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【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】
[53]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:09:27 ID:??? ひそひそと言い交わす森崎の行く手にあったのは、まるで道を塞ぐように横付けされた馬車である。 兵舎のあるシーエアー地区からフェンネル地区の訓練場に続く閑静な道のこと、 何か近隣に用があって停まっているわけでもあるまいと思いながら見やった馬車は、 近くで見ればひどく豪奢なものだった。 全体を純白に塗られた車体は、森崎もよく目にする粗末な乗合馬車とは比べ物にならない。 精緻な計算のもとに施された彫刻が白い車体を彩り、まるで羽ばたく鳥のようにその全体像を錯覚させる。 金の縁取りはよもや真物かと思わせる重厚な煌めきを陽の下に晒していた。 引く馬も見事な体格の芦毛が二頭。 肉付きといい毛艶といい、一級品の素材を最高の厩舎が磨き上げていることは明らかだった。 無駄に嘶くこともなく、どっしりと構えたその威容は軍馬を扱う森崎から見ても文句のつけようがない。 「羨ましいぜ、実際。一頭くれねえかなあ」 『さもしいよ!』 言いながら、道幅のほとんどを埋めるように停車しているその馬車の脇を抜けようとした森崎の背に、 低い声が刺さる。 「―――やらねえよ馬鹿野郎」 「うわっ!?」 突然の声に、思わず飛び上がる森崎。 いかに油断していたとはいえ、森崎はいくさを生業とする男である。 背後に誰かがいれば、大抵は察知できるつもりでいた。 しかし今、声の主は全く気配を感じさせなかったのだった。 「誰だ!?」 反射的に身構えながら振り返った森崎の目に映ったのは、 「……おん、な?」 「オイ手前ぇ、いま一瞬迷っただろ」
[54]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:10:27 ID:??? 乱暴に言い放って森崎を睨む、その姿はよくよく見れば確かに女性である。 灰色がかった銀髪を長く伸ばした顔立ちは、むしろ美人といってもいい。 しかし、森崎が迷ったのも無理はなかった。 獰猛とすら言えるような目で森崎を睨みつける彼女の出で立ちはといえば、 糊のきいた純白のカッターシャツに黒のベスト、胸元にはベルベットでできた臙脂のリボンタイ。 そして何より、その足を覆うのはスカートではなく、すっきりとしたラインの黒のパンツであった。 「あ? 女がこんな格好してちゃ悪いのか?」 「いや……悪いってんじゃ、ねえけどよ」 戸惑う森崎が言葉を濁す。 苛立たしげに踏み鳴らす足元も、丹念に磨き上げられた黒の革靴だった。 有り体に言って、富裕な家のバトラーであると主張するような服装である。 が、森崎の知識の中にある限りでは、女性のバトラーや家令など聞いたことがない。 「……」 「……チッ、まあいい」 困惑が顔に浮かんだのが見て取れたのか、女性が露骨に舌打ちして首を振る。 しかし次に出た言葉は、胸を撫で下ろした森崎を再び驚愕させるのに充分であった。 「ユーゾー・モリサキってのは、お前だな」 「なにィ!?」 名指しである。 いかな先月の収穫祭で名が売れたとはいえ、全くの見知らぬ他人からその名が出るとは思わなかった。 「お、俺ってそんなに有名人なのか?」 「は? 何言ってんだ、手前ぇ」 思わず訊いてしまった森崎が、一刀両断にされる。 猛禽類を思わせる灰色の鋭い目が、心底から呆れ返ったように森崎を射貫いていた。
[55]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:11:28 ID:??? 「……じゃあ、どうして俺の名前を」 「用があって捜してたんだよ。っと、勘違いすんじゃねえぞ」 「……?」 「用があるのはオレじゃない。……あっちだ」 すげなく言った女性が、す、と滑るように歩むと、馬車の扉に正対する。 「お嬢さん、間違いないみたいだぜ」 声は、馬車の中にかけられたものである。 僅かな間を置いて、くぐもった声が返ってくる。 「……そう。開けなさい」 「へいよ、っと」 気の入らぬ声音とは裏腹に、馬車の扉を開けようとする女性の仕草は洗練されている。 隙がない、と言い換えるのが正しいのかもしれない。 背後を取られたのに気づけなかったことを思い出し、渋面を作る森崎の目の前で 軋みひとつ立てずに扉が開いていく。 純白の扉の中は落ち着いた赤を基調とした布張りである。 垂れ下がる壁掛けの複雑な文様、美しい茜色は更紗だろうか。 「―――」 その、小さな赤い世界を睥睨するように座る女がいる。 纏うのは蒼。 どこか、ソフィアやハンナの通う学園の制服を思い起こさせる意匠である。 見慣れぬ仕立てだが、ゆったりと身体を包みながらもその動作を阻害しないよう 細心の注意が払われた、いかにも一品物といった完成度の高さがそこにあった。 膝丈のスカートの下から伸びる足の白さに森崎の目が釘付けになったのは、馬車の車高で ちょうど目線の正面近くになったからばかりではあるまい。 少女の、脚である。
