※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
【秋空模様の】鈴仙奮闘記36【仏蘭西人形】
[832]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/27(月) 00:36:10 ID:??? ***** ……気付けば反町は、ひらり、はらりと紅葉の舞う場所に立っていた。 どこかで見た事があるような、しかしどこにも無いような幻想的な空間に独り居るにも関わらず、 不思議と孤独感や不安感は覚えなかった。 ??「――ねぇ。キミ、寒くないの?」 そこには気付けば、一人の少女が立っていた。 銀杏を落とした川のように、さらっとして綺麗な金色の髪。 大きな鳶色の瞳は瑞々しい果実で、すらりと伸びた手足は稲の穂のようにしなやかだった。 反町はその少女を知っていた。 反町「穣子さん。……俺は、本当に貴女の事が好きだったのでしょうか……?」 反町が幻想郷で一番最初に親しくなり、そしてそのまま恋仲まで発展した収穫と豊穣の神。 神にも関わらず素性はとても純朴で愛らしい穣子を、今や反町は直視できなかった。 穣子「……大丈夫。あなたは、昔からずうっと私を信じてくれました。 ありがとう。ずっと、ずっと……会いたかった」 ――穣子は、優しく反町に語り掛けた。 普段の子どもっぽい口調とは違う、穏やかで大人びた佇まいは、 本物の女神のような(本物の女神なのだが)を想起させた。 反町「昔から……?」 穣子「ええ。だから、私達は巡り合えた。そして、きっとこれからも……」 穣子はそれだけを言い残すと、秋の色に解けていった。 ――決して終わる事の無い紅葉の雨が降り注ぎ、永遠の豊穣を喜ぶ楽園の中。 反町は再び孤独に取り残された。
[833]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/27(月) 00:39:23 ID:??? ***** ブロロロロ…… アリス「……フランス紀行も中々悪くなかったわね。 私としては都会派の象徴・パリに行けなかったのが心残りだけど」 早苗「パリは良いですよ! 何故ってロンドンはどんよりしてるけど、晴れたらパリですし!」 アリス「フフ……その程度の知識、私も知っているわ。カルメンは麺よりもパエリアが好きなのよね?」 早苗「おお、それを先に言われちゃうとは。アリスさんってやっぱり博識ですね! 私、尊敬しちゃいます!」 反町「――あれ。俺、夢を……?」 反町は目を覚ました頃には、空港へと向かう車内での会話は程ほどに盛り上がっていた。 集団生活という名の荒療治を経て、何だかんだで最低限のコミュニケーション能力を身に着けたアリスさんも、 今ではある程度は早苗と馴染んで雑談に興じていた。 静葉「……反町君。もうすぐ空港に着くそうよ」 反町「静葉さん。ありがとうございます。俺、結構眠って……」 静葉「ええ、グッスリと眠っていたわ。最近あまり、眠れていなかったんじゃないかしら?」 反町「はい。まあ……色々悩み事とか、ありまして」
[834]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/27(月) 00:40:45 ID:??? 5人掛けのコンパートメントで、反町の隣に静葉は座っていた。 向こうには穣子がアリスさんと早苗の隣、反町とは斜め正面の位置で押し黙っている中。 ――反町の『悩み事』を知る静葉は、穣子に悟られないような小さい声で、不意にこう囁いた。 静葉「この前の試合を思い出してみて。貴方は、貴方が思っている以上に力を持っている。 それを正しく認識して使う事が出来るなら。……だから、自分自身を信じて。一樹君」 反町「静葉、さん……?」 静葉「――本当は、私に出る幕なんて無かったもの。貴方は優しいから色々と考えるでしょうけど、 今だけは考えなくても良い。……だから、フランスを発つまでに、あの子に答えを示してあげて」 反町「静葉さん、待ってください。俺はまだやっぱり分からない。答えって一体……!」 静葉「あ〜。楽しい学校生活ももう終わりかぁ。これからウン十年間も社会の歯車になるくらいなら、 もう人生終わりにしちゃおうかなぁ〜♪」チャキッ 穣子「え!? お姉ちゃんまた死んじゃうの!? いやー、死なないでぇー!?」 反町が静葉の真意を聞こうにも、これ以上は許さないとカッターナイフを振り回されて分からない。 ただ一つ確かなのは、静葉が反町と穣子との間に抱える問題を知り、理解した上で。 ――自らの想いを押し殺してでも、二人が幸せになれる方法を考えてくれているという事だけだった。
