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【マラカナンで】キャプテン森崎46【釈迦寝ポーズ】
[106]2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/22(火) 22:21:58 ID:ICdUPQt2 かくして世界一を争う両チームはそれぞれの作戦会議を終え、決戦前夜を迎えた。 〜全日本ユース宿舎〜 決戦を前に誰もが武者震いをしていた訳ではない。 光あれば影あり。勝者の横には必ず敗者が居る。 余程の事が無い限り出番は有り得ず、それ故に士気を保てと言う方が酷な者達も居る。 石崎「はあ…分かっちゃ居たけど、やっぱり決勝でも出番なしか…」 高杉「当たり前だろ、今まで使われていないのに大一番で出られる訳があるか」 井沢「しょうがない、実力が全ての世界だ…ところで来生はどうしたんだ?」 滝「いや…昨日までは決勝戦でスーパーヒーローだ、とか言っていたんだが…」 来生「ぶつぶつ…僕が、一番上手くストライカーを、こなせるんだ…」 井沢「…遂にこいつも現実を思い知ったか。俺達の仲間入りって所か」 修哲出身の4人組と石崎はこの大会結局殆ど出番が無いまま終わりそうだった。 彼らはサブメンバーの中でも一番期待されていないグループなのが明らかであり、 ずば抜けて楽観的だった来生ですら最早自分を誤魔化せない程である。 滝「結局何がいけなかったんだろうな?俺達だって日本一になって、日本代表になって… そこが限界だったんだろうか?後ちょっとの差がどうしても埋められないんだよな…」 高杉「知るかそんな事。あの若林さんですらサブに追いやられてあの森崎なんかが 正GKでキャプテンでプロになってやがるんだぞ。何がいけなかったなんて俺が知りたい」
[107]2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/22(火) 22:23:31 ID:ICdUPQt2 石崎「そういえば南葛小の頃はお前らに0−30でやられてたりしたんだっけ。 今までよく考えなかったけど、あの頃から考えりゃ夢にも思わない程出世したもんだ…」 高杉「下を見てたらキリが無いぞ。代表選考から漏れた佐野やら反町やら沢田やら、 長野やら岩見やら…あいつらは俺らを羨ましがっているだろうさ。ま、上を見てもキリがないけど」 井沢「…だからと言って、そんな理屈で諦めて堪るかよ!」 滝「井沢?」 それでももういいと自棄にはならないのは、彼らもまた日本代表たる証だろう。 井沢「確かに俺は今のチーム内のMFとしてはビリッケツだろうさ。それは認める。 だけど何時までもそのままだなんて誰が決めた!日本代表になれたら試合に出られなくてもいい… そんなカッコ悪い事を思う位なら死んだ方がマシだ!まだサッカー人生は長いんだ、俺は絶対に返り咲くぞ!」 滝「…いやまあ、その覚悟は立派だし俺も同意見なんだが…お前の場合はちょっと無謀過ぎないか?」 石崎「よりによって翼に対抗心燃やしてるんだから、ある意味来生より身の程知らずだぜお前」 井沢「な、なにィイイ!!」 高杉「(総合力では勝ってるのに、チーム単位で見るとこいつより来生や滝の方が役に立つって言うのがなんとも哀れだ…)」 だからと言ってその諦めの悪さが吉と出る保証など何処にもないのも日本代表と言う勝負の世界の掟である。 来生「速いボールが見えたり消えたりしている。あはは、速い…シュートかな。イヤ、違う、違うな…」
[108]2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/23(水) 22:01:12 ID:Ppkwvt+c 将来に望み得る栄光が物足りないと嘆く者も居れば、輝く未来への展望を喜ぶ者も居る。 とは言っても展望はあくまでも展望であり、未来が過去になるまでは安心など出来ないのだが。 葵「イヤッホー!やったぜ!」 赤井「…良いニュースだったっぽいな、その様子は」 葵「うん!インテルがトップに加えてくれるって!一軍!遂に一軍になれるんだ!」 山森「それは素直に凄いな…おめでとう」 新田「でも、試合に出場するまでが大変なんだろ?」 赤井「下手するとレンタル移籍要員だからなあ。浮かれてたら痛い目見るぞ」 葵「大丈夫大丈夫!なんとかしてやるって気持ちが大事なんだよ!」 ホテルの別所ではたった今インテルの首脳陣から電話で一軍昇格のニュースを伝えられた葵が 小躍りしながら戻ってきた。