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キャプテン森崎外伝スレ12
[936]日はパリより(仮) ◆FeE8zKQZ4w :2017/10/09(月) 13:37:38 ID:F+3IlQoY かつてきれぼしサッカー作者として森崎板の末席で投稿していた者です。 以前にチャット等でひっそりと語っておりました、 岬太郎主人公の外伝の話の筋がようやく見えてきましたので 穴だらけの大風呂敷を全開に広げてみました。 なお遅筆ぶりは相変わらずであり、早くても 週1日投稿できるかというところですので、どうかご容赦願います。
[937]森崎名無しさん:2017/10/10(火) 23:23:46 ID:??? 期待
[938]日はパリより(仮) ◆5qvYBJdbJQ :2017/10/14(土) 21:45:16 ID:pD/LglpY 日はパリより(仮) 第1章 パリ留学編 第1話『ヴォルテール通りの富士山』
[939]日はパリより(仮) ◆5qvYBJdbJQ :2017/10/14(土) 21:47:46 ID:pD/LglpY さんさんと光照らす午後8時、たしか1983年の8月18日だったか、 僕と父さんはパリのマゼンタ通りにて渋滞につかまってしまっていた。 周りには日本では滅多に見かけられなかったルノー、プジョー、シトロエンが見飽きる程大勢ひしめいている。 運転手「いやーすみませんねえ。わざわざ地球の裏側から来てくだすったのに、 さっきからルノーのケツばっかり見させられちゃって」 一郎「いえいえ、私達外国人にとっては目にするもの耳にするもの全てが新鮮な驚きですよ」 父は運転手と四方山話をしているが、僕は話に加わるのはおろか、 もはやパリの街並みを眺める気力も無くなり、ぼんやりと窓の外へ顔を向けるばかりだった。 今まで日本中を転校してきたときはこんな事などなかったが、成田からシャルル(※)までアンカレッジ休憩含めて20時間、 人生初の飛行機や外国語や大空の遠景に興奮しすぎて、すっかり気力を使い切ってしまった。しかも悪い事に、 運転手「しかしお客さんも運が悪いですねえ、ちょうど地下鉄がストやってるときに来るなんて」 これである。後で分かった事だが、パリではストライキが本当に本当に本当に、飽きもせず発生する街である。 フランス自体がストライキの多い国らしいが、僕達は来訪初日にてフランス現代文化の一端を体験し、 その代価としてタクシーに乗らざるを得なくなり、おまけとして渋滞まで頂戴されるはめになってしまった。 (※):シャルル・ド・ゴール国際空港
[940]日はパリより(仮) ◆5qvYBJdbJQ :2017/10/14(土) 21:50:08 ID:pD/LglpY 僕は丘に立っていた。 いつの間にか郊外に移動していたのか。どこか知らぬ小高い丘の上に僕はいて、 暗くなった夜空の向こうにパリの街の光が煌々と輝いていた。 僕の傍に父さんはおろか人っ子1人もいない、ただ1人だけでパリを眺めている。 何の気もなく突如として、3つの太陽がパリから湧き上がってきた。 水滴の着地を逆再生したようだというのが直観である。不思議な事に 3つも火の玉が上がっても空は少しも明るくならず、ぼんやりと暗い空のままだった。 3つの太陽はどれも同じ大きさではない。1つは握り拳ほどもある大きさだが、 もう2つは普段見る太陽より少なくとも1周りは小さい。そのうちの1つの小さい太陽が 不意に大きな太陽の周りに沿って回り始め、大きな太陽はお供を連れて東の空へと飛び去ってしまった。 2つの太陽が地平線の彼方へ消え去った途端。夜空は急に明るくなり、瞬きする間によく晴れた青空へと変わっていた。 残った太陽はいつの間にか真上で光っていたかと思うと、 パサリと音を立て小石が落ちるように呆気なく足元の草むらに転がっていた。 腰をかがめ、手を伸ばして取ろうとすると、地面が揺れはじめた。 (逃げるな!) 倒れるように太陽へと飛び込む。熱い!胸に!胸に! 太陽は何の違和感もなく体に溶け、ガーッと全身を熱で叩きはじめた。 全身を突き刺すような圧で身動き一つもでき 一郎「太郎!」 岬「……んう」 父さんが肩をゆすっている。周りには荷物と天井とリクライニングシートが見える。
[941]日はパリより(仮) ◆5qvYBJdbJQ :2017/10/14(土) 21:51:46 ID:pD/LglpY 一郎「相当疲れていたみたいだな。珍しくいくら呼んでも起きなかった」 岬「……うう、ん」 どうやら僕は寝ていたようだ。先程のあの脈絡ない出来事は夢だったらしい。 岬「……ここは?」 一郎「ちょうどルーブル美術館を通り過ぎるところだ。これからセーヌ川を渡る」 目覚めたばかりでまだ感覚も鈍い。著名な美術館を見逃した事より、間抜けな顔して 潰れていた事が頭に残り、気恥ずかしかった。 岬「もう着くの?」 一郎「いや、ただもう渋滞は抜けた。あと十数分ぐらいで新しい家に着く。どうだ太郎、パリの街は」 興奮気味に息子へ語りかける父さんだ。芸術の都に足を入れて画家の血が騒いでいるのかもしれないが、とにかく僕は眠い。 適当に返事して話を切り上げよう。そう思ったのだが。 岬「……日本とは大違いだよ。全く違う」 一郎「そうだな……いや、そうでもないな。見ろ太郎、富士山だ」 岬「富士山?」 思わぬ単語に興味がわき指さす方向へ頭を向ける。外には赤いネオンサインでこう書かれていた。 ATARI FRANCE Inc
