※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
【深遠なる】鈴仙奮闘記24【蒼きフィールド】
[177]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/12/21(日) 18:05:36 ID:WbgK50x2 松山「……俺が、世界で一番許せない存在。 それは過去の罪でも、それを出汁に俺を追い詰めるふらのの皆でも無い。 俺は―――!」 バリイ……ンンッ! やがて、亀裂が完全に割れ、松山の世界は更に深部へと達する。 その世界とはつまり―――完全なる黒と、完全なる白との二色の世界だった。 松山「俺は……過去の罪を許そうとし、あまつさえ自身の罪の責任を無理解なチームメイトに擦り付けようとする。 そんな身勝手な……自分の心に潜む『影』が、一番許せないんだ!」 そして、松山の存在もまた亀裂が入り消えた。 残ったのは松山の『影』だけだった。 鈴仙「……哀れな。 自分を許さない事こそが唯一の正義と信じ切り、 それを許そうとする自分こそが最大の悪と決めつけるなんて。 そんな事をしていては、貴方は永遠に許される事はないというのに!」 松山の影(以降便宜的に『影山』と表記)「……俺は、自分が何よりも神聖と信じているものを、自らの手で穢し、壊してしまったんだ! たとえ誰が俺を許そうとも、サトリ妖怪。 俺を許したい俺が消滅しない以上、お前の行為は全て無駄なんだからな……!」 ――つまり、松山光という少年は人一倍清廉でありたいに関わらず、その為の能力が明らかに欠如していた。 そしてそれ故に、理想と現実との果てなきギャップに苦しみ……それが、彼を地獄へと突き動かした。 他者との関わりを絶ち、自己を含む全てを拒絶する事のみが、自分の唯一の救いであると信じて。 さとり「……だけど貴方は、自分を許さないだけ出なく、自分を許し切る能力すらなかった。 地獄へと堕ちていく自分を肯定する「誰か」が居て欲しかった。 だけど、そんな者は当然この現実には存在しない。 ……まさしく幻想の世界か。 さもなくば――虚構の世界にしか、ね」 影山「そこまで、解っていたんだな……。 ――兄貴の、矢車想の正体までも」 さとり「――お空がお土産で、河童から貰って来まして。 ――これが、矢車君の「モデル」ですよね?」
[178]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/12/21(日) 18:07:02 ID:WbgK50x2 さとりはポイと、ポケットから何かを影山へ投げつけた。 鈴仙は影だけと化した松山に近づいて、それが何かを確かめると。 鈴仙「これは確か……姫様も持っていたDVDドラマのケース。 それで、タイトルは……!?」 ――それは少年向けの特撮ドラマのようだった。 しかし、鈴仙が目を丸くした理由はそのタイトルやストーリーでは無い。 そこには間違いなく、あの時の試合に出ていた矢車の姿が映っていたからだ。 さとり「……矢車想とは即ち、外界の特撮ドラマの登場人物が一人。 完全調和という崇高な理想を掲げながらも、主人公への嫉妬心に負けてスタンドプレーを行い、仲間を見殺しに。 信頼していたかつての部下にも裏切られた彼は――地獄の戦士として、同じ境遇をなぞった相棒と共に、 物語上の正義や悪に与せず、自身の生きる意味、戦う意味を孤独に問い続ける。 ……まさに、今の貴方の境遇にピッタリ。 自分を認めてくれる、見捨てないでくれる……理想のヒーロー像ですね」 影山「そうさ。 そうだよ……! 俺は結局、中途半端なんだ! 自分の罪を受け入れる事も出来ない! だからといって、そんな自分を許し切る事も出来ない! だから、俺は――兄貴にだけは、受け入れて、認めて欲しかったんだ……!」 さとり「罪を受けるべきと思う自分と、そこから解放されたい自分とのせめぎ合い。 それを認めて貰うために、第二の人格を作り、そうする内に……本来の自分を見失ってしまったのですね……」 鈴仙「…………!(――松山光。 彼もまた、中山さんとは違う意味でストイック過ぎる人物。 だけど彼は、中山さん以上に崇高な理想を持つ一方で、中山さん程強くは無い。 だから彼は、こうして自己を否定する事しか出来なかった! なんて、悲しい話なの……!)」 松山の本心を聞いた鈴仙は、胸を潰されたような気持ちになった。 この地獄の少年が持つ迷いは、そして怯えは。 完全にとは言えずとも鈴仙にとって共感できる。 鈴仙「(私が……私が、今の松山君に対して、何かを言ってあげる事は出来ないのかしら。 ――私はさとりさん程松山君と親しくないけれど、それでも、これまで色んな経験をして来た。 何か――何か、言える事は……?)」
