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【Other】鈴仙奮闘記23【World】
[448]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:32:10 ID:??? ★彼の物の名は→ クラブA ★ クラブ→さとり「……今日は、対戦をありがとう。 ――完敗でした」さとりだった。 鈴仙「えっ。 さ、さとりさん……? ――てっきり、師匠の所に行っているものかと」 さとり「……この試合、実質的に指揮を執っていたのは、どうやら貴女のようだったから。 ――キャプテンとして、挨拶に来ました」 鈴仙に声を掛けて来たのは、つい先程まで地霊殿のゴールで気丈にチームを指揮していた地霊殿の令嬢、古明地さとりだった。 未だ僅かに息が荒く、肩を少し上下させながらも、普段通りの無表情で手を差し出す物腰は、 確かに小さく幼い――見た感じ、てゐや佳歩、つかさ達とそう変わらない筈なのに、どこか大物っぽい雰囲気を感じさせる。 鈴仙「あ、これはどうも。 でも……私なんてさとりさんと比べたらまだまだで」 さとり「……それはどうも。 心が読めるとはいえ、やはり礼儀ある対応をされた方が嬉しいです」 鈴仙「いやぁ、あははは……」 相手の物腰は終始穏やかで慎ましく、だがそれにも関わらず、鈴仙はさとりの君主としての気高い雰囲気に思わず恐縮してしまう。 周囲には核の力を取り込んだ従者や、鬼族でも最強の腕力を持つ任侠が居るにもかかわらず、 彼女がチームのキャプテンにして地底の管理者であるという事には、やはり理由があるようだった。 さとり「……そう恐縮しなくても良いですよ、どうせ心が読めますし、慣れてるので大体何を想われても平気です」 鈴仙「――うぅ。 そうは言われても、やっぱり私、緊張しちゃって……」 古明地さとりは、人の心を読む覚妖怪であり、嫌われ者が住む地底の中でも更に嫌われている卑しい妖怪。 そんなネガティブな偏見は、試合中の彼女の姿を見てとうに捨て去れたと思った鈴仙も、 やはりこうして相対してみると、どうしても苦手意識を感じてしまう。
[449]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:33:56 ID:??? 鈴仙「ちょっと失礼、動きすぎで汗が垂れて来ちゃって……」 さとり「(――心を読めるとわかっていても、心に無い社交辞令を欠かさないのは染みついた習性かしら。 外界では社交辞令が大事とは言うけれども。 幻想郷では珍しい習性を持っているわね、この子……)」 鈴仙は堪らず、冷や汗を拭き取ろうとスカートのポケットに手を突っ込ませる。 さとりが呆れたような表情で鈴仙を見つめていたが、敢えて気にしない事にした。 スカートの生地では無い、何か布の感触があったので鈴仙はそれを取り上げる。 鈴仙「(あれっ、今日持ってきたのって白いハンカチだったっけ。 それにこのハンカチ、何だか妙に細長いような気がするけど……)」 さとり「……それ、ハンカチじゃなくてハチマキじゃない。 ――折角のハチマキを身に着けず、汗拭きに使うのは、何だか関心しませんね」 鈴仙「わ、わざとじゃないわよーぅ!」 ――ハンカチじゃなくて、何時か輝夜に献上する為に用意しておいた「愛のハチマキ」だった。 考えてみれば、このハチマキと鈴仙との付き合いもそれなりな気がする。 鈴仙「(最初は、無縁塚に何故か落ちていた「呪いのハチマキ」だったのよね。 それを、巫女やら厄神やらに助けて貰って、呪いを浄化して「愛のハチマキ」になったんだっけ。 ……最初に発していた呪いからして、このハチマキの正体も案外謎よねぇ……)」 鈴仙は心に無い苦笑いを浮かべ、あははと乾いた声を漏らしながらハチマキを焦ってしまおうとすると。
[450]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:35:03 ID:??? さとり「……ハチマキですか。 そういえば、あの松山君――最初は矢車君でしたか。 彼も最初、無縁塚で倒れていた時も、その右手に布の切れ端を堅く握りしめていたのだけれど。 ――それはひょっとして、ハチマキだったのかしら……なんてね」 鈴仙「……さとり、さん?」 さとり「ああ、いえ。 こっちの話ですよ」 ――意外にも、さとりがハチマキに対して食いついて来た。 どんな話題にも興味が無さそうに見えるさとりが、ハチマキを引き合いに松山/矢車の話を出すのは、鈴仙にとって少し新鮮だった。 そして、先程のさとりの話にどこかひっかかりを覚えていたのも事実だった。 鈴仙「(私がこのハチマキを拾ったのは無縁塚。 さとりさん達が、松山君達を見つけたのも無縁塚。 そして、松山君の手には、ハチマキのような布の切れ端が握られていた……? まさか、何か関係があるのかしら? 私のハチマキと、松山君達とには――?)」 外界の色んな不要物が流れ込んで来る無縁塚において、布きれが混じりこむ事は日常茶飯事。 鈴仙がハチマキを拾ったという事実と、松山/矢車の手にハチマキのような布片が握られていたという事実は 恐らく何の関係も無い、偶然の産物である可能性が高い。 しかし、あのハチマキが最初鈴仙に見せたどす黒い風景と、松山がこの試合見せたどす黒い感情とには、何か共通点があるような気がする。 ――と。 そこまで鈴仙が考えを巡らせていた時だった。 松山「……も、もう……もう! 限界だよあにきぃ……!!」 ガクッ……バタッ!
