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【もう昨日には】鈴仙奮闘記32【戻れない】
[704]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:18:13 ID:??? 説教は数分の後に終わった。 永琳も鈴仙も、何だか釈然としない表情で会話を再開しようとするが、何だかしまらない。 今までの永琳の謝罪が嘘だったかのように、場の雰囲気は和らいでいた。 それは、今までの何気ない、普段通りの日常は、永琳にとって何よりも換え難い救いであった事を示していた。 永琳「……ありがとう、ウドンゲ」 鈴仙「――えっ? し、師匠? 今何か仰いましたか……?」 永琳「何でもないわ。……それより、話を進めましょう」 鈴仙「あっ、はい(師匠の顔、少しだけど明るくなった気がする。 ……いつも通り、氷みたいに冷たい表情だから分かりづらいけど)」 ――そしてだからこそ、永琳はこれまでの罪を清算する為に、これからの事を鈴仙に話そうと思えた。 永琳「……これからは、今この幻想郷に何が起きているのか。そして――これから何が起こり得るのかを話すわ」 鈴仙「……はい」 永琳は再び淡々と話を再開する。その表情にはもはや陰りは無く、代わりに決然とした強い意思が感じられた。 永琳「まず第一に話しておきたいのは、この決勝戦が終わるまで、 私の計画はほぼ完璧に。いや――予想以上に上手く運んでいたわ」 研究室のランプが二人を冷たく照らす中、永琳はまずそう断言した。 永琳「貴女の瞳は私の想像を越えて、様々な波長を溜め込み成長し。 果ては中山政男以上に強力かつ危険な、森崎有三を抑えるに至った。 だから、大会で私達ルナティックスが優勝し、幻想郷全体の価値観が狂う事になったとしても。 貴女の瞳はその価値エネルギーの暴走を、完璧に抑えるに違いないと思っていた。……実際は、違ったけれど」
[705]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:20:53 ID:??? 永琳の説明を聞いて、鈴仙はスタジアム入口での早苗との話を思い出していた。 ――彼女が言うには、今回の正体不明の爆発は、世界の新生の際には必ず起こり得る災害である。 古くはノアの大洪水。最近では外界でも起きた大地震と同じような出来事が、この幻想郷でも起こっているのだと。 永琳が言う価値エネルギーの暴走とは、早苗が言う新生<リーインカーネイション>の事を指すのだろうか。 永琳は早苗の説明を補足するかのように続ける。 永琳「――永遠亭ルナティックスが、優勝候補筆頭の博麗連合に勝利した。 努力の天才である中山政男が、才能の天才である博麗霊夢に勝利した。 この事実は確かに幻想郷にとっては大きい事だけど、しかし本来はエネルギーの暴走が生じる程ではない。 仮に生じたとしても、その程度は貴女がこれまで体験して来た狂気と比較しても、制御不能になる程には成り得ない。 ましてや幻想郷の結界が完璧に破られる事は、ある筈も無いの。 なのに今、そのあり得ない事が起きている理由。それは簡単。 ――私達の勝利というエネルギーに反応して、より強大なエネルギーが目覚め、あの場所に萃まったからよ。 そのエネルギーがあまりに強大過ぎたから、貴女の瞳から波長が溢れた。 結界は破れ、結果として新たな新生が起きた。 そして一連の結果、行き場を失ったエネルギーは物理的な破壊の形を取った。 たったそれだけの事であり。そしてその事こそが、私の最大の誤算だった」 鈴仙「よ、より強大なエネルギーって……。 また師匠のお友達の、ドコドコ喧しい白痴の魔王さんとか、長い踊りが趣味の統合思念体さんとかですか?」 永琳「それに似た類……いや。もしかしたらそいつらよりももっと厄介な存在かもね」 鈴仙の冗談に対し、永琳は自嘲的な笑いを浮かべて言った。 永琳「そのエネルギーは、――『彼女』は、名前があり名前が無い存在。 唯一無二の存在でありながら、どこにでも存在しうる。姿を保てない程微弱な癖に、鮮烈な美貌を誇っている。 あまりに醜悪で唾棄したい存在でありながら、誰もが皆彼女を愛し、その存在に魅了されている」 鈴仙「あの、えっと……なぞなぞですか?」
