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【一筋の】きれぼしサッカー2【光明】
[25]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 22:25:19 ID:OACCMH4E ピエール「(まずい、痙攣を引き起こしてしまっている、速く処置しなければ危ない!)」 近くに他のフィールダーがいなかった事もあり、せめて身体を楽な姿勢にさせようと ルブランの元に駆け寄り、一旦抱き起そうとした。その時。 ドキン! ピエール「(うっ!?)」 ルブランとして見ている人物の顔を間近で目に収めたと同時に、ピエールの胸が高鳴った。 ルブランの顔は疲労による苦痛があるとはいえ、試合時に比べてずっと穏やかで、優しかった。ピエールにとって困惑をもたらしたのは、 彼の眼にはその顔を綺麗で可愛らしいと感じ、相手の顔や身体から色気が発せられていると思ってしまった事である。 ピエール「(な、なんだこの感情は!?この俺が一体……どうしたんだ!)」 予想だにしない事態により救護を行うどころではなくなり、呆然としだしたところで 他のフィールダーや救護スタッフが駆けつけ、ルブランをタンカで運び去ってしまった。 ピエールも怪我の治療のためベンチに向かったが、メンバーから何を聞かれ何と答えたか、その後の大会優勝に伴う表彰など、 後に思い返そうとしても思い返す事は出来なかった。
[26]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 22:32:23 ID:OACCMH4E ピエール「(なんだこの、気持ちは。ルブランの顔を見るたび、思い出すたびに感じるこの感覚は)」 大会が終わって数日が経過したが、あの決勝戦時にルブランへ抱いた未知の感情がなおも消えず、 ボルドーFCの個人寮内で1人悶々としていた。 ピエール「(心が浮き立つような、緊張が解けて和やかになる、幸せで快いこの感覚は、何だ!?)」 この得体のしれない、しかし幸福な感情の正体についてあれこれと思い悩む。暫くの黙考の上、事実とは異なる、 しかし彼にとって最も可能性が高いと考えた恐ろしい推測が、ピエールの頭に浮かんだ。 ピエール「(もしかして俺はオモセクシュエル(同性愛者)なのだろうか?)」 そんなはずはない!殆ど同時にそう叫び、立ち上がって席を両拳でガンと叩く。 その後、憤りに身を震わせて再び座り、頭を抱えて机に突っ伏した。 ピエール「(そんなはずはない!この俺が、同性愛者のはずは……!)」 瞼をギリギリと力こめて閉ざし、必死に否定する。 ピエールの家は敬虔かつ保守的なカトリックであり、父母はこうした同性愛者は罪深い存在と見做していた。 ピエール自身も侮蔑はしないもののそうした存在に否定的であった。 だからこそ、そんな感情を抱いた「罪深い」自分を恐ろしく感じ、棚から十字架を取り出し、震える手で額に当て、懺悔を乞うた。 ピエール「(神よ、この罪深きエル・シド・ピエールを許したまえ!何卒この穢れた魂を洗い清めてくれたまえ……!)」
[27]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 22:35:00 ID:OACCMH4E ピエールの人知れぬ苦悩が生まれてから1年後。 フランスサッカー協会はユース世代の選手達を一層強化するため、 主だった選手をイル=ド=フランス地域圏のイヴリーヌ県に位置する クレールフォンテーヌ国立研究所ユースアカデミーへ招集し、集中強化合宿を実施した。 ピエールとルブランも当然に招集され、共に練習を行う事となった。 ピエール「(ダメだ!どうしても消えない……どうしてだ!)」 1年の月日を持ってしても、ピエールのルブランに対する感情を消し去らせる事は出来なかった。 パスを渡そうとルブランに顔を向けるとそのルブランが輝くように見え、 接触プレーの際はルブランの息遣いが甘い吐息となって首筋を漂い、 何かの拍子にルブランが笑顔を見せれば、胸を打つような響きが体中に響きわたっていた。 こうした状態のため、ピエールの心理は平静を保つ事も難しくさせてしまっていた。 ナポレオン「なあお前ら、最近ピエールの調子が悪くなってると思わねえか?」 ボッシ「そう言われてみれば、ここのところ単純なミスが多いような……」 アモロ「もう何か月もあんな具合なんだよ、どうしたんだろう……」 周囲も精彩を欠いたピエールの様子に首を傾げるものの、幸か不幸か人知れぬ悩みに気づかれる事は無かった。