[451]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:37:01 ID:??? さとり「――松山君っ!? どうしたんですか!?」 放送「あっ、とぉお〜〜っ? 松山選手、再びフィールドに倒れ込んでいます! 試合中を見る限り、彼の体力にはまだ余裕があったような気がしたのですが……一体どうしたのでしょうか!? 身体をくの字に曲げて、呼吸を荒げて苦しんでいます! 救護班も今松山選手に向かった〜〜!?」 鈴仙「えっ……!? まさか、急激な運動による心臓発作とか……!?」 永琳「――いや。 それならとっくに試合中にポックリ逝っているわよ、あの運動量とパフォーマンスじゃあ。 ……となると、肉体では無く。 どちらかと言えば心療内科の分野では無いかと思うのだけれど。 ――私、メンタルヘルスはちょっと苦手なのよね」 鈴仙「(すみませんけどそんなイメージがあります、師匠……!)――じゃ、じゃあどうすれば……!?」 永琳「……時間に身を任せる、かしらね。 精神に効く薬は私も知っているけれど、最高にして副作用の無い薬と言えば、時間だから」 お燐「お、おいおい……! 仮病とかだったら、ブン殴っちゃうんだからね……!?」 空「か、影山さん大丈夫!? まさかさとり様の虫妖怪除けネックレスの副作用で、虫妖怪になっちゃうんじゃ……」 さとり「私はそんな物騒な物を与えてませんし、勝手に黒幕っぽいキャラにするのもやめてお空。 ついでに彼の名前は影山じゃなくて松山よ。 ……影山だと、なんだか縁起が悪いじゃない」 松山?「……ぐっ。 ……ぅうううううっ。 ―――……はぁ」 救護班がまだ辿り着いていないにも関わらず、松山の様態は少しずつ快方に向かっていた。 ……向かっていたが、彼の身体は再び大きな変化が生じつつあった。 鈴仙「(松山君が……再び、矢車の姿に……!?)」
[452]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:38:09 ID:??? 彼の体は一回り大きくなり老けて、短い白髪は少し伸び、何故か着ている服まで丈長の黒コートに変わり行く。 その姿はもはや松山では無く、彼が試合前に採っていた姿――即ち、矢車想のそれだった。 永琳「(極度の解離性同一性障害者は、人格の交代を機にその姿までも変貌すると月の科学書には書いてあったけれど、 私も地上に降りてからだと、実際に見たのは初めてね……。 ただ、彼の場合は人格の交代というよりは、彼にとっての理想的ヒーローという殻の、『装着《プットオン》』と言った方が正確かしら)」 矢車「……はぁ。 満足したか、相棒」 松山(矢車の脳内)「(あにきぃ。 俺はこの試合でやっとわかったよ。 俺には兄貴しかいないって……! 時々イタイ電波女が兄貴の真似して擦り寄って来たけど! やっぱり、俺には兄貴しか……!)」 矢車「……そうか、そうか。 ……最悪だったなァ」 松山(矢車の脳内)「(うんっ、最悪だった! 地獄に相応しいドン底の真っ暗闇だったよ!)」 矢車は一人でボソボソと何かを呟いていた。 まるで、引っ込んでしまった松山と会話を楽しんでいるようだった。 さとり「……松山、君。 いえ、……今は矢車君ですか。 貴方は――」 救護班「――すみません、救護班です! 遅くなってすみませんっ!!」 矢車「……はぁ」 放送「あっと、ここで専属の河童達による救護班が到着したようです! 救護班のリーダー、キャプテンのさとり選手に事業を聞いています。 さとり選手は複雑そうな表情ですが、松山選手――いや、今は矢車選手と化した彼の容体を説明してるようですね」
[453]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:39:18 ID:??? さとり「……私ならば、彼の心を開かせる事が出来る――そう思ったのですが、今の私ではまだ駄目だったようです。 ええ、外傷ではありません。 ですが、ええ、可能ならば河童の診療所で検査をして下されば――」 救護班「そうですねー。 念の為に痛い栄養注射位は撃っておく位は……(ゲシィイイッ!)――って、ひゅいぃっ!?」 ゴロゴロゴロゴロ! ……ドガッ! 矢車「治療は不要だ。 ――それに、言っておきたい事がある」 矢車は元気な様子だった。 ――自分を治療しに来たらしい、救護班長の青髪の河童をけっ飛ばす程度には。 大きなリュックに治療用品を抱えていたらしい青髪の河童は、 荷物を吐き出しながらゴロゴロとサッカーボールのように、今や無人のフィールドを転がって行く。 そして救護班の中に、そんな彼女をフォローする者はいなかった。 矢車は、さとりの瞳を一直線に見据え、彼女を庇うように手を伸ばし。 怯える救護班や、戸惑うチームメイト達に対してこう宣言した。 矢車「この人は――俺が守る」