[179]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/12/21(日) 18:09:41 ID:WbgK50x2 鈴仙はどうしても、松山に何かを言いたくて堪らなかった。 誰よりも自身に厳しく、にも関わらず弱い彼を救えずとも、何かを……。 鈴仙「…………」 あまりに強烈な松山の自我を受けて戸惑うさとりを尻目に、鈴仙はこう口を開いた。 A:「私だって、かつて罪を犯した事があるから言うけど。 ――罪やそれを許さない自分も含めて、今の貴方なんじゃない?」 B:「中途半端って言うけれど……中途半端で、一体何が悪いって言うの?」 C:「……私は良く分かんないけど。 また、ラーメンでも食べにいきましょ」 D:「さとりさんとかは、貴方を認めてくれてると思う。 他のチームの人だってきっとそうよ……!」 E:無言でポケットの「愛のハチマキ」を影山に投げ付ける。(渡すとは言ってない) F:その他 自由選択枠 先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。 *今回の選択にも特に明確なアタリハズレは定めていません。 ですが、自由選択枠で色々考えて下さった場合、少しだけプラスを上乗せする可能性があります(プラスされない可能性もあります)。
[180]森崎名無しさん:2014/12/21(日) 18:11:59 ID:89HRSoaA B
[181]森崎名無しさん:2014/12/21(日) 18:23:15 ID:gdMJhXp2 B
[182]森崎名無しさん:2014/12/21(日) 18:30:33 ID:??? Wのおやっさんの台詞が思い浮かんだ
[183]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/12/21(日) 22:44:23 ID:WbgK50x2 B:「中途半端って言うけれど……中途半端で、一体何が悪いって言うの?」 鈴仙「……私は、正直ほとんど部外者だし。 だから、的外れな事を言うかもしれないけれど」 鈴仙はどうしても言いたくなった。 鈴仙「……中途半端って言うけれど……中途半端で、一体何が悪いって言うの!?」 影山「えっ……?」 鈴仙「――私も、凄く中途半端だから。 昔働いていた場所でも、色々良くしてもらっていたのに、途中で逃げ出したり。 いや……。 今だって、私は冷静にも徹しきれず、かと言って情に全てを投げ打つ自信は無い。 だけど、私は自分で……こんな自分も悪くないと思っている。 大事なのは、中途半端だとか許されるとかじゃなくって……自分で自分の事が好きで居られるか。 どうせ完全に正しい人間……とか妖怪とか……も居ないんだから、汚い自分も綺麗な自分も認めること。 それが大事なんじゃないの!?」 影山「それが出来るなら、苦労はしていないさ……。 良いよなぁ、お前は。 自分に自信があるみたいで。 お前だって、あのサトリと一緒という事か」 さとり「……私はあの方と違って、好き好んで男子更衣室にインする趣味は無いですけどねぇ」 鈴仙「さとりさん。 余計な事言う位なら黙っていて下さい」 さとり「失礼。 ……では、余計では無い事でも言いましょうか。 ――例えば。 私だって、昔は自分に自信が無かったんだ……と、いう話とか」 鈴仙「あっ、そういう話だったら私にも―――! ……っていうか。 やっぱり、何でも切欠があるんだと思うわ! だから、松山君。 貴方だって、このまま生きていればきっと……!」
[184]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/12/21(日) 22:45:58 ID:WbgK50x2 さとりと鈴仙は、互いに地獄を知り、それを乗り越えて来たという点で共通していた。 そうした意味では、この松山の葛藤にも何らかの共感を覚えていたのかもしれない。 影山「……」 影山は影のまま、黙って静かに鈴仙達の言葉に耳を傾けていた。 恐らくは、こうした慰め文句も彼の中では一度考えた内容ではあるだろう。 しかし、それでも、同じ事を自分で考えるのと他者から言われるのとでは意味合いは大きく異なる。 現に影山の影は次第に薄くなり、世界の破片とともに砕けた松山の身体は次第に再構成を始める。 松山「…………すまない」 松山の心象世界にある白と黒は……ほんの少しだけ彼の中心で混ざり、グレーの背景を作り出す。 松山「……俺は人一倍不器用だから、お前達が言いたい事を行動にすぐ移す事はできない。 だが……ああ。 そう言ってくれる人が居るというのは……幸せなのかもな」 さとり「……私の所――というか、地底では、貴方みたいな手合いの変人は沢山居ますから。 もしもそれで思いつめていたのならば……。 そうね。 一度オーバーラップでもしてみたら良いでしょうか。 ……前の試合の私みたいに」 松山「…………ふん。 アレのせいで、試合に負けたんじゃないのか?」 さとり「仰る通りで。 ……でも。 想いは口にするよりも、行動で示した方が伝わり易いのではなくて? ねぇ、鈴仙さん?」 鈴仙「ど、どうしてここで私に振るんですか……? ――まぁ、でも。 そうね。 悩む事も立派だけど――やっぱり、中途半端でも、前に進んで行った方が私は良いと思う、かな……?」 松山「…………」 ―――パァァァァ……ッ!
