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【影の役者】鈴仙奮闘記30【天才の相棒】
[686]>>678修正版@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:36:16 ID:??? アリスの戦術眼。そして博麗連合の統率の取れた動きは、確かに優れていた。 オフサイドトラップの成功率は原則五分五分ではあるが、 今回に限ってはスカーレットムーンズの分が悪い事を、パチュリーは認識していた。 昔のような、理論家で頭でっかちな彼女であれば、ここは素直にアリスの勝ちを認め退くべきシーンだった。 ……しかし。 パチュリー「(本にある理論では、ここは攻めるべき局面では無い。 だけど……ここ最近の慌ただしい日々のせいで。私は、何というか……往生際の悪さというか、馬鹿になったみたい。 だって、こうしている今だって、敗北の可能性を考慮せず、勝利の可能性を積み上げる事にしか目が無いのだから)」 厄介な友人の影響か。成長しつつある友人の妹の影響か。 はたまた、自分の事をマスターと頼ってくれる、馬の骨も知らぬお人良しのためか。 パチュリーは、博麗連合の見事なオフサイドトラップを見てもなお、 自分が小悪魔に与えた指示は正しく、それにより、自分達の攻撃は成功すると信じていた。信じる事にした。 だから彼女は、小悪魔がボールを蹴り抜くよりも、審判の笛を確認するよりも先に。 チームメイトに対して、こう指示を出す事にした。 パチュリー「――皆、上がりなさい。 ……『ファストブレイク』よ!」 ―――パチュリーの号令は、紅魔スカーレットムーンズによる、前半最後の猛攻撃の開幕を告げる狼煙となった。
[687]ここから今日更新@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:37:25 ID:??? レミリア「そうだパチェ。あんたも中々分かって来たじゃない! ……それっ!」 バァァァッ、グルウウウンッ! ……グワァァァァァァッ……バシュウウウウウウウウッ! ギュルギュルギュルギュルギュルギュルッ! ―――――――ダダダダダダダダッ! 偉そうな上に得意げな女の子の声。 地面が揺れる程の大ジャンプ、そしてムーンサルトで回転させた脚が空を切る音。 ……そこからコンマ数秒で、トップスピンが強烈に効いたパスの音。 更に数秒後、大人数がドカドカとフィールドを駆け上がる音。 様々な種類の音が連続してフィールドに響き渡り、その土埃とも合わせて観客達は混乱し逆に静まる。 しかし、彼らが暫くしてフィールドを見ると、その状況は劇的に変化していた。 バシッ! バシッ! バシッ。 ――バシュウッ、バシッ! ポムッ。タタタッ……! 霊夢「……スカーレットムーンズが大挙して上がっている。しかし試合は切られる様子が無い。 ――私達のトラップは、どうやら不発に終わったみたいね……」 アリス「……そ、そんな! 確かにあの時。 小悪魔がパスを蹴り出した時、レミリアは間違い無くオフサイドラインの後ろに居た筈なのに……!」 レミリア「バーカ。この私の脚力を舐めて貰っては困るわね。これでも軽く、月を一周できる位には鍛えてあるのよ! (――突然大声出したパチェと、一気に駆けだした皆に審判が気を取られて無かったら、 ギリギリオフサイド取られてたかもしれないけど……黙ってよっと)」
[688]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:38:58 ID:??? スカーレットムーンズはDF、MF、FW。タレント選手、中堅選手、名無し選手。 その全ての選手が連続のパスワークを繰り返しながら、 ガンガンという音が聞こえて来そうな程に激しくラインを上げて行く。 博麗連合が弄した『オフサイドトラップ』が柔の戦術ならば、紅魔が放った『ファストブレイク』はまさしく剛の戦術。 今回はハッタリも戦術として含めた、パチュリーやレミリアの豪気が勝利を招いた。 レミリア「一旦渡すわ。フランにでも繋げて!」 バシュッ……。 メイド妖精F「はい! ……えーいっ!」 グワァッ、バゴオオオッ! 衣玖「――それっ! ……ああ、ダメでした」 天子「今あんた、手抜いて無かった? 流石に妖精メイドのパスだったら取れてたでしょ」 衣玖「いやーその。何だか脳裏にサイコロを振り続ける男の姿が浮かんでしまい、調子が出なくなって……」 天子「どういう原理よ……」 ――そして、前半ロスタイムを迎えるより1分早く、スカーレットムーンズは最高の攻撃チャンスを得た。
