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【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】
[139]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:46:01 ID:??? 腕力で物事の優劣を判断する類の人間にとって、先に目を逸らすこと、後ろに退くことは ほとんどあり得ないと言っていい。 どちらも敗北、恭順を示す行為だからである。 それをさせるということはつまり、サンターナという男の言葉は、ザガロという 全方位から暴力の臭い紛々たる男に一時の屈辱を許容させるほどの影響力、あるいは 強制力を持つということを意味するのだった。 「伊達じゃねえ、ってか」 「……?」 森崎の呟きに不思議そうな顔で振り返ったのは、紅顔の美少年である。 ザガロを抑える必要がなくなった安堵からか、それとも生来の性質なのだろうか、 見る者を和ませるような柔らかい雰囲気を漂わせている。 「あ、すいませんどうも、うちの団員が失礼しまして」 「いや……」 「申し遅れました、僕、エセキエル・バビントンといいます。 傭兵団『エル・ディオス・ケ・デベセール・オディアド』の副団長を努めさせていただいています」 「そうか、俺は……って、副団長!?」 どこまでも角の立たぬ少年の言に、思わず聞き流してしまいそうになった。 「はい。まあ、このドルファンでは団ごと丸抱えで第二大隊ってことになりますから、 言うなれば副隊長……ですかね。それが何か?」 「あ、いや……」 小姓か従卒だと思った、とはとても口に出せない。 してみればバビントンという少年、いや男に額面通りの評価を下してはならないのだろう。 何と言ったものかと口ごもる森崎に、サンターナが進み出ると口を開く。
[140]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:47:02 ID:??? 「我々と貴殿らは独立した指揮、訓練系統となる。混乱を避けるよう通達を徹底してくれ。 詳細は後ほど、このバビントンと詰めてもらおう。話は以上だ。失礼する」 低く静かな、しかしやはり凪いだ水面の如き抑揚のない声で事務的にそう告げると、 サンターナは一片の躊躇も見せずに踵を返した。 予め段取りを決められた役者のようなその所作に、森崎はただ眉根を寄せることしかできない。 ちらりとカイルに目配せをして扉を開かせるのが精一杯だった。 「ケッ……東洋人はおとなしくカバヤキでも作ってろってんだ」 「バビントンさんってば! あ、あはは、お騒がせしました〜」 サンターナに続いて踵を返しながらぼそりと捨て台詞を残すザガロの背を、 バビントンが慌てて押していく。 突然の闖入者たちがようやく退出しようとした、そのときである。 「何だ、どうした!?」 「……騒がしいが、何かあったのかモリサキ」 隊長室に、新たな影が飛び込んでくる。 ネイとトニーニョ、そしてネイの背後にはジェトーリオ。 ちょうど部屋から出て行こうとしていた第二大隊の面々と鉢合わせる格好となった彼らが、 ぎょっとしたように立ち止まると、声を上げる。 「な……、”エル・ニーニョ”……!?」 「後ろのは”城焼き”ザガロじゃねえか……! どうしてテメエらがここに……!?」 「あ、バビントン、久しぶりだね〜」 三者三様の態度に、しかし応えたのはザガロ一人である。 正鵠を期するならば、何かを言いかけたバビントンを制するように、ザガロが口を開いたのだった。
[141]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:49:46 ID:??? 「ハン、誰かと思えば……お尋ね者どもか!」 空気が、凍る。 「……!」 「ンだとォ……!?」 「……」 表情を固くするトニーニョ。 ほとんど飛び掛からんばかりの姿勢で肩を怒らせるネイ。 にやにやとした笑顔を崩さず、しかしすう、とネイの背後から立ち居地を変えるジェトーリオ。 ネイが前に出た瞬間フォローに入れる位置取りだと、これまで彼らを見てきた森崎には一目瞭然である。 一気に緊迫の度合いを増した情勢に、森崎が割って入るべく立ち上がろうとする。 「まさかこんな海の果てに身を隠していたとはな! そりゃあ、向こうには戻れねえだろうがよ!」 「ちょ、ザガロさん、その辺で! 彼ら、たぶん第一大隊として雇われてるんですから! 団長も!」 「……そこをどいてもらおう」 「だ、団長〜!?」 制止しようとするバビントンの声はもはや悲鳴に近い。 ほんの二言、三言であったが言葉を交わした森崎にも分かる。 サンターナという男、おそらくは眼前のトニーニョたちに一切の興味がないのだろう。 それでただ純粋に、道を開けろと言っているに違いない。 しかし今の状況では、どう聞いても挑発の一環である。 「おい、テメエ……!」 「よせ、ネイ」 激昂しかけたネイを森崎よりも一瞬早く抑えたのは、トニーニョである。