[942]日はパリより(仮) ◆5qvYBJdbJQ :2017/10/14(土) 21:53:54 ID:pD/LglpY 岬「(アタリ?日本語かな?それにあのマーク)」 社名とおぼしきATARIの単語の上に輝く富士山。縦線の上端目指して接しようとする双曲線が 稜線を描く富士山が、欧州ど真ん中のパリの街中で鮮烈に輝いていた。 岬「運転手さん、ここはどこ!?」 慌てて運転手に今の場所を問いかけた。今聞かなければ二度と行けないような気がする。 そんな気が何故かガッと自分に襲いかかり、不安さえ感じていた。 もっとも運転手は僕らのやり取りを聞いてなかったのか、ヴォルテール通りだと一言告げただけで、後は何の情報も語らなかった。 岬「ヴォルテール通り……」 僕は口につぶやいた後、上体を起こして周りの風景を凝視し、記憶に少しでも留めようとした。 あのアタリマークが強烈に脳に焼き付いていた。 どうにかしてもう一度、あそこへ行かなければならないような気がした。 僕とアタリとの出会いはこうして始まった。
[943]日はパリより(仮) ◆5qvYBJdbJQ :2017/10/14(土) 22:00:51 ID:pD/LglpY と、いう訳で第1話は終わります。 サッカーのさの字も出てきませんが今は序章、 今しばらくお待ちください。
[944]日はパリより(仮) ◆5qvYBJdbJQ :2017/10/22(日) 11:03:21 ID:GTlyY+dY 第2話『パリ日本人学校』 パリ到着から2日後、新居の片づけを終えた後に僕は1人で日本人学校に向かっていた。 いつものように僕1人で入学手続きを済ませるためである。 堂々とした大通りや整然とした路地を幾度も通り抜け、グルーズ通り24番地のパリ日本人学校へたどり着いた。 Institut Culturel Franco-Japonais 仏日文化学院 厳めしいラテン文字と漢字の金文字が正門であろう、 扉の上のアーチに輝いている。 日の丸とトリコロールが掲げられたアーチをくぐり、雑草に覆われた中庭を横目に通り過ぎて、学校のドアを開けた。
[945]日はパリより(仮) ◆5qvYBJdbJQ :2017/10/22(日) 11:05:19 ID:GTlyY+dY 教員「気を付けて、この学校は昼でも暗いから」 手続きを全て済ませた後、学校の先生に連れられて学校内の案内を受ける。 先生が言った通り、確かに校内は暗い。 今は午前10時、パリの空は快晴で青空が広がっているはずなのだが、 校舎の三方をアパルトマンに囲まれているため、まるで曇り空の下のように暗い。 窓のない箇所のところどころ廊下に電灯が灯っているところさえある。 空気がじめじめとし始めたような気がする中、知ってか知らずか先生の次の言葉が追い打ちとなった。 教員「学校内では静かにするように、大声で騒いだり、廊下で走ったり。でないとひどい目にあいますから」 岬「ひどい目、ですか」 教員「そう。近所の方から裁判起こされます」 岬「えっ」 まるでさりげなく先生の口から裁判などと物騒な言葉が飛び出て、僕はドキリとした。 教員「既に1回訴えられましてね、子供の声がうるさいって。 あの時はひどかったですよ。先生達も証人に立ったりして授業もままなりませんでした」 岬「えええ……」 何十回も転校して初めて聞いた裁判という単語に呆然としかけたが、嫌な予感が噴出し始めて先生に質問をした。 岬「あの、すると、この学校では部活動はできないのですか?校庭はこの学校に無いようですし…」 教師「校庭ならこの学校にもありますよ。岬君も校舎に入る前に通ったはずです」 岬「入る前…あっ」 あの中庭か。そう口に出そうになった。そう思う程今まで見てきた日本の学校の校舎とこの学校のそれは違いすぎる。
[946]日はパリより(仮) ◆5qvYBJdbJQ :2017/10/22(日) 11:08:03 ID:GTlyY+dY 校庭というものはあんな風に膝下まで草は伸びていない。 それに周りが建物で囲まれているため暗いだけでなく圧迫感があり、 こんなところで走り回ると息が詰まりそうな気がする。 それだけなら慣れればいいだけだろうが、ひたすら狭いというのはどうしようもないだろう。 25メートルプールを2周り小さくしたぐらいのスペースしかない空間が校庭とは。 先生に言われてもう1度窓の外を見たが、やはりあれが校庭には見えなかった。 いきなり学校生活に暗雲が立ち込めたが先生には意も介さず、追撃の一言を浴びせる。 教師「だからここでは体育の授業はできません。 学校のバスでブローニュの森のシュッセ運動場まで移動しないといけないのです」 げっ、とつぶやきを喉の奥で抑える。この学校からブローニュの森までどう見ても1キロは離れている。 運動場までなら倍はかかるだろう。パリでは広場でのサッカーは望めないかもしれない。 岬「(まあ、いい)」 学校のサッカー状況は悲惨だったが、僕はすぐに思い直した。 どうせサッカーは足とボールさえあればできるスポーツだ。もう少しパリになれたら パリ中の中学校をわたって挑戦して行ってもいい。
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0ch BBS 2007-01-24