[185]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/12/21(日) 22:47:18 ID:WbgK50x2 ――鈴仙がそう言ったのと同時に、松山の影の上に本来の松山の輪郭が現れ、周囲は白夜のように光る。 その白色は、塗料のように気持ち悪い白では無く。 適度に黒と入り混じった、薄く幻想的で。 とても美しい白色だと鈴仙は思い――意識はそこで途切れた。 *** 鈴仙「う、う〜ん……」 ??「――目が、覚めたか」 ――鈴仙が意識を取り戻した先は、再び地霊殿の暗い牢獄だった。 鈴仙「あれ。 私――戻って来たんだ……。 ――って! あ、あんたは!?」 矢車「折角介抱していたのに、目が覚めるなりあんた呼ばわりされる。 はぁ……どぉせ俺なんか……」 さとり「……そのネタはもう良いですから。 ――鈴仙さん。 矢車君に代わって礼を言わせて頂きます。 本当にありがとう」 鈴仙「えっ。 その……さ、さとりさんが牢獄に居て。 ……え〜っと?」 さとり「――私達は、松山君の心の世界から脱出しました。 彼の心を僅かにでも慰めてね」 こうした精神的状態変化に慣れているのか、さとりは鈴仙よりも先に目覚めていたようだ。 相変わらずやさぐれた様子の矢車と並んで、倒っぱなしの鈴仙の様子を見ていたらしい。
[186]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/12/21(日) 22:48:35 ID:WbgK50x2 鈴仙「……松山君は、どうなったんですか? 矢車君が今もここに居るというのは、失敗したって事……?」 矢車「それは逆だ。 むしろ、相棒は酷く感謝している。 ――自分を喪いかけ、俺という虚像のヒーローに救いを求める自分を、それで良いと言ってくれた……とな」 さとり「ただ、やっぱり私達の干渉が彼の未熟な精神にとって重荷だったようで。 なので今は、疲れて眠っている状態らしいです」 鈴仙「……そう。 だったら、それはそれで……良かったのかもね」 最初鈴仙は、松山の精神に間借りして存在する矢車は、消えるべき存在と無意識に考えていた。 二重人格は精神の病だ。 そのため、これを直す事こそが松山にとっての幸せなのだ……と。 医療に従事する者としては当然な、しかし傲慢な発想が残っていた事は否めない。 しかし、今の比較的穏やかな矢車の表情を見ると、その思いにも揺らぎが生じる。 さとり「……中途半端である事は、決して罪では無い。 人は清濁、その両方を合わせ持つ存在だから。 そうした考えを弱さや甘えと受け止める者は、きっと多いのでしょうね。 努力によってそうしたどっち付かずの状況を打破し、更なる成長を求めるべきだ……と。 ――ですが、それを押し付けられる方は堪った物では無いと。 そういう話で良かったですかね」 鈴仙「そ、そうだったかしら……?」 矢車「地獄の底こそ至福だと言うのになァ……」 さとり「それはそれで、ちょっと極端過ぎますし。 ……だけど、今の松山君にとっては、貴方の地獄が癒しになっていたのも事実。 ですから……私はそれを、否定はしません。 否定はね」 矢車とさとりとの関係も、より近しい物になっているような気がした。 今回の一件がその原因に関係しているかどうかまでは、今の鈴仙には分からないが……。 ――しかし矢車の様子もまた、先日の試合に比べて随分と優しげになっているような。そんな気がした。
[187]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2014/12/21(日) 22:49:38 ID:WbgK50x2 矢車「……そこの兎」 鈴仙「は、はいっ!」 とはいえ、突然に精悍で鋭い目線の男に話しかけられても動揺しない程鈴仙の肝は据わっていない。 ピシっと背筋を伸ばして、ある意味当主のさとりに話しかけられた時以上に恐縮しながら矢車の方を向く。 矢車「……次に来た時でも、何時でも良い。 『お前の持っているハチマキを、俺達に譲ってはくれないか』。 ――無論、その際は礼をする。 練習指導でも、戦術指導でも、お前の仲間の技術指導でも。 可能な事ならば、俺も協力を惜しまん。 ……無理にとは言わんが――な」 鈴仙「……は、はい。 それなら(――って言っても、渡しちゃったら姫様への難題プレゼントが出来なくなっちゃうのよね。 一回渡した後、姫様が返してくれるって言うなら別だし、『毘沙門天の宝塔』とかはそれで何とかなったけれど。 今回も上手くいくやら。 矢車……さんも、別に無理にくれ、って言ってる訳では無いし。 ――どっちにしろ、姫様に要相談かしら)」 矢車の申し出が穏健であった事に安心しつつ、会話が一旦途切れたのを見計らって鈴仙は帰宅を申し出る。 精神世界での冒険で親交を深めたからか、さとりは夕飯でも食べて行けば…と誘ってくれたが、今は門限の方が大事だった。 さとり「……まぁ。 宜しければまた遊びに来て下さいな。 お燐もそれなりに貴女に懐いているし、『宝探しの続きまだ〜?』……とか、誘って欲しそうにもしていたし。 矢車君も、こう見えて――結構、貴女に感謝してると思いますよ?」 矢車「俺と一緒に地獄に落ちよう……」(←最大級の親愛表現らしい)
前
次
写
名前
E-mail
0ch BBS 2007-01-24