[689]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:40:10 ID:??? フラン「よーし。今度はちゃんとシュートするんだから!」 バイタルエリアには、今しがたボールを得たフランドール・スカーレット。 狂気を制御しつつある彼女は、真に純粋な瞳で今回のチャンスを心より喜んでいた。 咲夜「(万一敵陣にボールが渡れば、私はそれを直ちに刈り取る。そして……ここで決める)」 そこから後方、ゴールから30メートル程の位置には十六夜咲夜。 もっとも、彼女のロングシュートの威力は距離などに影響しないのだが。 パチュリー「(――『フォトシンセシス』があるとはいえ、正直、最後まで持つか厳しいわ。 だけど――この試合は落としたくない。例えこれが、私の人生最後の試合になったとしても……!)」 フランドールの隣には、今回の攻撃成功に大きく寄与した紅魔の司令塔。パチュリー・ノーレッジ。 悲壮な決意を胸に抱きながら、ねじ込み及び零れ球のボールキープに備える。 レミリア「(――ユーゾー・モリサキ。お前は本当に面白いやつだ。この幻想郷で今一番面白いと言っても良い。 そして、そんな面白いヤツに真正面から戦って勝つなんて……それ以上の娯楽が、この世にあるのかしらね?)」 そして、ゴール前には紅魔を統べる永遠に幼き紅き皇帝、レミリア・スカーレットが立つ。 今度は失敗しない。最高のレッドサンで森崎からゴールを奪い、借りを返す。これこそが彼女の目標だった。
[690]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:41:33 ID:??? 天子「ま、その前に私に防がれちゃあ、意味無いけどね」 玄爺「……!」 中里「(拙者はフォロー要員となるのが吉か……?)」 萃香「(これだけ居るなら、お披露目しちゃおうかな、『四天王奥義』? ――できる事なら、レミリアとやらのシュートで使いたいトコだけど、タイミングが合うかなぁ)」 森崎「へっ、有象無象がゾロゾロと。まあ良いさ、全部この俺のセービングの錆にしてやるよ!」 グッ……! そして、紅魔の軍勢に対峙するのは5名の選手。 博麗連合が誇る精鋭のDF4名に加え、世界最高のセーブ力を持つ怪物GK・森崎有三。 背丈は低く、手は小さい。鬼のような怪力も無い。 しかし、異常なまでの力への欲望及び、それを掴む為の努力、精神力において、彼に勝てる人妖はそう存在しない。 もっと早く。もっと鋭く。もっと強く。純化され洗練された、強靭な意志の力。 科学でも魔法でも視る事の出来ない、『がんばり』で構成された壁が、博麗連合のゴール前に横たわっていた。
[691]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:42:44 ID:??? フラン「……だけど、形がある物は必ず壊れちゃう。 堅い物ほど、強い物ほど。自分は絶対壊れないって思ってる物ほど、その時のショックは大きいのよ」 グワァァァァァァァッ……! フラン「だから――私が試してあげるね。貴方が壊れたら、どうなるのか! 禁弾……『スターボウブレイク』!」 バッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオン! ドゴオオオオオオオオオオオオッ! 森崎「何が言いたい。壊れたら、もう一度作りなおせばいいだけだろ。 仮に百回壊れたとしても、俺は百一回作り直せる。そんな男だ!」 バァァッ、バチイイッ! 実況「森崎選手、まずは手堅くパンチング! しかしボールは零れて中里選手の足元へ! ですが……!」 咲夜「食らいなさい、『幻惑ミスディレクション』!」 ズザアアアアアアアアアアアアアッ! ズバッ、ズバズバァァァァアアアアアアア!! ――バチイッ! 中里「ぐううっ……!」 咲夜「ボールを奪ったけれど、こんな所では終われない。 ――勝てば官軍、負ければ賊軍。成程確かに貴方の思想は正しいけれど。 生憎と私達は、美しい官軍にならねばならないのです。 だから――ここよ。ここで……決めるのよ! 幻符・『殺人ドール』!」 グワァァァァァァァァァァァッ! バゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ! ……ドドドドドドドドドドドドドドッ!