[454]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:40:27 ID:??? ヤマメ「えっ!? 何ソレ!? 告白!? キャ〜ッ! カッコ良いー……って、アイテテ」 キスメ「ヤマメは大やけどしたんだから。大人しくしてなきゃダメだよ……」(←桶修理中) 矢車「……………この人は、俺の相棒を守ってくれた。 だから、俺が――この人を守らなくてはいけない。 同じ、地獄の住民として」 不思議に浮ついた雰囲気になりかけた周囲を、矢車はそう静かに語る事でぴしゃりと収めた。 ただでさえ狂気と絶望に沈んでいる彼の表情が、悲壮な決意を帯びていた為に、 彼の宣言が単純な色恋沙汰では無い事が周囲にも容易に理解できた。 さとり「……私はやはり、殻に過ぎぬ貴方の心を読む事が出来ません。 ですが、そうで無くとも、私は貴方が何を言いたいか。 それが分かるような気がします」 矢車「…………」 矢車は押し黙って答えない。 さとりはこう続けた。 さとり「……その上で。 私は貴方にこう答えます。 『いいえ。 貴方も、彼を守って下さい』……と。 ――私には、仲間が居るから大丈夫だけど。 彼には、未だ貴方と――この私しかいないから。 それと……」 矢車「それと……?」
[455]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:41:33 ID:??? さとり「――勇儀さん、ボディに一発入れといてください」 勇儀「うっし! 了解だ古明地!」 ガシッ、ボガァァァァアアアアアアアアアアッ!! 矢車「うわぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 ギューーーーーーーーーーーーーン、ドガーーーンッ!! 放送「矢車選手、吹っ飛ばされた〜〜〜!! 等速直線運動の如く真っ直ぐ平行に空を飛び! 先程救護係の青髪の河童が転がるフェンスに激突!」 さとり「……善意でやって来た救護の方を、言い掛かりみたいな理由で蹴っ飛ばさないで下さい。 ただでさえ乱暴者の集団、という地底のイメージが、余計に悪くなっちゃうじゃないですか」 鈴仙「(……さとりさん。 心が読めているなら聞いて欲しいんですが。 ――それだけの理由で人を数十メートル吹っ飛ばす方も、結構乱暴だと思います)」 永琳「(――それでも、彼の精神は試合を超えて幾分は変化したようね。 少なくとも、矢車は松山君に対して献身した古明地さとりを信頼している。 ……でも、それだけでは未だ解決には時間が掛かりそう。 と、言った様子かしら)」
[456]森崎名無しさん:2014/11/26(水) 00:42:06 ID:??? やっぱり消し飛ぶ矢車www
[457]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:44:54 ID:??? ――そんな地底のメンバーの様子を遠目で見ていた鈴仙(と、永琳)。 ハチマキに関する疑問は未だ消えないでいたが……しかし、鈴仙が今の彼女達に介入するのは難しい。 想像以上に、地底妖怪達の絆とか友情とかは厚かったようだ。 鈴仙「(――さとりさんも、ハチマキの事とかは気になってたみたいだし。 あの様子からして、松山君の為になる事だったら、地霊殿でも歓迎してくれそう。 ……しょうがないけれど、今日は色々話すのは止めて。 また次に地底に来た時にした方が良いかしらね。 さとりさんはもちろんだけど、あの矢車も最初と比べて随分丸くなった様子だから、 【松山君の為に、突然ハチマキを奪って来る事はまずしない】でしょうし……)」 ――だが、実際に旧都に向かい、試合を行った事で、鈴仙の地底妖怪に対する偏見が更に薄れた事は事実。 (さとりの読心能力には、まだ苦手意識が残るが……) 気が向いたら、もう一度地底に行ってみようか。 今度は手土産にラーメンでも持って……と、決意する鈴仙だった。
[458]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/11/26(水) 00:48:19 ID:??? ……と、いったところで今日の更新はここまでです。 試合イベントはこれで終わりでなく、もう少しだけ続きます。 そのため、人気度の上昇などの勝利ボーナスは、明日にまとめて行います。 明日は永琳による強化イベントと、妖夢との特訓イベントの判定位は出来れば…と思っています。 それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。
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0ch BBS 2007-01-24