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【バグサッカー】きれぼしサッカー【やりまーす】
[151]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/03/17(日) 16:21:42 ID:??? 陽子「…う…ううん………」 陽子の瞼は震え、ゆっくりと開きだす。 キーをもらって車を開け椅子に座った後はうとうととまどろんでいた。 何かの拍子で目が覚めて、横に振り向く。 陽子「!」 運転席を見て驚愕した。ハンドルを握っているのが賀茂ではない。 長身痩躯、黒スーツに黒サングラスと似ても似つかぬ日本人の男だった。 陽子「あ、あなたは!?」 黒服「お気づきになられましたか、陽子お嬢様」 陽子「!!」 この男は追手だ、このままでは父の元へ連れて行かれる。 そう悟った陽子は逃げようとしたが、手足が縛られていて動けない。 うたた寝をしている間に紐で固定され、ドアに手を掛ける事もままならない。 黒服「お静かに願います。ここはまだ路地裏です、外へ出れば大変危険です」 陽子「あなた達の方がずっと危険よ!賀茂さんはどうしたの!?」 黒服「運転手は私に交代いたしました。これより私が責任を持って目的地まで移動いたし…」 陽子「嫌よ!早く車を止めなさい!」 黒服「お断りいたします。いかなる手段を用いてもお嬢様を日本へ連れ戻せとの、 会長直々の御指令がありますので」
[152]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/03/17(日) 16:22:46 ID:??? このままでは日本に戻される。なんとかして車を止めないと。 陽子は倒れこむように男へと飛びかかり、ハンドルを握る男の手に噛みついた。 黒服「っ!」 男は顔をしかめる。陽子の歯は深々と肉に食い込み、唇をつたって血が滴り落ちている。 痛みに耐えかねた男は車を止めて陽子を引き剥がすと、裏拳を水月に撃ちこんだ。 陽子「あぐっ……!」 黒服「お静かに願います」 もうだめだなにもかもおしまいだ。絶望に覆われくず落ちる陽子。 勢い余って座席下に転げ落ち、意識を失ってしまったが、それが陽子にとって幸いとなった。 ガシャアアアアアアアアン! 陽子側の窓ガラスが蹴破られ、飛び込んできた男に黒服の男は外へ押し出された。 何が起こったか分からず呆然としている黒服に、 陽子のよく知っている男はドアを閉める間際に黒服へ吐き掛けた。 賀茂「クビだ」
[153]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/03/17(日) 16:24:19 ID:??? 路地裏を抜け、人通りの多い大通りを走らせているところで、 自動車電話が鳴り響いた。ちょうど信号待ちの時であったため、賀茂が受話器を取る。 宗義「時間だ、ちゃんと陽子は連れてきたか?」 賀茂「生憎だが、まだらしいぜ」 宗義「………」 思いもよらぬ相手に、相手は押し黙る。 賀茂「もういいかげん、嫌がってる娘を無理矢理連れさらおうとするのはやめるべきだと思うけどな」 宗義「……とりあえず君の頑張りぶりを評価するとしよう。 だが、後継者の件については変えるつもりはない。いずれは娘も理解する」 賀茂「もう諦めろ、どうにもならない事でいつまでも拘っていたら、残り少ない老い先がますます短くなるぜ」 宗義「娘は一時の気の迷いになっているだけだ、 落ち着いて思慮分別を養えば必ず我々の意義を重んじるようになる。必ず娘は取り戻す」 ガチャッ。 賀茂「あっ、おい!……切れやがった、言いたいことだけ言いやがって、ガラスの弁償ぐらいしやがれ」 ぶつぶつとはるか遠くの宗義に向かって悪態を吐く賀茂を、 そしてその下の受話器を、助手席からぼんやりと瞳が見つめていた。
[154]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/03/17(日) 16:25:35 ID:??? 今日はここまで、このところ忙しくなってなかなか更新できませんが、 週1でも定期的に更新していきたいです。
[155]森崎名無しさん:2013/03/17(日) 16:38:44 ID:??? まさかの賀茂主役!?w
[156]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/03/17(日) 18:28:11 ID:??? いやいやw まあ、迷監督や汚物扱いじゃない賀茂さんがいてもいいじゃないwってことですね。 陽子さんの回想はもう少し続きます。更新はもう少しかかりますが、 彼女の感情の推移をお楽しみください。