[56]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:12:30 ID:??? ハリに満ちた、どこまでもしなやかな肉付きは成熟した女のそれではあり得ない。 一目、その魅力に心奪われ、二目、その鍛え方に瞠目する。 神のたわむれに描いた曲線の如きふくらはぎから純白の三つ折靴下に隠された踵の腱へと至る 筋に秘められるのは、少女というものが元来持つ、微かな熱と沈み込むようなやわらかさではない。 そこにあるのは、凝集された力の結晶である。 無理やりに鍛え上げた醜い塊ではない、匠の手で研ぎ上げられた刀の如き筋肉が、 理想的な長さと太さを併せ持つ脛骨にふわりと覆いかぶさっている。 腿が見たい、と思った。 ごく自然な心の動きに、一切の邪念はない。 そこにあるのはただ武芸を志す者として完成された肉体という概念を目にしたい、 そういう純粋な感情で、 「……」 見上げた先で、悠然と笑む少女と目が合っていた。 少女が、森崎を見下ろしたまま、言う。 「気は済みまして?」 「……はい」 こくこくと、壊れた水飲み人形のように頷く森崎に同情を寄せる者は、この場にはいなかった。 「聞いていたのとは少し違うようですが……とにかく、モリサキさん、ですわね」 「あ、ああ……」 少女の口からも、やはり森崎の名が出る。 居心地の悪さに曖昧に頷いた森崎に、少女が席を立つこともないまま口を開いた。 「単刀直入に伺います。ハンナ・ショースキーは御存知ですわね」 「え……?」
[57]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:13:38 ID:dUOJLR82 今度こそ、森崎が困惑する。 自分の次は、ハンナ。 話の流れも、相手の意図もまったく読めないのを不気味に思った森崎が――― *選択 A「さ、さあ……」 とぼけてみる。 B「知ってるといえば、知ってるが……」 一応、答えてみる。 C「綺麗な、脚だな」 欲望に忠実になってみる。(必要CP:5) 森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。 その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。 期限は『11/2 1:00』です。 ****** ようやく最後のヒロイン候補登場、といったところで 本日の更新はこれまでとさせていただきます。 夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。 それではまた、次回更新にて。
[58]傍観者 ◆YtAW.M29KM :2012/11/01(木) 20:42:38 ID:??? こっちの素性を完全に知られてる以上、嘘をつく理由が何もない。 あと別スレで学んだけど、【権力持ってる相手と対立するならちゃんと準備してから】だよ。 思いつきで対立するとひどい目にあう…まあ流されるだけでもひどい目にあうけどw
[59]傍観者 ◆YtAW.M29KM :2012/11/01(木) 20:47:52 ID:??? …しまった、投票忘れてた。投票はBです。
[60]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/01(木) 23:21:54 ID:??? B向こうはこちらの事を把握してますから、隠す必要はないかなと思います。 森崎ならハンナのライバルだなぐらいの事は気付くのではないかと思います。
[61]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:06:00 ID:??? 皆様、ご回答ありがとうございます。 それでは早速、>>57の選択については…… >>60 さら ◆KYCgbi9lqI様のご回答を採用させていただきます! そうですね、状況的に相手が誰なのかは察知してもおかしくありません、ということで その辺りを本編に反映させていただきました。 CP3を進呈いたします。 >>58-59 はい、この相手はともかく、本当に危険な相手にノリや思いつきで喧嘩を売っていくのは 猛獣に徒手空拳で挑むようなものですね。 そういった行動に対してご都合主義的フォローは入りづらいので、気をつけたいところです。 勿論、状況を見て戦力差を判断し、それを埋める策を用意した上で挑むのであれば別ですけど。 負けられない戦いは、負けないようにして勝ちましょう!
