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【楽園の未来】鈴仙奮闘記31【映す試合】
[218]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 00:41:06 ID:??? 〜大会17日目午後・固定イベント〜 【大会前夜の邂逅】 三位決定戦が中止と分かり、興を削がれたルナティックスメンバー。 しかし、帰宅した彼女達を待っていたのは更なる急展開だった。 ウサギF「あっ、鈴仙さま達が帰ってきたー!」 ウサギG「うわーん、永琳さま、鈴仙さま、てゐさま、助けてー!?」 てゐ「どうしたんだい、アンタ達。留守番中に何かあった?」 輝夜「(しれっと私だけ省かれた!?)」ガーン 鈴仙達が永遠亭の玄関に入ると、留守番組のウサギ達が慌てた様子で駆けつける。 ただごとでないその様子に、訊き返すてゐの口調からも普段の鷹揚さが消えていた。 慌てふためき要領を得ない彼女達を落ち着かせつつ、鈴仙達は状況を確認していく。 ウサギF「あの……あの……。永遠亭に、知らない男の人がムリヤリ入ってきて……」 中山「男の人がムリヤリ……? それって、強盗じゃないか!」 ウサギG「あと、良く分からない要求を沢山してきて……私達、怖くって……!」 鈴仙「……乱暴をさせられてる子が居るかもしれない。私、見て来るね!」 タッ! 話を聞けば聞くほど、事が深刻であると思った鈴仙は思わず駆け出していた。 単なるゴロツキか、ヒューガーの手の者か、もしかしたら岬か。 何か新しい陰謀が自分達の身に及んでいるのではないかと、鈴仙は身構える。
[219]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 00:42:15 ID:??? ウサギH「あっちです! あの襖の向こうに!!」 鈴仙「分かったわ! ……どおっせーーーいっ!」 バターンッ! そして入口近く、永琳が人間向けの診療所として開放している部屋を、 鈴仙は軍隊仕込みの鋭い蹴りで思いっきり打ち破る。するとそこには……。 森崎「……お、おいおい。幻想郷では襖は引き開けるんじゃなくて、蹴破るのが常識なのか?」 鈴仙「あ、あんたは……森崎。森崎、有三じゃないの……!!」 おどけた様子で、しかし恐らく内心では冷や汗たらたらで、診療所の座布団に森崎は座っていた。
[220]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 00:43:36 ID:??? ***** 永琳「……成程ね。臨時休業の札を掲げていたにも関わらず、 貴方は無理やり診察を受けに来た。そして「自分は急患だ」「客だから茶でも寄越せ」 ……などと要求をしていた所、妖怪ウサギ達にクレーマー扱いされた訳ね」 森崎「全くだぜ。ここの職員教育はどうなってるんだ。 こっちは悲運を抱えて病院だけが頼りと思って受診してるのに、それを無碍にするなんてよ」 鈴仙「(自分の非は棚に上げ、ひたすらスタッフの非礼をまくし立てる……。 これが今外の世界で有名な「もんすたーぺいしぇんと」ってヤツかしら)」 色々と意思疎通に齟齬があったりもしたが、取りあえず一患者として治療を受けに来たという森崎。 事情を聴いた永琳は辟易とした表情も見せていたが、患者に貴賤は無いとして、 助手の鈴仙を残してメンバーを解散させた後は、こうして森崎の話を聞きつつ問診を始めていた。 永琳「それで? 今日はどうしてこちらを受診されたのですか?」 事務的で冷静な永琳の口ぶりに、森崎は全く恥じる事なくこう答えた。 森崎「何。前の試合から少し腰が痛くてな。 明日のお前等との決勝に備えて、念のために看て貰おうと思ったんだよ」 鈴仙「……腰が痛い? どのように痛むのですか?」 森崎「おう。何というか、例えばサッカーで大きな動きをすると、ズキズキ痛むというか。 いや、具体的にどこが痛いって訳じゃあ無いんだけどな」