[142]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:50:47 ID:??? 「彼らはこの隊長室から出て行くところだった。モリサキもカイルも、無事にそこにいる。 そして俺たちには事情が分からない。……いま乱闘騒ぎを起こせば、困るのはモリサキだろう」 「ぐっ……!」 トニーニョの表情は、相変わらず固い。 固いが、しかし声音には他を圧して息を飲み込ませる力があった。 ネイが接ぎ穂を失った刹那を見計らったように、ジェトーリオがその肩に手をかけて脇に寄せる。 「ほらほらネイくん、お客様がお帰りだよ〜。ちょっと場所を開けてあげようねえ」 「触んな! 雨降りそうなんだから洗濯物を増やすんじゃねえ!」 「うぅ〜ん、ネイくんのいけずう」 しなを作ったジェトーリオが、ちらりと一瞬だけバビントンの方へと目線を送る。 僅かに頷いたバビントンがザガロを促し、急いで退出しようとする。 サンターナはといえば、ネイが進路を開けるのとほぼ同時に無言で出ていってしまっていた。 「ほら、ザガロさん。帰りますよ、まだやることいっぱいあるんですから!」 「ハーッハッハァ! 安心しなお尋ね者ども、俺らははした金目当てに通報したりはしねえからよ! ま、次の戦場までの命かもしれねえが、せいぜい頑張って欧州の隅っこでこそこそ生き永らえな!」 「ザガロさん! いいから! 早く行きましょう!」 「チッ……引っ張るんじゃねえよ、バビントン」 それから嵐が去るまでの数十秒、何事も起こらなかったのは僥倖といえるだろう。 ぎい、と扉が閉まる音とほぼ同時。 執務机に詰め寄ったのはネイである。 「どういうことだ、モリサキ! どうしてアイツらがここにいる!」 「……」 さて何から話したものか、としばし黙考した森崎が―――
[143]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:53:33 ID:SyarAx66 *選択 A「新設される第二大隊の連中だ」 無難に説明する。 B「あいつら、西洋圏では有名なのか」 彼らの素性を尋ねる。 C「お尋ね者ってどういうことだ」 問いただしてみる。 森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。 その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。 期限は『11/27 24:00』です。 ****** どうやらこの世界、ブラジルはポルトガル語圏ではないようです。 イベリア半島はなくてもスペイン語はある不思議な世界……。 といったところで、本日の更新はこれまでとさせていただきます。 遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。 それではまた、次回更新にて。
[144]◆W1prVEUMOs :2012/11/27(火) 23:48:08 ID:??? B これから関わることになるなら知っておいて損はないので Cは上手くいけば(ネイの)スキルゲットの可能性があるけどリスクも高いパターンぽい
[145]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/27(火) 23:50:48 ID:??? A傭兵団ごと雇われたってのが気になるので教える情報は正確な方が良いかなと思います。
[146]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:08:04 ID:??? 皆様、ご回答ありがとうございます。 それでは早速、>>143の選択については…… >>144 ◆W1prVEUMOs様のご回答を採用させていただきます! Cはご指摘の通り、ハイリスク・ハイリターン系の選択でした。 ちなみに部隊員のスキルLvは基本的に訓練時にしか上がりませんが、イベントの成功などで 上昇確率を大幅に底上げすることが可能です。 CP3を進呈いたします。 >>145 作中でも触れますが、傭兵の雇用は傭兵団丸ごと、というのがこの時代の基本です。 そうでないと質も安定しませんし、何よりドルファンがしているように衣食住から武具までの 手厚い面倒を雇用側が見なくてはいけなくなってしまうので、余計な手間がかかるのです。 その点、傭兵団ですと基本的にお金だけ払えば(戦勝報酬に領土や官位などを要求されることもありますが) 後は自給自足が原則ですので楽ちんですね。