[835]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/27(月) 00:48:49 ID:efozeoc6 すみません、後半部分を書き直していたら今日中に終わらなかったので、続きはまた今度にします。 ただ、次のパートで反町の章は終わりにして、鈴仙の章に戻る予定です。 また、容量が500kbを越えたので、スレタイも募集させて頂きます。 【】鈴仙奮闘記37【】 の形で書いて提案して頂ければ大変嬉しいです。 次スレは、鈴仙の章に戻って、ザガロ達一行+一部スウェーデンメンバー(ブローリン等)が加わった、 サントス戦が中心になると思います。 それでは、本日も遅くまでお疲れ様でした。
[836]森崎名無しさん:2016/06/27(月) 01:01:17 ID:??? 【熱戦烈戦】鈴仙奮闘記37【超激戦】 【ブルーツ波】鈴仙奮闘記37【大放出】 【ポーピー】鈴仙奮闘記37【デデーン】 乙でした
[837]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/28(火) 00:44:47 ID:g5cRU4+s >>836 乙とスレタイ提案ありがとうございます! 反町の章が結構重い感じになっちゃったので、 鈴仙の章Aは割と軽いノリで行きたいと思ってます。
[838]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/28(火) 00:46:08 ID:g5cRU4+s 早苗「さて……私は日本に向かいますので、ここで暫しのお別れですね。 皆さんは確か、これからブラジルに行って、鈴仙さんのリオカップに合流するんでしたっけ?」 静葉「ええ。大会スケジュール的には大体2回戦……サントス戦が始まる前には合流する感じかしらね」 早苗「そうですかぁ。私はこれからあの変なTシャツコーチの変な特訓を受けると思うと、気が重くなりますよ」 アリス「ラズリーと名乗る謎の女コーチだったわね。……今の全幻想郷代表の様子は随分と興味深いわ。 これまでには無い人物が暗躍して、これまでには無い陰謀が蠢いている。 ――でも、良かったのかしら? 立場上は敵である私達に、色々と教えてくれたのは有り難いけれど」 早苗「――少しでも、この前の試合の罪滅ぼしになるかもしれないと思いまして。 ……でも、まぁ。私なんてどうせあのそうそうたるメンバーだったらほんの端役ですし、 秘密主義の紫さんからはなーんにも情報は入ってこないし。 多分、この位しゃべっちゃっても全然大丈夫だと思います。……あ、私の飛行機、来ちゃいました」 ――そして空港の搭乗口で、反町達一行と早苗は別れた。 待合室でこれからの事を少しだけ語り合い、暫く経って別々の飛行機へと乗る。 早苗は日本。反町達はブラジル。フランスの地で偶然出会った彼らは地球の反対側へと離別する。 早苗「皆さん。こんな私にもフランスで仲良くしてくれて、本当にありがとうございました。 お蔭で神奈子様達にも沢山、楽しい思い出話が出来ると思います。 ううん、楽しいだけじゃない。色々な事を、勉強する事が出来ました」