[157]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/03/21(木) 20:29:49 ID:??? 申し訳ありませんが、少々トラブルがありましてしばらく更新できそうにありません。 これから1か月かかるか、1週間もかからないかは分かりませんが、少なくとも 今週の土日には更新できそうにありません。誠に勝手ではありますが、 今しばらくお待ちしていただければ幸いです。
[158]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 14:47:37 ID:??? ようやく更新できるようになりましたので、これより投稿いたします。 私的なトラブルに続き転職することとなった為、予定より遅れてしまいました。 今後は仕事の為に今以上に更新頻度が遅くなるかもしれませんが、 なにとぞ今後も拙稿を読んで楽しんでもらえればうれしいです。 最後に、今回の投稿は一部本編の文章をそのまま、あるいは一部変更して 用いている箇所があります事について、なにとぞご容赦を願います。
[159]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 14:49:47 ID:??? ―――――― ――――――――― ――――――――――――― さらに時は流れる。 インドネシア、ジャカルタのとある国際ホテル屋上。 ホテルは高く、ジャカルタ800万の喧騒も屋上では虫のさえずり程にしか響かない。 空は雲に包まれるも風涼しく、こうした天地の加護を受けてか、男女2人が誰に邪魔されることなく語り合えていた。 男の方は緊張しながらも躊躇うことなく自らの心境を明かしている。 女も同様に心の奥底を開こうとしているが、男に比べて憂いの色が強くにじんでいた。
[160]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 14:52:55 ID:??? 陽子「だからこうやって兄さんの所に転がり込んだの。 生まれつき約束された物を夫付で受け取らされるんじゃなくて一般人のフリをしながら自分の力でゼロからスタートする… それは充実していてワクワクする生活なんだけど、いずれはきっと終わるわ…」 陽子「(きっと終わってしまう……どんなに私があがいても、どうしようもない……)」 陽子の脳裏には、かつての拉致未遂以降の記憶が去来していた。 あの事件が失敗に終わった後で、不審者は影さえ見えなくなったが、 代わりに陽子の日本サッカー協会での活動が、陰に陽に妨害されるようになった。 陽子の部屋が何者かに荒らされ、彼女に託された文書・資料がボロ屑とされた事は幾度となく繰り返された。 少しでも機密が求められる情報を陽子に任された際は、決まって外部に漏洩され、 その都度協会の信用と活動範囲を揺るがせる結果となった。 これまで快く協力してくれていた外部団体や他国のサッカー協会との連携も、 末端の協力者の一員として陽子が参加した途端、あからさまな態度で断られるようになった事さえあった。
[161]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 14:57:37 ID:??? 今もなお、兄や賀茂は勿論、日本サッカー協会も陽子の活動を続けさせてはいる。 1人の少女の夢の支援というよりは、外部からの不当な圧力に対する 断固たる拒否の姿勢を示すという面が強かったが、ともかく現在も陽子は何とか活動を行い得ている。 だが度々の干渉が、1人の小娘が原因で引き起こされている事が知れ渡るにつれて、 周囲の視線と空気が寒々しくなっていく事はどうにもならなかった。 陽子「(ダメよダメ、ダメ、私が出来る事なんて何も無かったんだ。このまま引き戻されておわり……)」 森崎「俺は諦めるのが大嫌いだ。諦めるなんて勿体無さ過ぎる」 陽子「(!)っ………」 キッパリとした相手の返事に、陽子は息を飲んでたじろぐ。何の迷いも無い、力のこもった言葉。 動揺を隠そうと目を背け、コップにビールを注ぐも、胸が詰まってしまい泡をただ見つめるだけになった。 ややたって、陽子が口を開く。 陽子「私だって、諦めるなんて嫌よ…」 森崎「だろう?」 陽子「でも、受け入れなきゃいけない現実や運命だってあるの。それに成す術無いまま抗い続けるのは…とっくに疲れたわ」
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0ch BBS 2007-01-24