は、誰かが何らかの形で贖わねばならぬ。 そうして、その誰かとは即ち、この哀れな下郎でなくてはならなかった。 しかしまた同時に、その激情だけに身を浸すには、森崎の目に映る光景は危険に過ぎたのである。 (……早まるんじゃねえ、ジェトーリオ!) その黒人の背を、森崎は見ていた。 ネイの手が払われた瞬間、色めき立つ周囲とはまるで違う時間の中にいるように、 ジェトーリオだけが動きを止めていた。 そして、愚かな鎧の男が文字通りに致命的な言葉を吐いたそのとき、ジェトーリオのそこだけが 型で抜かれたように生白い掌が、ベルトの背に挟んだ得物へと伸ばされ、掴み、引き抜かれたことを、 森崎はしっかりと目にしていたのである。
[591]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 01:09:12 ID:??? (―――届けッ!) 森崎がかけくらべをする相手は、黒い風である。 風は刃を孕んでいる。 吹き抜けた瞬間、それは鮮血を巻き上げて散るだろう。 それだけは、避けねばならぬ。 殴る蹴るであれば、苦しいながらも言い訳の立てようもある。 しかし斬ってしまっては、そして何より殺してしまっては、もはや後戻りができない。 下手人には確実な極刑が待っている。 愚かしくも哀れな貴族の子弟などと引き換えるには、大きすぎる代償だった。 「この……馬鹿野郎がッ!」 叫びながら突き出された森崎の拳は、風よりも疾かった。 手首に重い衝撃。 自由騎士の顔面を捉えた一撃は、歪んだ頬骨を力点、ねじ曲がった首を支点として、着込まれた鎧の重量を ほぼダイレクトに伝えてくる。 振り切るように、打ち抜いた。 「……、……!」 ぎ、とも、ぐぅ、ともつかぬ悲鳴が、男の喉の辺りから漏れる。 全力疾走の速度と鍛え上げた筋力、そして美しいフォームから放たれた右ストレートは、 その白銀の板金鎧ごと、男を地面へと叩きつけたのである。 「……モリ、サキ……?」 すぐ背後、呆然とした呟きは振り向くまでもない、ジェトーリオのものである。 片手を軽く上げた森崎が、その手を自らの背に移動させ、腰の辺りをとんとんと叩く。 得物を仕舞え、という身振りであった。
[592]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 01:10:13 ID:??? 「……」 振り向かぬ森崎には、その表情は見えない。 しかし僅かな間を置いて、小さな溜息と金属が擦れる音とが聞こえた。 どうやら意図は伝わったようであった。 (さて、次は……どうしたもんかな) 思案しながら倒れた男へと歩み寄る森崎。 「起きな、お坊ちゃん」 「……き、きしゃまぁ……!」 自慢の鎧の腹に爪先で軽く蹴りを入れながら言う森崎に、倒れた男が我に返ったように激昂する。 口の中を切ったのか、滑舌が悪いことおびただしい。 「お、お、俺をだりぇだとおもっへる……!? かの騎士侯ひゃく、せばすしゃん・じょわんうぃるから 八代つじゅく武門のほまりぇ、じょわんうぃる家の、ひぃっ……!?」 「おう、そうかい、名門のお坊ちゃん。よーくご存知だぜ」 全身を覆う鎧の重量に、男は起き上がることができないようだった。 誉れも何もなく地に転がったまま、口から涎で薄まった血を溢しながらまくし立てる男へ のしかかるようにして、森崎が告げる。 「だからよ、俺ら貧相な傭兵としては武門の誉れ高き騎士侯爵様の八代目だか九代目だかに 胸ぇ借りて、一丁稽古でもつけてもらおうかと思ってな」 「にゃ、にゃに、を……」 陽光に照らされて熱い白銀の鎧を拳でごつんと一つ叩いて、森崎がニヤリと笑う。
[593]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 01:12:24 ID:criY5V5E 「いやあ、痛くも痒くもねえよなあ? こんだけ豪勢な鎧で身を固めた自由騎士様だ。 ヒンソーなステゴマのガイジンに殴られて痛いよ痛いよ、なんて泣きが入るはずもねえ。 実にご立派なことだぜ、泰然自若としたそのお姿。稽古の流れで転んじまってもビクともしねえ! なあ、そうだろ? そうだよなあ?」 「ぐ……」 *チェック 交渉判定 目標値【25】 → !numnum ※ !と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。 難易度(無理難題・相手知性『低』90)−(主導権20/恐怖20/苦痛10/混乱10/仲裁スキル「ヒガシの山」5)を 目標値とし、目標値以上の値が出れば成功。 00が出た場合は難易度にかかわらず成功となります。 結果によって展開が分岐します。 成功→ 「ぐ、ぐぬぬ……」 相手はぐうの音も出ない。 失敗→ 「ぐ……う、うわああん! 怖いよ、助けて、パパー!」 泣き出してしまった……。
[594]傍観者 ◆YtAW.M29KM :2012/07/05(木) 01:22:35 ID:??? 目標値【25】 → 93 10分経過しても誰も引かないし、引くか。ダメだった場合はCP/EP期待!