[28]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 22:38:03 ID:OACCMH4E ピエール「ハアッ、ハアッ、ハアッ………」 正規のトレーニングメニューを終えた後での数時間もの自主的な訓練を終了させ、 息の荒いままにピエールは自分の部屋へ戻ろうとしていた。 これ程までに時間をかけた理由の1つが出来る限りルブランと顔を合わせる時間を少なくしようとした事にある。 ピエール「(部屋に戻ったらすぐにシャワーだ!そうすれば20分は顔を合わせずに済む……)」 この時のピエールにとっては不運な事に、ユースアカデミーの部屋は2人部屋となっている。 ピエールと共に寝起きする相手が、よりにもよってルブランであったのだ。 ギイッ、ガタン! ピエールにしては荒々しく部屋のドアを開け、挨拶も抜きに浴室へ向かおうとする。 しかし既にルブランによってシャワーが使われており、流水音がサラサラと流れている。 仕方ないと諦めてその場を離れようとした時、ドアの隙間からガラス越しにルブランの身体が見えた。 ピエール「くっ……!…ん?」 嫌なものを見たと顔を背けようとしたが、フッと気になってガラス越しの肢体を見続けた。 男にしてはほっそりとしていて、体に丸みがあり過ぎるのではないかと。 ピエール「(彼はアスリート、体は引き締まっていて当然だが、引き締まっているというよりはスレンダーと言った方が近い。 それでいて体つきが刺々しくなく、温かみさえ感じさせられるような柔らかさ……)」 ここまでぼんやりと体を観察している時、ピエールの頭に突飛な閃きが発せられた。 ピエール「(もしかしたらルブランは女ではないか?!)」
[29]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 22:43:38 ID:OACCMH4E 1年前のピエールであれば、馬鹿げた妄想だと一笑し、そのまま忘れていたであろう。 だがその1年間、自分は同性愛者であるとの疑念に苦しみ、少しずつ認めざるを得ないまでに追い詰められ もがき苦しんでいたピエールにとって、藁でもよいから掴むものが欲しかった状態であった。 ルブランに気づかれぬようこっそりとその場から離れ、ルブランのバッグを開いた。 中に手を付けようとした際、勝手に他人のバッグを物色する事への罪悪感を感じ躊躇したが、 結局それほど時間をかけずに手を入れた事からも、いかにピエールが救いを求めていたかが分かる。 ピエール「(ルブランは女だとしたら、何か俺達に持っていない物を、 何か1つ位は持っているはずだ!見つかれ、見つかれ!見つか……)」 無我夢中になってバッグの中を探し回るうちに、それらは見つかった。 ピエール「こ、これはっ……!」 バッグの中から、円筒状の綿とナプキン、タンポンとパンティーライナーが見つかった。 どちらも月経時に使う生理用品で、男が使う代物ではない。 ピエール「る、ルブランは、女だった…良かった……良かった……………」 この2つを発見して、ピエールは感極まり、タンポンとパンティーライナーを胸に抱きしめ、声を殺してむせび泣いた。 自分は同性愛者ではない、自分は罪深い存在ではない。 1年の時を経て苦しみから解放され、安堵のあまりどうする事もできず、その場に伏せて神に感謝した。
[30]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 22:52:09 ID:OACCMH4E そうして感情を発散させた後、物品を元通りにバッグに戻して何事も無かったかのようにベッドに腰掛けた時、 ルブラン、いやルブランと名乗っている娘が、浴室から姿を現した。 ルブラン「あ、ピエール、戻ってきたんだ。良かったらシャワー浴びる?結構汗かいてるし」 ピエール「あ、ああ、そうする、ありがとう(いけない、気取られないようにしなければ)」 ルブラン「使ったばかりだから気持ちいいよ(何かピエール、練習の時より元気になっているような……?)」 自分の心を悟られぬうちにと、挨拶もそこそこに浴室に入り、服を脱いでシャワーを浴びる。 汗を流した解放感を味わっているうちに、この未知の娘に対する恋心があふれ出てきた。 ピエール「(何という素晴らしい事だ!これ程素晴らしい娘(ひと)が身近にいようとは!)」 ピエール「(ガスパール・ルブラン!いや、ああやって姿を隠している以上、あれは本当の名前じゃない。 あれ程可愛らしい娘(ひと)の名前も分からないのは残念だ!)」 ひとしきり天にも昇る気持ちで娘の事を想っていたが、しばらくして やや落ち着きを取り戻していくうちに、別の悩ましい問題が発生する事に気が付いた。 ピエール「(待てよ、ルブランが女という事は、これから数週間、 年頃の乙女と2人きりで寝起きを共にしなければいけないという事か?!)」 当たり前と言えば当たり前の事実に気づいて僅かに顔を赤らめ、すぐにこれからの予想される苦難に対し、ピエールは頭を抱える。 それからの数週間、驚異的な忍耐力と精神力によってかろうじて耐え抜き、 自らの意志力に人知れず驚嘆する事になるが、それは後日の話となる。