[221]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 00:45:03 ID:??? 鈴仙「ふうん……触ってもいいですか?」 森崎「何だ? 俺に惚れたか? てっきりお前は中山のコレだと思っていたんだけどな」 鈴仙「え? 小指がどうしたんですか? そこも痛いとか? もしかして、指切りげんまん?」 森崎「お前、どうやら俺と合わないっぽいな……俺はトロい奴や暢気な奴は嫌いだからな」 鈴仙「は、はぁ……すみません(どうして私が勝手に嫌われなくちゃいけないんだろ……)」 永琳の了承を得て、まずは鈴仙が森崎の容態を確認する。 森崎は悪態を垂れつつも素直に鈴仙の指示に従ってくれた。 永琳「どうかしら、ウドンゲ?」 鈴仙「……疲労骨折の前兆が見られます。このままだと、腰椎分離症の恐れがあると思います」 永琳「そう。それは困ったわね」 森崎「他人事っぽく言ってんじゃねーぞお前等。大体なんだよ、そのようつい……ぶんりしょうってのは?」 永琳「簡単に言えば、背骨の腰の部分がグラグラになっていて、 その分周りの靭帯や筋肉の負担が増して腰痛が頻繁に起きる様になる症状よ。 10代前半のスポーツ選手がなりやすいのだけれど、話を聞くに、 貴女の場合は中学時代とその後――幻想郷に来てからどんどんトレーニングを激しくしていったそうだから、 今になってやってきたのかも知れないわね」 森崎の喧嘩腰にも臆せず、永琳は機械のように淡々と症状を説明する。 かくも冷徹だと、幾ら診断が正確でも、患者の心境としてはあまり嬉しくないかもしれないと鈴仙は思った。
[222]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 00:46:14 ID:??? 森崎「……分かったよ。じゃあドクター。一つだけ聞かせてくれ。……俺は明日の決勝戦に出られるのか?」 ゴクリ……。 単刀直入な森崎らしい質問だったが、その豪胆さとは裏腹に彼は大きく唾を飲みこんでいた。 しかしどうやら、本人はその音を発したのは自分では無いと強く信じているようだった。 永琳はそんな森崎の心の機敏を気にせず、単刀直入に応えた。 永琳「ええ、出られるわよ。もっとも、安全は保障できないけどね」 森崎「……!」 無慈悲に森崎の心を抉る永琳。しかし、森崎もまたこの程度で引き下がる男では無かった。 森崎「じゃあ、薬を出してくれ。俺が明日も、これからも戦えるような、劇的な完治薬を。 ……あらゆる薬を作る程度の能力、天才。なんだろ? その位チョロイ筈だぜ」 森崎は名医であり名薬剤師である八意永琳の評判を知っていた。 だから、最悪ここで自分の腰がどうしようも無かったとしても、何とかなると信じていた。 かつて彼女が、中山の全身を一瞬にして癒したように。実際、永琳も首を縦に振った。 永琳「ええ、出来るわ。全てで貴方の今の腰を改善させる薬位、幾らでも調合出来るでしょう」 森崎「! だったら……」 しかし、薬の処方を迫らんと立ち上がった森崎を制するように、永琳はもう一つ付け加える。 永琳「……だけど。次に貴方がサッカーをした場合。 貴方の腰は再びその強烈な衝撃によって、間違い無く歪むでしょう」 森崎「なっ……!」
[223]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 00:47:38 ID:??? 永琳は淡々と説明をする。 曰く、森崎の腰はもはや、彼の限界を超えたスーパーセーブに伴い生じる負担に耐えられない。 これまでは恐らく、痛覚を遮断して負担にも辛うじて耐えて来たようだが、 今となりとうとう、森崎の成長に腰が物理的に追いつかなくなった。 だから、薬があろうとも、森崎が今のプレーを続ける限りは……問題は解決しない、と。 永琳「……貴方がまだブラジルに居たとしたら。その成長速度は緩やかである代わりに、 腰の痛みもここまで致命的に至らなかったかもしれないけどね」 森崎「…………」 そんな不都合な事実を突きつけられても、森崎は未だ気丈だった。 これは彼の人並み外れた精神力の賜物であるかもしれない。 しかし森崎は永琳の結論を聞くと黙って立ち上がり、診療所を後にした。 鈴仙「あ……あのっ! せめてお薬なら、今でも処方できますけど……」 森崎「いらねーよ。そんな薬飲んだら、却って痛みに耐えられなくなる」 タッ……。 そう冷静に言ってのける森崎だったが、その後ろ姿には先程までに感じられた覇気が無く。 どちらかと言えば、自分のような凡人にも近いような、焦りとか不安と言った要素すら感じられた。