[692]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:43:50 ID:??? 実況「間髪入れずにボールを奪った咲夜選手、ゴールから30メートルの位置で地を這うロングシュート…… 『殺人ドール』を放った〜〜〜〜! 距離こそありますが、そうした物はおかまいなしと土煙を上げながら、 シュートはゴールへと向かって行きます!」 森崎「なーにが美しい官軍だ。勝利は皆等しく尊いのに、そうやって選り好みしやがって。 誇りだかゴミだか知らないが、俺はお前等が捨てた汚ねぇ勝利を掴ませて貰うぜ! ――と、御託を並べたは良かったが」 玄爺「……!」 ドーンッ! バシッ! 森崎「……こりゃ傑作だ。名無しに毛が生えた奴にブロックされるのが、美しい勝利なのか、あ?」 咲夜「くっ……!」 玄爺「……! !!」 パチュリー「先の玄爺の動きは、『ヘビーブロック』……。――成程、貴方も流石に、単なる名無しとは格が違うみたいね。 だけど先に言っておく。ブロック一芸だけでは、私に勝てないわよ。それに……」 シュパッ、パシッ。グワァァァァァッ! 玄爺「!……!? ……!」 パチュリー「――やっぱり、ここは私も一発決めておこうかしら。 ………日符!」 グワァアアアアアアアアアアアアアッ! パチュリー「……『ロイヤル、フレア』……ッ!」 バッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオオオンッ! バシュウウウウウウウウウッ!
[693]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:44:55 ID:??? 天子「きゃーっ、届かない! 『無念無想ブロック』さえ決まってれば防げたっぽいのにー!」 萃香「……(これはケン、だね。むしろ本命はその次……!)」 実況「玄爺選手がフォローしたボールはパチュリー選手が即刻奪い返し、 パチュリー選手はそのまま自慢のドライブシュート――『ロイヤルフレア』を放ちます! 並みのストライカーの必殺シュートよりも強烈なこのシュートに、博麗連合のDF陣は追いつけない!」 パチュリー「凡才は良く、自分は努力をしているから天才にも勝てる、って勘違いするわよね。 ……ふざけないで。努力の量ならば、多くの天才と呼ばれている者だって、凡才とそう変わらないんだから」 森崎「……ああ、俺もそういう見せかけの良い子ちゃんみたいな奴は大嫌いだな。 だけど、お前こそ勘違いするなよ。まず第一に俺は凡才じゃなくて天才だ。そしてもう一つ……!」 バッ! バババッ! 森崎「――この俺以上に努力してるヤツなんて、この世にゃ存在しねぇ! だから俺は才能においても、努力においても天下最強なんだよ! ……ぬおりゃーっ! 『がんばりダイビング』だーーーっ!」 バァアアアーーーーーッ! グワァァァァッ…………………ガシィィィィイイイッ!! 実況「森崎選手今度は自分ではじいたーーーっ! 必殺のがんばりダイビングで、零れたボールを完璧に捉え、前方へと送る事に成功します! これは今度こそ攻撃成功か! ボールは中盤の霊夢選手へと渡っていき……!」 美鈴「 ホ イ チ ョ ー ー ー ッ !!」 バシュンッ!――ポーーンッ!
[694]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:46:25 ID:??? 霊夢「……割り込んでからの前転クリアか。やるわね、美鈴。高空なら私が勝ってたけど」 美鈴「そりゃあ。だって私は体格を生かしたプレーしか出来ないモンですから。 だから私も小悪魔さんよろしく、フィジカルに特化するよう、重点的に鍛えたんです!」 実況「上がって来ていた美鈴選手、中盤で霊夢選手に競り勝ってボールを逆にクリア! 再び紅魔に攻撃権を戻す事に成功しました!!」 美鈴「弱い者にも価値がある。弱い者にも思想がある。弱い者にも……矜持がある!」 森崎「――ケッ。また戻って来やがったか」 レミリア「感謝するが良い、人間。私達が全員がかりで、お前を恐怖へともてなしているのだからな」 森崎「恐怖ぅ? どっちかと言えば、今までの展開はお笑いに近かったけどな」 レミリア「ならば、今までの前座を詫びさせて貰おうか。なんせ、今美鈴が飛ばしてくれたボールは高いんだからな」 バッ……! 紅帝と狂王は再び対峙する。レミリアは終わりの無い不毛な煽り合いを途中で切り上げると後ろを向く。 美鈴が蹴り出したボールは高い軌道を描いてペナルティエリア付近まで飛んでいた。 それを見て、レミリアは満足気に飛翔した。 レミリア「……私が今大会の為に習得した必殺シュートは3つある。 ひとつはさっきお見せした、『ダイレクトレッドサン』。低空でも撃てるが威力は……まあ、そこそこだ。 フランドールの『495年の波紋』や、八意永琳の『爆宙アポロ』などと、そう威力は変わらない」 グルンッ……バァァッ!