年下組の4人は自然と固まって行動する事が多く、今夜もそうしていたのだ。 赤井「はあ〜、楽観主義は努力の証とは言うが…お前のその気楽さは羨ましいぜ」 山森「赤井はサンプドリアからの知らせは特に来ていないのか?」 赤井「今大会あんまり活躍していないしな…後もうちょっとで上がれると思うんだけどな〜」 新田「お前は堅実に実績を積み上げるタイプだから大丈夫だろ。少なくとも既にクラブに居るんだから羨ましいぜ」 葵「あれっ、新田や山森も何回かスカウトっぽい人達と会ってたりしなかった? 賀茂のおっさんも毎日色んな名刺を色んな人達から貰ってきて配ってきているじゃん」
[109]2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/23(水) 22:07:05 ID:Ppkwvt+c 山森「ああ、一応沢山名刺は貰っているよ。でもなあ…」 新田「うん、でもなあがつくクラブが多いんだよな…」 既にある程度の格があるヨーロッパのクラブに所属している葵、赤井、若林の3人以外の全日本ユースの選手達は 連日連夜色んなクラブからスカウトを受けていた。しかし当然勧誘の数や質は選手によってまちまちであり、 今まで集めた名刺をテーブルの上に広げる山森と新田は苦笑を隠せない表情になっていた。 それらを眺めていくと葵と赤井の二人もとても微妙な顔になっていく。 葵「どれどれ?これはトルコ、これはスイス、これはポルトガル、これはロシア…うーん…」 山森「それらはまだマシな方だよ。他にもスコットランドとかベルギーとかギリシャとかあるぞ」 赤井「ん?これは…カタールだと!?これってまさか…」 新田「ああ、片桐さんも多分帰化選手狙いだろうからこれは止めておけ、だってさ…下手するとオイルマネーで 無理やりFIFA規則を捻じ曲げようとするスキャンダルの当事者になってしまうぞって言われたよ」 葵「うわっちゃあ…あ、でもリーグ・アンとかエールディビジのスカウトの名刺もあるじゃん! よく見たらブンデスリーガもプレミアリーグのもちょっとだけある!…あ、でも…降格圏内の下位クラブだね…」 山森「ああ。当たり前の事だけど、リーグの格が上がるとその分リーグ内の地位が下がるチームになるんだ。 賀茂さんにも有名リーグのチームなら何処でもいいなんて考えるなよ、チームになじめるかどうかや 降格の危険性も考慮すれば日本に居た方がずっとマシだって事も十分有り得るんだ…って力説された」 新田「なんか…世知辛いな、プロの世界って。選択肢がある分まだマシなんだろうけど…」 赤井「ま、まあ大丈夫だろ。ワールドユース決勝戦まで来たんだ、大会後にまたドバッと来るって」 一寸先は闇。光が続く保証はない。年下組はそれぞれ不安な夜を過ごしていた。
[110]2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/25(金) 21:33:38 ID:GmqirbB2 特に集まり易いグループが存在しない者達が結果的にグループを作る事もある。 政夫、和夫、次藤、早田、中里の5人はそんなグループだった。 次藤「ふー…流石に緊張してきて飯も喉ば通らんとね」 早田「おいちょっと待てお前何時も通り人の三倍は食ってたじゃねーか」 中里「実に美味そうに食うでゴザルな。力士も吃驚するであろう」 政夫「こいつと飯食ってると食欲が失せるんだよなー」 和夫「ダイエットしたい女にはモテるかもな」 次藤「なんやなんや、皆してワシをだごにして」 食欲がないと言いながらも人の数倍食べた次藤を他の4人で呆れて冷やかす。 そんな間の抜けた時間を過ごしていたのは5人とも明日を見据えて緊張していたからかも知れない。 政夫「俺は本当に食欲減ってたぞ。いや、スタメンじゃないけどさ…」 和夫「多分、明日も出番はないんだろうなあ…くそっ」 早田「仕方ねーだろ。お前ら二人一緒じゃないと出す意味がないんだから」 中里「一人で出来る事は他のFWが出来るからのう。それでは日向が居る限りは日の目を見れまい」 次藤「ばってん、明日の試合はとにかく一点が必要な場合もあるかも知れんばい?」 政夫「確かにそういう展開になりゃ俺達の出番もあるかも知れないけどよ」 和夫「チームが追い込まれた状況になるのを望むのは流石にしたくないぜ」
