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【マラカナンで】キャプテン森崎46【釈迦寝ポーズ】
[44]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/08(土) 00:10:25 ID:MmNRyPYQ ドイツメンバー『ぽ、ポブルセン!?』 ブラジルメンバー「くそっ、まだかよ!?」「いい加減にしろーっ!」 ポブルセンはこぼれ球に反応した。怪我を押した上での激戦で彼の疲労はシュナイダー達と比べても 遜色がない程だったが、みなぎる負の感情が足の痙攣も破裂しそうな心肺も無視させていた。 また彼だけはエースのシュートが防がれたショックを感じず、むしろざまを見ろとすら思い、己の手柄のチャンスと見なした。 味方を信じると言う概念がなく極めて自己中心的な彼の性格が皮肉にもドイツに息を吹き返させようとしていたのだ。 シュナイダー「………!」 それは未だ立つ事が出来ないシュナイダーも同様であり、なんとか立ち上がらねばと言う 焦りに支配されていた彼の頭を冷やし、周りを観察する余裕を与えた。 そして彼は見た。 サイドワインダーを顔面で防いだ為にグロッギーになって立ち上がれないディウセウの姿を。 大量の汗をしたたらせ、ガクガク震える膝を必死に叱咤しているゲルティスの姿を。 最早この二人に頼れなくなった為とにかくボールの確保しか考えられない他のブラジル選手達の姿を。 シュナイダー「押し込め!ブラジルはボロボロだ!」 ドイツメンバー『!!!』 シュナイダー「俺たち以上にだ!誰でもいい、押し込めーーーっ!!」 ブラジルメンバー『!!!』 シュナイダーはストライカーとして自分が決めるのではなく、キャプテンとして誰でもいいから決めろと檄を飛ばした。 カルロス「くっ…シュナイダーめ…!」 それはこぼれ球に追いつこうと走り回りながらも運悪くプレイに絡めないでいるカルロスが最もやって欲しくない事だった。
[45]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:19:23 ID:RsHIX4qs 放送「ふ、防いだーーーっ!!ファイヤードライブをゲルティスくんがなんとかセーブ! これで今度こそ命拾い…ではないっ!?ポブルセンくんがねじこみに…」 ポブルセン「ァアアアアアアアアアアアアア!!」 バッ! そんなシュナイダーの激がポブルセンには聞こえたか、聞こえなかったか? どちらにしても彼の意思には影響がなかった事は間違いない。 彼は足の痛みも焼け付く様に重く苦しい息も全て無視しボールに向かって 足を伸ばし、強引で不恰好なボレーシュートを撃とうとした。 ドトール「くぉっ!」 バッ! ボコォン! ポブルセン「キサマァアア!」 しかしこの時はドトールの必死のクリアがかろうじて割って入る事に成功し、ボールをこぼす事に成功した。 ただしそれにホッとしている暇はブラジルには与えられない。両チーム共最後の執念でボールに詰め寄ろうとしていたからである。 カペロマン「うおおおっ!」 グワアアアアッ! バッゴォオオオオオオ!! 放送「ポブルセンくんのボレーシュート…はドトールくんが阻止!しかしカペロマンくんが走る!」
[46]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:20:38 ID:RsHIX4qs そしてこの一刻千金の場面でいち早くこぼれ球にかけこみ足を振り上げたのはカペロマンだった。 最早サイドに居る意味などないと割り切り、最後の力でPA内から強引にサイドワインダーを放ったのだった。 ギュイギュイ…! ゲルティス「………!!」 そんな近距離から放たれたそのシュートは普段の派手な横揺れもカーブも鳴りを潜め、 純粋な威力もカペロマンの体力切れで落ちていたが、同じく体力が尽きそうになっていた上に ファイヤードライブのセーブ直後で体勢を整えきれていなかった今のゲルティスには十分な脅威だった。 ゲルティス「ハァアアアア…!」 バッ! バシィイイイッ! ガコォオオオン… カペロマン「嘘だろ!?」 それでもゲルティスは咄嗟に飛びつき、ボールを下から掬い上げて ゴールバーに跳ね返させる事に成功した。だがその代償は彼に残された全てだった。 バゴォオンッ!! ゲルティス「ッ!!」 ドサッ… なりふり構わぬセービングの結果額からゴールポストに衝突してしまった彼は 体力の限界の上に頭部への衝撃で意識を朦朧とさせ、力なく崩れ落ちてしまった。 ゲルティスは最早まともなセーブは出来ないのは誰の目にも明らかだった。