[706]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:27:21 ID:??? 永琳「生憎と、冗談じゃないわ。私は的確に『それ』を表現しているだけ。 ――前に現れたのがもう数千年前だったし。 綿月姉妹を始めとする、信頼のおける月の民にも監視させていたから、安心しきっていたのだけれど ……ウドンゲ達が生んでくれた大きなエネルギーと。 そのエネルギーを激しく憎んだ、とある女性の想いに反応して――『彼女』は、この地に降臨してしまった」 永琳はここで一旦話を切って、周囲を見渡した。 永琳「――さて。ここから先の話は、この子だけじゃなくて、貴女にもしておきたいのだけれど」 永琳は誰も居ない研究室の暗闇に向かってそう言った。鈴仙は一瞬何事かと思ったが、すぐに永琳がそうした理由を理解した。 ――何故なら、その暗闇には既に誰が潜んでいたからだ。 スッ……。 暗闇が切り取られ、グロテスクな瞳が散りばめられた空間の隙間が現れる。 端と端とをリボンで結びつけられたその隙間の装飾に、鈴仙は見覚えがあった。 鈴仙「えっ……。ま、まさか八雲紫……!?」 ??「――まさか、そんな事が。しかし、貴女の言う通りだとすれば、全て説明が付く……」 ――しかし、その隙間を縫って現れた女性は、鈴仙の想像とは違った。 確かに彼女もまた、八雲紫に似た金色の髪をしていたが、背丈からして違う。 藍色の導師服を僅かに揺らし、焦りを含んだ表情でその空間が出て来たのは九尾の狐。そう、彼女は――。 永琳「……こんな時間に悪いわね、……八雲藍」 藍「とんでもございません。むしろ、私にも聞かせて下さい。紫様に。そして幻想郷に今、何が起こっているのかを……」 ――藍は恭しく永琳に礼をして、鈴仙の隣に立つ。 妖怪の賢者に仕えし式神は、主がかつて愛した境界の術式を用いて、主に代わって幻想郷を守るべく動いていた。
[707]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:32:14 ID:??? …と、いったところで今日の更新はここまでです。 皆さま、本日もお疲れ様でした。
[708]森崎名無しさん:2015/11/19(木) 10:34:55 ID:??? 乙でした なるほど……つまり答えは「ロベルト本郷」ですね?
[709]森崎名無しさん:2015/11/19(木) 23:18:44 ID:??? そうか・・・「ロベルト本郷」とは・・・!
[710]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/20(金) 01:34:06 ID:??? こんばんは、ほんの少しだけ更新したかったのですが、 仕事が忙しかったので、明日にブラッシュアップして更新したいです。 ただ、明日の夜は飲み会で、土日は旅行なので、場合によっては暫く更新できないかもです(泣) >>708 乙ありがとうございます。BADENDまっしぐらですねw >>709 残尿の妖精か何かじゃないですかね…
[711]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 00:25:03 ID:??? こんばんは、旅行から帰って来たので少しですが更新再開します。 最近更新が空いていたので、これまでの状況を三行でまとめました。 ・鈴仙率いるルナティックスが霊夢率いる博麗連合を破り、全幻想郷大会に優勝 ・しかし、大会後紫の様子が激変。それと同時に結界が破れ災害が発生 ・その夜、これまでの展開は永琳が原因で、永琳すら看破できぬ存在が居る事が発覚。その正体は…と、いう時に藍が乱入
[712]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 00:28:03 ID:??? 鈴仙「ど――どうして、貴女がここに。それに、そのスキマ……」 藍「……話せば長くなる。私はただ、月の賢者の知恵を借りに来た。それだけさ」 あくまで平静を装って、藍は小さくかぶりを振って答えた。 鈴仙にとって、藍は単なる顔見知りではない。 全幻想郷選抜大会の予選リーグ最終戦の終了後。 鈴仙は藍に呼び出され、そこで彼女の想いを聞いていたからだ。 藍はその場で、鈴仙にこう請願していた。 ――鈴仙。私は君に……紫様考案の『リアル・幻想・セブン』計画の一員となって欲しい。 そして、その上で――紫様の計画を、打ち砕いてはくれまいか。 鈴仙「(リアル・幻想・セブン計画。それは乱心した八雲紫が考えた、 霊夢の為に弱者を嘲笑って下敷きにする、悪趣味で狂った計画。 だけど藍さんは、その計画に自身が選んだ伏兵を忍ばせようと目論んでいる。 ――その伏兵によって、計画を変え、八雲紫を変え、そして……幻想郷を取り戻そうとしている)」 藍もまた、自らの信念に基づき奮闘している。そのために彼女は永琳の元を訪れたのだろうか。 そんな鈴仙の内側の問いかけに答えるように、藍はこう言った。 藍「率直に言いましょう。八意永琳、私は貴殿の智恵を借りたい。 我々共通の敵であろう、八雲紫を演じる『何者か』の正体と、その対策について」 永琳「……そういう風に聞くという事は。貴女は八雲紫がもはや、八雲紫では無いという事を認識しているのね?」 藍「ええ。――始めは、信じたくありませんでしたが。 今晩。紫様の象徴でもある、この隙間を操る術式すらも不要と切り捨てた時点で、私の不信は確信に変わりました」 永琳「――そう。もう既に、そこまで進行していたとはね。 だとすると、貴女がこの会話を嗅ぎ付けたのは、中々聡明だったと言えるわ」
