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【紅い満月】鈴仙奮闘記11【永遠の夜】
[793]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 01:28:43 ID:??? 実況「あ…ああっ! はたて選手の放つミドルシュートを――美鈴選手は弾き切る事が出来なかった! こうなると、事態は非常に深刻であります! 反町選手、右サイド側に跳ねたその低弾道のこぼれ球に動きを合わせ…!」 反町「――このチャンスで、決めなくて……どうするッ!」 グワアッ! バシュウウウウウウウン!! 美鈴「い、いけない! セーブに向かわないと……!?」 反町が、至近距離からボレーシュートを放つ。 一旦バランスを崩してしまい、その上飛び出しにも行けないタイミングで放たれたそのシュートに、 美鈴は……触れる事すら出来なかった。 ――――――ズバアアッ! ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!! 紅魔スカーレットムーンズ 1 − 1 妖怪の山FC
[794]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 01:30:19 ID:??? 実況「き、決まった〜〜〜! ゴ〜〜〜〜〜ル!! 妖怪の山FC! 前半15分にして 待望の同点弾です! 雛選手を起点とし、射命丸選手が駆けあがった上で、 はたて選手がフォローしシュ−ト! そしてそれを反町選手が正確にねじ込むという、 まさに高度なチームプレーを魅せました〜! レミリア選手とフラン選手の圧倒的個人技により挙げられた1点目とは全く正反対のこの展開! 果たしてどちらが勝つか、いよいよ分からなくなってまいりました〜〜〜〜!!」 観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」「何だ、意外と良い勝負するじゃん」 「いや、お嬢様の様子が怖いよ……」「というか美鈴さんの命が心配だ……」 レミリア「………ふう」 咲夜「…………」 美鈴「あ……あわわわわ……ごご、ごめんなさい、咲夜さん、お嬢様……」 ――早速、点を決められてしまった。 その事実に罪悪感と処罰への恐怖を浮かばせた美鈴は、逃げ場を失った子羊の如くに プルプルと痙攣し、消沈した表情で自軍へと歩み戻るレミリアと、 氷のような無表情を貫く咲夜へ向かい、全力で許しを乞う。 レミリア「―――この程度の失点自体は、試合開始前から予測出来ていた事。 それよりも貴女は、次の失点を如何に防ぐか。 これのみを念頭に考えなさい」 レミリアは、美鈴の謝罪に対して極めて冷淡に応じる。 そもそもとして、紅魔スカーレットムーンズというチームは 個人個人の実力の高さに反して、チームとしての総合力はそう高くない。 FW・MF・DFの各箇所に当て嵌められるだけのタレントは揃ってはいるが、 今回の失点のように、その隙を狙われた上で猛攻を掛けられると非常に脆い。
[795]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 01:32:43 ID:??? そんなチームの弱点を良く理解していた以上、 レミリアは美鈴の失態を想定の範囲内と捉え、あまり気にしてはいなかった。 ただし当然、敗北を甘んじて受け入れる程、レミリア・スカーレットはか弱くない。 レミリア「(見事なプレーだった、妖怪の山FCよ……。 だが――次は無いぞ)」 彼女は心の中で小さくそう宣言して、再びキックオフへと備えるのだった。 咲夜「(――今の失点は、私の原因ね。 あの天狗に、僅かながらも逃げ道を残してしまっていた)」 一方で、咲夜は冷静さを装いながらも、内心では自分の失策を恥じていた。 自分が最も得意とするタックルで、ギリギリであるとはいえ射命丸にバックパスの猶予を与えてしまった事に。 咲夜「(……だけど。 時を止める事は出来ても、時を戻す事はできない。 ここは――) 覆水盆に返らず。 次のプレーで挽回しましょう」 だがしかし、瀟洒な従者である彼女には後悔をする暇は与えられていない。 彼女は、自分自身にも言い聞かせるように美鈴に短く告げる。 美鈴「(咲夜さん、そしてお嬢様も……皆、打ち震えている。 私だけじゃない) ――は、はいっ! 紅美鈴! 次こそは全力を尽くしますッ!!」 そんな二人の様子の真意を汲み取った美鈴は―――改めて、自分に与えられた責務を 遂行する、しなくてはならないのだと決意を固めるのだった。