[695]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:51:09 ID:??? その後、レミリアは空中で一回転。後方から向かってくるボールに照準を合わせ、 小さくスラリとした足を、空に向けてピンと伸ばしてみせた。 レミリア「みっつめは先の試合でも見せたし、何よりフランが居ないと撃てないから置いといて。 ……今からお前に見せるのは二つ目のシュート。『バイシクルレッドサン』。 これは『マスターオブレッドサン』を、オーバヘッドキックの体勢で撃つだけの簡単なシュートだけど……。 威力は、こちらの方が大きい。まして、貴様への借りで怒りに震えている現状ならば――そうね。 何の制約も無く個人で撃てるシュートとしては、今大会最強になるんじゃないかしら?」 森崎「――微妙な条件付きの最強だな。案外大した事ないんじゃねぇの、それ?」 レミリア「フフ。……そう思うのならば、まずは括目あれ!」 フワァァッ……グルンッ! 軽口を叩く森崎を無視して、ボールが足を通り越した次の瞬間、 レミリアの脚がカタパルトのように機械的に、しかし正確に力強く振り下ろされた。 シュートを撃つ間際、彼女は短く吠えた。 レミリア「――――――――――H A!」 バッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ! ドギュルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!! 森崎「(……なっ!)」 この時、森崎は初めて戦慄した。否、戦慄することができた。 生物として当然持つべきである生存本能が働いたのだ。 限界を超えたセービングの為に、無理やり封じ込められ鈍っていた森崎の自己防衛欲求を、 レミリアの人智を超えたシュートは、呼び覚ませてくれた。 しかしそれは、森崎にとってある意味では不幸だった。
[696]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 01:00:10 ID:??? 森崎「(……く、くそっ! しまった! 身体が一瞬引き攣ってしまった。 あのシュートを食らえばバラバラになる。たったそれだけの恐怖に引きずられて、動きが鈍った!)」 森崎はレミリアのシュートに対し、万全の体勢でセービングに行けなかった。 威力自体は今の『バイシクルレッドサン』も、先ほどの『ダイレクトレッドサン』も、劇的な差は無いにも関わらず。 だからこれはある意味では偶然だったし、もしかしたらこれまでのセービングによる疲労が遠因かもしれない。 ただ、兎にも角にも、森崎はこのシュートへの動きが遅れた。 そして、超一流クラスにおいてその遅れは命取りだった。 森崎「(同じだ。シュナイダーの『バイシクルレッドサン』と……! 殆ど、同じだ!)」 森崎は恐ろしくも気高いレミリアの横顔に、圧倒的な技巧とパワーにかつてのライバルを想起した。 それが現実逃避であると分かっていても、そうしてしまうだけの力が今のレミリアにはあった。 森崎「(……ポスト! ――は期待出来ん。シュートコースは正面下! 枠外やバーも期待は出来んだろうし、そこにぶち当たるようなしょっぱいFWじゃない、あいつは。 だから――要するに、俺が防げないと、負ける! 点をとられちまう!)」 万事休す。森崎の脳裏にそんな単語がよぎった。 世界一の負けず嫌いで弱気が存在しない森崎すら、今のこのシュートはお手上げだった。 ―――――――――――――ゴッ! 強い風が吹き抜ける。いや霧だったか、それとも雲か。雪かもしれない。 それはレミリアのシュートが空を切った際に生じたつむじ風だったろうか。 森崎の意識はその風を受けて、ほんの一瞬だけ飛んでしまっていた。
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0ch BBS 2007-01-24