[713]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 00:29:20 ID:??? 永琳の冷たい視線に臆することなく、藍は力強く頷く。 その永琳もまた、何を考えているのか読み取れない表情を僅かに暗くして頷き返した。 鈴仙「――え。八雲紫が、八雲紫じゃないって。どういう事ですか……? 大会後に広場に降り立っていましたけど、あの胡散臭い少女は間違い無く、八雲紫でしたよ」 そしてこうなると、八雲紫を詳しく知らない鈴仙は途端に話題に入り辛くなった。 紫が鈴仙の成長や、プロジェクト・カウンターハクレイ――幻想郷の秩序を変える事を目的とする計画 ――を疎んじていた事は知っているが、鈴仙本人と紫との関係は薄い。 鈴仙「師匠がさっき言いかけた、正体不明・実体不明の『彼女』。 それが今、八雲紫の人格を乗っ取っているとか。そんな話なんですか? その、さっき言ったように。紫が私とか中山さんが生んだ波長のエネルギーを憎んだ事が原因で……」 鈴仙はこれまでの話を纏めるように、恐る恐る切り出した。 自分では荷が重い話だと思って知らんぷりを決め込まない程には、鈴仙は成長していた。 永琳は鈴仙にこう答える。 永琳「ウドンゲ。それは概ね正しいし、貴女にしては名推理だけど。 だけど、それだけじゃ少しだけ足りないわ。 何故なら、私の計画に生じた巨大なイレギュラーには。――『それ』には、人格が無いのだから。 だから『それ』は八雲紫の人格を乗っ取ったというには、正確ではない。 強いていうなら、八雲紫の方が変わってしまったの。『彼女』を受け入れられるようにね」 藍「……紫様は変わってしまった。それにより、貴女が言う『それ』『彼女』なる、 強大なエネルギー体を受容できるよう、自ら在り方を変えてしまった。――貴女は、そう仰ると」 永琳は静かに頷く。鈴仙は当然、パッと聴いてその両者の仔細な違いについて分からなかった。 そのため、 鈴仙「――なら、一体さっきから出て来る『それ』とか『彼女』って一体何なんですか?」
[714]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 00:49:10 ID:??? 鈴仙は永琳に対して半分詰め寄るよう、こう切り込んだ。 そこで永琳は漸く、先ほど話しかけたイレギュラーについて語り始めた。 永琳「――『それ』は、地上の民の言葉では『憎しみ』を意味するわ。……いや、あるいは『絶望』かしら」 鈴仙「『憎しみ』や『絶望』……? 八雲紫は、そんな曖昧な物に影響されたとか。そういう話なんですか?」 藍「いや、それは在り得ない。私の知る紫様は、そんな陳腐な概念に惑わされなどしない!」 永琳「――そう。貴女の知る八雲紫は、そんな陳腐な概念に惑わされはしないわ。 だけど、今回の件はそんな陳腐な物では無い。古くは月の歴史から生まれ、 数億年の時を経て純化された、完全かつ純粋なる狂気によるもの。 ……通常ならば瞬間で自我を崩壊させる筈が、中身は兎も角、ああも原型を保っていられるのは、 八雲紫の精神力が、かくも強靭だからに他ならないわ」 藍「成程、しかし申し訳ない。話の腰を折ってしまったようだ。……しかし、月の歴史、とは?」 途中に藍が横槍を入れる事がありつつも、進み始めた会議は穏やかに進む。 しかしそこから永琳が話した内容の全ては鈴仙は勿論、藍ですら知らない事であった。 永琳「――月には一切の穢れが存在しない。しかし、そこには矛盾がある。 それは即ち、穢れある生を享受しておきながら、月の民はその穢れを嫌い、忌避すること。 一応は生ある者が、自らの生の象徴たる穢れを否定すること。 我らのその傲慢さは過去、月を発展させると共に――その影で、永劫続く、多くの憎しみを生み出して来た」
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0ch BBS 2007-01-24