[47]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:22:01 ID:RsHIX4qs 放送「サイドワインダー!ゲルティスくんこれも弾き…あああっ!?」 マーガス「もらったぁああああ!!」 バッ! そして高い浮き球には当然それを得意とするマーガスが飛びつく。 普段は威力のなさ故に彼自身が得点を狙う事はほとんど無いが、 ディウセウとゲルティス両方がダウンしている現状では難なく決められる。 アマラウ「やらねえよぉおおおお!!」 バッ! ガコッガココッ!! マーガス・アマラウ『ぐあっ!』 ポーーーーーン! ここでブラジルの命綱となったのはアマラウだった。 マーガスと同じく高い浮き球に一目散に飛びついた彼は互角の衝突を演じ、 幸運にもルーズボールをペナルティエリアの外に向ける事に成功した。 放送「マーガスくん、とアマラウくんが激突!こぼれ球は…ペナルティエリアの外へーーーっ!!」 ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!! あまりのハイペースに置いて行かれそうになっていた実況と具体的に喋る前に 騒ぐ事しか出来なかった観客が喜びに沸き立つ。とうとうピンチを脱出できそうだと。
[48]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:23:10 ID:RsHIX4qs シュナイダー「!!!」 それは未だ立ち上がれていないシュナイダーにとっては悪夢の光景だった。 シュナイダー「(そんな…あれだけ撃ったのに決まらないのか…!? ブラジルの守備陣を完全に粉砕したのに、後たった一発でいいのに、 その最後の一発を撃てる前に試合が終わってしまう………!!) 彼の体感時間が極めて遅くなり、周囲の現状を一瞬で理解させてくれる。 彼の高い集中力と観察力がなせる業だが、この時ばかりは拷問にしかならなかった。 何処に希望を探そうとしても、絶望ばかり見えてくるからだ。 シュナイダー「(フライハイトは…立ってはいるが、もう走れていない…歩いているだけだ… ポブルセンは…本人は疲労を自覚していなくても、体の動きそのものはまるでスローモーションだ… カペロマンは…ここも変わらない、痙攣した足で走ろうとしても到底間に合わない… そもそもこの3人はもうマトモなシュートは撃てない…マーガスは!?あいつならまだ余力が… ダメだ…!アマラウともつれて倒れ込んでいる!間に合わない、間に合わない、間に合わない!!)」 ブラジルの守備陣は完全に粉砕された。だがドイツにも最早攻撃陣が残っていなかった。 その現実が時間切れの敗北と言う悪夢を刻一刻とシュナイダーの眼前に近づける。 それでも尚諦めず、諦められず、シュナイダーはボールの行方に視線を戻したがそこにも絶望しかなかった。 ズシャシャシャーッ! ガガッゴッガッ! バシィーーーーーーーーーン!! カルツ「(ああっ…!すまんシュナイダー、すまん皆…!)」 シュナイダー「(ダメ…なのか…?)」 こぼれ球をフォローしたカルツは、ネイ、トニーニョ、サンタマリアの3人に囲まれ、突破を阻まれ、 ボールを更に後方に向けて高く跳ね上げられていた。最早カルツの突進すらなくなったのだ。