[111]2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/25(金) 21:34:46 ID:GmqirbB2 早田「まあ望むもんじゃねえな。けど相手はブラジル。いくら覚悟してもし過ぎって事はないぜ」 中里「その言葉の割にはお主は落ち着いておるな?」 早田「そりゃあ、今更一夜漬けの猛特訓でどうにかなる訳じゃないからな。落ち着くしかないだろ」 次藤「そうタイ。負けた時の事ば考えるより、勝った時の想像の方が楽しかとね」 政夫「勝った時…ブラジルに、勝って、優勝して、世界一か…うーん、想像しにくいな」 和夫「多分日本中からヒーロー扱いされるんだろうけど、それからどうするかって話だよな」 中里「勝って兜の緒を締める、でゴザルよ。それからは狙われる立場になるのだからな」 早田「狙われる立場か。良い言葉だぜ…倒すべき奴らが自分から来てくれるんなら楽でいいや」 次藤「Jrユース大会で優勝しても世界的にはマグレばし思われていたとね」 政夫「思えば日本サッカーも随分変わったモンだなあ」 和夫「三年前はワールドカップアジア予選敗退のニュースでガッカリしてたのになあ」 次藤「ワシらが変えたとね。新時代と言う奴タイ」 早田「次の目標は、日本はワールドカップに出て当たり前って言われる様になる事かな」 中里「(スポーツ忍者の夢も現実となりつつある。さすれば世界中の美女達の裸体も…フヒヒ)」 ブラジルを恐れつつもその恐怖を乗り越え糧とする。 そんな作業に勤しむ彼らの雰囲気は意外な程に和やかだった。
[112]2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/29(火) 23:58:16 ID:/yOKgAsY チーム内の役割が近いスタメン組がグループを作る事もある。 中盤と中盤からやや後ろでプレイする事が多い岬、三杉、松山、中山の4人は今夜ロビーで集まっていた。 今夜の話題は日本に置けるプロサッカーの欠如と、それが変わりつつある手段だった。 松山「日本に…プロサッカーリーグ!?」 岬「うん、さっき片桐さんに聞いてみたんだ。そういった動きはありませんかって」 中山「そうしたら…どうだったんだ?」 岬「まだ何かハッキリ話せる段階じゃないけど、既に日本サッカー協会は色々準備しているそうだよ。 Jrユース大会優勝だけじゃ足りなかったけど、ワールドユースでここまで来たら効果抜群みたい」 三杉「日本には既にJSLがある。それを発展させる形で本格的なプロリーグ設立も可能だろう」 松山「マジかよ…何時かは出来るだろうと思っていたけど、こんなに早いとは思っていなかった…」 中山「有り難い話だよ。サッカーが強い国はプロサッカーリーグが必ずあるからな」 三杉「だが、あるだけではいけない。ちゃんとレベルの高いリーグとして運営される事が重要だ。そうだな… ここは君の意見を聞きたいな、岬くん。日本がハイレベルなリーグを作り、維持するのは何が重要だと思う?」 岬「僕かい?うーん、難しいテーマだなあ…(三杉くんは頭が良いから迂闊な事言いたくないし)」 三杉「ゆっくりでいいよ。どうせ就寝時間まで長いし、欧州リーグを見る機会があった君の視点は かなり参考になりそうなんだ(今、警戒したな。彼は自分の頭の良さをひけらかすリスクを良く知っている様だ)」
[113]2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/29(火) 23:59:46 ID:/yOKgAsY 松山「そうだな、俺も聞いてみたいよ!岬の話なら参考になりそうだ!」 中山「(岬は頭も人望もあるタイプだからなあ。引退したらサッカー協会でお偉いさんになるかも)」 岬「そうだね…(しょうがないな。三杉くん相手には下手に隠す方が怪しまれそうだ) 人口、経済力、交通網等はもう十分に整っていると思う。そして僕たちの活躍でサッカー人気が 急上昇しているのも間違いない。だから設立そのものは簡単だと思うんだ」 松山「設立は、って事は…運営が難しいのか?」 岬「うん、そうだよ。サッカークラブ運営ってお金がかかるからね。スポンサーは必須だし、 チケットやグッズの売上も重要だ。欧州のクラブはこれらが上手く行かずに経営難に陥る事も珍しくないよ」 中山「そうなのか…あ、そういえば貧乏クラブで苦労した選手の自伝とかあったな」 三杉「南米では欧州以上にそれらの特徴が顕著らしいね。日本人の場合元から生活レベルが高いから 設備をおろそかにする訳にはいかない。初期投資に見合う健全な経営が求められていくだろう」 岬「だからちゃんとお金が儲かる体制が必要だろうね。それには大勢のサポーターがお金を出してくれるのが 一番なんだけど、それだと年に数回の代表戦で活躍しているだけじゃ駄目だと思う。 設立段階である程度以上のレベルのサッカーを見せ、そこから代表戦で活躍する選手がどんどん出てくる様に ならないとお客さんに飽きられちゃうんだけど…元がJSLだから、いきなりレベルを上げるのは難しいかな…」 松山「ああ、JSLはなあ…高校サッカーや大学サッカーと大してレベルが変わらないんじゃ…」 中山「確か、お前と岬はアジア予選前にJSLのチームで練習していたんだっけ」
