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【優勝】キャプテン森崎48【エンディング】
[120]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:49:12 ID:CYeeWqvU 早苗「だけど、しばらくしたらまた悲しくなった。翼くんの弱い所、翼くんの醜い所…全然想像していなかった。 そんなのあるとも思っていなかった。私も翼くんを完璧な人だと思い込んで、押し付けていただけなんだって気付いて…」 翼「………」 早苗「それから…ちょっとだけ嬉しくなった。あの時やっと本当の翼くんを全部見せてくれたんだって気付いて。 凄いだけじゃない、弱い所も醜い所もある翼くんをやっと見せてくれる位、私の事を特別に思っていたんだって…」 そして、愛情があった。以前よりも深く厚い愛情が彼女に宿っていた。 翼「………そう、だよ。俺は…弱い。大事な相手に自分の重荷を押し付けてしまう位に…」 早苗「…だから、これからは押し付けないで。押し付けるんじゃなくて…一緒に、背負わせて」 翼は信じられなかった。最後の決着をつけ、最後の責任を取りに来た筈の場所で。 早苗「健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も。 愛し合いたい。敬い合いたい。慰め合いたい。助け合いたい。命ある限り、真心を尽くしたい…あなたと」 自分が捨てた筈の天使がもう一度戻ってきてくれたのだ。 翼「………………………………………」 早苗「…あの。流石に何か言ってくれないと…何度も練習したセリフなんだから…」 翼「…ご、ごめん。頭の中が固まっていた…」 早苗「…ふふっ」 翼「ははっ…」
[121]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:51:46 ID:CYeeWqvU そして翼はやっと微笑む事が出来た。涙を零しながら微笑んだ。 仲間とも宿敵ともつかぬ男達とぶつけあう強気な笑いではなく、愛する者とのみ分かち合える穏やかな笑顔。 翼「…俺は…まだ、君の苦しみや悩みや、見せたくない所を見せて貰っていないよ」 早苗「一緒に居れば、嫌でも見る事になると思うわ。それでも一緒に居続けたい…と思うのが愛じゃないかしら」 翼「そうか………」 早苗「……………」 翼「…今から家に行って良いかい?スペインに連れて行かせて下さい、ってお願いしなくちゃ」 早苗「ええ…!」 醜い部分も含め、相手の全てを支え合う。大空夫妻の目指す愛はそれだった。 翼「(帰る相手が居る場所があるって、良い物だなあ…)」 ディアス「おーい、そろそろ色ボケは止めろよ。折角だから少し練習しようぜ。まだ誰も来ていないんだから貸切だ」 翼「うん?良いけど、何かしたい事でもあるのか?」 ディアス「ああ。お前、三軸の回転をかけたサイクロン撃っていたじゃないか」 翼「ブーストサイクロンか。あれをやりたいのか?」
[122]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:53:42 ID:CYeeWqvU ディアス「いいや、あれよりもっと面白いモノだ。三軸の回転をかけるんならもっと良い方法があるだろ?」 翼「…ああ、なるほど。分かったけど、それは流石にかなり練習しないと無理そうだぞ」 ディアス「今日一日で十分だろ?サイクロンなんてブッツケ本番で出来るモンだしな」 翼「………ニヤニヤしながら言うなよ。俺はコントロール出来る様になるまで二週間かかったよ…」 ディアス「おーおー、凡人にしちゃ早いじゃないか。上出来上出来」 翼「君、森崎と良い勝負だよ…全く」 ディアス「そこで俺の足が壊れた事件を持ち出せないのがお前の甘い所だなー」 翼「甘くていいよ。君みたいになるつもりはないし、それで負けるつもりもないからね」 ディアス「ちぇっ、相棒としちゃつまらないタイプだなお前(パスカル…早く上がってこいよ、このステージまで)」 翼「(森崎と言いストラットと言い、そしてこのディアスと言い…なんで強いけど厄介なタイプと ばっかり組む事になるんだろう、俺。そういうのを引き寄せやすい体質なのかな…)」 大空翼とファン・ディアス。この二人がスペイン発祥の竜巻で欧州全土を脅かすのはそう遠くない未来の事である。
[123]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:55:47 ID:CYeeWqvU いったんここまで。