[839]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/28(火) 00:48:10 ID:??? 律儀な早苗は、別れ際にメッセージを残してくれた。 早苗「アリスさん。貴女は不器用だけど、トモダチを想う心の熱さだけは本当に凄いと思いました。 皆で笑顔で幻想郷に帰れた後も、きっとトモダチになって下さいね?」 アリス「さ、さあ。どうかしら。考えてあげるわ(わ、私にもようやく、ボール君以外のトモダチができた……? どうしよう。今まで散々トモダチ欲しいって言ってたけど、いざ本当にできそうだとちょっと怖い……)」 早苗「静葉さん。貴女とは妖怪の山の同郷ではあるけれど、ここで色んな側面を知る事が出来ました。 貴女の高い知識と緻密さは本当に頼りになりました。……主にペーパーテストの時に」 静葉「居眠りは関心しないわ。夜更かししないで、きちんと寝なくちゃ駄目よ?」 早苗「穣子さん。普段は元気一杯だけど、皆の事を沢山考えていますよね。 だけど、考えるだけで抱え込みすぎちゃあダメですよ?」 穣子「うん……ありがとね、早苗ちゃん」 早苗「反町君……」 反町「……………」 そして、最後に早苗は反町に向き合った。昔からずっと反町を見ていた早苗は、 反町に対して言いたい事が沢山あった。しかし、早苗はここで思わぬ行動を取った。 ――ぺしっ。 反町「あいたっ」
[840]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/28(火) 00:54:20 ID:??? 早苗は挨拶の代わりに、反町の頭をぺちんと叩いた。 本気で殴られた訳では無いので痛みはないが、それでも不意を突かれた事にびっくりして後ずさる。 そんな反町を見て、早苗は笑顔で、一言だけ言いたい事を言う事にした。 早苗「言いたい事を言わずとも、言葉は伝わる。貴方が教えてくれた事ですよ、反町君?」 早苗はこれまで反町の無言の言葉に感銘を受け、刺激され、そして教えられてきた。 神や妖怪では無く、同年代の少女だからこそ、早苗は反町に対して等身大のエールを送れた。 そして――ここで漸く、バス内での静葉の視線が、あの時から見ていた夢が、これまでの自分の人生が、 目の前に居る少女の淋しげな後ろ姿へと繋がった。 反町「……穣子さん」 穣子「一樹、君……」 だから、早苗が去ってからすぐに、反町は意を決して穣子に声を掛けた。 穣子は一瞬だけ目を見開くも、その後反町の意志を察して真剣な表情を作った。 静葉「(――分かってくれた)……アリスさん。私達ちょっと外しましょうか」 アリス「え? 何で?」 静葉「(この人、悪い人じゃないのは充分分かったけど、本当に空気が読めないのね……) ――良いから、行きましょう。フランスみやげで、 しゃぶしゃぶ とか一緒に買いましょう」 アリス「え!? 一緒にお買い物!? それってあの、『リアルが充実している人』のみが体験できるという、 恍惚めいた神聖体験の事……!? 行く、是非行くわ!」 静葉「――そう、良かった(……『皆』ももうすぐ来る事でしょうし。頑張るのよ、反町君……)」
[841]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/28(火) 00:55:35 ID:??? 早苗が去り、静葉とアリスさんが自然と反町から離れたため、待合室は暫くの間、反町と穣子の二人きりになった。 沈黙が場を支配する中、口火を切ったのは穣子だった。 穣子「考えてくれたんだよね。色々と……」 反町は何も言わなかった。しかし、その無言はこれまでのような嫌な無言ではない。 彼はフランスでの修行で、言いたい事を言わずとも自分の意思を伝えられる術を身に着けていたのを、 静葉や早苗のお蔭で思い出していた。 反町「――――」 ぎゅっ……。 穣子「ふ、ふええっ!?」 だから反町は、穣子の呼びかけに答える代わりに、彼女の手を握った。 手を握った事は初めてでは無いし、それ以上の事をした経験だってある。 反町「………!」 じっ……。 反町は次に、穣子の瞳をしっかりと見た。 絶対に離さない。だけど、絶対に後悔しない。後悔させない。 彼の無言のメッセージは、穣子にも確かに伝わっていた。 穣子「――無理だよ。私達、きっとずっとは幸せになれないよ……。 幻想の世界と現実の世界とは決して交じり合えないんだよ、やっぱり……」
前
次
写
名前
E-mail
0ch BBS 2007-01-24