[114]2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/30(水) 00:01:17 ID:DWEY3JPI 三杉「確かに既存の選手達だけでは、サッカーだけに専念出来る環境を整えても劇的な成長は難しいだろうね。 僕は外国人選手を多く入れるべきだと思う。世界の基準を肌で知り、それらを上手く取り入れたクラブが リーグ内で優位に立てると言う状況を作れば選手達もクラブも急速なレベルアップを強いられるだろう」 松山「なるほど、そんな手段もあるのか…ああでも、追いつけないクラブも出てくるよな? そういうのはどうするんだ?二部リーグを作って、昇格と降格を争わせるのか?」 中山「そういえば有名なリーグは必ずいくつかのレベルに分けられているな…これもきっと重要なんだろうな」 三杉「そう、それがいいだろう。敗者の受け皿と屈辱を用意しつつ、新規の競争相手でリーグのマンネリ化を防ぐのに効果的だ」 中山「…気がついたら随分具体的な話になってきたな。俺達が決める側じゃないのに」 松山「あっ…でも俺達だってもう当事者だろ。俺達の活躍に日本サッカーの未来がかかっているんだから」 岬「日本サッカーか…フランスに住んでいた頃は、馬鹿にされるばっかりだったなあ」 三杉「もう時代は変わったのさ。僕たちは世界サッカーの秩序に革命を起こした。次は革命後にどうすべきか、だ」 中山「全国大会に出る為に必死になっていたのが遠い昔みたいだ…不思議な物だな (そう…俺はとうとうここまで来た。森崎の背中が遠ざかるのを見るだけじゃなくなった…長かった…)」 松山「(よーし、故郷に特大の錦を飾るぞ!それで…きっと藤沢と…)」 彼らは歴史の当事者達である。 彼らの世界への挑戦は、自国を大きく変貌させようとしている。
[115]2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/01(木) 00:24:44 ID:EFIEpwVQ それぞれの事情でチーム内から孤立している者達も居る。 日向と若島津は仲が良い者がおらず、彼ら自身も親交など求めていなかった為この時も二人きりだった。 日向「若島津、お前はこの大会の後はどうするつもりだ?」 若島津「はい、いくつかそれなりのクラブから接触されていますがあまり有望な候補はありません。 ある程度の妥協は必要となりますが、選手を育てて売るタイプのクラブに行こうと思っています」 日向「そうか…言うまでもないが、俺は最初からビッグクラブを狙うぞ。既に列が出来ているからな」 若島津「そうですか…そうでしょうね」 日向「若島津、今更俺から慰めだの激励だのつまらん物は期待していないだろう。 俺はお前を利用する。お前は俺を利用する。それが俺達の関係だったし、これからもそうだ。 周囲は仲良くしているんだと捉えるだろうが、価値観と人生観が似通っているだけの話だ」 若島津「はい。貴方も俺も自ら望んで戦いに明け暮れる修羅です。今俺達の力の差、 立場の差は歴然としていますが…いずれは貴方の首を貰い受けに行きますよ」 日向「それでいい。それが勝負の世界の鉄則だ。どんな屈辱にまみれようとも、 どんな強敵が表れようとも、最後に生き残った奴が勝ち…これだからサッカーは止められんぜ」 若島津「他者を屈服させる喜び…チームスポーツなのにそれがある。堪りませんね」 スポーツマンシップと言う言葉を鼻で笑いたがるこの二人は上機嫌だった。 望んで修羅道を歩む彼らの先にも栄光が見いだせない訳ではない。 勝負の世界に身を置く者達は誰しも多かれ少なかれこの様な覚悟を強いられるのだから。
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0ch BBS 2007-01-24