[124]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/07(日) 11:26:50 ID:j1NDR9eE 〜カルロス・サンターナ、アルツール・アンチネス・コインブラ〜 カルロス「ほう、ツバサとディアスがバルセロナに…中々厄介なコンビが誕生しそうだな」 開催国のワールドユース大会で準優勝と言う結果はブラジル国内では散々に叩かれた物だが、 ブラジルユースの選手達を獲得したいクラブにとってはむしろ相場が下がって有難い出来事だった。 だが選手達当人はそんな外野の思惑など気遣って居られず、取り逃がした栄光を埋め合わせ 自分を更に高める為のクラブを選ぶのが最優先だと言う事に変わりはない。 ガチャッ… カルロス「あ、戻ってきたか。どうだった?先輩達の練習光景は」 コインブラ「…大した物だ。下手と思える奴が居なかった」 カルロス「そうだろう。あれが世界でトップクラスのサッカーだ」 カルロスはスペインの超強豪レアル・マドリードにスカウトされていた。 ワールドユース大会でキャプテンを務めながら10ゴール4アシストと言う結果は 誰がどう見ても腐せる物ではない。最優秀FWの呼び名もMVP認定もチームが 優勝さえしていれば受け取れていただろうと言う評論家も少なくなかった。 コインブラ「…親父も、こういう世界に辿り着きたかったのかな…」 カルロス「…そうかもな。当時のサッカー事情は今とは大きく違うが… そういえば、一つ聞いていいか?お前はサイクロンを使えないのか?それとも使わないのか?」 コインブラ「…やれば出来るかも知れんが、使おうとした事はない。親父が生きている頃に教えて欲しいと ねだった事はあったが、親父は“ただのおとぎ話だよ、そんな技は存在しない”と笑うだけだった。 結局、親父は実物を見せてくれた事も原理を説明してくれた事もない。本当のサイクロンは…俺も知らない」
[125]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/07(日) 11:28:16 ID:j1NDR9eE カルロス「なるほど…勝手な推測だが、ジャイロにとってサイクロンは己の誇りではなく、 己の敗北の象徴だったのかも知れない。きっとお前にサイクロンに頼らず強くなって欲しかったんじゃないか?」 コインブラ「…そうかも知れない。親父は俺に何も要求しなかった。クラブやブラジル代表に入れとも。 今になってようやく分かる気がするんだ。親父がサッカーを嫌いにならなかった理由を…」 一方長らくサッカークラブに所属していなかったコインブラはどうか? 南米で“勝利請負人A”として活動していたなどと言う都市伝説は詳しく知らない者には 胡散臭い事この上ない。それが事実だと知っても今度は“格下いびりをしていただけ”と見なされかねない。 なによりの悪材料はワールドユースの決勝戦後半からしか登場していないと言う客観的に見て 不可解過ぎる実績である。あれ程のパフォーマンスがマグレだったと言うのは流石にないだろうが、 それなら何故もっと早くから出さなかったのか?10番を与えられていながらチーム内で孤立していたのか? それともコンディションに問題がありごく短時間しか出場できないのか?まさかもしやのドーピングか? “そもそもコインブラが最初から出場していたらブラジルが勝っていただろう”と言う否定し難い声が 世界中から湧いていた事もあってコインブラは厄介な意味での話題性に尽きなかった。 もしカルロスが居なかったらコインブラのプロデビューは難航していただろう。 レアルから誘いを受けたのは当初はカルロス一人だけだった。カルロスは“もう一人お薦めの選手が居る”と 渋るスカウトを説き伏せ、フラメンゴの練習場を借りてコインブラの実力を披露したのだった。 当然スカウトは目を見開き何故これ程の選手が埋もれていたのだとコインブラを質問攻めにしたが、 ここでもカルロスが“クラブチームの年少部に入る金が無かった為ストリートサッカーの賭け試合に没頭していた” “ブラジルユースにスカウトされたはいいもののクラブ経験の無さ故に連携に不安があった為一か八かの切り札扱いだった” と事実の一部だけを明かす事で言いたくない部分を隠し、見事コインブラに都合の良い形のプロデビューをセッティングした。