[224]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 00:56:03 ID:??? 中山「――森崎」 森崎「……なんだ。中山、聞いていたのか。滑稽だっただろ?」 その様子を、中山は診療所の襖越しに全て聞いていた。 盗み聞きなどという男らしくない行為を中山は嫌っていたが、 しかしそれよりも、親友の容態の方が今は大事だった。 そんな中山を尻目に、森崎はふざけた風に語る。 森崎「全く滑稽だ。俺は結局、努力しても天才に追いついちゃいけないっていう決まりがあるみたいだ。 あーあ、中山。お前は良いよなぁ。治療して貰ったら、後はそのままガタも来ず、才能を発揮できるみたいでよぉ」 中山「……もしも本気でそう思っているならば、森崎。俺はお前を殴らせて貰うぞ」 それは中山の良く知る森崎の様子ではなかった。 彼の知る森崎は、どんな絶望的な壁に四方を阻まれていても、 その強靭な精神力と努力で無理やりに壁を破壊し、自分の道を切り開ける男だった。 そんな彼ならば、今のような困難すらも、乗り越えられる筈――で、あるにも関わらず、 中山の眼前の少年は、年相応に自身の抱える爆弾に怯えていた。 森崎「……なーんてな」 中山「……は?」 森崎「冗談だよ。第一、俺が試合に出なかったら、明日の決勝はボロ負けだろうからな」 ――が、中山の心配は杞憂だと言わんばかりに、森崎は舌を出した。 そこからの彼の口調や仕草は、中山の好きな森崎そのものだった。
[225]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 01:04:34 ID:??? 森崎「ケガをしないスポーツ選手なんて何処にも居ないんだ。大事な試合の為には無茶をするのもプロの仕事の内だぜ」 中山「……ならば、最初からこんな所、来なくても良かったんじゃないか? 勝つためならあらゆる手段を尽くすお前が、決勝戦の敵の居城に行き、 自身の症状と弱点をカミングアウトするなんて事、する筈がない」 何となく騙されたような気がして、中山は負け惜しみのようにそう言った。 無論、そこには中山が純粋に感じた疑問も紛れていたが。 森崎は意気揚々とそれに応えてくれた。 森崎「それは簡単だ。まず一つに、お前が信頼して長期宿泊しているようなここの真面目な住民が、 今更セコイ真似をして症状を誤魔化す事や、試合本番になって弱点を集中的に突いて来る事は無いからだ」 仮にそうして来てくれた方が、だまし討ちのし甲斐があって助かるけどな…と、 森崎は暫く冗談っぽく笑う。しかし、その直後に彼の表情は真剣になる。 「こういうのはあまり俺らしくないが――」と、彼らしくない前置きに、 中山は再び表情を曇らせるが、それこそ杞憂だった事を悟る。 森崎「宣戦布告だよ、中山。全国サッカー大会の県大会決勝戦。あれの決着を付けようじゃないか」 何故なら、その時の森崎の表情からは、最大最強の親友にしてライバルと対峙する事への、 この上ない喜びと戦意の高ぶりが感じられたからだ。
[226]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 01:05:58 ID:??? …と、行ったところで今日の更新はここまでです。 明日は決勝戦前最後の行動選択に入ります。 皆さま、本日もお疲れ様でした。
[227]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/09/16(水) 23:04:14 ID:??? 更新再開します。 もうちょっと描写をしたいので、1〜2レスだけ書いてから行動選択に移ります。
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0ch BBS 2007-01-24