[147]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:09:11 ID:??? *** B「あいつら、西洋圏では有名なのか」 結局、森崎が尋ねたのは第二大隊の面々についてである。 お尋ね者、という言葉が気にならぬといえば嘘にはなるが、ここで過去を問い詰めて 何が始まるわけでもない。 傭兵という稼業、そもそも故郷に身の置き場がない者が流れ流れて辿り着く職という側面もある。 森崎自身とて脛に傷の一つや二つ、ないではなかった。 故に意義の薄い詮索よりは、いま目の前にある課題に注力しようと思考を切り替えている。 「あ、ああ……」 「エル・ディオス・ケ・デベセール・オディアド……西洋圏屈指の傭兵団と言われている」 バツが悪そうなネイに先んじて、淡々と述べたのはトニーニョである。 仏頂面は常の厳格を取り戻し、動揺は少なくともその表情には見て取れない。 「向こうの有力な傭兵団の殆どはこの欧州から海を渡った者たちによるものだが、 彼らは西洋圏出身者だけで構成された傭兵団だ。規模は戦士が三、四百。 その他の団員を含めれば千に近いだろう。団長はカルロス・サンターナ」 「―――通称”エル・ニーニョ”。神の子、って意味だね〜」 トニーニョの言葉を引き継いでジェトーリオが言う。 「神の子……か」 「誰が言い出したものかは知らんがな。幾多の戦場を渡り歩きながら、これまで一度も 負け戦に参じたことがないという噂だ」 「ま、奇跡的に強いのか、奇跡的に運がいいのかは微妙なとこだけどね〜」 茶化すようなジェトーリオに、森崎がにやりと笑う。
[148]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:10:23 ID:??? 「奇跡の常勝軍団がドルファン側で参戦……か。そりゃ頼もしいこった」 「参戦……するのか、やはり」 「ああ、正式には来月の頭からって話だ。……だな、カイル?」 「あ、えと、は……はい!」 目まぐるしい状況の推移に棒立ちとなっていたカイルが、森崎の問いに首肯した。 トニーニョたちの目が向けられるのを待って、先を続ける。 「編成部より、十二月一日付で外国人傭兵大隊に第二大隊を新設すると通達がありました」 「なにィ!? 新設だと!?」 大きな目を更に大きく見開いたネイに、カイルが生真面目に頷く。 「はい。員数は三百。指揮系統は我々第一大隊とは完全に独立したものとなります。 モリサキ隊長にも命令権はありません」 「同格……ってわけか」 噛み締めるように呟く森崎。 「第二次徴募は我々のようにスィーズランド経由で個人の傭兵を集めるのではなく、 西洋圏から傭兵団の丸抱えという条件で大規模な増員を企図したようです」 「つっても、俺らみたいな流しだけ集める方が珍しいからな」 森崎の言葉は、この外国人傭兵大隊の特異さを端的に示している。 原則として戦時の傭兵はその一団ごと国家、あるいは領主との契約によって雇用される。 規模はそれこそ数人単位からヴァルファのような数千人といった巨大傭兵団まで様々ではあったが、 個人を大量に雇い入れるのは余程頭数が足りず、質を問わずに数をかき集めたい場合か、 もしくは経験豊富な傭兵団と契約できるだけの経済的な余裕がないかのどちらかである。 しかし森崎の見るところ、このドルファンにおける事情はそのどちらでもない。 貿易港を抱えるドルファンの懐具合は悪くないように見受けられるし、イリハでその弱体化を 露呈したとはいえ、戦前の騎士団は無駄な自信に満ち溢れていたはずだ。 であれば、何故か。
[149]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:11:53 ID:??? 考えを巡らせることは何度かあったが、答えが出たことはない。 たとえば相手がヴァルファであると判明していた場合、その威名に契約を躊躇う傭兵団は多いだろう。 契約後でも勝てぬ相手とわかれば中小の傭兵団は違約金を払って契約を解消したかもしれないが、 しかしプロキアがヴァルファの雇用を発表したのはドルファンが傭兵を徴募した後だった。 辻褄が、合わぬ。 と、そこまでを考えて、森崎は益体もない思考を打ち切る。 いま考えるべきことは他にいくらでもあった。 「まあ、最初から同じ釜の飯を食ってる連中なら再訓練の必要もないってわけだ。 上も俺たち寄せ集め部隊の扱いづらさに懲りたのかね」 「……」 冗談めかす森崎にカイルはただ困ったように目を伏せるばかりだった。 肩をすくめて先を促す。 「騎士団は再編成中で慣熟にまだ時間が必要であること、またダナンの早期奪還について 王室会議の背中を押す意図もある、と」 「例によってルーカスのおっさんのオフレコ分析か」 「はい。報告は以上です」 「……ってわけだが」 トニーニョたちに向き直る森崎。 「さっきの様子だと、団長の他にも知った顔があるみたいだったな」 「あー……」 問われ、ネイが渋面を作る。 「まあ、俺らは向こうでも傭兵やってたんだがよ。そんときに、何度かな」 「一応、味方ではあったんだけどね〜」
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0ch BBS 2007-01-24