[31]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 23:02:29 ID:OACCMH4E ――――――――――――― ――――――――― ―――――― あずみ「そう…なの……」 常人が言えば他愛もない勘違い話で終わっただろうが、 あずみはピエールの告白に対し、うっとりと聞き惚れていた。 ピエールから発せられるものは言葉ではなく、真心の音楽である。 沁みわたるようにあずみの心に届き、前々から抱いていた敬意と好感を愛へと昇華させた。 ピエール「その後、本当の君の名前がどうしても知りたくなって、出生証明書など君に関する情報を勝手ながら調べさせてもらった。 そうして君の本当の名前が、アズミ・ハヤカワと分かったんだ」 そこまで語り終えて、ピエールは愛しい人の手に力をじっくりとかけはじめ、一層真剣な表情となって、あずみに告げた。 ピエール「アズミ……私と結婚してくれないか、一緒に同じボールを蹴って、いつまでも一緒にサッカーをしてくれないだろうか」 あずみの顔は耳の端まで桃色に染まり、瞳は露で光り、陶然とした表情を浮かべていた。 告白を受けてあずみもピエールと同じ目線になるよう腰を下ろし、答えた。 あずみ「はい。こんなあたしで良ければ……」 ピエール「ほ……本当か?本当に、一緒に……」 ナポレオン「アーッハハハハーッ!」
[32]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 23:04:31 ID:OACCMH4E あずみ・ピエール「!?」 告白が成就した瞬間、突然に成り行きを眺めていたナポレオンが大笑した。 ピエール「なんだナポレオン、何か不満でもあるというのか!」 ナポレオン「違げえよピエール、今日俺達は初優勝した、そのチームを率いた男と思っていたキャプテンは女だった、 その女にいきなりピエールが告白してすんなりと相手もOKした!今日は何て傑作な日だ!」 ハッハッハッと陽気に大笑いしたナポレオンは、今度は左右を振り向きながら、両チームのメンバーに檄を飛ばした。 ナポレオン「おいお前ら!」 シャンゼリゼ・ボルドー一同「お、おう!」 ナポレオン「今から2人を祝福しろ!結婚にはそれが必要だ、ブラボーーーーーッ!」 ボルドー一同「ブ、ブラボーー!」 マルク・カルダン・アルベール・ドミニック「ブラボーーーッ!」 イノサン「ブラボーーーーーーッ!(やっぱキャプテンは女だったんだ…先にアプローチしときゃよかったな)」 モーリス「キャプテン、結婚おめでとう!」 ジュスト「このジュスト様より先越しやがって、幸せになれよ!」 あずみ「(み、みんな)」 チームメイトからの率直で温かな祝福を浴びて、嬉しさの余り言葉に詰まってしまう。 あずみ「(ありがとう)」 ようやくかすかな声で漏れ出るように感謝を告げた後、感極まって状態が下へ沈み、目頭が熱くなるのをどうする事もできなかった。 膝を芝につけあずみの涙を優しくぬぐうピエールの目にも、熱いきらめきが光っていた。
[33]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 23:07:58 ID:OACCMH4E 放送「こ、これは一体どうしたのでしょうか?両キャプテンが向かい合い 何か話をしたと思えば、両チームの選手達が一斉に歓声を上げています」 ナポレオン「よーし祝福はそれ位にして、新郎新婦を無事に宿舎へ送り届けるんだ、お前らも援護しろ!」 モーリス「え、援護?」 ナポレオン「そうだ、このスタジアムにもピエール命のムカつく女どもがうじゃうじゃいる! そいつらが暴徒化する前に逃がしてやるんだ、急げ!」 シャンゼリゼ・ボルドー一同「お、おーう!」 こうして一目散に各ベンチへと下がり、急ぎ急いで宿舎へ避難した。ナポレオンの予想は正しく、 翌日には事の内容を知った女性ピエールファン達数千人がシャンゼリゼ宿舎を封鎖し、 一部には武器を持って「泥棒猫を駆除」せんと暴れまわる者も発生した。 数日後にフランス共和国保安機動隊が到着・鎮圧にあたったが、重軽傷者427人、被害総額89億円を出し、 後に「ピエール動乱」と呼ばれるピエールとフランスサッカーにおける 不名誉な事件として、サッカー史にその名を刻む事となってしまった。
[34]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2015/01/09(金) 23:09:09 ID:OACCMH4E フィールド上の婚約から数年後、ピエール家の所有するとある森林で、ピエールとあずみは2人きりの散歩を楽しんでいた。 あずみ「久しぶりね、こうして誰の目も気にせずに2人だけでいられるのって」 ピエール「そうだな、もしかしたらもう1年も、外でアズミと一緒にいていないかもしれない」 あずみ「エルとの結婚式の前後はひどかったからね。式場なんて、招待客よりガードマンの方が多かったんじゃあないかしら」 ピエール「あの事については済まなかった…」 あずみ「いいのいいの過ぎた事よ。そんな事より、 最初はクラブが移籍を許してくれなくて、一緒に暮らせなかったのが寂しかったな……」 ピエール「あれは俺もつらかった。いっそのことボルドーから移籍しようかと、本気で考えた事もあったぐらいだ。 アズミがサンジェルマンから来るのが数か月遅ければ、実際に移っていたと思う」 あずみ「危うくあたしはボルドーの仇敵にならずに済んだわけね、良かった」 ピエール「そうだな、アズミ。そう言えば」 フッとピエールは立ち止まり、木々の合間の青空に顔を向けて、語り出した。 ピエール「ここの方角は北東だ。この空をまっすぐ行けばパリに着く」
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0ch BBS 2007-01-24