[126]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/07(日) 11:29:41 ID:j1NDR9eE カルロス「結局俺達はこうやって走り続けて己の道とゴールを確かめるしかないのさ…たぶんな」 コインブラ「そうだな…お前が上手くやってくれたからここに入れた。有難う」 カルロス「気にするな。昔お前が助けてくれたから、今の俺があるんだ」 こうしてこの二人はレアルに入団し、その凄まじいばかりの実力を遺憾なく見せつけ先輩達も監督も唸らせていた。 この二人ならばこの超名門でもスタメンを確保するのは難しい事ではない。それは誰もがうなずく事だろう。 カルロス「これからは貸し借りは無しだ。3人で頑張っていこう!」 コインブラ「ああ…!………3人?」 だがそんな二人にも不安材料はある。いや、カルロスの視点では三人と言うべきか。 カルロス「ん?俺とお前とアーサーの3人だろ。誰かほかに居るのか?」 コインブラ「いや、アーサーは俺の事だろう…?」 カルロス「何を言っているんだ、お前はコインブラじゃないか。アーサーはこっちだよ」 コインブラ「え?…それは俺があの時あげたボール…(な、なんだ?カルロスの目が…!)」 カルロス「 違 う ッ ! ! 」 コインブラ「!!!?」 自分の幼少期の行いと選択がどんな結果をもたらしたか。コインブラは今日初めてそれを知った。
[127]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/07(日) 11:31:27 ID:j1NDR9eE いったんここまで。 次がおそらく最後の本編の更新となります。
[128]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/07(日) 16:09:07 ID:j1NDR9eE 〜森崎 有三〜 この長い長い物語の最後に、主人公森崎有三の事を語ろう。 彼の得た栄光については最早語るまでもなく、数多のサッカークラブが札束を積み上げたのもまた然り。 そして彼がこれで満足する筈もなく、更に上を目指し更に多くの物を欲したのも周知の通り。 だがそんな彼でもサッカーをしていない事もあるし、サッカーとは関係ない物を求める事もある。 陽子「ごめん、待たせたかしら?」 森崎「何、俺もついたばかりだよ」 最初は日本サッカー協会の一員として彼をサポートしていた陽子は何時しか彼が 欲する対象となり、彼に密かに憧れていた彼女もそれを喜びやがて受け入れた。 この日二人は南葛市の小さな喫茶店で待ち合わせをしていた。 森崎「さ、まずは何か注文しようぜ。何がいい?」 陽子「…それが…ごめん。今は何も喉を通りそうにないの」 森崎「へ?なんでだ、病気か?それなら帰って寝た方が…」 陽子「見せたい物があるって言ったでしょ?…その中身が、怖いの…」 森崎「…なんだよ、一体何だってんだよ」 陽子「………兄さんが…父さんから預かってきた手紙…貴方宛よ…」 森崎「!!!!」 見て貰いたい物がある。そう言って陽子が森崎と会いたがった日だった。
[129]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/07(日) 16:11:47 ID:j1NDR9eE 森崎「…分かった。読んでみる」 陽子「…はい、これ」 片桐兄妹を縛り付けたがっていた彼らの父親からの手紙。 森崎はペナルティキックを待ち構える時の様な緊張感みなぎる表情でその手紙を受け取り。 森崎「拝啓…森崎有三殿…」 陽子「………」 まずは手紙に書かれた自分の名前を読み上げ。 森崎「前略………」 陽子「………」 時候の挨拶の省略を読み上げ。 森崎「……………?」 陽子「………」 そこから不可解そうな表情になって押し黙り。 森崎「……………!」 陽子「………?」 黙ったまま焦りと苛立ちを顔に浮かべ。
[130]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/07(日) 16:13:44 ID:j1NDR9eE . 森崎「…達筆過ぎて読めねぇ」 ドシャッ! 陽子の顔面をテーブルに打ち付けさせた。 陽子「はぁ〜…私が読み上げるわ」 森崎「お、おう…」 庶民出身で最終学歴が日本の公立中学校と言う悲しさか、日本のビジネス界のエリート階級の 書く字は森崎には判別不能だった。呆れればいいのか責めるべきではないのか悩んだ表情の 陽子が手紙を取り返し、流石は上流階級育ちの才女と言うべき朗朗さで手紙を苦も無く読み上げる。 陽子「拝啓、森崎有三殿。前略。君の事は既に調べ上げてある。大胆不敵にして即断即決を尊ぶ男と聞いたので、 無意味な挨拶や美辞麗句は抜きにして用件のみ書く事にする…うわ、父さんがこんな書き方をしたの初めて見たわ」 森崎「へえ…まあ長々と訳分からない事を書かれるよりは良いか」 陽子「続けるわね…まずはワールドユース選手権優勝おめでとう。私はサッカーは大嫌いだが、 ただの球蹴り遊びと馬鹿にするつもりはない。どんな分野であれ、世界一になると言うのは並大抵の事ではない。 正直な話、陽子の件が無ければ我がグループのCMのオファーを出したい位だ。だが現実として例の件がある」 森崎「……………」
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0ch BBS 2007-01-24