[49]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:24:44 ID:RsHIX4qs シュナイダー「!!!?」 だが更にボールの行方を目で追った時、シュナイダーはまるで予想していなかった物を見た。 ジェトーリオ「ふーっ!やーっとこれで終わりっと」 今度のこぼれ球に一番近かったブラジルユースの選手はジェトーリオ。上空から落ちてくるボールを 見上げるその表情は安堵と歓喜に満ちていた。やっとこれで終わる、やっとこれで勝てるのだと。 カルロス「ジェトーリオ!まだだ、前を見ろーーーっ!!」 ジェトーリオ「へ?」 ミューラー「ウォオオオオオオオオオオオ!!!」 バッ!バッ! だがまだ終わりではなかった。ジェトーリオがそれに気付いた時には遅すぎた。 ジェトーリオ「えっうそっちょっと待ってちょっと待ってぇえええええ!!?」 バコォオオン!ドゴオッ! ジェトーリオ「ぐべああっ!」 カルロス「くっ!くそォ!」 グルッ!ダダダッ! ミューラー「シュナイダー!立ちやがれ、この愚図野郎!立ってゴールを決めろォオオ!!」 シュナイダーが見た物。それはオーバーラップしていたミューラーが自分の頭上に向けてボールをヘディングで跳ね返した所だった。
[50]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:05:10 ID:U2tcOuNY 放送「あああああっ!!?ぼ、ボールが…ハイボールが、再びブラジルゴール前へぇええええ!!!」 観客「なんだとォーーーーッ!!?」「笛、笛はどうした!」「もうタイムアップだろ!」 「シュナイダーは倒れてい「そのまま座ってろ立つ「ゲルティス立てよ!」ウセウはもうダメか!?」 「クリア出来る奴が誰も「いやーーーーー!!」たれる撃たれるーっ!!」「神様助けて!」 絶対絶命。あれほど苦労して奪ったリードが最後の最後で不意にされてしまう悲劇。 実況も観客も遠慮なく悲鳴を上げに上げたが、それらはシュナイダーには殆ど聞こえなかった。 シュナイダー「(この高さ…ヘディングでは届かない、オーバーヘッドキックではなくては…なのに!)」 今の彼の意識を占めていたのは彼の上空に向かってくるボール、そして。 シュナイダー「(…くそっ…足が、足がっ!)」 いくら気力を振り絞っても悲鳴ばかり上げる己の体だった。 シュナイダー「(動け、俺の足!もっと速くだ!)」 このまま彼が蹴らずに見送ったらこのボールはわずかにゴールポストの横を逸れていくだろう。 シュナイダー「(19年間共に走り続けて来たじゃないか!こういう時の為に!世界を獲る為に!)」 故にどうしても立ち上がらなければならない。彼が立って、跳んで、蹴らなければ全てが終わりなのだ。 シュナイダー「(後1回だけ!後1回だけでいいんだ!それで休ませてやるから!)」 なのに彼の足は彼の叱咤に応えてくれない。立ち上がりつつは居る。だがそれが遅い。 これでも間に合うのか?もう絶対に間に合わないのではないか… 諦めたい。もう休みたい。 この試合何度も脳裏を掠めた思いが彼の闘志をいよいよ消そうとする。
[51]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:09:23 ID:U2tcOuNY シュナイダー「(…よし…ジャンプ、出来る!)」 彼の闘志は消えなかった。蝋燭の様に儚くはなっていたが、それでも苦難の荒波にかき消される事はなかった。 シュナイダー「(膝を曲げて…跳ぶんだ)」 バッ! 彼は諦めなかった。間に合わないかも知れない、と言う思いを焼き尽くした。 そんな事を考えている暇があったら動け、と言う彼らしい実にシンプルなロジックで。 シュナイダー「(体を回せ。足を振れ)」 グワッ… それはオーバーヘッドキックと言うにはあまりに弱く穏やか過ぎた。 ただ形だけそうなっているだけで、これをシュートと言い張るのはストライカーの名折れになるだろう。 それでもいい。ただコースを少し変え、ボールをゴールの枠に誘導すればそれでいい。 それで十分だと分かっていたシュナイダーは正確に動きタイミングと打点を合わせる事に集中した。 ジワッ… シュナイダー「(ぐっ…目が…!気にするな、もう関係ない!)」 間の悪い事に汗が目に流れ込みシュナイダーは目を瞑る事を余儀なくされたが、 それでも彼は構う事なく足を振り続けた。どうせもう見えようが見えまいが関係ない。 シュナイダー「(まだかっ…ボールを、蹴った感触は…まだか…!?)」 永遠に感じられる暗闇の刹那、シュナイダーは最後まで不安と戦い続けた。 結局間に合わなかったかも知れない。ひょっとしたら早過ぎたかも知れない。 飛び上がる地点を間違えたかも知れない。無数の不安が彼を苦しめ続ける。