[796]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 01:33:54 ID:??? そして一方妖怪の山FCは、自分達の一連の攻撃が完全に嵌った事による 華麗な同点劇に盛り上がり、その士気を少なからず高めていた。 穣子「一樹く〜ん! ナイスシュートだよ〜!」 静葉「フフ…流石ね。 これでこそ、頼りがいがあるというものだわ」 反町「よ、良してくださいよ静葉さん、穣子……。 今のはただのごっちゃんゴールですから」 椛「でも今は、巧く私達の連携が続きましたよね! やっぱり、ウチのチーム力は強豪相手にも通用しますよ文様!」 射命丸「……だと良いのだけどね。 相手はまだ切り札を温存しているでしょうし、油断は禁物ですよ皆さん」 ――とはいえ、彼女達は自分達の状況は依然危ういという事実を良く理解しており、 キャプテンの射命丸を筆頭に、浮かれ過ぎを自重する雰囲気がチーム内で上手く熟達している。 はたて「(なんだか、皆良い雰囲気! このまま私達のサッカーだって、捨てたもんじゃないってことを見せつけるのよ!)」 永らく幻想郷を支配してきた、圧倒的な個人によるサッカー。 自分達中堅チームがそれに打ち勝つ事こそが、幻想郷サッカーの新たな時代の幕開けとなる――。 はたては一人そう夢想し、引き籠っていた時には決して見せる事の無かった満面の笑みでキックオフへと向かう。 試合の流れは、必ずしも紅魔スカーレットムーンズのみが支配出来るものでは無くなっていた。
[797]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 01:35:05 ID:??? …と、言った所で今日の更新はここまでです。 皆さま、本日もお疲れさまでした。
[798]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 11:51:38 ID:??? こんにちは、今日も更新していきますが…。 >>763のフォーメーションに一部誤りがありました。 正しくは、 −−@−− @にとり C−B−A B穣子 A河童 −−−−− −−D−− D静葉 G−−−E G雛 −−I−− Iはたて F−−−− F射命丸 −−H−J H椛 J反町 妖怪の山FC:3−4−3 紅魔スカーレットムーンズ:4−4−2 −J−−− Jフラン −−−H− Hレミリア −−−−− GI−FE I小悪魔 −−−−− −−D−− D咲夜 −ACB− −−@−− @美鈴 になります。レミリアとフランの場所が逆になっておりました。失礼いたしました。
[799]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 11:52:38 ID:??? ピイイイイイイイイイイイッ!! 実況「さあ、そして試合再開のホイッスル! 紅魔スカーレットムーンズのキックオフです! レミリア選手がここでボールを持ちますが―――」 はたて「皆! 紅魔スカーレットムーンズはFWの二人を封じてしまえば怖くない! だから前線の二人を徹底マークよ!」 反町「了解!(これだよ……。 これが俺が求めていたサッカーなんだ……! 圧倒的な個の力を、和を大事にした全員プレーで覆すっていうサッカー。 ああ、身体が軽い。 もう何も怖くない―――!)」 椛「了解です、はたて様!(反町さん、生き生きとしてるなぁ…)」 実況「レミリア選手やフラン選手のドリブル突破を警戒し、 妖怪の山FCは人数を掛けたマークを実施! 再びチーム力で、紅帝を封じようとしている〜!」 紅魔スカーレットムーンズは幻想郷きっての名門チームであるが。 その内情は、かつての永遠亭ルナティックス程ではないにしても…… 一部のトッププレイヤーに頼った、バランスの悪さがやはり目立つ。 その逆にトッププレイヤーは居らずとも、そこそこの能力を持った選手が多数所属する 妖怪の山FCとしては、人数を掛けたプレーでの戦況打破こそが勝利の鍵となっていた。 レミリア「(けれど、私とて自らの力を過信し崩れる程愚かでは無い。 むしろ、相手が私達をそう過小評価してくれているのは好機と捉える)」 だがしかし、レミリアはそれを受けてなお、自分の力を誇示しようとはしなかった。 暫くの牽制の後、大量のマークが付き、前線で苛立っていたフランを尻目に―――。 レミリア「(なら……私達のチーム力も、見て頂こうかしら)――メイドE、そのまま駆けあがりなさい!」