[595]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 01:25:19 ID:??? >>594 お見事です! ダイスロールは時の運、そうご遠慮なさらずズバッと引いてやって下さいw 成功→ 「ぐ、ぐぬぬ……」 相手はぐうの音も出ない。 ****** ※称号が『気のいい拳のネゴシエイター』になりました。 スキル『仲裁?』を獲得しました。 種別:パッシブ 消費ガッツ:- 効果:交渉判定時、+10の修正。モラル値が40以下のときには+20の修正となる。 この効果は同様のスキルと重複する。 ただしモラル値が80を超えるとき、このスキルは発動しない。 ******
[596]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 01:27:04 ID:??? 「ひぃ……っ」 森崎の鋭い眼差しに間近で睨まれ、思わず首を縦に振ってしまう男。 「なら、話は終わりだな。この場には何もなかった、問題も、諍いも、何にも、」 と、森崎が言いかけた、そのとき。 「―――!?」 太陽は燦々と照りつけている。 雲一つない空は初夏の色を隠すこともなく、風は火照った肌を癒すが如く、爽やかに吹いている。 だと、いうのに。 (な、何だ……この感じ!) すう、と。 その場を覆ったのは、鳥肌の立つような冷気である。 それは物理的な温度ではない。 ただの気配である。 しかし人の奥底、骨の髄と臓腑の中とを寒からしめる、怖気に満ちた気配であった。 反射的に顔を上げた森崎が、自由騎士の存在など忘れたように跳ね起きると、一歩を飛び退く。 「……」 広い野原に立ち、あるいは座り、あるいは倒れ伏したままの全員が、冷気に誘われるように振り返る、 その先には黒の一色があった。 蒼穹の下、陽光の白と大地の緑と土色の世界から抜け落ちたような、黒。
[597]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 01:28:06 ID:??? 「ジョアン……エリータス……!」 歩み来る男の名を、知らず呟いたのは森崎自身である。 人垣が割れる。 囲みが解ける。 男の纏う底知れぬものを、その場にいる誰もが肌で感じていた。 森崎の睨む前、まるで無人の野を征くが如く、騒動の中心まで悠然と歩を進めてきたジョアンが、 「やあ、マルセル。こんなところで、何をしているんだい」 と。 散歩の途中で見かけた友人に声をかけるように、微笑すら浮かべながら言った。 相好を崩したのは、倒れたままの鎧の男である。 ジョアンの差し伸べた手を握り、ようやく身を起こしながら口を開く。 「……じょ、ジョアン君! 良かった、助かった、聞いておくれよ! こいつら平民以下の外国人のくせに、俺のことを……」 「マルセル・ジョワンヴィル」 まくし立てようとした男の言葉が、ただの一言で遮られた。 名を呼んだだけの、声。 しかしその声音は、人の心胆を鷲掴みにするが如きものである。 マルセルと呼ばれた自由騎士の男が、凍りついたように固まる。 「もう一度聞くが―――こんなところで、何をしているんだい。 今日の大会で、一勝すらできなかった君が、こんなところで、何を?」
[598]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 01:29:26 ID:??? 手は、握られたままでいる。 男を見下ろしながら一節ごとに区切るように発音される、それはさながら罪の宣告である。 「そ、それ……、は……」 自由騎士が、炎天下に鎧までを着込んだ身でありながら蒼白な顔色でジョアンを見上げる。 今にもガタガタと震えだしそうな表情の自由騎士を、この場に現れたときから一寸たりとも変わらぬ 微笑を向けるジョアンが手を引き、立ち上がらせた。 一人では上体を起こすことも叶わぬ重量を片手で引き上げたジョアンが、懐から取り出した絹のハンカチで 自由騎士の鎧についた泥土を丁寧に落とすと、周囲を睥睨するように、口を開く。 「友人が大変な失礼をしたようだ。このジョアン・エリータスが深く詫びよう。 ―――が、それはそれとして、だ」 汚れたハンカチから手を離すジョアン。 地に落ちたハンカチが、風に吹かれて転がっていく。 「私の友人を傷つけた礼も、相応にさせてもらわねばなるまい。 ……相手は、誰かな」 微笑は、変わらぬ。 変わらぬまま、声は牙と爪とを帯びていた。 直立不動のままでいた自由騎士の男が、ジョアンの視線に促されて慌てて指さしたのは、 やはり森崎である。 ジョアンの氷青色の目が、その姿を認めた途端に蛇の如く細められていく。 「ほう……貴様か、東洋人」 「……悪縁も縁の内、か」 嫌な言葉だ、と吐き捨てた森崎の身に一切の油断はない。 抜刀こそしていないものの、利き手は剣の柄に置かれていつでも抜けるように構えている。
[599]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 01:30:41 ID:??? 「……」 「―――」 言葉が途切れる。 喉が、ひりつく。 じっとりした汗が森崎の背筋を垂れるのは、初夏の陽光のせいだけでは決してなかった。 絡む視線が、漆黒と氷青色とのせめぎ合いが、その中心点に何かを結晶させようとした、その寸前である。 「貴様ら、何を騒いでいる!!」 凍りついたような場を根こそぎ吹き飛ばすような、大音声。 走り来るヤング・マジョラムの姿は、この一連の騒動に強制的な幕引きをもたらす機械仕掛けの神である。 「……命冥加なことだな、東洋人」 つまらなそうに視線を外したジョアンが、呟くと踵を返す。 自由騎士の男がおろおろと周囲を見回し、それから慌てたように追いかけようとしたその歩みが、 三歩を歩いて止まった。 「……そうそう、貴様も顔くらいは見知っていたかな。私の婚約者―――ソフィアだが」 立ち止まったジョアンが、振り返らないままに言う。
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0ch BBS 2007-01-24