[52]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:12:39 ID:U2tcOuNY そしてそれが終わった時、シュナイダーは確かに感じた。 ガスゥウウウウッ! シュナイダー「!!!」 それは確かにボールを蹴った感触だった。思ったよりも重く強く感じたそれは 間違いなくボールの芯を捕らえているのが彼には分かった。これなら狙い通りに飛ぶと。 シュナイダー「(やった!…あ、あれ…)」 だが彼にはそれ以外の事は分からなかった。暗闇の中で何も見えず、極度の集中の弊害で何も聞こえず、 そして限界を超えた疲労の代償か今や触感すらなくしていた。 シュナイダー「(こ、これは…俺は、気絶しようとしている…?)」 体感時間ではそろそろ地面に落ちていて良い筈。なのに何時までも何処までも 落ち続けていく感覚が終わらない。彼の意識は自分が気を失おうとしている事を認識した。 シュナイダー「(………ダメだっ!!)」 シュナイダーはこれにも抗った。 シュナイダー「(まだ延長戦があるんだ!俺のゴールで獲得した延長戦! 俺はその延長戦を制し、決勝戦に進み、日本を倒し…世界を獲るんだ!!)」 彼は最後の最後まで諦めなかった。戦い続けた。 シュナイダー「(俺は…俺はまだ戦える!戦うぞっ!)」 不安と絶望の闇を払い続けた彼の炎は同点ゴールで勢いを取り戻し、無意識の海すら蒸発させた。 誰にも知られる事のない、彼自身良く覚えていないであろう孤独な戦いに勝った。
[53]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:17:07 ID:U2tcOuNY ガバッ! シュナイダー「俺は…俺は、まだ…!」 カルツ「シュナイダーちゃん…」 彼が意識を失いかけていたのはほんの数秒間だった。 最初に彼が見たのは涙を流すカルツの顔だった。 シュナイダー「(どうしたカルツ…嬉し泣きだなんて、案外涙もろい奴だな)げほっ、げほっ」 シュナイダーはカルツに声をかけようとしたが出てくるのは咳だけだった。 同点ゴールくらいで喜ぶな、まだ試合はこれからだと言おうとしたが肺と喉と口が言う事を聞かなかった。 フライハイト「シュナイダー…大丈夫か…」 シュナイダー「(くそ、喋れん…ん?フライハイト、お前もか…?)」 ドサッ… シュナイダー「(ポブルセン?なんだ、何故倒れる…)」 彼が何かおかしいと気づいたのはフライハイトも涙を浮かべ、更にポブルセンが白目を剥いて倒れるのを見てからだった。 ドイツメンバー「シュナイダー…」「すまん…」「俺たちが、何か出来ていれば…」 シュナイダー「(なんだ…何故謝るんだ。なんで皆泣いているんだ?)」 ブラジルメンバー「ヒャッハー!やったぜ!」「キツかったー!」「終わった終わった。ふぅ」 ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
[54]2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:24:36 ID:U2tcOuNY シュナイダー「(なんだ!?何故だ…何故ブラジルが喜んでいるんだ!?)」 間も無く彼は気付いた。過酷な現実に。だがそれを受け入れられなかった。 それでも首は本能的に動いてしまう。受け入れ難い現実を確認する為に。 ブラジル 3−2 ドイツ 電光掲示板には確かにこう書かれていた。 シュナイダー「………」 いくら見ていてもそれが変わる事はなかった。時計も試合終了を示していた。
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0ch BBS 2007-01-24