[800]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 11:53:38 ID:??? バシュウウウン! メイドE「ふ――ふえっ?」 レミリアは、中央に警戒が集中したせいで若干手薄となっていた、右サイドへとボールを流した。 はたて「(う、うそっ…! 流すとしても、I番の子(小悪魔)か、 その子とワンツーの出来る、左サイド側のG番だと思っていたのにっ!?)」 パチュリー「(レミィは今でこそ、卓越したシュート力を誇るFWとして持て囃されてはいるけれど。 彼女は本来、MFやDFもこなせる才能と能力がある。 ここで瞬時に最善の手を打てたのは、相手にとって少なからず動揺を与えられる筈よ)」 反町「(くっ! サイドまで距離があるせいで、満足にボールカットに行けないが――それでも止めてみせる!)」 妖精メイドEから最も近い位置にいた反町のみは、 態勢を崩しながらも、辛うじて彼女のボールをカット出来る位置にまでたどり着くが…。 メイドE「(こ、こーいう時は……)――F番ちゃん!」 バシュッ! 実況「メイドE選手、パスを出した! 反町選手がそれに向かっていくが……」 反町「(くそっ! 態勢が悪くなければ容易にカット出来たパスなのに!?)」 実況「身体に当てて、僅かにその勢いを減じたのみにとどまります! それをメイドF選手、一旦メイドE選手にリターンして……」 小悪魔「――E番さん、私に! 前線へと繋いでみせます!」
[801]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 11:54:47 ID:??? メイドE「は、はいっ! お願いしますッ!」 バシュウウウウッ! 実況「メイドE選手は、向かってくる天狗E選手に捕捉される一歩手前で再び中央へとパス! スカーレットムーンズの司令塔・小悪魔選手にボールが渡ります! そしてぇ〜!」 小悪魔「(大丈夫。 パチュリー様と練習してきたみたいに―――)行きます!」 グワアッ! はたて「ま――まずッ! カットに行かなくちゃ――文!」 射命丸「(マークの為とはいえ、少し下がり目の位置に居といて正解だったわね) ええ――ここで通させる訳には行きません!」 小悪魔「トップスピンパスよ!」 バシルルルルルルュウッ! 実況「小悪魔選手のトップスピンパスだ!」 先ほどの妖怪の山FCの得点を再現するかのように、選手と選手の隙間を縫って ボールを前に運んできた紅魔スカーレットムーンズは……ここでようやく堂々とした中央突破へと躍り出る。 しかし、その主役は先ほどまで警戒をされ続けたレミリアでも、圧倒的な突破力を持ったフランでも無く… これまで、他の妖精メイドと然程変わらぬ動きしか出来て居なかった小悪魔。 能力的に、スカーレットムーンズの主力に大きく劣る彼女はしかし、ことパス一芸にかけてはパチュリーにも次ぐ実力者。 その独特の回転がかかったパスは、決死のカットに出たはたてや射命丸をも超えて――無事にレミリアの足元へと届く。 レミリア「御苦労さま、皆」
[802]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2013/11/17(日) 11:55:47 ID:??? 実況「あっ……ああ〜〜〜!? そして小悪魔選手の見事なパスは残された中盤をも いとも容易く突破してしまい……バイタルエリア付近にてボールを確保します!」 静葉「(ここはブロックよりも、撃たせる前に取る方が勝機がある筈!)――穣子!」 穣子「ええ、お姉ちゃん! 次は私に任せて!」 ガシッ! バアアアアアアアアアアアアアアン!! 穣子「サッカーは……勝った芋が強芋よ〜〜〜!!??」 実況「そして足止めをすべく、穣子選手がオータムスカイラブで飛びますが――!」 レミリア「――邪魔よ!」 ガッ…… グググッ――――ドゴオオオオオオオオン!! 穣子「ふ、ふんぎゃあああ〜〜!?」 実況「レミリア選手の必殺ドリブル・不夜城レッドには敵わない〜! そのまま進撃を許してしまいます!」 そしてここから――レミリア選手がこのまま決めるのか!? それともフラン選手か!? はたまた上がって来ているメイドF選手に渡してからのスルーやポストプレイか!? 攻撃手段にかけては異様なまでに恵まれている紅魔スカーレットムーンズ! ここはやはり、2点目を決めてしまうのか〜!?」
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0ch BBS 2007-01-24