[62]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:07:01 ID:??? *** B「知ってるといえば、知ってるが……」 誤魔化しても無駄だと判断し、森崎が答える。 調べをつけた上で問うているのは、単なる枕詞か、それとも何かを試しているのか。 そもそも名指しでこちらを捜しあてたという相手だ。 組織力、資金力には疑問を差し挟む余地がない。 言葉を濁したのは相手の意図が読めないからだが、しかし森崎の返答に馬車の中の少女は 小さく首肯しただけで悠然とした笑みのまま、眉筋ひとつ動かさない。 埒が明かない、と内心で舌打ちした森崎が、一石を投じるべく口を開く。 「そういうあんたは……リンダ・ザクロイド、か?」 「あら、わたくしをご存知でしたの」 少女の、成熟した女性を思わせるような切れ長の目がぴくりと動く。 やはり少女はリンダ・ザクロイド。 ハンナが唯一勝てないという、国内最速の女で間違いないらしい。 投じた石の、水面に起こした波紋を確認して森崎が首を振る。 「いいや、俺はハンナからそんな奴がいるって名前を聞いていただけだ」 思わせぶりに、ちらりと目線を送る。 少女、リンダは先を促すような視線を返してきた。 幾ばくかの興味を引くことには成功したらしい。
[63]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:08:02 ID:??? 「ただザクロイドといやあ、この国の燐光石市場を仕切ってる大商人だ。 外様の俺でもそこかしこで聞く名前だからな、さすがに引っかかってたんだよ」 「……」 一瞬、リンダの表情が曇ったように見えた。 大商人、と森崎が口にした刹那のことである。 ほんの僅かに下がった眉尻は、しかし森崎が目を凝らして確かめるより早く、元に戻ってしまう。 気にはなったが、しかしおくびにも出さず言葉を続ける森崎。 「そこへ、そのすげえ馬車ン中からお嬢様が出てきて唐突にハンナのことを訊かれたわけだ。 そんな金持ちの心当たりはあんたしかいなかった、ってことさ、リンダお嬢さん」 「……」 言い終え、肩をすくめてみせた森崎をじっと見ていたリンダが、す、と手を動かす。 どこから取り出したのか、白い指に摘まれていたのは豪奢な扇である。 薄紫の絹張りにレースの装飾、縁を彩る毛皮の純白は白貂だろうか。 それ自体がひとつの作品と呼べるような扇が、リンダの口元を隠すように広げられる。 「多少の目端は効くようですわね。無礼な物言いには目を瞑りましょう」 「そりゃどうも。……で、何の用だい」 扇で口元を隠されれば、表情は途端に読めなくなる。 なるほど上流階級かと感心しながら森崎が問い返すと、リンダが目を細めて言う。 もとより細く切れ長の瞳が下弦の月のように弧を描くその様は、銀色の長い髪も相まって、 どこか伝説に謳われる狐を連想させる。 「ハンナ・ショースキーに今の練習を指示したのは貴方、ということですが」 「……」 蒼を纏う狐が、断言する。 どこから調べたのか見当もつかないが、あるいはハンナ自らが聞かれるままに答えた可能性もあるか、 などと考えていた森崎の沈黙をどう捉えたのか、リンダの瞳が僅かに気色ばんだように見えた。
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0ch BBS 2007-01-24